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その後の捜査で、私たちはリリアンヌと呼ばれる侍女長を抑えることに成功した。彼女からの証言によって、ソフィアを操っていた黒幕がある侯爵家であること、そしてその侯爵家が王位継承に混乱をもたらす目的で資金を動かしていた事実が明るみに出る。国王陛下や王太子レオナード殿下は即座に動き、関係者を粛清。こうして、長らく水面下で進行していた陰謀は頓挫した。
「セレナ、これで一連の騒動もようやく収束しそうだ。お前のおかげで公爵家への悪影響も最小限で済んだ。ありがとう」
兄フィリップが微笑みながら言う。私たちは公爵邸のサロンで、これまでの戦いを振り返っていた。サイラスやエリスも同席しており、それぞれが安堵の表情を浮かべている。
「いいえ、兄さまやサイラス、アレクシス殿下たちの協力があったからよ。私一人ではどうにもならなかったと思う」
私がそう言うと、サイラスは恥ずかしそうに顔を背け、エリスは嬉しそうに微笑む。苦しかった婚約破棄騒動からここに至るまで、本当にいろいろあった。悪役令嬢と呼ばれながらも、私は自分の正しさを証明し、家族と仲間を守ることができたのだ。
「セレナ、これからのことは考えているのか。王太子妃の座にはもう戻らないだろうし、自由に生きるといっても選択肢は多い」
兄の問いかけに、私は窓の外を見る。王都の穏やかな景色が広がり、もうどこにも不穏な影は見えない。それは、私がようやく手に入れた平穏でもある。
「そうですね。まずは公爵家の仕事を手伝いながら、私自身が本当にやりたいことを探してみようと思います。貴族としての責任は果たすつもりだけど、結婚や恋愛はゆっくり考えたいわ」
兄は「なるほど」と頷き、少しだけ笑う。
「お前がそう言うのなら応援する。自由を求めた結果がこれなら、父上も文句は言えないだろう」
「……ありがとう、兄さま」
そのとき、サイラスが遠慮がちに声を上げる。
「セレナ様、もし領地などへ行かれる際は、私もお供させてください。あなたのこれからの人生を、可能な限り近くでお守りしたいので」
私の胸が小さく震える。その言葉には、騎士としての忠誠だけではなく、さらなる想いが含まれているように感じた。私が微笑むと、サイラスは少し照れくさそうに顔をそらす。それを見た兄フィリップも察したのか、からかうように視線を向けてきたが、私は軽く首を振って笑ってみせる。
「あなたの守りは心強いわ。ぜひ、これからもお願いしますね」
サイラスは深く頭を下げた。その姿を見ているだけで、私の心に暖かい光が差し込む。氷の殻に閉じこもっていた私も、いつかは溶けてしまうのかもしれない――そんな予感さえ、今は心地よく受け止められた。
「では、私は少し外の空気を吸ってきます。兄さま、サイラス、エリス、後ほど」
そう言い残してサロンを出ると、公爵邸の廊下を歩き抜け、ひと気のない庭園へと足を運ぶ。今は静かで、穏やかな風が花々を揺らしている。私は小さく息を吸い、胸いっぱいに新しい空気を取り込む。
「――私はもう“悪役令嬢”ではないのかもしれない」
誰にともなく呟いて、そっと微笑んでみる。婚約破棄と陰謀を経て、私は多くのものを失った。しかし、その代わりにかけがえのない自由と、支えてくれる人々の存在を手に入れたのだ。
遠くで鳥のさえずりが聞こえる。青空を見上げながら、私はゆっくりと歩き出した。冷たく張り詰めた仮面はもう必要ない。これからは、自分の心のままに生きていこう。いつか本当の笑顔を咲かせながら――そう、氷の令嬢は微笑むのだ。
「セレナ、これで一連の騒動もようやく収束しそうだ。お前のおかげで公爵家への悪影響も最小限で済んだ。ありがとう」
兄フィリップが微笑みながら言う。私たちは公爵邸のサロンで、これまでの戦いを振り返っていた。サイラスやエリスも同席しており、それぞれが安堵の表情を浮かべている。
「いいえ、兄さまやサイラス、アレクシス殿下たちの協力があったからよ。私一人ではどうにもならなかったと思う」
私がそう言うと、サイラスは恥ずかしそうに顔を背け、エリスは嬉しそうに微笑む。苦しかった婚約破棄騒動からここに至るまで、本当にいろいろあった。悪役令嬢と呼ばれながらも、私は自分の正しさを証明し、家族と仲間を守ることができたのだ。
「セレナ、これからのことは考えているのか。王太子妃の座にはもう戻らないだろうし、自由に生きるといっても選択肢は多い」
兄の問いかけに、私は窓の外を見る。王都の穏やかな景色が広がり、もうどこにも不穏な影は見えない。それは、私がようやく手に入れた平穏でもある。
「そうですね。まずは公爵家の仕事を手伝いながら、私自身が本当にやりたいことを探してみようと思います。貴族としての責任は果たすつもりだけど、結婚や恋愛はゆっくり考えたいわ」
兄は「なるほど」と頷き、少しだけ笑う。
「お前がそう言うのなら応援する。自由を求めた結果がこれなら、父上も文句は言えないだろう」
「……ありがとう、兄さま」
そのとき、サイラスが遠慮がちに声を上げる。
「セレナ様、もし領地などへ行かれる際は、私もお供させてください。あなたのこれからの人生を、可能な限り近くでお守りしたいので」
私の胸が小さく震える。その言葉には、騎士としての忠誠だけではなく、さらなる想いが含まれているように感じた。私が微笑むと、サイラスは少し照れくさそうに顔をそらす。それを見た兄フィリップも察したのか、からかうように視線を向けてきたが、私は軽く首を振って笑ってみせる。
「あなたの守りは心強いわ。ぜひ、これからもお願いしますね」
サイラスは深く頭を下げた。その姿を見ているだけで、私の心に暖かい光が差し込む。氷の殻に閉じこもっていた私も、いつかは溶けてしまうのかもしれない――そんな予感さえ、今は心地よく受け止められた。
「では、私は少し外の空気を吸ってきます。兄さま、サイラス、エリス、後ほど」
そう言い残してサロンを出ると、公爵邸の廊下を歩き抜け、ひと気のない庭園へと足を運ぶ。今は静かで、穏やかな風が花々を揺らしている。私は小さく息を吸い、胸いっぱいに新しい空気を取り込む。
「――私はもう“悪役令嬢”ではないのかもしれない」
誰にともなく呟いて、そっと微笑んでみる。婚約破棄と陰謀を経て、私は多くのものを失った。しかし、その代わりにかけがえのない自由と、支えてくれる人々の存在を手に入れたのだ。
遠くで鳥のさえずりが聞こえる。青空を見上げながら、私はゆっくりと歩き出した。冷たく張り詰めた仮面はもう必要ない。これからは、自分の心のままに生きていこう。いつか本当の笑顔を咲かせながら――そう、氷の令嬢は微笑むのだ。
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