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25・残っている不思議
しおりを挟む外に出ることは出来なさそうなので、まだ見てない不思議に出会いにいく事になる。
それは、鈴ちゃんとねおちゃんが会ったという、気づいたらもう一人いるってやつ。
さっきは追われたらしいけど、本来はそんな事をしないらしい。
「どこに出るかは、分からないんだ」
幽霊がそう言うので、歩くことになった。みんなで丸くなって座っているより、隙があるほどがいいらしい。
とりあえずの目的地は、教室だ。タオルも借りれたし、やはり着替える事にしたのだ。
ポーズを取らないと見えないけど、それでもわたしに見られるのは嫌だろうか、わたしが一番前を歩く。
「あんたのことは、藤間って呼べばいいのか?」
「うん。幽霊は記憶を無いと言っていたけれど、藤間の名にも聞き覚えはない? この地では長く続いている名家なんだけど」
「残念ながら、記憶にないな」
「その藤間くんちが、実は退魔の家なんてびっくりした」
「みんなには秘密にしていたからね。僕の家は、こういう力があったから、この街でみんなに頼られるようになったんだ」
「すごい。ずっと、守っていてくれたんだね」
「みんなが頼りにしてくれるから、それに答えたいんだ」
(格好いい事いっているけど、あれどのくらいが本当の事なんだろう)
後ろで行われている会話を聞いていると、藤間くんが来てから、ねおちゃんがよく喋るようになった。先ほどまで喋っていた鈴ちゃんは、逆に黙っていることが多い。
校舎に入って、中央校舎に行った時、後ろから息を飲んだ音が聞こえた。
(どうしたんだろう)
「大丈夫だよ。……想像以上に早いお出ましだね」
優しく誰かに声をかけた後、藤間くんがつぶやいた。
(なるほど、もう後ろに居るんだ)
「足は止めないで、さっき二人は教室に逃げ込んだんだろう? もう少し教室に近づこう」
言われた通り、階段を上がる。
足音をよく聞くと、だいぶ遠い場所からも足音が聞こえている。
「とりあえず、教室に入れ。んで、満永は教室に入ってから、見ろ」
一番後ろから、円地くんに声をかけられた。
「うん」
私が踊り場に足を置いたときだった。
ダッダッダッと、遠くで聞こえる足音のスピードが上がっていた。
「走れ!」
円地くんに言われ、わたしは後ろは振り返らずにダッシュする。
鈴ちゃんとねおちゃんは、藤間くんがサポートしてくれるでしょ。
わたし達は、階段を急いで登る。その音に紛れて聞こえた足音は、また早くなっている気がする。
階段を駆け上がると、走って教室に向う。
わたし達の教室は、一番遠い所にある。他の教室が開いているかを確認する暇はない。
「満永、見ろ!」
教室まで間に合わないと思ったのか円地くんに言われる。
「無理無理!」
一瞬振り返ったら、はっきりと人の姿をしている影を見る事はできたけど、ポーズ作って見るのは出来ない。
「ちっ、しょうがねえ切る」
「えっ!」
(あんなに人型な存在を切るのは流石に心的ダメージ負うでしょ)
「みんなは走って!」
走りながら狐の窓を作り、止まる。みんなが走り抜けてから、振り返る。
『気づいたら、人の輪に入っている』『卒業の日に、もっと一緒に遊びたかったという、生徒が学校に残した思いを吸収している』『本来なら気づかないうちにだが、今は無理矢理入ろうとしてくる』
(ああ、もう。切っていいやつかわかんない!)
情報は、一瞬で出るけど、わたしは一瞬で読めないから、影はもうすぐそばにきている。
真っ黒の影でしかない手を伸ばされる。
『混じりたい。出来るなら入れ替わりたい』
見えた情報に恐怖を感じそうになって心を静める。
「誰が混ぜてやるか!」
怒鳴ると、影は怒ったように手を伸ばすが、横から来た人がその手にカッターナイフを振った。
それは、まだ遠く、触れてもいない距離なのに、影の腕は落ちた。
影の動きが止まる。
「オレ、何でも切るけど、それでも仲間に入りたいのか?」
少し前に出ていた円地くんはわたしの手を掴むと、その皮膚の上にナイフを置いた。
少しでも動いたら血が出てしまう、触れている感覚。
「え、円地くん?」
(嘘だよね)
声をかけるが、何も言わない。
円地くんの睨むような目で見られていた影は、一歩、二歩、後ずさりをすると、後ろを向いて走って行ってしまう。
「どっかいったな」
影が見えなくなって、円地くんはナイフをしまう。
「良かった」
「あいつらいっちまったし、オレらもいくぞ」
そして、歩き出す。
(円地くん、人型の腕を落としたけど、一切気にしていなさそうだ。こう言ったことも慣れているんだな)
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