10 / 16
第10話:黄金のベルト、火花を散らす
しおりを挟む
急ブレーキをかけた軽トラックが、火花を散らしながらアスファルトの上を滑る。
その真上、黄金の光を纏ったブレイブ・レオが、隕石のような勢いで拳を振り下ろそうとしていた。
「イーッ! イイィィッ!!(今だ、デッドホーン様! 懐へ潜れ!)」
俺の叫びに、デッドホーンが即座に呼応した。ボロボロになった脚部のサーボモーターを過負荷で焼き切りながら、彼は荷台から垂直に跳躍する。
「おおぉぉぉぉ――ッ!!」
かつて本部のエリートと呼ばれた男の、執念の一撃。 デッドホーンの両腕が、レオの腰にある黄金のベルトをガッチリと掴んだ。その瞬間、ベルトの冷却ファンが断末魔のような悲鳴を上げ、臨界を超えた放電が周囲を焼き始める。
「な……離せ! 離せ、アビスの怪人! ベルトが……制御が効かん!」
二人の巨体がもつれ合い、地面を転がる。レオは必死にベルトを抑えようとしているが、その挙動はもはや素人目にも「爆発寸前」だった。
(……ドラクマ局長。あんたが書いた台本通り、デッドホーン様にはここで『処分』されてもらいます。……だが、レオ。あんたまで死なれたら、俺の今後の『折衝』に差し支えるんでね)
俺は運転席から飛び降り、アルティナを庇って遮蔽物へ逃げ込む。その動作の合間、誰にも見られない角度で、ダッシュボードから掴み出した「予備の通信機」を二人の足元へ放り投げた。
通信機は、もがき合うレオの耳元に転がる。直後、通信機のスピーカーから、最大音量の「人間の声」が響いた。
『――ベルトを回せ! 左の排気弁を全開にして、海に跳べ!!』
レオのバイザーが、一瞬だけ音の主を探して動いた。 彼は半ば本能的に、その切迫した「声」に従った。ベルトの側面に指をかけ、無理やり排気弁をこじ開ける。
ドォォォォォォォォォンッ!!
臨界点を超えたブレイブ・ベルトが暴発した。 だが、レオが寸前で排気弁を開き、海側へ身体を捻ったことで、爆発の指向性が僅かに歪んだ。破壊のエネルギーの大部分は、彼を掴んでいたデッドホーン側へと叩きつけられ、そのまま周囲の海面を巨大な水柱となって跳ね上げた。
光が収まり、砂煙が晴れていく。
「……あ、ああ……」
アルティナが絶句していた。そこにあったのは、黄金の輝きを失い、ボロ布のように地に伏したレオの姿だ。
(完璧だ。レオは助かった。……いや、あえて『助けた』。絶体絶命の瞬間、正体不明の何者かに命を救われた。その事実は、正義の味方の心に一生消えない楔になる)
アーマーが半壊し、意識を失いかけているレオの傍らへ、俺は音もなく歩み寄った。地面に転がる、役目を終えてひしゃげた通信機を拾い上げる。
「(……命拾いしたな、ヒーロー様。あんな欠陥ベルトを掴ませたのは、あんたの身内か、それとも俺たちの本部か。……ま、精々その命、大事に取っておけよ)」
俺のボイスチェンジャー越しの囁きを、レオが朦朧とした意識の中で聞いたかどうか。彼のバイザーから光が消えるのを確認し、俺はアルティナの方へ向き直った。
「イーッ! イイッ!(……大変だ! ヒーローが暴走して、デッドホーン閣下を粉々にしてしまったぞーッ!)」
俺は再び戦闘員の声を上げ、周囲の先輩たちに合図を送る。遠くでは、ワゴン車から這い出したカメラマンたちが、震える手でこの「凄惨な幕引き」を撮り続けていた。
「(……閣下、行きましょう。証拠の通信機は回収しました。これでこの場に、俺が介入した痕跡は一切残りません)」
アルティナの手を引き、俺は闇へと消えた。これでヒーローへの「巨大な貸し」ができた。
(さて、次はあの上司……ドラクマ局長への『成功報告』だ。デッドホーンが消えて喜んでいるあんたの喉元に、いつナイフを突き立ててやるか……。じっくりと考えさせてもらうよ)
