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5話
しおりを挟むどれくらい歩き続けたのだろう。
貴族街の整然とした美しさは遠い昔の記憶のように霞み、今は入り組んだ路地と、生活の匂いが染み付いた建物の壁が、私の世界のすべてだった。
すれ違う人々の視線が、時折私に突き刺さる。
場違いなのだ。
こんな埃っぽい地区には似つかわしくない、上等だが汚れてしまったワンピース。侍女のものとはいえ、生地の良さは隠せない。そして、何より私の顔には、拭い去れない絶望と疲労が刻み込まれていた。
好奇、憐憫、あるいは無関心。
どの視線も、私の心を少しずつ削っていく。
お腹が空いて、胃が締め付けられるように痛む。喉はカラカラに乾き、足はもう棒のようになって感覚が鈍い。
路地の壁にずるずると寄りかかり、私はその場に座り込んでしまった。
もう、一歩も動けない。
このまま、ここで朽ち果てていくのだろうか。
悪役令嬢と断罪され、家族にも見捨てられた私に、それ以外のどんな結末があるというのだろう。
目を閉じると、リヒャルト様の冷たい声と、リリアーナ嬢の偽りの涙、そして私を嘲笑う貴族たちの顔が浮かんでくる。
耳を塞ぎたくなるような幻聴。
私はただ、小さく体を丸めることしかできなかった。
その、闇に閉ざされた私の意識に、不意に音が飛び込んできた。
最初は、疲労が見せる幻聴かと思った。
けれど、それは幻ではなかった。
陽気で、力強くて、どこか懐かしいようなメロディー。
トランペットが空高くファンファーレを告げ、アコーディオンが楽しげに踊るように音を刻む。そのすべてを、力強い太鼓のリズムが支えている。
今まで王宮や夜会で聴いてきた、計算され尽くした優雅な音楽とはまったく違う。
荒削りで、洗練されてはいないけれど、そこには「生きている」という叫びそのものが詰まっているようだった。
「……音楽?」
かすれた声が、自分の喉から漏れた。
その音は、私の心の奥深くで凍りついていた何かを、ほんの少しだけ、揺さぶった。
気づけば、私はゆっくりと立ち上がっていた。
まだ音楽は続いている。
その音だけが、今の私をこの世界に繋ぎ止める、唯一の蜘蛛の糸のように思えた。
ふらつく足で、壁を伝いながら歩き出す。
音のする方へ、ただひたすらに。
狭い路地を抜けると、少し開けた広場に出た。
そこに、それはあった。
巨大な、古びたテント。
赤と青の縞模様は、長年の雨風にさらされて色褪せ、所々には綻びや継ぎ接ぎの跡が見える。てっぺんに掲げられた旗も、くたくたになって垂れ下がっていた。
けれど、そのみすぼらしさとは裏腹に、テントは不思議な存在感を放っていた。
まるで、巨大な生き物が、この広場でひとときの休息をとっているかのように。
テントの入り口には、「虹色旅団」と掠れた文字で書かれた看板が掲げられている。
その周りには、わずかながら人だかりができていた。
綿菓子をねだる子供の声。
客を呼び込む、だみ声の男。
甘く焦げたような匂い。
すべてがごちゃ混ぜになって、一種の熱気を生み出している。
私が今まで生きてきた、静かで清廉な世界とは正反対の、猥雑で、しかし生命力に満ち溢れた光景。
「さあさあ、見てらっしゃい聴いてらっしゃい! 虹色旅団が贈る、夢と涙と笑いの大スペクタクル! 今日の悲しいことなんて、全部忘れちまうこと請け合いだよ!」
呼び込みの男の言葉が、私の胸に突き刺さった。
悲しいことを、忘れられる?
そんなことが、本当に?
