29 / 31
29・七不思議制定
しおりを挟む地面から繋がっていた黒い光も、目に宿っていた悪魔も無くなって、清くんは、ぐったりと地面に倒れている。それを人体模型達が、心配そうに見ていた。
わたしの目で見ても、彼らはもう操られてないし、暴れる気はなさそうだった。ただ、心配する気持ちで清くんを見ている。
(操っている人と操られている人の関係だけど、彼らの間にも信頼があるんだな)
リボンを髪に結び、酷使させていた目を休ませる。
(やっぱ、リボンが無いと生活できないな)
円地くんはカッターをしまい、ぼんやりと、校舎の方を眺めている。
「俺、清って名前なのか」
清くんが一番最初に口に出したのは、それだった。呆然とした表情で、倒れたまま呟いた。
わたしは、彼のそばに膝をつく。
「記憶、思い出した?」
「思い出してはないけど、清って呼ばれて、ああ、俺は清だって思った」
清くんは、仰向けになり、夜空を眩しそうに見つめている。
その目のままわたしを見た。
「満永が見るだけで、全部解決したな。なんで、最初から俺のことを見なかったんだ?」
最終的に解決したのは、円地くんが切ったからだけど、わたしが見ればすぐ終わったのはそうだ。
「見なかったんじゃなくて、見れなかったんだよ。黒い光に包まれてて分からなかった」
「それでも、最終的には見れたんだろう? だから、最初から見ようと思えば見れてたよ」
そう言われると、そうなのかなしれない。
もしそうしていたら、円地くんに苦労させる事も、鈴ちゃんやねおちゃんを危ない目に合わせる事も無かったかも知れない。だが、
「わたしは、そもそも清くんの事ちっとも疑ってなかったもん。見るなんて考えつかないよ」
「怪しかっただろ、疑いなよ。円地と藤間の二人は疑ってたぞ」
「そうなの?」
二人が疑っているの全然気がつかなかった。
「まぁ、でも二人が疑っていたとしても、わたしは、能力の目じゃなくて、自分の目で人を見たいって思っているから、見ようなんてしなかったかな」
「これからも危ないことするなら、最初に見といた方がいいぞ」
清くんが真面目な顔して、アドバイスしてくる。
今回の危ないの理由、あなたなのに。
「そうかもね。でも、もし見てたとしても、信じようって思っていたと思うよ。話せば大丈夫、なんとかなるだろうって」
(わたし一人ならともかく、心強い円地くんがいるしね)
「人を見る目がないよ」
清くんはくしゃって笑う。
わたしもつられて笑った。
「久しぶりに言われたな、それ」
校舎を眺めていた円地くんが一歩、倒れている清くんに近づいた。
切られるかと思ったのか人体模型達は警戒するそぶりを見せるが、円地くんはそれを気にすることなく清くんを見たままわたしに話しかける。
「こいつ、結局何でこんなことしたんだ?」
そう言えば、見た内容は、まだ言ってなかった。
「清くんはね、昔、この学校で死んじゃって。学校から出られないから出る方法を探している時に、霊気の異常が起きたから悪魔と契約した! って、感じだったはず」
「結局、なんで学校から出られないし、悪魔と契約したんだよ」
「それは……見てないかも」
「はぁ」
円地くんは、呆れたようにため息をつくので、慌てて補完する。
「あ、でも! なんか、学校から伸びる蜘蛛の巣みたいな黒い光に囚われていたのは見たよ!」
「黒い光?」
「うん、それが清くんと不思議達にも繋がっていた。こっちは蜘蛛の巣では無かったけど」
「霊気の流れか? 黒ってことは、悪意に染まったりして、濁ってたのか」
(へー、あの見えてたやつ、あれが霊気の流れなんだ)
円地くんは、清くんを見る。
「後は、本人に聞くか。お前、なんで悪魔と契約したんだよ?」
「言わないとダメか?」
「自分で言わねーなら、こいつに見てもらうけど」
そう、指をさされた。
清くんは、顔を逸らすも話してくれる。
「俺はただ、学校を出たかったけだよ。満永が言っていたとおり、俺は学校から出られない。その理由は俺も分かっていないけど、幽霊のままで成仏? することもできなく、ずっと学校に囚われて、いつしか記憶だって無くなっていた。だから、学校から出たかったんだ」
「悪魔と契約してでも?」
「ああ、成功して不思議達を操ることで学校を破壊しても、失敗してただ魂を捧げることになっても、この学校から離れられるなら悪くないかと思ったんだよ」
「迷惑なやつ」
円地くんが吐き捨てた言葉に、清くんは悲しげに笑った。
(清くん、そんなに追い詰められていたんだな)
他にどうにかできる方法が無かったんだろうけども、その手段を選んでしまったことに悲しく感じる。
「不思議って、操れば学校を破壊できるものなの?」
「霊気の異常で力が増している状態ならな。普段が悪戯レベルなら、今だと犯罪レベルのことが出来るんだ。その力を組み合わせれば、学校だって破壊できるし、その算段は立っていたんだよ」
(学校、本当に破壊できるような状態だったんだ。神様が七不思議を制定しろって、わたし達を使いに出さなきゃ大変なことになっていただろうなぁ)
「お前、もう不思議を操る力ねぇんだよな?」
「ああ、お前が悪魔を切っちまったから。俺にはもうなんもできないよ」
「それは、困ったな」
そう言って、円地くんは清くんを見つめる。
「円地くん、清くん切っちゃうの?」
「どうしよっかなって、悩み中。こいつは二十一の不思議じゃなかったけど、こんな存在、いつ七不思議になってもおかしくない。切らずに残しておいたら、八不思議になるかもしんねー」
「それは、困るね」
そう相槌をうつけど、でも、本音としては、清くんの事を切ってほしくはない。
清くんは確かに良くないことをしたけど、もうこんなにも言葉を交わし事情を知ってしまったのだ。
切られて、消えていなくなってしまうのは悲しい。
「七不思議の七個と、切ってない残り五個……」
円地くんが、人体模型と骨格標本に目を向けると、二人? は、自ら円地くんの前に出て、首を差し出した。
「もちろん、俺たちは切られるよ」
「迷惑かけて、悪かったなぁ。ケガとかさせてたらごめんな」
二人に、命があるって言っていいのか分からないけど、それでも簡単に切られることを選ぶ二人に胸が痛んだ。
(でも、わたしは七不思議として残さない存在だって決めた時、反対しなかった)
だから、円地くんを止めてはいけないと思う。
残された花子さんは、一人泣きそうな顔をしながら見ている。嫌だけど、自分が止められるとは思っていないんだろう。
「最後にわがままを言うなら、彼は切らないでほしいな」
人体模型は、彼と言って清くんを見た。
「悪い子やけど、七不思議にはなれん子やから、もう迷惑はかけないと思うで」
骨格標本は、フォローになっているかは、分からないフォローをする。
「切るのが面倒くさいのは、五つ。花子さん、金次郎、空き教室、幽霊で、九になるな」
円地くんは、人体模型や骨格標本の事は気にしてないようで、誰に聞かせるまでもなく、呟く感じで言った。
「理科室まとめて、八。……花子さんもまとめるか」
「何を?」
円地くんが、さっきから何を言っているのか分からなくて聞いてみると、円地くんは何も言わずに、くるりと背中を向けた。
「円地くん、どこいくの?」
「切りに行くんだよ、七不思議」
「でも、切らないといけない存在が……ここにいるよ」
「そんなのを切るのより、いい方法が考えついたんだよ。お前らもついてこい」
(いい方法?)
