朗読・声劇(セリフ・シチュボ等)フリー台本置き場ごちゃ混ぜ

冬野てん

文字の大きさ
2 / 30
声劇の章

フリー台本『電車』

しおりを挟む
声劇朗読フリー台本『JK百合電車』




朗読フリー台本

声劇フリー台本

女性 二人か一人用

百合

ポエム




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



『私は列車に揺られている。各駅停車の影が長い。走馬灯の車窓が私を引き留めている。いずれ引き剥がされる言葉。彼女は覚えていてくれるだろうか。

 横断歩道の点滅がやけに長い。月子と会えるのはもう最後。眠そうな月子が自動改札を超えてこっちへ向かってくる。私は思わず笑みをこぼす。左手には定期券が握られている。ちらりとそれに目をやったあと、制服のポケットに押し込む月子の顔は泣き腫らしたように見えた。

 ああ、そんな顔しないでよ。

 私まで胸が締め付けられる。そんな一瞬の窒息。心ごと圧縮されたみたいだ。

でも月子からもらった痛みならば……私は歓喜する。

ーー列車が到着するーー

私は月子の手のひらに触れる。私を重ねる。握りしめて、握りしめて、痕になってしまえ。そんなことを思う。私だけの月子。言葉は届かない。失くしてしまった言葉の代わりに、強く、強く。

ーー月子は乗り込んでしまうーー

 列車は加速していく。彼女はポケットの中でいつまでも定期券を握っている。駅のホーム。取り残された私、月子を愛していること。愛していたこと。それだけが残っている。

また別の各駅停車が到着する。離れ離れの私と月子。一度だけ繋ぐ列車はもう来ないのだ。

 私は死神と取引を持ちかける。一度だけ……お願いがあるの……』

 




「夕方のホームはひどく混んでいる。

 陽子と一緒に改札を通った駅だった。一緒にベンチに座った駅だった。もういないのはわかりきっていた。陽子の姿。でも信じられない。信じたくない。もうこの世にいないなんて。彼女のいない世界なんて。

 自分の定期券を見る。この駅、この路線で陽子といつも一緒だった。定期券に自分の名前が入っている。当たり前だけど陽子の定期券には陽子の名前が入っていて……だけど同じ路線と駅が記名されていて……。そこまで考えて私は胸が苦しくなった。苦しくて苦しくて、私は定期券をポケットに押し込む。

 こんなふうに突然、永遠の別れが訪れてしまうのが分かっていたら、もう会えないのが分かっていたら私は陽子に愛していると伝えていたのに……。

 ポケットの中に両手をつっこんで、私は手を強く握る。

 定期券を握りしめて揺れる各駅停車に身を任せて目を閉じた。神様でも死神でもなんでもいい。祈るようにお願いする……もう一度、会わせて……と」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...