11 / 30
11
しおりを挟む私の予想外の反応に、大広間は静まり返っている。
誰もが、次に何が起こるのかを見守っていた。
「お待ちしていた、だと……?どういう意味だ、ローズ!」
アイゼン様が、我に返ったように叫ぶ。
その顔には、困惑と屈辱の色が浮かんでいた。
自分が主導権を握っているはずの舞台で、主役の座を奪われた役者のような顔。
「言葉通りの意味ですわ」
私は優雅に微笑み、彼に向き直る。
「アイゼン・ヴォルグ様。あなた様からの婚約破棄、謹んでお受けいたします」
その言葉に、会場がざわめいた。
「まあ、なんてこと」
「あっさりと受け入れたわ……」
「ですが、よろしいのですか?ヴォルグ侯爵家の名を背負うあなたが、国王陛下の御前で、一方的に婚約を破棄するなど。これは、ティール辺境伯家に対する、明確な侮辱と受け取られても仕方ありませんわね」
私はわざと、玉座に座る国王陛下に視線を送った。
陛下の表情は、能面のように変わらない。だが、その目は鋭くこちらを見据えている。
「なっ……!それは貴様の普段の行いが原因だろうが!私に全ての責任を押し付ける気か!」
「いいえ、滅相もございません。責任の所在は、この後、皆様にご判断いただければよろしいかと」
私はゆっくりと言葉を続ける。
「婚約が正式に破棄されたとなりますと、私もようやく、自由の身。ヴォルグ侯爵家とのしがらみも、未来の侯爵夫人という立場も、全てなくなりました」
私はそこで、一度言葉を切った。
そして、悪戯っぽく微笑んでみせる。
「これで私も、ようやくお話しできますわね。これまで、ずっと『沈黙』してきたことを」
私の言葉に、アイゼン様の顔が引きつった。
彼の隣にいるリリアナ様の顔からも、血の気が引いていくのが分かる。
「お、お話しする……?何をだ!」
「もちろん、ヴォルグ侯爵家がこれまで成してきた、輝かしい『ご功績』の数々についてですわ」
私は、わざとらしく胸に手を当てて言った。
「未来の侯爵夫人という立場では、家の恥を晒すようで、とても口にできませんでしたもの。ですが、もう私は関係のないただの辺境伯令嬢。これで心置きなく、真実をお話しすることができますわ」
さあ、反撃の狼煙は上がった。
あなたが望んだのでしょう、アイゼン様?
私を、ただの無力な令嬢だと侮ったあなた自身が、この破滅の舞台を用意してくださったのだから。
そのご厚意、ありがたく使わせていただくわ。
331
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる