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しおりを挟む「嘘だ……!そんなもの、貴様らが捏造したに決まっている!」
アイゼン様が、狂乱したように叫んだ。
もはや、彼の顔に先程までの余裕はない。
あるのは、絶望的な焦りだけだった。
「アイゼン様。捏造かどうかは、この書類と、侯爵家にある原本を照らし合わせれば、すぐに分かることですわ」
私は、冷静に事実を告げる。
私たちが用意した証拠は、完璧だった。
言い逃れなど、できはしない。
「それに、証人は書類だけではございませんのよ」
私は、会場の一角に視線を送る。
そこには、青ざめた顔で立ち尽くす、数名の商人たちの姿があった。
「あそこにいらっしゃる商人の方々。彼らは皆、ヴォルグ侯爵家から、市場価格よりも安く、不正に鉄鉱石を買い付けていた方々です。もちろん、侯爵家への忠誠心から、口を割ることはないでしょう。……今のところは」
私の言葉に、商人たちの肩がびくりと震えた。
彼らは、ヴォルグ侯爵家という大きな力に逆らえず、不正に加担してしまった者たち。
だが、その侯爵家が今、崩れようとしている。
自分たちの身を守るために、彼らがどちらにつくかは、火を見るより明らかだった。
「だまらっしゃい!この、悪女め!」
アイゼン様は、とうとう私に罵詈雑言を浴びせるしかなくなった。
「ローズ様は、私とアイゼン様の仲に嫉妬して、こんな馬鹿げた芝居を打っているのですわ!皆様、騙されてはいけません!」
リリアナ様が、涙ながらに叫ぶ。
その姿は、悲劇のヒロインそのもの。
だが、もう誰も、彼女の言葉に耳を貸そうとはしなかった。
貴族たちの視線は、もはや好奇と侮蔑の色を帯びて、ヴォルグ家の人々へと注がれている。
つい先程まで、彼らを称賛し、媚びへつらっていた者たちが、今や手のひらを返したように、冷たい視線を送っていた。
これが、権力というものの本質。
砂上の楼閣は、一度崩れ始めれば、あっという間に崩壊する。
「静粛に!」
その時、玉座から、国王陛下の厳かな声が響き渡った。
一瞬にして、大広間は静寂に包まれる。
「ヴォルグ侯爵」
陛下は、ゆっくりと立ち上がった。
「この件、真実であるか。申し開きがあるのなら、聞いてやろう」
ヴォルグ侯爵は、震える足で一歩前に出た。
「そ、それは……!ティール辺境伯家による、全くの濡れ衣でございます、陛下!我がヴォルグ家は、代々、王家に忠誠を誓ってまいりました!」
「では、その忠誠の証を、今ここで示してもらおうか」
陛下の言葉は、氷のように冷たかった。
ヴォルグ侯爵の額から、脂汗が滝のように流れる。
彼の破滅は、もう誰の目にも明らかだった。
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