4 / 31
4・神社での一日
しおりを挟む六時四十五分。
――リリリリリリリ
スマホのアラームが鳴って、目が覚める。
(……朝)
手だけを動かしスマホを顔の前まで持ってきて、アラームを止める。
昨日も十時には寝ているから、眠くはない。でも、布団の中が心地よいからずっといたい気持ち……。
(七時までには、顔洗わなきゃ)
結局、二度寝はしないで、のそのそと布団を出た。
旅館に有りそうな四角いローテーブルに置いていたブラシを取って軽く髪を整える。
(人と会うことはないだろうけど、一応)
ボサボサじゃなくなったので、着替えを持って部屋を出た。
庭に面した廊下を歩くと、庭に出られる大きな窓から暖かな日が差して、鳥の鳴き声がよく聞こえる。そちらには目を向けないようにしながら、離れの洗面所に向った。
ここは、円地くんちの離れ。
円地くんの家は、家族が神主をしている神社の隣にあって、この離れは、長期間神社に用が有るお客さんが来た時とかに使用するらしく、トイレやお風呂、キッチンなど、離れだけで生活が出来る様になっている。
洗面所の大きな鏡のついた洗面台で、きゅっと蛇口を捻り水を出し、顔を洗う。
(人の事を見れすぎちゃう目だけど、自分の事は見れなくて良かった)
洗面台の鏡に写るわたしに、情報は浮かばない。
こればっかりは、本当に良かった。自分もダメだったら、本当にずっと目隠し生活をしていたかも。
顔を洗ったら、円地くんのお母さんが使って良いよと用意してくれた化粧水などで、スキンケアをする。スマホで調べてみたら、良いやつだと分ったから、ちょびちょびとしか使って無いけど、いい感じ。
顔を洗い終わったら、いつもの様に髪を結び、タオルや着替えたパジャマを洗濯機に入れて、使い方が書かれた紙を確認しながら、洗濯機を回す。
最初は、自分で洗濯機を使ったこと無かったから難しかったけど、この離れに住み始めて一週間。もう、迷わずボタンを押せる。
七時になるのを前に部屋に戻る。
部屋に戻ったら、布団を畳んで、押し入れにあげる。
時間が来るまで、テレビで朝の情報番組を見ながら待っていると、七時十分、ぴったりに足音が聞こえて来た。
(ご飯の時間だ)
偶然会ってしまわない様に、時間は厳格に決められている。
「満永、起きてるか?」
「起きてるよ、おはよう」
ふすまに円地くんの人影が写った。人影なら情報が出ないから見れるのだ。
「飯持ってきた。また二十分後に取りに来る」
「いつもありがとう、円地くん」
「おう」
足音が遠くなったので、ふすまを開けてお盆ごと、ご飯を受け取る。
お盆に乗った朝ご飯は、ご飯と味噌汁、卵焼きとウィンナーとサラダ。今日も美味しそう。
「いただきます」
机に乗せたお盆を前に手を合わせて、箸を取る。
毎日、円地くんのお母さんが作ってくれているらしいご飯は美味しい。
テレビを見ながらゆっくり食べ、食べ終わったらお盆に乗せて、ふすまの外に置いておく。
離れにもキッチンが有るから、自分で食器を洗えばいいんだけど、会っちゃう可能性があるから部屋から出られない。
六時半。
「食器取りに来た。オレ学校行くから、なんかあったら連絡しろよ」
「うん、行ってらっしゃい」
声をかけて、見送る。
さて、ここまでは時間が決まっているけど、この後は自由だ。
小学校が始まる八時半までダラダラして、八時半になったら、部屋の掃除をしてから、勉強を始める。
テレビもそうだけど、画面越しなら人を見ても大丈夫だから、動画の授業を見ながら、勉強をする。
十一時半まで、休憩をしながら四科目を勉強をすると、乾燥まで終わっている洗濯機から洗濯物を取り込み、お昼が届くのを待つ。
「満永さん、ご飯持ってきたよ。台の上置いて置いとくね」
「すみません、ありがとうございます」
十二時頃、お昼を持ってきてくれるのは、円地くんのおじいさんだ。
神社の神主さんで、隣の神社から、わざわざ来て持ってきてくれるのだ。申し訳無いな。
足音が聞こえ無くなったのを見て、ふすまを開けて、ご飯を取る。
お昼は、お母さんが用意しておいてくれる時と、おじいさんが近所のお店や、コンビニ、パン屋さんで買ってきてくれる時がある。