その真上、黄金の光を纏ったブレイブ・レオが、隕石のような勢いで拳を振り下ろそうとしていた。
「イーッ! イイィィッ!!(今だ、デッドホーン様! 懐へ潜れ!)」
俺の叫びに、デッドホーンが即座に呼応した。ボロボロになった脚部のサーボモーターを過負荷で焼き切りながら、彼は荷台から垂直に跳躍する。
「おおぉぉぉぉ――ッ!!」
かつて本部のエリートと呼ばれた男の、執念の一撃。 デッドホーンの両腕が、レオの腰にある黄金のベルトをガッチリと掴んだ。その瞬間、ベルトの冷却ファンが断末魔のような悲鳴を上げ、臨界を超えた放電が周囲を焼き始める。
「な……離せ! 離せ、アビスの怪人! ベルトが……制御が効かん!」
二人の巨体がもつれ合い、地面を転がる。レオは必死にベルトを抑えようとしているが、その挙動はもはや素人目にも「爆発寸前」だった。
(……ドラクマ局長。あんたが書いた台本通り、デッドホーン様にはここで『処分』されてもらいます。……だが、レオ。あんたまで死なれたら、俺の今後の『折衝』に差し支えるんでね)
俺は運転席から飛び降り、アルティナを庇って遮蔽物へ逃げ込む。その動作の合間、誰にも見られない角度で、ダッシュボードから掴み出した「予備の通信機」を二人の足元へ放り投げた。
通信機は、もがき合うレオの耳元に転がる。直後、通信機のスピーカーから、最大音量の「人間の声」が響いた。
『――ベルトを回せ! 左の排気弁を全開にして、海に跳べ!!』
レオのバイザーが、一瞬だけ音の主を探して動いた。 彼は半ば本能的に、その切迫した「声」に従った。ベルトの側面に指をかけ、無理やり排気弁をこじ開ける。
ドォォォォォォォォォンッ!!
臨界点を超えたブレイブ・ベルトが暴発した。 だが、レオが寸前で排気弁を開き、海側へ身体を捻ったことで、爆発の指向性が僅かに歪んだ。破壊のエネルギーの大部分は、彼を掴んでいたデッドホーン側へと叩きつけられ、そのまま周囲の海面を巨大な水柱となって跳ね上げた。
光が収まり、砂煙が晴れていく。
「……あ、ああ……」
アルティナが絶句していた。そこにあったのは、黄金の輝きを失い、ボロ布のように地に伏したレオの姿だ。
(完璧だ。レオは助かった。……いや、あえて『助けた』。絶体絶命の瞬間、正体不明の何者かに命を救われた。その事実は、正義の味方の心に一生消えない楔になる)
アーマーが半壊し、意識を失いかけているレオの傍らへ、俺は音もなく歩み寄った。地面に転がる、役目を終えてひしゃげた通信機を拾い上げる。
「(……命拾いしたな、ヒーロー様。あんな欠陥ベルトを掴ませたのは、あんたの身内か、それとも俺たちの本部か。……ま、精々その命、大事に取っておけよ)」
俺のボイスチェンジャー越しの囁きを、レオが朦朧とした意識の中で聞いたかどうか。彼のバイザーから光が消えるのを確認し、俺はアルティナの方へ向き直った。
「イーッ! イイッ!(……大変だ! ヒーローが暴走して、デッドホーン閣下を粉々にしてしまったぞーッ!)」
俺は再び戦闘員の声を上げ、周囲の先輩たちに合図を送る。遠くでは、ワゴン車から這い出したカメラマンたちが、震える手でこの「凄惨な幕引き」を撮り続けていた。
「(……閣下、行きましょう。証拠の通信機は回収しました。これでこの場に、俺が介入した痕跡は一切残りません)」
アルティナの手を引き、俺は闇へと消えた。これでヒーローへの「巨大な貸し」ができた。
(さて、次はあの上司……ドラクマ局長への『成功報告』だ。デッドホーンが消えて喜んでいるあんたの喉元に、いつナイフを突き立ててやるか……。じっくりと考えさせてもらうよ)
0
あなたにおすすめの小説
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる