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24・校門
しおりを挟む「ねぇ、ここまで来たんだし、校門まで行ってみようよ」
鈴ちゃん、今は一緒についてきてくれているけど、やっぱり帰れるなら帰りたいみたい。
うちの学校には、校庭側の裏門と、下駄箱側の正門があって、今は裏門に近いので、そっちに足を向ける。
円地くんも気になるのか、何も言わずについて来ている。
「外に出られないって言っていたけど、どんな感じなの?」
「校門を開けられない。鍵はこっち側だから、鍵を開けることまではできるけど、壁を相手にしているみたいに開けられないし、乗り越えようとしても透明な壁みたいなのがある」
(透明な壁、それ円地くんなら切れるかも)
校門に近づくにつれ、空がオレンジ色と黒色に綺麗に分かれているのがよくわかる。
「ねえ、あそこ何かいない?」
それに最初に気がついたのは、ねおちゃんだった。
緊張した面持ちで、校門の辺りを指さしている。
確かに、そこには何かが居た。
ハッキリは見えないのは、こっち側じゃなくて、あっち側。閉まっている校門の外に居るからだ。
「なんだ?」
幽霊にとっても知らない事なのか、警戒心強めにそちらを見る。
(わたしが見てみるべきかな)
ここからでもたぶん見れるから、そうしようと手でポーズを作ろうとして、制止される。
「待て、あれ、藤間だ」
「えっ!」
ねおちゃんがわたしより先に驚いていて、円地くんに詰め寄る。
「藤間くん、なんで? 本当に?」
円地くんは、ねおちゃんの問いに答えることなく校門に向かうので、わたし達も付いていく。
校門まで十メートルもない所まできて、ハッキリ見えた。
「藤間くん!」
ねおちゃんは、駆け寄った。
「あれ」
藤間くんは、わたし達の事が見えているみたいで、こっちを見て、正確にはねおちゃんを見て、驚いた顔をする。
「どうしてそこにいるの?」
「分らない! 閉じ込められちゃったの助けて」
ねおちゃんは藤間くんに手を伸ばすが、見えない壁があるみたいで、変な形で止る。
「どういう?」
藤間くんもねおちゃんの手に触れるように手を伸ばし、二人の手が重なったとき、気がついたら、藤間くんの体がこっち側にある。
「きゃ、え、なんで?」
ねおちゃんも、藤間くんも驚いていた。
だって、二人の間には、透明な壁も、物理的にも体を通さない門もあったはずなのに、こっちに居るんだ。
「どういう?」
「なんで、え、ねおが藤間くんをこっちによんじゃった?」
意味不明な出来事に、パニックになるねおちゃんを、
「大丈夫だよ。分からないけど、キミが悪いことをしていないのは分かる」
藤間くんは慰める。
鈴ちゃんは、そんな二人を見ているのだが、円地くんはその奥で一人何もない空間をカッターで切りつけようとしては、弾かれているようだった。
何度か試して、この学校を覆っている透明な壁は切られないと確信したようで、カッターをしまう。
「おい、藤間。外から見てこの中どうなってた?」
円地くんは、ねおちゃんが慰められているのなんて気にせず話しかける。
藤間くんは、そんな円地くんにちょっと困ったような顔をしながらも答える。
「外から見た時、中は普通の学校だったよ。キミ達の事は見えたけど、そこにいる幽霊も、あそこで合戦している存在も、空がオレンジ色なのも見えなかった」
「なるほどな」
藤間くんの話を聞いて、円地くんは考え始める。
「キミ達は、どうしてここに?」
藤間くんは、鈴ちゃんとねおちゃんに目を向けるが、二人は黙ってしまう。
ここに来た理由は、藤間くんにも言いたくない話らしい。
「私は、ちょっと用があったの。もちろんコイツとは別で。藤間くんは?」
ぼかしながら答えた鈴ちゃんに聞かれ、藤間くんは答える。
「僕は、少し様子を見に来たんだ」
「様子?」
こんな時間に? と不思議そうにした鈴ちゃんとねおちゃんに、藤間くんは声をひそめ、そして少し妖しく笑った。
「僕、実は退魔師なんだ」
その顔は、とても魅力を秘めているけど、
(え、藤間くんってば何を言ってるの?)
「退魔師?」
鈴ちゃん達もぽかんとしているけど、二人とわたしの理由はきっと違う。
(藤間くんって、魔法の道具を作れるらしちけど、退魔師だなんて聞いた事無い。ていうか、不思議な物に関われるっていっていいの?)
円地くんを見ると、何も言わない。
「そう。そこにいる二人」
そう言って、わたしと円地くんを指さすから、体がビクリと跳ねる。
(な、何を言うつもり?)