私は、テントの入り口をただ、ぼうっと見つめていた。
中から漏れ聞こえてくる音楽は、ますます熱を帯びていく。
手の中には、家から持ってきた数枚の金貨。
これが入場料になるだろうか。
いや、そもそも、私のような人間が、あの中に入っていいのだろうか。
絶望に汚れた私が、夢や笑いを売る場所へ足を踏み入れる資格なんて、あるはずがない。
踵を返し、またあの暗い路地へ戻ろうとした。
その時だった。
テントの中から、ひときわ大きな歓声と拍手が、地響きのように伝わってきた。
それは、人々が心の底から楽しんでいる音だった。
私の世界には、もう決して存在しないと思っていた、純粋な喜びの音。
足が、止まった。
この音にもっと触れていたい。
この光を、もう少しだけ見ていたい。
私の内側から、か細いけれど、確かな声が聞こえた。
それは、私自身の、最後の叫びだったのかもしれない。
私は、何かに取り憑かれたように、ゆっくりとテントの入り口へと向かった。
呼び込みの男に金貨を一枚握らせると、男は驚いた顔をしたが、何も言わずに分厚い布のカーテンを上げてくれた。
その向こう側は、薄暗く、汗と埃と、甘い香りが混じり合った、未知の匂いで満たされていた。
私は、逃げ出すことも忘れて、その中へと吸い込まれていった。
一歩、テントの中に足を踏み入れると、外とは別世界の熱気が肌を撫でた。
中央に作られた円形の舞台。それを囲むように、簡素な木の板で作られた階段状の客席が並んでいる。
満員、というわけではない。ところどころに空席が目立つ。それでも、席を埋めた観客たちの熱気は、この古びたテントの隅々まで満たしているようだった。
汗の匂い、獣の匂い、ポップコーンの甘い香り。
様々な匂いが混じり合った独特の空気に、少しだけ眩暈がした。
私は、誰にも気づかれないように、一番後ろの、一番隅の席にそっと腰を下ろした。
ここなら、私のことなど誰も気にしないだろう。
舞台の上では、派手な衣装を纏った道化師が、ぎこちない動きでジャグリングを披露していた。時折ボールを落としては、大袈裟に悔しがってみせる。その度に、客席からは温かい笑い声が上がった。
私の隣の席では、父親らしい男の膝の上で、小さな女の子が手を叩いて喜んでいる。
その光景が、ひどく眩しかった。
私は、どうしてここにいるのだろう。
場違いなのは、わかっている。
こんな風に、心の底から笑うことなんて、もう二度とできないのに。
ぼんやりと舞台を眺めていると、軽快な音楽と共に、次の演目が始まった。
しなやかな体をした女性が、天井から吊るされた一本のロープを使い、まるで重力がないかのように宙を舞う。
燃え盛る輪を、ライオンが飛び越える。
ハラハラするような緊張感と、成功した時の安堵感。
観客たちの歓声が、波のように寄せては返す。
私の心は、まだ分厚い氷に覆われたままだった。
すごいとは思う。けれど、それはどこか遠い世界の出来事で、私の心までは届かない。
演目がいくつか続いた後、ふいに舞台が暗転した。
そして、スポットライトが舞台の袖を照らし出す。
そこから、一人の女性が、静かに歩み出てきた。
歳は、私より少し上だろうか。
きらびやかな装飾はない、シンプルな白いドレスを身に纏っている。
彼女がマイクの前に立つと、今まで賑やかだった楽団の演奏が、ぴたりと止んだ。
アコースティックギターの、優しく、そして少し物悲しいアルペジオだけが、静かに響き渡る。
テントの中が、期待に満ちた静寂に包まれた。
誰かが、ごくりと喉を鳴らす音まで聞こえる。
そして、彼女は歌い始めた。
その声は、特別なものではなかったのかもしれない。
