12 / 30
12
しおりを挟む「ご功績、だと……?ふざけるのも大概にしろ!我がヴォルグ家が、何をしたというのだ!」
アイゼン様が、怒りに顔を歪ませて叫ぶ。
その必死な様子が、かえって彼の動揺を物語っていた。
「では、まず一つ目からお話しいたしましょうか」
私は、集まった貴族たちを見渡すように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「皆様もご存知の通り、我がティール家は、国の北の国境を守る役目を担っております。そして、ヴォルグ侯爵家は、そのさらに北に位置する、王家直轄の鉱山の管理を任されておりますわね?」
それは、この場にいる者なら誰もが知っている事実。
貴族たちは、私が何を言おうとしているのか分からず、戸惑いの表情を浮かべている。
「その鉱山から採掘される鉄鉱石は、我が国の貴重な資源。その一部は、我が辺境伯軍の武具を作るためにも供給されております。……表向きは」
「何が言いたい!」
「単刀直入に申し上げますわ。ヴォルグ侯爵家は、長年にわたり、その鉱山から得られる利益を偽り、王家への上納金をごまかしておりました」
しん、と大広間が静まり返る。
私の放った言葉が、いかに重大な意味を持つのか。誰もが理解したからだ。
「な……!」
アイゼン様が絶句する。
その隣で、ヴォルグ侯爵夫妻が顔面蒼白になっているのが、遠目にも分かった。
「馬鹿なことを言うな!そのような偽りを、誰が信じるものか!」
アイゼン様が、震える声で反論する。
「ええ、もちろん、私の言葉だけでは皆様もお信じにならないでしょう。ですが、ご安心くださいませ」
私は、にっこりと微笑んだ。
「証拠も無しに、私がこのような公式の場で、大貴族であるヴォルグ家を告発するとお思い?」
その瞬間、大広間の扉がゆっくりと開いた。
そして、そこに立っていたのは、私の兄、カイ・ティールの姿だった。
彼の後ろには、国王陛下の近衛騎士たちが数名控えている。
「お兄様」
「待たせたな、ローズ」
兄は私に頷きかけると、国王陛下の前まで進み出て、恭しく片膝をついた。
「陛下。我が妹、ローズ・ティールの言葉は真実です。ここに、ヴォルグ侯爵家が鉱山の産出量を偽り、不正な利益を得ていたことの証拠となる書類の写しを持参いたしました」
兄が差し出した羊皮紙の束を、近衛騎士が受け取り、陛下へと献上する。
会場のざわめきが、波のように大きくなっていく。
これが、私たちの放つ、第一の矢だった。
344
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる