ゆびきりげんまん、約束のお狐様に押しかけ女房されました

峯松めだか(旧かぐつち)

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第42話 闇の中で

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 昼でもなお暗い廃線のトンネルの中を、クラスメイトの紬(つむぎ)の手を引いて歩く、廃線なので電気の灯なんて物は点灯して居ない、日の光は碌に届かないので、現在点灯中のスマホの内蔵LEDライトが無ければ、自分の足元すら見えない闇の中だ。
(やっぱり遠いな?)
 内心で呟く、遠くに出口らしい明かりは見えるが、膨張的な錯覚で、実際に行くとなるとかなり遠いのだ、さらに異界化して居る場所だと考えると、そもそも出口が存在しない可能性迄有るのだが、風は抜けているので、その最悪の想定は考えなくてよいだろう。
 そして、そんな余計な事は素人である紬に話しても不安を煽るだけなので、必然的に話しかける口数は少なくなる。
 異界化による変な屈折、足元が暗い事による落とし穴や落石、障害物等、異界の住人やら何やらの危険やマイナス点を差し置いても、トンネル以外まともな道が存在しない、山の中を彷徨うよりはマシだと結論付けたので、今更後悔することは無い。迷う事無く歩を進めることが出来れば、山中を歩くより早く人里に戻れるだろう。
 さて、視界のみで活動するのはこう言った異界化した世界では危険なので、呼吸を戦闘準備に切り替える、まあ大したことは無い、大きく酸素を吸い込むために深呼吸するのを戦闘準備のルーチンとして居るだけだ、一瞬目を閉じ、きっと目を開ける。
 丁度そのタイミングで、こつんと胡桃が当たった。
「どうしたの?」
 足を止め、顏の角度だけで振り返らずに其方を見ていると示して、話しかける。
 紬の歩くペースが少し遅れ気味だったので、振り返る形になってしまうのを強引に回避して居る。視ずの禁忌と言うのは発動させると怖いのだ。
「はるきくん・・・・ですよね?」
 紬が恐る恐ると言った様子で聞いて来た。
 繋いで居る手がふるふると震えて、白くなるほど力いっぱい握りしめている。
 目で見ていないが、この距離なら見なくても判る。
 そんな事を言っても、自分は考え過ぎて反応出来なかったらしい、要救助者の反応の確認を忘れている辺り、自分もまだまだである。
「そだよ? 何か変なモノに見えた?」
 軽い調子で返す、こう言った場所では、何か違うモノに見えると言うのはお約束だ、この段階でパニックになって凄い勢いで手を振り解いて行方不明や怪我人やらは業界的に良くある事故なので、こうして大人しくついて来てくれているのは此方としては楽でいい。
「はい・・・・・」
「目を閉じて、大きく息を吸って、深呼吸して、息が整ってから目を開けて」
 指示に従って紬が目を閉じて深呼吸を始める。
 柏手や咳払いでその土地神を呼び出して場を整えると言う手も有るが、自分の位置を示すと言うのは、自分の戦闘属性からするとリスクが大きいので余り推奨されない。
「ゆっくり目を開けて、自分の手元を見てから、ゆっくり其れを辿ってこっちを見て」
 目線がゆっくりと此方を向く。
 ほぅ・・・・・
 安堵したらしい溜息が漏れた。
「大丈夫に成った?」
「はい」
「なら良かった、じゃあ行こうか?」
 そう言って手をにぎにぎと動かして握り直して、紬の真っ白に成って居る手を解す様にした後で、改めて歩き出した。

追伸
 握力が違い過ぎると、相手が握っているかどうかの反応が鈍くなります、陽希の握力は鍛えているだけあって45キロ台、対して紬の握力は25キロ代です、大人と子供状態なので上の空ではどうしようもと言う感じに成ってます。
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