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俺はそのまま食堂に入ると
「リュートお兄ちゃんおはよう」
と言いながらルナが飛びついてきた。
「ああ、ルナ、おはよう」
と言って抱き返すと嬉しそうな表情を見せた後で再びキスをしてきたのだが今度は舌を入れてこようとはしなかったので助かったと思った。
しかし、その代わりにずっと胸に顔を埋めて甘えてきたので結局何も変わらなかった。
それからしばらく経ったある日のこと、ついにその時がやってきたようだ。
俺達の目の前に現れたのは見上げるほどに大きな城門だった!
凄いだろ?
(それにしても大きいなぁ……)
なんて思いながら見上げていると隣の方から声が聞こえてきた。
その声はアリアのものだった。
彼女は俺の手を握りながら話しかけてきていた。
その内容によると、今から向かう街の名前はエルシオンといって、この街では主に武器や防具の生産が盛んなのだそうだ。
なのでここに来れば大抵の物は揃うと言われている程の大規模な市場があるという話だ。
それを聞いて期待が高まったところで門をくぐる事になったわけだがここで一つ問題があった。
それは身長の問題であった。
「リュート様大きすぎませんか」
そう呟く彼女の視線は俺の下半身へと注がれており、その視線を追うようにして見てみるとそこには大きな膨らみが存在していたのだ。
それを見て驚いたのは俺も同じであり思わず声が出てしまったほどだったよ。
だって仕方ないだろう?
こんな大きさになるなんて思ってもいなかったんだからさ……でもこれでやっと通れるようになったと思ったんだよ。
だが、そこで問題が発生したんだ。
なんと門番らしき人物が現れてきたではないか。
彼はこちらをジロジロ見ながら訊ねてきたんだ。
「お前達は何しに来たんだ?  見た感じ人間のようだが……」
その言葉に動揺しつつもどうにか答えようと試みるも言葉が出てこないせいで中々伝えられずにいると代わりにアリアが答えてくれていたようだ。
「すみません、この子には事情がありまして人間の姿でないと外出出来ないんです」
と言うと彼女は俺の事を抱き寄せてきたんだ。
そのおかげで必然的に距離が近くなり緊張していると突然頭を撫でられた事で更に混乱してしまい何も考えられなくなったところへ
更なる追い討ちをかけてくるように声をかけられたことで頭が真っ白になってしまったのだ。
そんな中でも何とか返事をしようと必死になって考えているうちに段々と落ち着いてきたことで冷静さを取り戻していくことができた
お陰でようやくまともな受け答えをする事ができるようになりつつあったのだが、それと同時に恥ずかしさが込み上げてきてしまい
まともに顔が見られないまま俯いていたのだが、そこでふと顔を上げるといつの間にか門の近くまで辿り着いていた事に気付きホッとした瞬間、
背後から声を掛けられたのである。
「君達、ちょっといいかな?」
突然話し掛けられたことに驚きつつも慌てて振り返るとそこには1人の男性が立っていたんだ。
その男は背が高く体格の良い男だったのだが、その顔を見た瞬間、俺は言葉を失ってしまった。
何故ならそこに居た人物というのがかつて共に旅をした仲間の一人でもある賢者ルナフだったからである。
予想外の出来事を前に動揺していた俺だったが、そんな様子を不審に思ったのか、彼女は不思議そうな顔をしながらこちらへ近づいてきたかと思うと
いきなり顔を覗き込んできたんだ。
その瞬間心臓が跳ね上がるような感覚に襲われたんだが、なんとか平静を装ってやり過ごそうとしたものの上手くいかず、
結局は挙動不審になってしまったために余計に怪しまれてしまい余計に悪化させてしまったようだ。
「ねぇ君、もしかして何処か調子が悪いのかい?」
そんな様子を見かねたのか心配そうな表情で話しかけてきた彼女にドキッとしながらも何とか取り繕おうとしたものの上手くいかなかったらしく、
かえって逆効果になってしまいますます訝しむような目で見られる事になってしまったんだ。
そこで仕方なく本当の事を話す事にしたんだ。
(うぅ……本当はこんな事を言いたくはないんだけど仕方ないよな……それにこのままじゃ埒が明かないもんな……)
意を決して打ち明けようとしたその時、先に彼女が口を開いた。
「なるほど、そういう事でしたか……それなら納得出来ますね」
と納得した様子で頷いた後、彼女は自己紹介を始めたんだ。
それを聞いているうちにようやく落ち着きを取り戻した俺は改めて挨拶を交わす事にしたんだ。
「俺はリュートと言います、よろしくな!」
(よし、言えたぞ!)
内心ガッツポーズを決めていると続けて彼女も名乗ってくれたんだ。
その名前を聞いた瞬間、俺は思わず聞き返してしまったんだ。
何故ならそれは聞き覚えのある名前だったからなんだが、それというのも彼女が口にした名前がかつての仲間の名前と同じだったからだ。
つまり目の前にいる人物はかつての仲間であるルナその人だったのだ。
まさかこんな事が起こるなんて思いもしなかったぜ……!
驚くべき偶然が起こり、俺の前にかつての仲間である賢者ルナフが現れたことにより、彼は言葉を失ってしまいます。
彼の動揺を感じたルナフは不思議そうな表情で近づき、彼の顔を覗き込んできます。
この状況により、俺の心臓は激しく高鳴り、彼は平静を装おうとするものの、上手くいかずに挙動不審になってしまいます。
心配そうな表情で話しかけてきたルナフに対して俺は本当の状況を打ち明けることにし、彼女も納得した様子で頷きます。
「私はルナフです、よろしくね♪」
(あれ……?この人って確かあの時の……?)
この時、俺は彼女の名前を聞いて驚いていましたが、実は彼女とはかつて一緒に旅をしていた事があり、
その際に彼女からある秘密を教えてもらっていたからです。
しかしその直後に俺は自分の目的を思い出し、本来の姿に戻るわけにはいかなくなったのです。
しかし、その直後に突然現れた門番によって足止めされてしまったことで結局正体を隠す事が出来ませんでした。
それでも諦めずに説得を試みましたが失敗に終わりました。
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