虹瞳〜落ちているモノを拾って食べてはいけません〜

詩悠

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1 . 襲撃と討伐

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 林清史きよしは平岡の廃工場に来ている。この工場は5年前まで女性用の整髪スプレーを生産していたが、流星群の一つが1番近くの電力会社に落ち、その影響で電力の供給は完全にストップ、その後の混乱で販路もなくなり、建物自体に損傷はなかったが、放置されたままになっていた。

「やっぱ 寂れたなぁ……   人が出入りしねぇとすぐに駄目になっちまうな。」


 そう言い、溜息をつく隣に立つ男を林は見る。

「ですね……   平岡さんは全く出入りしてなかったんですか?」

「たまにはしてたさ。親の代からの工場だしさ、動かせねーっていったって、愛着はあるしな。」

 平岡はそこで大きく溜息をついた。林は元上司の横顔を見ていられなくなり、5年前まで働いていた工場を見上げる。

「機械の油抜いちまった後でな、どっと……何つーかな、こう……気が抜けたっつーか、魂まで持ってかれたっつーか……さぁ……」

 平岡の語尾は小さくかすれていく。

「……だから、あの時 みんなで反対したじゃないですか。機械油まで、配給に回すのはやり過ぎだって。」

 林は3年前の、まだ今よりも、もっと混乱していた時期、少しでも地域の人たちの助けになればと、工場に蓄えられた食糧も備品も全て出し尽くし、機械油まで出すと平岡が言った時の騒動を思い出した。
 機械油まで抜いて出してしまえば、工場の再稼働は絶望的で……その前から、再稼働は絶望的ではあったが、希望が砂つぶほどでも残っているのと、全く無いのとでは、そこで働いていた者たちにとっては、生きるか、死ぬかと言われるほど、大きな問題だった。それは工場長の平岡にとっても同じことだったのだ。

「あん時は勢いでな。配れる物がなんかあんなら、なんでも配らなきゃいけねーって、燃えてたのさ。」
 
「林さぁーん!」

 しんみりと工場を眺める2人に、数人が走りよる。

「ああ、来たね。お疲れさま。 ごめんね、僕だけ自転車使わせてもらっちゃって。」

「いえいえ、必要だったことですから。それで、そちらが平岡さんですか?」

「そう、こちらこの平岡工場長の平岡さん。話をしたら、ご自分も行くって言って来て下さったんだよ。」

 林は走って来た青年、少年たちに平岡を紹介した。

「おぅ、平岡の平岡だ。よろしくな!
鬼退治するんだってな! ご苦労なこった! もう、この工場には大したモンは残ってねぇが、それでも役に立つなら、なんでも使ってくれ。」

 そう言って、やっと息が整って来た青年たちに挨拶しつつ、さっさと案内をはじめる。

「「「「よろしくお願いします。」」」」

 青年たちも挨拶を返し、平岡に続いて工場に入る。最後に懐かしげに周りを見渡しながら林が続く。

「俺、森山勇太ゆうたと言います。今日は無茶を聞いて頂いてありがとうございます。」

 細マッチョの青年が挨拶する。流星群が飛来してから、とにかく、力仕事が増えた。片付けしかり、食糧確保しかり、冬場の暖とりにもほぼ人力しか使えず、ひょろっとしていた森山も名前負けしない程度には筋肉がつき、自分では密かに喜んでいた。体型に自信がつくと性格も社交的で明るくなり、根暗と言われていた高校時代しか知らない人が今の森山を見たら、きっと、別人だと思うだろう。

「おぅ、ていねいにありがとさん。しかし、若いのが集まってんのはいいね。活気があって。」

 平岡は眩しそうに目を細めて笑った。

「平岡地区はまだまだ若い人も多いでしょう?」

「まぁ、少なくはないわな。家にいねーってだけで。」

「あー……ご愁傷様です。」
 
 林は最近聞いた元上司のうわさ話を思い出して、にが笑いがもれる。

「なんだぁ、清史はケンカ売ってんのか?」

「いえいえ、売ってませんよ! 元気だなぁと思って」

「誤解だからな!」

「誤解なんですか?」

「いや、ちげえぇけど……過去の話なんだよ。」

「ああ、あるほど。」

 林はやっぱりにが笑いをしてしまう。若いころから浮名を流していた元上司はバツ2で、最近また浮気が原因で歳の離れた嫁さんに出て行かれたといううわさだった。浮気がどれくらい前の話かは知らないが、浮気していたのは本当で、奥さんにしてみれば、いつ浮気したのか、じゃなく、その行為自体がアウトだったのだろう。