王宮で聴いた、完璧な技巧を誇るオペラ歌手たちの声に比べれば、どこか素朴で、洗練されてはいない。
けれど、その声には、魂が宿っていた。
ひとつひとつの言葉が、音符が、まるで命を持っているかのように、まっすぐに聴く者の心に届いてくる。
それは、傷ついた心を優しく包み込むような、祈りの歌だった。
『涙で明日が見えなくても 光は必ずそこにあると 信じていて 小さな蕾よ』
その歌詞が、私の心の壁を、いともたやすく通り抜けてきた。
凍りついていた何かが、ピシリ、と音を立ててひび割れる。
『嵐に打たれ 震える夜は この歌を思い出して あなたは一人じゃない』
違う。私は一人だ。
誰にも信じてもらえず、見捨てられた。
そう反発したいのに、彼女の歌声は、そんな私のささくれた心を、大きな愛で包み込んでいくようだった。
大丈夫。
大丈夫だよ。
歌が、そう語りかけてくる。
楽団の演奏が、静かに、だが力強く彼女の歌を支える。
チェロの低い音色は大地のように温かく、ヴァイオリンの高音は夜空の星のようにきらめく。
それは、完璧な調和だった。
お互いを信頼し、支え合うことで生まれる、奇跡のようなハーモニー。
それは、私が失ったすべてのものだった。
気づけば、私の頬を、一筋の涙が伝っていた。
それは、夜会で流した悔し涙でも、両親に罵られて流した悲しみの涙でもなかった。
温かくて、しょっぱい、浄化の涙。
堰を切ったように、涙が溢れて止まらない。
私は、嗚咽が漏れないように、必死で両手で口を覆った。
周りの観客は、皆、舞台の上の歌姫――セラフィーナという名の彼女に夢中で、隅で泣いている私に気づく者はいなかった。
それが、ありがたかった。
歌が終わる頃には、私の心の中に分厚く張り詰めていた氷は、すっかり溶けてなくなっていた。
氷が溶けた後には、ぽっかりと大きな穴が空いている。
そこはまだ、空っぽで、どうしようもなく寂しいけれど、でも、凍てつくような痛みは消えていた。
セラフィーナが深くお辞儀をすると、割れんばかりの拍手がテントを揺らした。
私も、夢中で手を叩いていた。
手のひらが、じんじんと痛い。
でも、その痛みが、私がまだここに『生きている』ということを、教えてくれているようだった。
夢のような時間は、あっという間に過ぎ去った。
フィナーレでは、出演者全員が舞台に並び、陽気な音楽に合わせて客席に手を振る。
観客たちは、満足そうな笑顔で拍手を送り、一人、また一人と席を立っていく。
あれほど熱気に満ちていたテントの中は、急速に温度を失い、祭りの後のような、一抹の寂しさが漂い始めた。
人々が去っていく。
笑い声が遠ざかっていく。
私も、ここを去らなければならない。
わかっているのに、足が動かなかった。
まるで、根が生えてしまったかのように、簡素な木の椅子から腰を上げることができない。
ここを一歩出れば、またあの色あせた現実が待っている。
行くあてもなく、希望もない、暗い道が。
このテントの中だけが、唯一、私が息をすることを許された場所のような気がした。
この温かい余韻の中に、もう少しだけ、浸っていたかった。
観客が誰もいなくなった客席で、私はただ一人、ぼんやりと舞台を見つめ続けていた。
舞台の上では、団員たちが後片付けを始めている。
衣装のまま、額の汗を拭いながら、手際よく大道具を運び出していく。
その動きには無駄がなく、長年培われてきた連携が見て取れた。
彼らの顔には、公演を終えた充実感と、心地よい疲労が浮かんでいる。
その中で、ひときわ目立つ青年がいた。
歳は二十代半ばだろうか。
他の団員たちに、低い、よく通る声で的確な指示を飛ばしている。
