婚約破棄されるまで黙っていればいいのね?

東山りえる

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「ご功績、だと……?ふざけるのも大概にしろ!我がヴォルグ家が、何をしたというのだ!」

アイゼン様が、怒りに顔を歪ませて叫ぶ。
その必死な様子が、かえって彼の動揺を物語っていた。

「では、まず一つ目からお話しいたしましょうか」

私は、集まった貴族たちを見渡すように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「皆様もご存知の通り、我がティール家は、国の北の国境を守る役目を担っております。そして、ヴォルグ侯爵家は、そのさらに北に位置する、王家直轄の鉱山の管理を任されておりますわね?」

それは、この場にいる者なら誰もが知っている事実。
貴族たちは、私が何を言おうとしているのか分からず、戸惑いの表情を浮かべている。

「その鉱山から採掘される鉄鉱石は、我が国の貴重な資源。その一部は、我が辺境伯軍の武具を作るためにも供給されております。……表向きは」

「何が言いたい!」

「単刀直入に申し上げますわ。ヴォルグ侯爵家は、長年にわたり、その鉱山から得られる利益を偽り、王家への上納金をごまかしておりました」

しん、と大広間が静まり返る。
私の放った言葉が、いかに重大な意味を持つのか。誰もが理解したからだ。

「な……!」

アイゼン様が絶句する。
その隣で、ヴォルグ侯爵夫妻が顔面蒼白になっているのが、遠目にも分かった。

「馬鹿なことを言うな!そのような偽りを、誰が信じるものか!」

アイゼン様が、震える声で反論する。

「ええ、もちろん、私の言葉だけでは皆様もお信じにならないでしょう。ですが、ご安心くださいませ」

私は、にっこりと微笑んだ。

「証拠も無しに、私がこのような公式の場で、大貴族であるヴォルグ家を告発するとお思い?」

その瞬間、大広間の扉がゆっくりと開いた。
そして、そこに立っていたのは、私の兄、カイ・ティールの姿だった。
彼の後ろには、国王陛下の近衛騎士たちが数名控えている。

「お兄様」

「待たせたな、ローズ」

兄は私に頷きかけると、国王陛下の前まで進み出て、恭しく片膝をついた。

「陛下。我が妹、ローズ・ティールの言葉は真実です。ここに、ヴォルグ侯爵家が鉱山の産出量を偽り、不正な利益を得ていたことの証拠となる書類の写しを持参いたしました」

兄が差し出した羊皮紙の束を、近衛騎士が受け取り、陛下へと献上する。
会場のざわめきが、波のように大きくなっていく。
これが、私たちの放つ、第一の矢だった。
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