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第221話 番外 前日トキ初夜、トキさんは脱がせたい(トキ視点)
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しかし、翡翠さんの事だが、面の皮が厚いと言うか、社会人としての仮面が強いのか。
例の我等の旦那様、主観的に、向こうで30歳、両親も早く死別済みで、社会人としてちゃんと10年ほど生活していた様子なので、外面はしっかりと取り繕える、そんな立派な大人の男の子なのだろう。
皆抱かれて、もうニッコニコなのだが、端から見て、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけなのだが、一歩引いた距離感を感じる。
どれだけ要求しても、抱き着いても、笑って対応してくれて居るのだけど、それだけで十分だと言われると思うのだが、ちょっとだけ気になる。
私が未だだからかも知れないけど、もうちょっと踏み込んで欲しいと思う。
そんな訳で。
「アオバ、なにか無い?」
ちょっとお酒でも飲ませてみようと言う事で、夕刻前の食堂、厨房のアオバに話を振る。
丁度休憩時間だったらしく、まかないのご飯を食べ終わり、だらりと座っていた。
「ん~と、見た所、翡翠さん、あんまりお酒に強く無いし、誘えば飲んでくれるけど、程々って感じだから、酔い潰れるタイプでも無いですし、本性の仮面剥がすには、ヤタお祖母様みたいに精力剤てんこ盛りにするか......」
ぶつぶつ言いながら、ふらりと、アオバが立ち上がる。
「どうだったかなあ?」
呟きつつ、食糧庫のデカい扉を開いて、中を覗き込む。
中に溜まっていた冷気の風が床下を流れる。
この食糧庫は、液体窒素が使える超低温型、業務用機でも最高級品である。
解凍にひと手間かかるが、保存性能は最高だ。
「う~んと、コレでも行きます?」
しばらく探したらしく、出て来たアオバの手には、カビたチーズが握られていた。
「コレは?」
見た感じ、普通のブルーチーズで有った。
「よっと」
アオバが凍ったままのチーズを手早く切り分ける、断面には、青カビがマーブル模様を描いていた。中までカビて熟成したタイプのチーズである。
「スティルトンチーズ、いわゆる夢見が悪い、悪夢を見るチーズってヤツです」
アオバが細かい説明を始めてくれた。
翡翠視点
「まあ、一献」
何時もの旅館の一室、所謂あのスペース、広縁のテーブルで、向かいに座ったトキさんが、日本酒の4合瓶を構える。
本日はトキさんの初夜で、今は前準備の雰囲気作りタイムである。
ラベルには会津宮泉銘醸、特別大吟醸、寫樂(しゃらく)と書いてあった。
確か福島県産のレアな酒だとか何とか、と言うか、元の世界でも銘酒としてあった気がする。
「ありがとうございます」
お猪口を構えて対応する。
「返杯いたします、でしたっけ?」
瓶を構える、あんまりこういった作法は分からない。
「はい、お受けします」
トキさんが笑みを浮かべて、お猪口を構えた。
お互い、さしつさされつ、杯を重ねる。
小さなお猪口なので一口で飲めるが、自分の酒の強度的に、一口で飲むとあっけなく潰れるので、ちびちびと飲む。
あまり詳しくは無いのだが、やたらと飲みやすい酒であった。
「しかし、ブルー系のチーズは初ですけど、結構おいしいんですね?」
皿の上のチーズは、中にカビがマーブル模様を作って居る、本格的な物だ。
自分から行かないと、あまり機会が無いヤツである。
会社の飲み会何かでも、こういった本格的な物は出て来ない。
「スティルトンとゴルゴンって言うんです、ゴルゴンはよく見ますけど、スティルトンはちょっと珍しいんですよ?」
「確かに初めてですけど」
生返事をしつつ、また一つ口に入れる、チーズとしては、とても強い塩味が日本酒のアテにやたらとよく合う。
「人は選びますけど、平気そうで何よりです」
トキさんが、柔らかな笑みを浮かべる、トキさんもお酒が回ったのか、顔色に赤味がさして、目がとろんと優しくなってきている、素面だとちょっと目つきがきりっとして居る、威圧感のある美人なのだが、お酒が入ると、とても柔らかくなる。
ぽちゃん……
「終わっちゃいましたね?」
最後の一滴を、丁寧に飲み終える。
「じゃあ、始めましょうか?」
トキさんが、お猪口を何だか綺麗な所作でテーブルに置き、獲物を見定めたと言うか、次の流れを楽しみと、目を細め、ぐっと距離を詰めて来た。
ちゅ
唇が、重なった。
トキ視点
(思ったより、効き過ぎたのかなあ?)
目の前で寝ている翡翠さんの目尻に、涙が浮かんでいる。
かなり夢見が悪い様だった。
「そんなもん、知ってるよ、しょうがないじゃないか、どうしようもないんだから……」
そんな寝言まで聞こえて来た。
確実に、今まで見た事が無い類の表情だった、内心的に、何かの重りが有るらしい。
そして、私が一服盛ったせいだと思うので、精一杯フォローしようと思い、抱き締めて、甘やかす事にした。
サブリミナル的に、もっと仲良くなれたら良いのだけど。
追申
そんな訳で、前回夢見が悪かったネタの犯人です。
翡翠視点だと普通だけど、絡め手やろうとして、画面外じゃそれなりにやらかす人。
例の我等の旦那様、主観的に、向こうで30歳、両親も早く死別済みで、社会人としてちゃんと10年ほど生活していた様子なので、外面はしっかりと取り繕える、そんな立派な大人の男の子なのだろう。
皆抱かれて、もうニッコニコなのだが、端から見て、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけなのだが、一歩引いた距離感を感じる。
どれだけ要求しても、抱き着いても、笑って対応してくれて居るのだけど、それだけで十分だと言われると思うのだが、ちょっとだけ気になる。
私が未だだからかも知れないけど、もうちょっと踏み込んで欲しいと思う。
そんな訳で。
「アオバ、なにか無い?」
ちょっとお酒でも飲ませてみようと言う事で、夕刻前の食堂、厨房のアオバに話を振る。
丁度休憩時間だったらしく、まかないのご飯を食べ終わり、だらりと座っていた。
「ん~と、見た所、翡翠さん、あんまりお酒に強く無いし、誘えば飲んでくれるけど、程々って感じだから、酔い潰れるタイプでも無いですし、本性の仮面剥がすには、ヤタお祖母様みたいに精力剤てんこ盛りにするか......」
ぶつぶつ言いながら、ふらりと、アオバが立ち上がる。
「どうだったかなあ?」
呟きつつ、食糧庫のデカい扉を開いて、中を覗き込む。
中に溜まっていた冷気の風が床下を流れる。
この食糧庫は、液体窒素が使える超低温型、業務用機でも最高級品である。
解凍にひと手間かかるが、保存性能は最高だ。
「う~んと、コレでも行きます?」
しばらく探したらしく、出て来たアオバの手には、カビたチーズが握られていた。
「コレは?」
見た感じ、普通のブルーチーズで有った。
「よっと」
アオバが凍ったままのチーズを手早く切り分ける、断面には、青カビがマーブル模様を描いていた。中までカビて熟成したタイプのチーズである。
「スティルトンチーズ、いわゆる夢見が悪い、悪夢を見るチーズってヤツです」
アオバが細かい説明を始めてくれた。
翡翠視点
「まあ、一献」
何時もの旅館の一室、所謂あのスペース、広縁のテーブルで、向かいに座ったトキさんが、日本酒の4合瓶を構える。
本日はトキさんの初夜で、今は前準備の雰囲気作りタイムである。
ラベルには会津宮泉銘醸、特別大吟醸、寫樂(しゃらく)と書いてあった。
確か福島県産のレアな酒だとか何とか、と言うか、元の世界でも銘酒としてあった気がする。
「ありがとうございます」
お猪口を構えて対応する。
「返杯いたします、でしたっけ?」
瓶を構える、あんまりこういった作法は分からない。
「はい、お受けします」
トキさんが笑みを浮かべて、お猪口を構えた。
お互い、さしつさされつ、杯を重ねる。
小さなお猪口なので一口で飲めるが、自分の酒の強度的に、一口で飲むとあっけなく潰れるので、ちびちびと飲む。
あまり詳しくは無いのだが、やたらと飲みやすい酒であった。
「しかし、ブルー系のチーズは初ですけど、結構おいしいんですね?」
皿の上のチーズは、中にカビがマーブル模様を作って居る、本格的な物だ。
自分から行かないと、あまり機会が無いヤツである。
会社の飲み会何かでも、こういった本格的な物は出て来ない。
「スティルトンとゴルゴンって言うんです、ゴルゴンはよく見ますけど、スティルトンはちょっと珍しいんですよ?」
「確かに初めてですけど」
生返事をしつつ、また一つ口に入れる、チーズとしては、とても強い塩味が日本酒のアテにやたらとよく合う。
「人は選びますけど、平気そうで何よりです」
トキさんが、柔らかな笑みを浮かべる、トキさんもお酒が回ったのか、顔色に赤味がさして、目がとろんと優しくなってきている、素面だとちょっと目つきがきりっとして居る、威圧感のある美人なのだが、お酒が入ると、とても柔らかくなる。
ぽちゃん……
「終わっちゃいましたね?」
最後の一滴を、丁寧に飲み終える。
「じゃあ、始めましょうか?」
トキさんが、お猪口を何だか綺麗な所作でテーブルに置き、獲物を見定めたと言うか、次の流れを楽しみと、目を細め、ぐっと距離を詰めて来た。
ちゅ
唇が、重なった。
トキ視点
(思ったより、効き過ぎたのかなあ?)
目の前で寝ている翡翠さんの目尻に、涙が浮かんでいる。
かなり夢見が悪い様だった。
「そんなもん、知ってるよ、しょうがないじゃないか、どうしようもないんだから……」
そんな寝言まで聞こえて来た。
確実に、今まで見た事が無い類の表情だった、内心的に、何かの重りが有るらしい。
そして、私が一服盛ったせいだと思うので、精一杯フォローしようと思い、抱き締めて、甘やかす事にした。
サブリミナル的に、もっと仲良くなれたら良いのだけど。
追申
そんな訳で、前回夢見が悪かったネタの犯人です。
翡翠視点だと普通だけど、絡め手やろうとして、画面外じゃそれなりにやらかす人。
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