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第176話 番外 画面外 彩羽の場合 休暇申請の攻防
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「おめでとう、蜜月期間の休み、休暇申請するなら早めにしておけ、こっちも色々有るからな?」
会社に婚姻届の証明を提出した際に、そんな事を言われた。
「この3日間の休みってアレか? 話したく無ければアレだが、悪い様にはせんから……」
有給休暇申請を提出した上司が歯切れ悪く探って来る。
「アレです、他の日に替えろとかは……」
思わず、内心でキっと睨みつつ答える。
「言わん言わん、馬に蹴られるっての」
にこやかに手をひらひらとさせつつ、答える上司。
(パワハラ会議にかける事も辞さない構えですよ?)
続くそんな言葉を、内心で飲み込んだ。
「社員旅行の幹事として、社長がな?」
「はい?」
何で社長が? と言うか幹事?
「そんな訳で、ちょっと行って来い」
「まだ仕事が……」
「納期はまだ余裕が有るだろう? さぼり扱いにはせんから」
思わず逃げようとしたが、逃げられなかった、そういえばこの上司、毎朝細かく進捗確認して来る、部下の管理が出来る系上司であった。
「はい、コレから向かわせますので……」
返事も待たずに内線連絡中だった、逃げられそうにない。
そんなこんなで……
「今年の社員旅行、行き先を小鳥屋にして、副幹事を貴方にするから……」
社長室に呼ばれ、日依田社長は自信満々に、開口一番そんな事を言い出した。
「……はい?」
「日程はこの、貴方の休暇申請に被せます」
「ひゃい?」
先程出した休暇申請の用紙が出て来た。
「まるっきり被せる事により、貴方は有給が減らない、さらに貴方の旅費は会社の親睦会から出します」
「はあ……」
言われた内容、それ自体は嬉しいけどと、ジェットコースターの様なゴリ押しな理論展開に、そんな生返事しか返せなかった。
「予約は埋まってますよ?」
翡翠さんの居る鳥小屋旅館は平日でも2か月待ち、土日は3か月待ちだ、私の蜜月休暇は1月半後で、嫁特権で翡翠さんの居る離れに泊まるから特別枠として予約が通ると言うだけだ。
「そこで、この間会社指定の保養地にした小鳥屋旅館が役に立つ、基本的に男性が居ると本店の方は予約が取れなくなるんだけど、分店・支店のこっちには基本的に居ないから、予約はガラガラ、こうして30人程度スルッと入る」
旅館の予約画面を開いたタブレット端末の画面がコチラに向けられる、確かに公開されている予約データはスカスカだった。
「でも、居ないんですよね?」
主目的が未だ行方不明だ。
「そう、居ないの、だから貴方、彩羽ちゃんが大事になる」
「私が?」
思わず自分を指さす。と言うか、こう言う時、ちゃんと名前呼ばれるんだ?
うちの社長はちゃんと名前覚えてくれる系……
「男性が本店で引きこもって居ても、正妻の貴方が支店の方で泊まって、ちょっと来てくれませんか? って言えば、呼べるはずなの、おこぼれ的に、多少の顔合わせとか、お酌とか、混浴とか、多少のアレコレな触れ合いが出来るはずなの!」
「えっと、それ、どこ情報です?」
早口で一気にまくしたてられ、ぜいぜいと息を付いて居る。
そんなマニアックで特権的な方法、聴いたことも見た事も無い。
「ん? 私は鳥小屋旅館自体が古巣だから、親の代から色々ってね?」
「はい?」
思わず、改めて目線を上げ、社長の顔をまじまじと見る。
確か苗字は日依田、年の割には若いと言うか、未だ30代なら、元から若いのだけど。
誰かに似てる?
日依田社長は可愛いと言うよりは背が高くて格好良い系だ、となると正妻筆頭なミサゴさん?
思わず内心で首を傾げる。
「誰に似てるって訳じゃないぞ? あの旅館の面々、親の代は琥珀お爺様のお手付きだから、私から見て大体義理母で1親等か、腹違いの姉妹な2親等だけど、みんな腹違いで、同じだとすれば種だけだからな?」
特に気にした様子も無く内情を語る社長。
「あれ? 社長の名前?」
「ヒヨだ、ヒヨドリのヒヨ」
(そりゃまた可愛い)
思わず思い浮かんだその一言を、思わず飲み込んだ。
「日依田ヒヨ、略してヒヨヒヨってな? 可愛いだろ?」
「確かに……」
曖昧に笑うしか出来なかった、響き的にめっちゃ可愛いんだもん。
「笑って良いぞ? 微妙に似合って無いのは自覚有るからな?」
苦笑を浮かべている、そんな事言われても、唇の端とかめっちゃぴくぴくしてるけど、爆笑する訳にも行かない感じの……
「そんな訳で、ヤタ様とツグミ姐さん辺りに確認は済んでるから、後は君、彩羽君の意思確認次第」
「外堀、ほぼほぼ全部埋まってるじゃないですか……」
最後の仕上げ過ぎる。
「そんな訳で、私(じゅうぎょういん)の幸せの為に、是非とも」
本音と建て前とか、一切隠れて居ない。
副音声と本音が逆だと思うのだ。
「分かりました、ソレでお願いします」
社会人としても、移動の往復な電車賃と、宿泊費、正妻特典で宿泊費が半額にしても、何万円単位の出費は結構痛かったので、渡りに船では有った。
実際問題、太平洋側から日本海側に移動するのは、結構遠いのだ。
私は年頃の女の子、お金はいくらあっても足りないのだ。
割と格好悪い気がするが、切実だった。
追伸
邪魔はしないと言うけど、おこぼれとかは積極的に狙って行きたい系のヒヨヒヨさん。
会社に婚姻届の証明を提出した際に、そんな事を言われた。
「この3日間の休みってアレか? 話したく無ければアレだが、悪い様にはせんから……」
有給休暇申請を提出した上司が歯切れ悪く探って来る。
「アレです、他の日に替えろとかは……」
思わず、内心でキっと睨みつつ答える。
「言わん言わん、馬に蹴られるっての」
にこやかに手をひらひらとさせつつ、答える上司。
(パワハラ会議にかける事も辞さない構えですよ?)