黒い髪は無造作に伸ばされ、着ているシャツは汗で肌に張り付いていた。
決して貴族的な洗練はない。むしろ、無骨で、荒削りな印象だ。
けれど、鍛え上げられたしなやかな体つきと、整っているというよりは、力強い意志を感じさせる顔立ちが、不思議と人の目を惹きつけた。
彼が、このサーカス団の中心人物なのだろう。
私は、彼の姿から目が離せなかった。
すると、不意に彼がこちらを向いた。
そして、私の存在に気づいたようだった。
彼の眉が、わずかに寄せられる。
まずい、見つかってしまった。
早くここから立ち去らなければ。
そう思うのに、やはり体は動かない。
彼は、他の団員に何か一言二言告げると、舞台からひらりと飛び降り、まっすぐにこちらへ向かって歩いてきた。
一歩、また一歩と近づいてくる足音が、私の心臓を大きく打つ。
怒られるのだろうか。
不審者だと思われたのだろうか。
恐怖で、身がすくむ。
彼は私の目の前で足を止め、少し屈むようにして、私の顔を覗き込んできた。
汗と、鉄と、土の匂いがした。
それは、私が今まで嗅いだことのない、男の人の匂いだった。
「おい」
かけられた声は、思ったよりも低く、少しだけ不機嫌そうに聞こえた。
「もうとっくに終わりだぞ。いつまでいるんだ」
私は、彼の言葉にうまく反応することができなかった。
終わり。
その言葉が、私の胸に重く響く。
そう、終わりなのだ。
この夢のような時間も、私の人生も。
「……聞いてんのか?」
怪訝そうに、彼がもう一度尋ねる。
私は、ようやく顔を上げ、彼の目を見た。
射抜くように鋭い、黒い瞳。
でも、その奥に、冷酷さとは違う何かがあるような気がした。
彼は私の顔をじっと見て、それから私の服装に視線を落とし、また顔に戻した。
その観察するような視線に、私は自分が今、どんなにみすぼらしい格好をしているかを思い知らされる。
「……すみません」
かろうじて、それだけを絞り出した。
「あんた、客じゃないな。いや、客だったのかもしれねえが……様子がおかしい。何かあったのか?」
ぶっきらぼうな口調。けれど、それは詰問というよりは、純粋な疑問のように聞こえた。
彼が、私の身の上を心配してくれている、などという自惚れた考えは浮かばない。
きっと、厄介事に巻き込まれたくないだけだろう。
「……いいえ、何も。ただ……少し、ぼーっとしていただけです。もう、行きます」
そう言って、私は重い腰をようやく上げた。
ふらり、と体が揺れる。
空腹と疲労で、立っているのもやっとだった。
「おい、大丈夫か」
彼が、とっさに私の腕を掴んで支えてくれる。
シャツ越しに伝わってくる、熱い体温。
その力強さに、私はなぜか、泣きそうになってしまった。
「……大丈夫、です。離してください」
私は、振り払うようにして彼の手を離した。
これ以上、人の温情に触れたら、きっと私はダメになってしまう。
なけなしのプライドが、そうさせた。
彼の手から離れた途端、ひどい孤独感が押し寄せてくる。
私は彼に背を向け、テントの出口へと向かって、おぼつかない足取りで歩き出した。
「待てよ」
背後から、声がかかる。
でも、私は振り返らなかった。
振り返ってはいけない。
この温かい場所から、一刻も早く立ち去らなければ。
私は、現実に戻るのだから。
テントの出口に吊るされた、分厚い布のカーテン。
その向こう側には、冷たい夜の空気が待っている。
私の現実が。
手を伸ばせば、この夢の時間は終わる。
わかっている。わかっているのに、そのカーテンをめくることができない。
足が、地面に縫い付けられたように動かない。
ここを出たら、私はどこへ行けばいい?