「まぁさ、考えようには良かったのかもな、鬼が来る前に町から出れてさっ。そう思うことにしてるよ。」

 ちょっと淋しそうな平岡に

「そうですか。」

 と、無難かどうかは分からない答えを返す。未婚の林には難しい返しだ。

 うす暗い工場のなか、シートもかけられないまま稼働を止めた機械群のなかを平岡を先頭に一行は進む。
 もの言わぬ機械たちはシートを被せられていないため、ほこりが積んでいるが、壊れてはおらず、いつでも働き出せるよ! と訴えているようでもある。
 
 そんな機械達の視線を感じる気がするのは、林が長年この工場で働いていたからなのかも知れない。
 工場の再稼働を待っている間に定年を迎えてしまったなんとも言えない物悲しさと、再稼働の見込みが持てないまま、待ち続けるしかない、まだまだ働ける機械たちに仲間意識を持っているのかもと、馴染み深い機械たちの間を歩きながら林は感慨にふけり、機械にまで仲間意識を持ったことを自覚し、よほど、自分は独りだと思いたくないのだと苦笑が浮かぶ。
 
 仕事が突然なくなった5年前、後片付けに追われるうちに両親は他界し、仕事が再開される気配も再就職の当てもなく、新しいやりがいなど思い付くこともなく、日々、ただ生きているだけだった。
 何のために生きているのか分からない毎日。
 それでも、鬼に食べられるのは嫌だったし、積極的に死を選べるほど達観も生への諦めも出来ず、死なないために生きてきた。
 
 そんななか、久しぶりに若さとやるべきことを見つけた者たちの熱気に当てられ、林はスプレー缶を爆破させて、鬼を退治するという者たちに協力を申し出ていた。
 自分なら、平岡工場長と連絡を取り、スプレーの持ち出しの許可と工場の鍵を借りられる、と言って。
 
 スプレー缶を爆発させることがどんな事態を招くのか、林には想像出来ない訳ではなかったが、畑中の決意に満ちた眼差しが眩しく、その熱意に協力したいと思ったのだ。たとえそれが、死に場所を求めるような行為であったとしても。
 強い意志を持ち、なにかを決断出来ることが羨ましく、心がふるえるほど、輝いて見えた。

 
 懐かしい場所を歩いているうちに、出荷を待つ状態で放置された製品が置かれている場所まで来た。製品の入った箱が整然と積まれ並んでいる。

「どうする?トラックなり、軽トラなり、なんか車が使えりゃ良いんだけど、清史の乗ってた自転車1台じゃなぁ…」

「ガソリンが使えませんからね…」

「フォークリフトはうるせーしなぁ。あんまりうるさくして、鬼が起きて来たらまずいだろ?」

「フォークリフト動くんですか?」

「どうかなぁ? しばらく動かしてねぇし、でも、コレだけは油抜かなかったんだよ。」

「そうなんですね。いざとなったら、いろいろ使い道もありますしね。」

「自転車で運びますよ。後ろと前のかごに積めるだけ積んで、何往復かしたらいいでしょう?」

 森山が提案するが、平岡と林は思案顔だ。

「まぁ、自転車で運べるだけ、何回か往復するとして、ほかの奴らはどうする? せっかく、人手もあるのに、もったいないだろ。手で運ぶったって、要領が悪すぎらぁな。」

背負子しょいこで運んだらどうですか?アレならたくさん、運べますよ! 箱も重ねやすいし。背負子があればですけど。」

 森山と一緒に来た新田にったはじめが提案する。
 学生時代登山部だった新田は以前、登山中に背負子を背負い山登りをする人たちを見かけたことを思い出し、アレならたくさんの荷物が運べそうだと思う。

「ああ、背負子ね。ないけど、アレなら簡単に作れそうじゃないですか?」

「そうだな。アレなら、ここに残ってる物で、作れそうだな。」

 新田の提案に、平岡と林も賛同し、役割分担を決め、やっと行動にうつる。

 林と森山は自転車に荷物を固定する。自転車の前のカゴに一箱、後ろに数箱を積み、ロープで固定し、森山が鬼がいる小河内公民館側の集合場所まで運ぶ。
 森山が戻って来るまでの間に、林はフォークリフトで積んである箱を黙々と下におろしておき、スムーズに運べるよう準備しておく。
 
 平岡と新田は工場や事務所などに背負子を作るのに使える物がないか見てまわりながら、一緒に来ている青木るい持木もちぎ朝陽あさひに背負子の説明をするが……

「学校に二宮金次郎の銅像があっただろ? 
ん? 撤去されたんだったか?」

 平岡の説明に

「俺が小学生の頃はもうなかったですよ!」

 もうすぐ三十になる新田が答えた。

「何で撤去すんのかね。お偉いさんの考えることは分からんな。……アレを知ってれば、話は早いんだが。まきを背負うっても、お前らには分からんだろうなぁ。」

「昔の学校七不思議とかいう本で読んだことありますよ! 本を読んでる銅像が夜中に動きだすやつでしょ!」

 類が答えると、平岡も新田も笑いだした。

「そうそう、それそれ! 俺らの時にはもう校庭には二宮金次郎の像はなかったのに、その話だけ残ってたなぁ。どこに像があるのか、みんなで探したっけ、懐かしいなぁ。」

 新田は無邪気で平和だったころを思い出す。人は失くしてみないと、当たり前の日常のありがたさが分からないというが、本当だと思う。
 不満だらけだった子供時代、それでも今、考えると、充分に恵まれていて、平和だったのだと分かる。失くして気付いても、もう手は届かないし、取り戻すこともできはしない。
 それでも、少しでも平穏や希望を取り戻したくて、足掻あがいている。鬼を退治しようとする今回の作戦はその大きな一歩になるはずで、そう思う人たちがほかにも大勢いるから、今回の作戦に多くの人が参加しているのだと、新田はそう確信していた。

 四人は工場の備品置き場からパイプや予備の作業着を探し出し、作業にうつる。パイプカッターでパイプを140cmに切断し、切断面のギザギザはバリ取りで丁寧に研ぐ。パイプの80cmのところからチューブベンダーでパイプを90°に曲げ、作業着を裂きひもにし、肩幅に置いたニ本のパイプに巻いていく。パイプを曲げた部分には段ボールをはさみ、紐を多めに巻き、強度を上げる。最後に背負うための肩紐をつけて完成だ。
 昔話に出てくる薪を背負うための道具、背負子しょいこのできあがり。

 背負子を三個作り、荷物をそれぞれに固定する。それを新田、青木、持木が一個づつ背負い、ようやく、集合場所にむかい出発した。
 スプレー缶一つひとつは軽くても一度に百個近く背負うとそれなりの重さになる。
 それでも、それぞれが歩けるだけの荷物を背負い歩きだした。

 


「戦地に家族や友人を送りだす人の気持ちって、こんな気持ちなんですかね? ……うまく言えませんけど。」

 林は工場前で四人を見送りながら、隣に立つ平岡に独り言をつぶやくように話しかける。

「そうかも知んねーな。鬼は退治して欲しいが、なにより、あいつらには無事に戻って来て欲しいな。」

「そうですね。……僕は……
とても一緒には……近くまでは行けません……。」
 
 林の告白に平岡はちらりと林を横目で見てから、視線を遠ざかる4人に戻す。

「お前は良くやったさ。俺を説得して、この工場を開けさせたんだ。働きとしては充分だろ。第一、俺らがついて行ってみろ。逃げ足の遅いのがいると、そんだけでスッゲェ迷惑だろ。いざって時に逃げ遅れられても後味悪りぃしな。」

 平岡はそう言うと、林を見てにやりと笑い、煙草をふかす真似をした。

「煙草が吸いてぇなぁ。」

「止めたんじゃなかったんですか?」

 平岡は林を見ながら、ふぅぅと、煙草をふかす真似をしながら息を吹きかける。

「ヤメタさ、けどさ、今のは確実に煙草吸うとこだっただろ!」

「こっちむいてエア煙草は止めて下さいよ! パワハラです!」

「ああん? 還暦すぎたオッサンがなに言ってやがる!」

 ギャぁギャぁと2人言いあいながら、

「僕ら締まりませんね。」

 林が苦笑し、

「そんなもん、俺に期待するほうが間違ってらぁな。……くだんねぇことで心置きなく笑える日が早く来るといいな。」

「そうですね。」

 思わず目尻に溜まった涙を林はそっとぬぐう。
 2人はスプレー缶を背負った新田たちが見えなくなってもずっと、そこに立ち続けた。
 
 陽はとっくに南中をすぎ、残暑はまだまだ厳しいが、やっと少しだけ涼しくなった風がじっとりと汗をかいた二人をでていった。


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