ミルキル!

上本琥珀

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3・話し合って決まった事

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――タッ、タッ、タッ、ギィー、タッ

 普段なら気づかないくらい静かな足音と、古い板張りの床が踏まれた音が聞こえた。

「……来たか」

 小さな声だけど、よく聞こえたその声は、さっきよりトゲトゲしてない。円地くんが安心している様に感じる。

「おい」

 わたしに呼びかける声は、変わらないけど。

「満永、お前の事をどうするかは、もう話し合って決めてあるんだ。その話相手が今来た。おい、入ってこい!」

 円地くんは、この部屋の前で足を止めた人に声をかけた。
 ゆっくりとふすまが開く音。その音の主は部屋に入り座ったみたいで、喋り始めた。

「こんにちは、満永さん。僕、同じクラスの藤間統治ふじまとうじ。分るかな?」
「藤間くん⁉︎」

 勿論、分る。
 藤間くんってのは、同じクラスの男の子で、勉強も運動も出来て、優しくて、イケメンで、家がお金持ちという、完璧な王子様みたいな男の子。
 男の子の友達は多く、女の子にはモテモテだ。
 ……わたしもちょっと、仲良くなってみたいって思っていた。

「分るけど、本当に?」

 今年、初めてクラスが同じになったから、声だけで絶対に藤間くんとは確信できない。

「そう言われると、困るな。自分を証明する方法って難しい」

 困った様な声で言われ、焦ってしまう。

「疑っているわけじゃないの、円地くんもいるし。でも、なんで藤間くんがいるのって気持ちで……」
「ごめん、ビックリさせちゃったね」
「ううん。ほんと謝ることじゃないから!」

 藤間くんのしゅんとしたような声は、心臓に悪い。悪いことをしちゃったような気分になる。

「ありがとう。……満永さん、実は僕のお家って魔法道具を作る一族なんだ」
「魔法道具?」

 また漫画のような単語が出てきた。

「その名の通り、魔法みたいに不思議な道具を作るんだ。例えば、見えすぎる目を持った満永さんの目の力を押さえたり、無くすようなね」
「凄い!」

(そんな魔法道具があれば、普通に暮らせるよね。やった)

「ありがとう、藤間くん!」
「別に、お礼を言われるようなことじゃないよ」
「そーだ、そーだ。そもそも、あの神社の管理は、こいつの家がやってんだから」

 円地くんが口を挟んできた。

「管理?」
「結界術の話したろ。その道具を用意したり、ほころびがないか確認するのが藤間の家。社や敷地内の清掃などを任されているのが俺の家だ」
「なるほど」
「だから、謝らないといけないのは、僕の方なんだ。ご迷惑、おかけしました」

 見えないけど、深く頭を下げられた気がする。
 慌てて、手を振った。

「謝らないでいいよ。人を見る目が欲しいって祈ったのは、わたしなんだから」
「謝らせとけ。そもそも、コイツん家が管理を怠ってなかったら、祈ることにもならなかったんだから」

 円地くんがまた口を挟んだ。

(……確かに、そうなのか)

「うん。じゃあ、えっと、分りました。魔法道具の方、お願いします」
「畏まりました。謹んでお受けいたします」

(……もう、頭上げたかな?)

「藤間くん。その魔法道具って、もう有るの?」
「ううん、これから材料を調達して作らないといけない」
「その間、わたしはどうすれば?」

(この状態で、家に帰ったとして、お父さんやお母さんにはなんて説明しよう。学校には行けないよね)

 考えていると、円地くんが衝撃の一言を告げる。

「出来るまでは、ここに居てもらうぞ」
「えっ⁉︎」

(ここって! そういえば、ここどこだ?)

「オレが使えている方の神社の家。まぁ、オレの家だな」
「わたし、ここに居るの?」
「当たり前だろ。いきなりそんな状態になったんじゃまともに生活できないし、何か目の様子がおかしくなった時に困るだろ」
「それは……そうだね」

 それを言われたら、頷くしかできない。

「えっと、よろしくお願いします?」
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