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結局その場で処分するわけにもいかず持ち帰ることになったのだが、帰り道の途中で落としたりしないように細心の
注意を払いながら持ち帰ったのであった。
そんなこんなでようやく家に着いた頃には既に日が暮れ始めていたが特に気にすることもなく中に入る事にしたのである。
家の中に入るとまず最初に出迎えてくれたのがルナだった。
彼女は満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってくると、
「おかえりなさいませ、ご主人様。お仕事お疲れさまでした」
と言いながら頭を下げてきたため、こちらも同じように返してから荷物を置くために二階にある自室へ向かったのだがそこであることに気がついた。
というのも部屋の中に見慣れない箱が置かれていることに気付いたからである。
不思議に思って開けてみると中には大量の金貨が入っていたのだが、それを見た途端に驚いてしまい思わず声を上げてしまったほどだ。
何故こんな物がここにあるのかと混乱していると、不意に背後から声をかけられた。
振り向くとそこにいたのは……なんとアリアだったのである。
「あら、どうしたんですか?  そんな顔をして?」
不思議そうに首を傾げる彼女に向かって俺は恐る恐る尋ねてみたのだが返ってきた
答えは想像以上のものだった。
なんとこの金は全て俺のものらしいのだ!
「はい、その通りですよ」
そう言って微笑む彼女の姿はとても可愛らしく見えたのだが、その一方でどこか不気味な感じもしていた。
しかしそれでも手放す気にはなれなかった。
何せこれから生活していく上で必要になってくるものだし何より今まで苦労して稼いだ金だからな。
それにせっかく手に入れたんだから有効活用したいじゃないか!
というわけでさっそく支度を始める事にした俺だったのだが、ここでふと気になった事があったので尋ねてみる事にしたのである。
それはというと、先程からアリアがやたらとこちらを見てきている気がするという事だったのだがそれに対して返ってきた答えは予想外のものだった。
「いえ、特に意味はないんですけど何となく見ていただけですよ」
「そ、そうか……」
何だか釈然としなかったが気にしない事にして出かける事にした。
行き先はもちろん冒険者ギルドである。
まずはそこで依頼を探すつもりなのだが実はもう一つ目的があったりするのだ。
それはと言うと、この間の戦いで得た報酬を受け取るためである。
一応事前に聞いておいたところ討伐報酬が出るらしいので楽しみだなと思いつつ中へ入るとカウンターにいる受付嬢の元へと向かう事にした。
そして早速用件を伝える事にしたんだが、それを聞いた途端驚いたような表情を見せつつも奥の部屋へと消えていった後
暫くして戻ってきたかと思えば一枚の紙を差し出してきたのである。
その内容に目を通してみるとそこには信じられない事が書かれていたんだ。
「こ、これは一体どういう事なんだ!?」
驚きのあまりつい叫んでしまった俺は悪くないと思うんだがどうか許してほしいと思っている。
何せこんな事が書かれていたのだから無理もあるまいて。
そこに記されていた内容はと言うと……
『クエストクリアにより、報酬をお渡しいたします』
と書かれていてその下には何やら文字が書き連ねられていたようだが、残念ながら読めないのでどうしたものかと考えていたら
突然声を掛けられたので振り返ってみるとそこにいたのは先程の受付嬢だったのだが、何故かその手には大きな袋が握られていたのである。
気になったので尋ねてみたところ何でも特別に用意してくれたらしいのだが、中身はまだ秘密とのことだったので気になって
しまい仕方がなかったのだが何とか抑えつつ受け取る事にしたのである。
「ありがとう、助かったよ」
と言われてしまったためお礼の言葉を述べてからその場を後にした俺は上機嫌のまま街の中心部にある広場へと向かったんだ。
噴水の前にあるベンチに腰掛けると早速中身を確認してみる事にしたんだが、そこにあったものはとんでもない代物だったんだよ。
なんと何と、大金だったのさ!!
(マジかよ!?)
驚愕しつつ確認したところ総額にしてなんと5000万ゴールドもあったんだ!
(やべぇだろこれぇ!?)
心の中で叫びながらも平静を装っていたが内心ドキドキしていた事は言うまでもないだろうと思うぜ。
何せこんなに大量のお金を見たのは初めての経験だったから尚更だったしな。
(それにしてもすげぇ金額だなこりゃあ)
「おい、大丈夫かよ?」
心配して声を掛けてくるルナに対して大丈夫だと答える代わりに笑顔を見せることによって答えることにしたのだった。
こうして俺たちは旅立ちの準備を済ませた後、目的地に向けて出発する事にしたのであった。
とは言っても今すぐ出立するのではなく数日の間はこの街で過ごすつもりだけどな。
というのも色々と準備があるからなのだ。具体的には食料やら物資やらを買い込む必要があるからな!
なので今日は各自自由行動という事になったんだけれども……
そんな中で一人留守番する事になってしまったアリアがちょっと可哀想だったので今度埋め合わせをする約束をしてから
俺達は出発したのだった。
「じゃあ行ってくるよ」
そう言うと手を振りながら去っていった。
「いってらっしゃいませ」
深々と頭を下げつつ見送るその姿にはどこか寂しそうな様子が窺えたのだが敢えて気付かないフリをしてそのまま立ち去ったのであった。
さて、それから暫く経ったある日のこと、遂にその時がやってきたようだ。
俺達の目の前に現れたのは見上げるほどに大きな城門だった。
高さもかなりのもので、ざっと見ただけでも10メートル以上はあるだろうか。
そんな重厚な佇まいを見せている城門の左右には2体の石像が置かれていた。
1体は剣を地面に突き刺した状態で跪き、もう1体は杖を構えたまま目を閉じている。
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