この冷え切った体を温めてくれる場所も、空腹を満たしてくれる食事も、安心して眠れる寝床もない。
そして何より、私の心を震わせてくれた、あの音楽がない。
このカーテンの向こうには、ただ、広大な闇が広がっているだけだ。
死という名の、静かで、冷たい闇が。
「おい、待てって言ってるだろうが」
追いついてきた彼が、私の肩を掴んで、強引にこちらを振り向かせた。
その勢いに、私はよろめく。
「な……!」
彼の黒い瞳が、至近距離で私を見据えていた。
その瞳には、苛立ちと、そしてそれだけではない、何か別の感情が混じっているように見えた。
「あんた、一体何なんだ。金持ちの家のお嬢様が、家出でもしたのか? 見りゃわかる。その服も、その手も、苦労なんてしたことない人間のものだ。だが、その目はどうだ。まるで世界の終わりでも見たみてえな、死人みてえな目をしてやがる」
彼の言葉は、ナイフのように鋭く、私の心の奥まで突き刺さった。
死人の目。
その通りかもしれない。
私はもう、半分死んでいるようなものなのだから。
「……あなたには、関係ありません」
私は、か細い声で、そう答えるのが精一杯だった。
「関係なくはねえだろ。うちのテントで倒れられでもしたら、迷惑なんだよ。さっさと帰るなら帰れ。帰る家がねえってんなら……」
彼は、そこで一度言葉を切った。
その先を、言い淀んでいるようだった。
帰る家がない。
その言葉が、私の最後の砦を、粉々に打ち砕いた。
そう。私には、もう帰る場所なんてどこにもないのだ。
父にも母にも見捨てられ、婚約者には悪役令嬢と罵られ、友人にも背を向けられた。
この広い世界のどこにも、私の居場所はない。
涙が、また溢れてきた。
こらえようとしても、次から次へと頬を伝って落ちていく。
「な、おい、なんで泣くんだよ……」
彼が、狼狽えたような声を出す。
その声を聞いたら、余計に涙が止まらなくなった。
私は、その場に崩れ落ちるように膝をついた。
そして、床に額をこすりつけるようにして、頭を下げた。
貴族令嬢として受けてきた教育も、プライドも、何もかもかなぐり捨てて。
「お願いします……!」
嗚咽に混じって、声が漏れる。
「ここで、働かせてください……!」
「……はあ?」
彼の、間の抜けた声が頭上から降ってきた。
周りで後片付けをしていた他の団員たちも、何事かとこちらを見て、動きを止めている。
その視線が痛い。
恥ずかしい。
でも、もう、そんなことを言っていられる状況ではなかった。
「私は……私は、マリアムと申します。先日……すべてを失いました」
途切れ途切れに、言葉を紡ぐ。
「婚約者に、大勢の前で婚約を破棄され……悪役令嬢だと、断罪されました。家族にも、家を追い出されました。もう、行くところも、帰るところも、何もありません」
自分の口から発せられた言葉が、改めて自分の絶望的な状況を突きつけてくる。
「死のうと、思いました。生きている意味なんて、もうないのだと。でも……」
私は、顔を上げた。
涙でぐしゃぐしゃの、醜い顔。
それでも、私は彼の目を、まっすぐに見た。
「でも、あなたたちの音楽が……セラフィーナさんの歌声が……私に、まだ息をしてもいいと、教えてくれたんです。凍りついて、死んでしまっていた私の心を、溶かしてくれたんです……!」
必死だった。
この想いを、伝えなければ。
「掃除でも、洗濯でも、何でもします! お給金も、いりません! ただ、この隅っこで、皆さんの音楽を聴きながら、眠らせてください……! お願い、します……!」
私は、もう一度、深く、深く頭を下げた。
床の冷たさが、額にじんと染みる。
静寂が、テントを支配した。
彼の返事を待つ時間が、永遠のように長く感じられる。
断られるだろう。
こんな、素性の知れない、面倒な女を、雇うはずがない。
わかっている。
でも、これが、私の最後の願いだった。
やがて、私の頭上から、深いため息が聞こえた。
そして、諦めたような、それでいて少しだけ面白がっているような声が、響いた。
「……わかったよ。わかったから、とりあえずそのみっともねえ面を上げろ」
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