続くそんな言葉を、内心で飲み込んだ。
「社員旅行の幹事として、社長がな?」
「はい?」
何で社長が? と言うか幹事?
「そんな訳で、ちょっと行って来い」
「まだ仕事が……」
「納期はまだ余裕が有るだろう? さぼり扱いにはせんから」
思わず逃げようとしたが、逃げられなかった、そういえばこの上司、毎朝細かく進捗確認して来る、部下の管理が出来る系上司であった。
「はい、コレから向かわせますので……」
返事も待たずに内線連絡中だった、逃げられそうにない。
そんなこんなで……
「今年の社員旅行、行き先を小鳥屋にして、副幹事を貴方にするから……」
社長室に呼ばれ、日依田社長は自信満々に、開口一番そんな事を言い出した。
「……はい?」
「日程はこの、貴方の休暇申請に被せます」
「ひゃい?」
先程出した休暇申請の用紙が出て来た。
「まるっきり被せる事により、貴方は有給が減らない、さらに貴方の旅費は会社の親睦会から出します」
「はあ……」
言われた内容、それ自体は嬉しいけどと、ジェットコースターの様なゴリ押しな理論展開に、そんな生返事しか返せなかった。
「予約は埋まってますよ?」
翡翠さんの居る鳥小屋旅館は平日でも2か月待ち、土日は3か月待ちだ、私の蜜月休暇は1月半後で、嫁特権で翡翠さんの居る離れに泊まるから特別枠として予約が通ると言うだけだ。
「そこで、この間会社指定の保養地にした小鳥屋旅館が役に立つ、基本的に男性が居ると本店の方は予約が取れなくなるんだけど、分店・支店のこっちには基本的に居ないから、予約はガラガラ、こうして30人程度スルッと入る」
旅館の予約画面を開いたタブレット端末の画面がコチラに向けられる、確かに公開されている予約データはスカスカだった。
「でも、居ないんですよね?」
主目的が未だ行方不明だ。
「そう、居ないの、だから貴方、彩羽ちゃんが大事になる」
「私が?」
思わず自分を指さす。と言うか、こう言う時、ちゃんと名前呼ばれるんだ?
うちの社長はちゃんと名前覚えてくれる系……
「男性が本店で引きこもって居ても、正妻の貴方が支店の方で泊まって、ちょっと来てくれませんか? って言えば、呼べるはずなの、おこぼれ的に、多少の顔合わせとか、お酌とか、混浴とか、多少のアレコレな触れ合いが出来るはずなの!」
「えっと、それ、どこ情報です?」
早口で一気にまくしたてられ、ぜいぜいと息を付いて居る。
そんなマニアックで特権的な方法、聴いたことも見た事も無い。
「ん? 私は鳥小屋旅館自体が古巣だから、親の代から色々ってね?」
「はい?」
思わず、改めて目線を上げ、社長の顔をまじまじと見る。
確か苗字は日依田、年の割には若いと言うか、未だ30代なら、元から若いのだけど。
誰かに似てる?
日依田社長は可愛いと言うよりは背が高くて格好良い系だ、となると正妻筆頭なミサゴさん?
思わず内心で首を傾げる。
「誰に似てるって訳じゃないぞ? あの旅館の面々、親の代は琥珀お爺様のお手付きだから、私から見て大体義理母で1親等か、腹違いの姉妹な2親等だけど、みんな腹違いで、同じだとすれば種だけだからな?」
特に気にした様子も無く内情を語る社長。
「あれ? 社長の名前?」
「ヒヨだ、ヒヨドリのヒヨ」
(そりゃまた可愛い)
思わず思い浮かんだその一言を、思わず飲み込んだ。
「日依田ヒヨ、略してヒヨヒヨってな? 可愛いだろ?」
「確かに……」
曖昧に笑うしか出来なかった、響き的にめっちゃ可愛いんだもん。
「笑って良いぞ? 微妙に似合って無いのは自覚有るからな?」
苦笑を浮かべている、そんな事言われても、唇の端とかめっちゃぴくぴくしてるけど、爆笑する訳にも行かない感じの……
「そんな訳で、ヤタ様とツグミ姐さん辺りに確認は済んでるから、後は君、彩羽君の意思確認次第」
「外堀、ほぼほぼ全部埋まってるじゃないですか……」
最後の仕上げ過ぎる。
「そんな訳で、私(じゅうぎょういん)の幸せの為に、是非とも」
本音と建て前とか、一切隠れて居ない。
副音声と本音が逆だと思うのだ。
「分かりました、ソレでお願いします」
社会人としても、移動の往復な電車賃と、宿泊費、正妻特典で宿泊費が半額にしても、何万円単位の出費は結構痛かったので、渡りに船では有った。
実際問題、太平洋側から日本海側に移動するのは、結構遠いのだ。
私は年頃の女の子、お金はいくらあっても足りないのだ。
割と格好悪い気がするが、切実だった。
追伸
邪魔はしないと言うけど、おこぼれとかは積極的に狙って行きたい系のヒヨヒヨさん。
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