わたし達は、顔を見合わせた後、円地くんについていく。
円地くんは歩きながら説明をしてくれる。
「七不思議なんて、こっちで無理やり形をつくっても、元々は人の噂、怖いって気持ちで作られるものだから、噂が再燃したら、また生まれる可能性が高い。だから、もう不思議を操ったことのある清を、七不思議を操れる存在として組み込みたい」
「なるほど?」
分かるような、分からないような。
「そうすることで、新たに不思議な生まれた時、清の支配下に置くことができるし、今ある不思議も清の支配下に置ける」
「それと、二人を切らないのはどういう関係があるの?」
「切るのが面倒くさい、五つ。七不思議を操る清。会話可能な、花子さん、金次郎。あと個人的に残してもいいと感じた空き教室で、七不思議にしようと思ってな。だが、これだと数が九だから、理科室組と花子さんをまとめて一つの不思議にするんだ」
「話として分かったけど、それって清くんは、またずっと学校に囚われることにならない?」
「なるな」
ハッキリと言った円地くんに、清くんは困った顔をする。
「が、この学校と結ばれていた霊気の流れは切ったから、今よりは少し自由に動ける。まぁ、学区内に出るくらいはできるぞ」
(今より自由って言っても、それでも学区内なのかぁ。だいぶ狭い世界だ)
「もし、その提案を俺が断ったらどうするんだ?」
清くんは、ずっと学校から出たいと思っていたんだ、気が進まないのだろう。断りたそうな雰囲気で尋ねる。
「そこの、人体模型、骨格標本、花子さんと共に切る」
「えっ、花子さんも切るの?」
人体模型とか、骨格標本はもともと切る存在だったから分かるけど……。
花子さん達は、驚いた様子はない。でも、切られるのは怖いのか怯えていた。
「当たり前だろ。本人が切らないで欲しい、悪いことはしないって言っていたが、操られていたとはいえ、あれは危険な行為だだから、切る」
「それ、俺には答えが残されてないじゃないか」
「お前が、花子さん達を大切に思ってなかったら、良かったんだよ」
円地くんの言葉に、清くんは泣きそうだった。
「わたしの事は気にしないで、わたし、幽霊に自由になってほしいよ」
花子さんは、清くんにしがみつくとそう訴える。
清くんは、花子さんの頭にポンと手を置いた。
「コイツらが七不思議として語られ始める前から、ずっと一緒に居て、俺が話せるのはコイツらだけたんだ。大切に思っちゃうに決まってんだろ」
清くんの熱い想いに、円地くんは告げる。
「守りたいなら、七不思議になれ」
清くんは、重々しく頷いた。
(……この思いは、見えてなかったな)
神に与えられた目でも、わたしの目でも。
「でも、清くんを七不思議にするって、そんな事できるの?」
「言ったろ、七不思議は噂の存在だって。そういう噂を流せばいい」
「でも、どうやって?」
当然のようにいうけど、想像がつかない。
「俺のクラスにはいるだろう。家が街の名士で、本人がイケメンで優しいって人気者のやつが」
(それって……)
「藤間くん!」
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
【シスコン】シスターコントロール ~兄のダンジョン探索を動画サイトで配信して妹はバズりたい!~【探索配信】
釈 余白(しやく)
児童書・童話
西暦202x年、日本を襲った未曾有の大災害『日本列島地殻変動』により日本での生活環境は一変してしまった。日本中にダンジョンと呼ばれる地下洞窟が口を開き、周辺からは毒ガスが噴出すると言った有様だ。
異変から約一年、毒ガスの影響なのか定かではないが、新生児の中に毒ガスに適応できる肺機能を持った者たちが現れ始めていた。さらにその中の数%には優れた身体能力や頭脳を持つ者や、それだけでなく従来とは異なった超能力と言える特殊な異能力を持つ者もいた。
さらに八十年ほどが過ぎて二十二世紀に入ったころには人々の生活は落ち着き、ダンジョンを初めとする悪辣な環境が当たり前となっていた。そんなすさんだ世の中、人々の娯楽で一番人気なのはダンジョンを探索する限られた者たちの様子をリアルタイムで鑑賞することだった。
この物語は、ダンジョン探索に情熱を燃やす綾瀬六雨(あやせ りくう)と、その様子を配信してバズりたい綾瀬紗由(あやせ さゆ)という、どこにでもいるごく普通の兄妹が身近な人たちと協力し楽しく冒険するお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる