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まずは、ニーナの両親への挨拶だ。
場所は魔王城の近くにある教会だ。
ニーナの父親の名前は、エルナという。
母親は、マリアンヌという名前で、二人とも貴族だそうだ。
俺はニーナと共に、二人に会いに行った。
すると、二人は快く迎え入れてくれた。
まずは、ニーナの生い立ちについて話をした。
彼女は幼い頃、
「この子は私の子じゃないわ!」
と言って実の母親から捨てられていたところを、父親であるエルナさんが拾ったらしい。
そんな話を聞いた後、今度は俺の方から話をする番になった。
魔王に拾われる前は勇者パーティーに居たが、追放されて一人で旅をしていたらとある村で魔王様に出会い拾われたと伝えた。
すると、ニーナは驚いていたが、すぐに納得した様子だった。
その後は、ニーナと二人で暮らすことになった。
ニーナはメイドとして働いてもらうことにした。
最初は慣れない環境のせいか、失敗ばかりだったが、徐々に慣れてくるとテキパキと仕事をこなせるようになった。
家事全般も完璧にこなすようになり、今では立派なお嫁さんになっていた。
そんなある日のこと、俺は魔王城にある一室でニーナと二人きりになっていた。
「魔王様、お話があります」
改まった様子で言うニーナに、俺も姿勢を正して向き合う。
「どうしたんだ?」
問いかけると、彼女は緊張した面持ちで口を開く。
「私、魔王様のお役に立ちたいのです」
その言葉に俺は驚くと同時に、嬉しくなった。
まさか彼女がそんな事を言ってくれるなんて思いもしなかったからだ。
だから、俺も真剣に考えてみる事にした。
その結果、ある結論に達した。
「分かった、ニーナ、君には別の任務を与える」
その言葉にニーナは嬉しそうに返事をする。
「はい!」
その返事を聞いた俺は彼女に命じた。
「ニーナ、君は俺の妹になりなさい」
「え……?」
一瞬何を言われたのか理解できていないようだったが、すぐに我に返ったようで慌てた様子を見せる。
「ま、待ってください、それってどういう……」
ニーナは混乱しているようだ。
だが、俺は構わず話を続ける。
「そのままの意味だよ、君を引き取ることにしたんだ」
そう言って微笑むと、ニーナは頬を赤く染めて俯く。
どうやら照れているようだ。
そんな彼女の様子を見て、俺は思わずドキッとしてしまう。
(か、可愛い……)
そう思ったが、すぐに我に返ると咳払いをして誤魔化す。
それから、改めて話を続けることにした。
「どうかな?」
そう尋ねると、ニーナは俯いたまま答える。
「そ、そんなの無理です」
しかし、俺は諦めなかった。
「大丈夫だよ、ちゃんと変装すればバレないって」
そう伝えると、渋々ながらも了承してくれたようだ。
よしっ!っと心の中でガッツポーズをする。
(計画通り!)
そう思いながらも顔には出さないように気を付けつつ話しかける。
「……それじゃあさっそくだけど、これからよろしくね」
笑顔で話しかけると彼女も笑顔で返してくれた。
こうして、俺たちの共同生活が始まったのだ――。
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3日が経過した頃だった。
あれから、ニーナは毎日のように俺の元へやってくるようになった。
朝起きてから夜寝るまでずっと一緒だ。
しかも、常に俺のことを監視してくる。
おかげでゆっくり休むこともできない。
(一体どういうつもりなんだ……)
疑問を抱きつつも、本人に直接尋ねてみることにした。
だが、彼女は何も答えてくれない。
それどころか、無視されてしまう始末だ。
(これは困ったな……)
困り果てていると、背後から声をかけられた。
振り返るとそこには、ニーナが立っていた。
彼女はニッコリと微笑みながら話しかけてくる。
「魔王様、お仕事お疲れ様です」
そう言って労ってくれるが、今の俺にはそれどころではなかった。
それよりも、気になることがあったからだ。
(どうして、俺の居場所がわかったんだ?)
そう考えていると、再び声をかけられる。
「どうかしましたか?」
首を傾げながら問いかけられるが、俺は何でもないと答えるとその場を後にした。
(まぁ、いいか……)
気にしないことにして、俺は執務室へと戻ることにした。
その後、何事もなく一日が過ぎていった。
そして、夕食の時間がやってきた。
いつものように食堂へと向かうと、
「お兄ちゃん! 一緒に食べよ!」
と元気よく声をかけてきたのは妹のアリアだった。
彼女の他にも、ニーナやティナたちもいる。
俺は頷くと彼女たちと一緒に食事を摂ることになった。
そして、食べ終わると部屋に戻ることにする。
自室に戻るとベッドに横になって一息つく。
(今日は疲れたなぁ……)
そう思っていると、部屋のドアがノックされる音が聞こえたので返事をすると、入ってきたのはアリアだった。
何の用だろうと思っていると、いきなり抱きつかれてしまった。
(なっ!?)
驚いているとアリアは耳元で囁いてくる。
「ねぇ、お兄ちゃん、お願いがあるんだけど……」
そう言われたので耳を傾けてみると、その内容を聞いて愕然とした。
なんと、アリアはニーナと入れ替わって欲しいと言うのだ。
俺は慌てて断るが、彼女は諦めようとしない。
結局、根負けした俺はアリアの提案を受け入れることにした。
翌日、俺はアリアに連れられてニーナの部屋へと向かった。
部屋に着くとアリアは、ニーナに話しかけた。
「ニーナ、今日からしばらく、お兄ちゃんと一緒に暮らして欲しいの」
突然そんなことを言われて、ニーナは困惑していた。
当然の反応だと思う。
だが、彼女は素直に受け入れてくれた。
「分かりました」
そう言うと、彼女は荷物をまとめて俺の部屋にやってきた。
こうして、俺は本格的に魔王としての生活が始まったのだった――。
魔王様の妻候補である三人の少女たちのうちの一人と結婚する事になったのだが……。
いや、待て……おかしいだろ?
なんで俺が結婚しないといけないんだよ。
そもそも、俺には好きな人がいるわけで……。
そんなことを考えているうちに、魔王様の妻候補が近づいてきた。
そして、俺に抱きついてきたかと思うとキスをしてきたのだ。
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