異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)

文字の大きさ
79 / 274
3章 活躍する坊主

第78話 死体分析

しおりを挟む
「所で、この傷って、さっきのドラゴンの噛み傷と爪ですよね?」
 アカデさんが大きい方のキングの傷を分析、指摘する。塞がってはいるが、足周辺に等間隔に並んでいる噛まれた痕跡のような傷が有る。確かに其れっぽい。
「場所もそれほど離れていないから、やりあってたって線も捨てきれんな。」
 ギルマスが状況を合わせて肯定する。
「体表も少し焼けただれたような跡が有りますから、ドラゴンが炎でも吐いたのでしょうか?」
「どんな構造だ?」
「後であの骨と牙と鱗の分析もさせて下さい。」
「ああ、好きなだけ分析してくれ。」
「それと、この傷、治ってますけど、牙の位置と形状、爪の本数はドラゴンとは別ですよね?形状的には草原の主辺りとやり合ってませんか?」
「前回の大量発生に居たって話のチャンピオンだとすれば有る線か・・・」
 色々繋がるらしい。

 顎の骨についている牙を2本引き抜いて火打石代わりに擦り合わせてみる、俺が使っているマグネシウムマッチやライター石と同じように火花が散った。
「普通の生き物と牙の材質違いますよね?」
 自然界の火打石としては玉髄、チャート、石英、ジャスパー、サヌカイト、黒曜石、黄鉄鉱、白鉄鉱等々、火花を飛ばせる石なら結構有るので無理の有る話では無いだろう。
 黄鉄鉱はパイライト(発火石)とも呼ばれている伝統材質だ、日本ではチャートが一般的だし、正直効率良くないのであまり使いたくはないが。
 そもそもカルシウムとエナメル質では火花は散らないので謎材質だが・・・
 自分でも手に取って見たが材質は判らなかった。
「油とか発火物を身体の中に仕込んでいるならば火も吐けない事も無いですかね?」
 ガメ〇か何かかな?あれは石炭と石油だが・・・
「溶けたらキングの方解剖して見て良いんですよね?」
 アカデさんは興奮しているようで顔が上気して目が輝いている。
「好きなようにしてくれて良い、人手と記録係欲しかったら職員呼んでくれ、後でレポート頼む。」
 ギルマスも、もう好きにしてくれとぶん投げたようだ、こちらも帰るとしよう。
「こっちも出番無さそう何で、帰りますね?」
「ゴブリンキングのスケッチは之で良いですね?」
 灯は何時の間にか一枚描き上げていたようだ。仕事が速い。
「ああ、お疲れ様。」
 ぺこりとお辞儀をしてギルドから出た。

 アカデ視点
 ほかのメンバーは居なくなった、一人で解体場の個室に残されて改めて死体の分析を始める。こうして世紀の発見を自分が検分出来るとは思わなかった、このギルドをスポンサーにしておいた良かったと、つくづく思う。尤も、このギルドの出資金が無ければ生活資金がそもそも足りないので、運が良かったとしか言えないが。

 ゴブリンキングの解凍が進むまでの数時間をドラゴンの骨格標本を調べて潰す。
 骨格としては蜥蜴の類にも似ているが、ワニやトカゲと違って手足が長く、体高が有る。
 背中の部分に羽の様な物も有る、多分皮膜の類だったのだろうか?
 折れた骨の断面を調べると、中身はスカスカだ、鳥の類と見れば違和感は無いか。
 鱗を調べる、生き物の鱗と言うより、岩や金属の様な感触だが、まさか身体の構成物質がそもそも違うとは言わないだろう、さっきの歯の構成物質からして怪しいが・・
 目に付いた違和感や感想を思いつく端からメモに取って行く。

 そうこうしている内にゴブリンキングの解凍が済んだので腹の部分を開いて見る。
「うえ??!!」
 思わず変な声が出た、無い筈の物があったのだ。
 ある筈の生殖器、産卵管は短く太く、先が開いて逆流出来る様に?まさかここに入るの?
 ハイエナのメスが持って居る男根擬きの生殖器の様な物?
 子宮にあたる部分を更に開くと中には未熟な幼生体が詰まっていた。
 つまり、このサイズがゴブリン本来の成体?
 この段階で初めてゴブリンのみの生殖が可能になると?
 まさかと思い、小さい方のキングも問題の部分を開いて確認する、こちらは産卵管と子宮部分はそんな発達の仕方をしていない。大きい側だけの特徴だ。
 と言うと、これが明確な差異で、即ちゴブリンチャンピオン?いや、メスで産む役なのだから女王(クイーン)?
 他のゴブリンと分かりやすい差異が有れば、説明も分類も分かり易くて良いと思っていたが、これは予想外で更に嫌な方向に斜め上だ。
 で、ゴブリンの幼生体は宿主母体を助けた場合は母体の胎を食い破って出て来るが、まさか同族の胎を食い破って出て来る訳では無いだろう、群れのボスが食い破られる訳が無い、となると、そちらでも認識を改める必要があるかもしれない・・・
 つまり幼生体が大人しく生まれる方法が有ると、其方の方向でまた研究する必要がある。
 新発見が多すぎる、他の研究者の論文にはこんな物は仮説でもこんな物は書いて居ない。
 ぶつぶつと呟きながらレポート用のメモを取って行く。

 しかし、自分達だけで子供が産めるようになっているクイーンが前回の大量派生から野放しで10年以上?
 そう考えると背筋がぞわっとする、前回のこの近辺の大規模討伐が魔の森の外で100匹規模、それだけで済むのか?巣分けされていないか?考えすぎだとしてもその可能性はギルマスに報告しておかなければ。


 報告を入れてからのギルマスの動きは速かった。周辺の各ギルドに緊急連絡の鳥を放ち、緊急依頼を出して各地の確認と、見事な物だ、之が無駄足の取り越し苦労であることを祈ろう・・・
しおりを挟む
感想 256

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...