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30・明日の約束
しおりを挟む職員室の開かずの間、南校舎の十三階段、音楽室のピアノを切って、五年一組の教室にたどり着く。
「瑠美ちゃん!」
教室に入ると、鈴ちゃんがパッと顔を明るくしたかと思えば、隣にいる幽霊達を見たんだろう。一転、警戒した表情をする。
「大丈夫だよ、もう終わったから」
「本当に?」
「うん」
まだ、心配している目で見ているが、わたし達は近づいた。
そして、気づく。藤間くんを囲うように、ガラスのように透明な何かが見える。
「これ……」
「結界だよ。我が家の得意技術」
そういえば、藤間くんの家が神社にも結界張っているんだっけ。
藤間くんが、指を動かすと結界は消えた。
「藤間、とりあえず切ったぞ。あとは、お前が噂流して、いい感じに七つを固めてくれ」
「それはいいけど、そっち的には大丈夫なの?」
「どーだろうな。必要なら、うちの神にも頼むって言ってみる」
(うちの神って、わたしに目の能力をくれた神様じゃなくて、円地くんの家の神様の事かな? たしか、恋愛とか縁結びの神様だっけ)
「その必要は、ありません」
「えっ!」
「きゃあ」
突然現れた巫女に、みんな驚く。ねおちゃんは、藤間くんに引っついた。
「藤間が噂を流せば、制定されると判断されました。あなた達の使いは終わりです。お疲れ様でした」
「お、お疲れ様でした?」
なんか、ぬるっと終わったらしい。実感はないが、一応挨拶を返す。
「藤間くん、あの人は?」
ねおちゃんが警戒した様子で藤間くんに聞く。
藤間くんも巫女のことを知っているみたいで、苦笑しながら答えた。
「まぁ、知り合いかな」
巫女は聞こえてないからか、何も気にせず話を進めていく。
「これから、帰還行います。よろしいですね?」
「学校の修復と、こいつらの記憶ってそっちがどうにかするんでいいんだよな」
わたし達の言葉が聞こえてないはずなのに、円地くんは巫女に話しかけた。
(こいつらの記憶?)
何の話か分からなくて、首を傾げる。
「それは、こちらにて津々がなく行われます。話したいことがあるなら、今のうちに」
聞かれる事を予想していたのか、巫女は、聞こえているとしか思えない返事をした。
わたしはそこを気にしてしまったけど、ねおちゃん達は、巫女の会話内容が気になったらしい。
「記憶ってなんのこと?」
藤間くんに尋ねたが、円地くんが答える。
「お前ら二人の、この夜の学校での出来事は忘れるってことだよ」
「え、そんなのやだ!」
ねおちゃんは、必死な声をあげると、藤間くんに近づいた。
せっかく、気になっている人の秘密を知れて、仲良くなれたのにって思っているんだろう。
(円地くん、記憶がなくなるって分かってたから、能力のこと話してもいいってなっていたんだ)
「でも、こればっかは、俺もこの巫女もどうにもできねぇよ。するのは、もっと上のやつだから」
「でも……」
悔しさで下唇を噛むねおちゃんに、藤間くんが語りかける。
「僕は、今日の出来事は忘れないよ。ずっと、覚えている」
「本当?」
それは、すごく寂しいけど、少しだけ嬉しいんだろう。ねおちゃんは、なんとも言えない顔をしていた。
「うん、だから、また明日。いつもより話してもいい?」
「……うん。絶対お話ししようね」
二人が、そんな話をしている中、鈴ちゃんがわたしの前に立った。不安そうな目でわたしを見ている。
「瑠美ちゃん。私、この夜に有った事全部忘れるんだよね」
「そうみたい」
「瑠美ちゃんは、覚えているの?」
「うん」
鈴ちゃんは、不満げに顔をゆがめた。
「ずるい。瑠美ちゃんが私の事を見たから味方してくれたの、私だけ忘れるんだ」
「うん、ごめんね。見ちゃって」
「明日、学校でその目で見た事話してくれる?」
「それは……話せないと思う。目は本来秘密にしないといけない事だから、ごめんね」
話したい気持ちはあるけど、話せることではない。
鈴ちゃんの機嫌を損ねてしまったようで、フンと向こうを向いてしまった。
「じゃあ、いいよ。話さなくても、謝らなくてもいい……けど、その代わり、明日、瑠美ちゃんから私に話しかけてよ」
「え、いいの、話しかけて?」
「うん」
鈴ちゃんは、小さく頷いた。
また、鈴ちゃんと話せるのは嬉しい。
友達だって思ってないって言われたのは悲しかったけど、それと同じくらい鈴ちゃんと話せなくて寂しかった。
「瑠美ちゃん……友達だって思ってないって言って、ごめんなさい。言い訳だけど、本音じゃなかったよ」
「それなら、よかった」
鈴ちゃんは、またこちらを向いてくれる。
機嫌も治ったかな?
「今日さ、何が何だか分からないことが多かったけど、瑠美ちゃん、かっこよかったよ」
そうして、鈴ちゃんは、久しぶりに笑顔を見せてくれた。
返事をしようと思った時、ぐらり視界が大きく揺れた。
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