今日は、近所の中華料理屋のテイクアウトお弁当だ。
「いただきます」
育ち盛り、いっぱい食べるって思われているのか、お弁当の量は多い。
お昼の容器は、すぐに取りに来ないので、ゆっくり食べる。食べきれない分は、部屋に置かれた小さめの冷蔵庫に入れてまた後で食べる事にする。
お昼を食べ終わり、午後はまた自由の時間だ。
暇だから、ちょっとお昼寝して、部屋で出来る様なストレッチとか運動をして、おやつ食べて、読書して、ゲームする。
そんな風にだらだらして、時間を潰す。
どんな説明をしたのかはいまいちよく分かってないけど、円地くんの家の人と藤間くんの家の人が、わたしの親に、わたしがここに居ないといけないと説明をしてくれたらしく、両親がゲーム機や服、本を送ってくれたから暇つぶしは難しくない。
『留美、そっちは大丈夫? 元気?』
スマホを見て気づいた、お母さんから来ていたメッセージに返信する。
『元気だよ、大丈夫。毎日、ご飯美味しい』
心配させたくないからメッセージにはこう返すけど、本当は、とっても寂しい。
わたしの家は、お父さんとお母さんと弟、おじいちゃんとおばあちゃん、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんと八人の大家族で、普段は多くの人に囲まれていたから、一人でご飯を食べたり、寝たりするのは、慣れないのだ。
そこまでベタベタする子じゃなかったのに、この生活をしてからは誰かを触りたいって気持ちがとても強く出るようになった。
円地くんちは犬を飼っていて、せめてその子と触れあえていたら寂しさも減っていたのかも知れないけど、犬も駄目だった。何故か、情報が見えてしまう。虫は大丈夫だったけど、虫は触りたくない。
(うー、寂しいよ)
家から送ってきてもらった犬のぬいぐるみを抱きしめて寂しさを誤魔化す。
そうして、畳の上をごろごろしていると、足音が聞こえて来た。
(円地くん? まだちょっと早い気がするけど)
「留美ちゃん。おやつ持ってきたの」
円地くんのお母さんだ。
「私、ちょっと離れているから、お菓子取って。そのあと、良かったらお話しましょ」
「ありがとうございます」
円地くんのお母さんはこうやって、声をかけて、ふすま越しに喋ってくれることが有る。
ご飯作ってくれたり、物を用意してくれたり、とっても優しい人なのは分るけど、この部屋に入ってくる事は無いから、誰とも触れあえなくて、寂しいのは変わらない。
この生活になって良かったのって、掃除や洗濯を自分で出来る様になったのと、藤間くんと話せたくらい。
あーあ、あと何日こんな生活をするんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
【シスコン】シスターコントロール ~兄のダンジョン探索を動画サイトで配信して妹はバズりたい!~【探索配信】
釈 余白(しやく)
児童書・童話
西暦202x年、日本を襲った未曾有の大災害『日本列島地殻変動』により日本での生活環境は一変してしまった。日本中にダンジョンと呼ばれる地下洞窟が口を開き、周辺からは毒ガスが噴出すると言った有様だ。
異変から約一年、毒ガスの影響なのか定かではないが、新生児の中に毒ガスに適応できる肺機能を持った者たちが現れ始めていた。さらにその中の数%には優れた身体能力や頭脳を持つ者や、それだけでなく従来とは異なった超能力と言える特殊な異能力を持つ者もいた。
さらに八十年ほどが過ぎて二十二世紀に入ったころには人々の生活は落ち着き、ダンジョンを初めとする悪辣な環境が当たり前となっていた。そんなすさんだ世の中、人々の娯楽で一番人気なのはダンジョンを探索する限られた者たちの様子をリアルタイムで鑑賞することだった。
この物語は、ダンジョン探索に情熱を燃やす綾瀬六雨(あやせ りくう)と、その様子を配信してバズりたい綾瀬紗由(あやせ さゆ)という、どこにでもいるごく普通の兄妹が身近な人たちと協力し楽しく冒険するお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる