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111.

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(ああ、もうダメだ)
そう思い諦めかけたその時、突然視界が暗転したかと思うと次の瞬間には見知らぬ場所に立っていた。
そこは真っ白な空間で何もない、ただただ白いだけの世界が広がっているだけだった。
戸惑っていると、目の前に女性が現れる。
年齢は20代前半くらいだろうか、髪は長く金色をしている、
瞳は青く透き通っているように見えた。
顔立ちは非常に整っており、美人と言って差し支えないだろう。
スタイルも良く、胸は大きく腰回りもくびれている。
「何度も助けてあげたのに、クロードを怒らせてしまったのですね」
「女神様、たすけてください、俺はどうすれば」
「人の子よ、クロードの怒りを鎮めなさい、貴方の妻を差し出すのです」
そんな事で着るはずが、無いだろう。
俺は心の中でそう思うと
「では私から言う言葉はもうございませんわ」
曹宇なり身体が引き戻される、
椅子に游雅に座っているクロードの姿が見えた。
「お帰り、随分と長かったな」
その言葉に動揺する、
手には虫の息ではあるがアリア服が握られていた。
「さてと、答えを聞こうか? 我が子よ、誰が悪いのかな」
ああ、この人は本気だ、
本気で怒っているんだと理解した瞬間、涙が溢れてきた。
泣きじゃくりながらも何とか答えることが出来た。
だが、それが更なる悲劇を招くことになるとは思いもしなかったのだ。
「つ、妻は悪くない、だから殺さないで」
「答えになってないな、リュート、父さんの質問に答えなさい、誰が悪い? 彼女では無いのだろう?」
そう言いながらずるっと服事引きずって俺の前に放り投げてきた。
俺が咄嗟に抱きしめようとすればクロードに睨み付けられて牽制される、
「と、父さん」
「俺はお前たちに未来を託して、死んだんだぞ、のに、魔王軍は崩壊寸前、お前は魔王として成って無くて、しかも、この女は人間と結婚だと?」
そんな父の言葉に胸が締め付けられる思いがしたが、それでも譲れないものがあったから我慢したのだ、
なのにこんな仕打ちあんまりではないかと思ったものの口に出せるはずもなく黙っているしかなかったのだが、
そんな俺に更に追い討ちをかけるように言葉を投げかけてくる。
「もういい、魔王・リュート魔王城魔王の間に来い、魔王の座は帰してもらう」
それだけ言うと踵を返し部屋を出て行こうとするのだがここで諦めるわけにはいかない、
そう思って声をかけるのだが帰ってきた答えはあまりにも冷たいものだった。
その声を聞いただけで恐怖を感じたのだがなんとか踏みとどまり呼び止めることに成功したのだが返事はなかった。
そのまま出て行かれて絶句する。
「歴代最強魔王の父さんに勝てるはずないだろう」
そんな弱音を吐いていると不意に声をかけられたので振り返るとそこにいたのはアリアだった。
「行ってくる」
俺はそう言うと移動魔法で魔王の座につくとそのまま俺の椅子にクロードが座っていた。
「父さん」
「ほぅ、逃げすに来るとは言い心構えだ、で、魔王・リュート、魔王を返却して貰おうか?」
その言葉を聞いた瞬間背筋が凍るような錯覚を覚えた。
だが、引くわけにはいかなかった。
なぜなら俺は魔王なのだから、例え相手が父親であろうと負けるわけには行かないのだ。
覚悟を決めた俺は立ち上がると剣を構える。
それを見た父はニヤリと笑うと立ち上がりこちらに歩いてくる。
俺もそれに合わせて前に出ると剣を振り下ろすがあっさりと受け止められてしまう。
その後も何度か打ち込むが全て防がれてしまい逆に反撃を受ける始末であった。
やはり実力差がありすぎるようで全く歯が立たない。
そこで一旦距離を取ることにした。
呼吸を整えてから再び斬りかかるがそれも簡単に避けられてしまった。
それから何度か攻撃を繰り返すものの全て躱されてしまう。
そう言えば倒産が魔王だった時一度も勝てなかったことを思い出した。
それからもしばらく攻撃を続けるものの一向に当たる気配はなかった。
やがて息が上がってきたところで休憩することにしたのである。
しかしその間もずっと見られているような気がして落ち着かなかったのだが、それは気のせいだと思い込むことにして忘れることにするのだった。
その後ようやく、落ち着いた頃を見計らって父が声をかけてきたため、そちらを向くと、手招きされたため近づいていくと
抱き寄せられてしまったのである。
驚きのあまり硬直していると頭を撫でられたので顔を上げると優しい笑顔を向けられたことで恥ずかしくなったのだが同時に安心感を
覚えることができたためそのまま身を委ねることにしたのである。
「よく頑張ったな、偉いぞ」
そう言って褒められたことで嬉しさが込み上げてきて思わず涙を流してしまったのだが、優しく拭ってくれたことで、落ち着きを取り戻すことができた。
その後改めて自分がしたことを振り返ったところ、とんでもないことをしてしまったことに、気づいて頭を抱えていると、
それを見ていた母が苦笑しながら話しかけてきたため、顔を上げてみると呆れた表情をされた上で、叱られることになったのだが
不思議と嫌な気分にはならなかったしむしろ嬉しかったくらいだ。
その後は一緒にお風呂に入ったりして、楽しい時間を過ごすことになったのである。
次の日になると、俺は、昨日のことを思い出してしまい恥ずかしさのあまり、悶絶していたのだがいつまでもこうしてはいられないと思い立ち行動を開始することに決めたのである。
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