「二人は僕の仲間でね、この学校で異常が確認されたから先に入ってもらったんだけど、連絡がつかなくなっちゃって、僕も来たんだ」
(藤間くん、すごい嘘つきなれている……)
あっているような、全然あってない説明だ。
僕の仲間ってのは、まぁ本当? の事。秘密は知っている。
連絡がつかなくてってのは、わたし達がいきなり消えたことだろう。
この説明から、わたし達を探して学校に来たのは分かる。でも、なんでここだって分ったんだろう。
「そうなんだ、すごい」
信じられないような説明だけど、ねおちゃんは信じているらしい。
キラキラした目で見ている。
「本当なら、誰かがこのような事態に巻き込まれない為に活動していたんだけど、二人を巻き込んじゃったみたいだね、ごめん」
藤間くんが申し訳無さそうな顔をすると、ねおちゃんも鈴ちゃんも慌てて否定する。
「大丈夫だよ。藤間くんが悪いとこ一つもない」
「そうだよ。私たちの自業自得」
「慰めてくれるんだね、ありがとう」
藤間くんが笑うと、二人はきゅんと乙女の顔をする。
ねおちゃんは、藤間くんが気になっているって前に聞いてたけど、鈴ちゃんもそうなの? それは、聞いた事が無かった。
もしくは、今の時間で藤間くんにときめかされてしまったか。
二人が藤間くんに夢中になっているうちに、円地くんにこそっと話しかけて聞いてみる。
「円地くん、藤間くんのあの説明いいの?」
「ああ。大丈夫だ」
円地くんは、しっかりと頷いた。
(いいんだ。なら、わたしも気にしなくていいのかな……)
「さっきから気になっていたけど、二人とも濡れて居ない?」
メロメロになった様子の二人を従え、藤間くんはわたし達の元に来る。
「さっき、濡れるような出来事があって」
「僕、タオルを持ってきているから、二人とも拭いた方がいいよ、風邪をひいちゃう」
藤間くんは、背負っていたリュックからタオルを取り出すと、わたしと円地くんに一枚ずつ渡す。
用意周到だ。
タオルを使って、体を拭く。服が濡れているからあまり意味は無いかも知れないけど、さっぱりする。
円地くんは適当に体を拭くと、藤間くんにこれまでの経緯を説明をした。
「なるほど。そこに居るのが幽霊さん。幽霊さんに案内され、僕が頼んでいた七不思議制定のために、いろんな不思議を見てきていた所なんだね」
本来は神様からの依頼である七不思議制定が藤間くんからのお願いになった以外は、そのまんまの説明をしていた。
「よろしくな」
軽く手を上げて挨拶する幽霊に、藤間くんは頭を下げる。
「宜しくお願いします。うちの者がお世話になりました」
「いいって、こっちからも助かることなんだ」
「それなら良かった」
二人は笑いあって話すが、円地くんの説明を聞いて、黙ってしまった人も居る。
鈴ちゃんと、ねおちゃん。
(さっきは、ただ探検に来たとしか言って無かったから、びっくりしちゃっているのかな)
顔を見てみると、二人とも難しい顔をしている。
藤間くんもそんな二人の様子には気がついたようだが、黙っているみたいだった。
先に口を開いたのは、ねおちゃんだった。
「ねぇ、その説明だと、円地くんと留美ちゃんの二人には特別な能力があるみたいに聞こえるんだけど」
わたしの目で見た情報も、さっき外が切れなかったことも、円地くんは話した。
「ああ、あるぞ」
円地くんが頷いたことで、ねおちゃんが思いっきり、睨むみたいに見てくるから目を逸らしてしまった。
(これは、ちょっとまずいかも……)
「留美ちゃんさ、今日の見た?」
それは、今日のリボンのことを言っているんだろう。
圧のある声で問われ、わたしはゆっくりと頷く。
「うん、今日のリボンのやつは、教室で見たよ。ごめんね」
ねおちゃんは、一瞬で顔を赤くした。
恥ずかしがっているような、怒っているような。
「あ、でもなんで、ねおちゃんがあんなことしたかは見てないよ。それは、本当。分かってないから、知りたいって思ってるの」
慌てて言い訳をすると、ねおちゃんは、ぐっと息を呑む。
まだまだ、言いたいことはあるんだけど、理由とかを逆に聞かれてしまったら困るんだろう。
「鈴ちゃんも、ごめんなさい。わたしは鈴ちゃんの事も見ちゃった」
ねおちゃんと同じく見てしまった、鈴ちゃんに謝る。
鈴ちゃんは、怒っていたねおちゃんと違って、傷ついた様な顔をしている、
「留美ちゃんは見たから……だから、私がしてないって言ったの?」
見ないでも信じていたから教室に行った。だけど、最終的に言葉にしてそう言ったのは見て、確信を持てたからだ。
「うん」
「そんなのひどい! 瑠美ちゃんは、信じてくれたんだって嬉しかったのに」
泣きかけている鈴ちゃんにわたしが言えるのは一つだけだ。
「ごめんね」
鈴ちゃんに、ぷいっとそっぽを向いた。
さっきまでは、別の理由で微妙に空気が悪かったけど、今ほどではない。
(……見ないで、信じてあげられたら良かった)
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