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最終話*碧色社長の溺愛はイチョウの下で
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時間と共に外気が下がるどころか上昇するのは絡み合う身体や汗はもちろん、どれだけの淫音を響かせても心から二人が悦んでいるからだ。
「っあ、ああぁ……!」
「はあ……八……いや、十回目か?」
「数へっ、あ……ないへ……」
「数えられるわけないだろ。今のアオ、すぐイくんだから」
「ひうっ!?」
くすりと笑う声と共にビンビンに尖った両乳首を引っ張られた葵はのけ反り、ナカを締め付ける。ノアも呻けば新たな蜜が噴き出した。
巨木をはじめ床几台、無音の廊下、ロビー、中庭と、二人だけの『蒼穹』を卑猥な舞台と化しては新調したばかりの着物を互いの色と匂いに染め、客室でいっそう激しく愛し合う。ラブホではないと言いながら、月夜が照らすベッドは既に蜜池に変わり果てていた。
「はあ……このシーツは捨てないと……もう匂いが染み付いてるな……いや、ベッドごとか。明日まで貸し切っていて良かった」
「なんへで……あん、客ひつで……っあ、する……あぅっ」
巨木の目と鼻の先にはノアの寝室がある。なのにわざわざ客室まで戻り、ベッドを台無しにする意味がわからない葵はマフラーで目を、帯で両手を縛られたまま身動ぐが、結合部を気持ち良くするだけでノアは笑った。
「家だと麦野とマユ婆に聞かれるし、せっかく予約した部屋が勿体無いだろ? 我慢しきれてないアオの声を気兼ねなく聞けて最高だと思うが?」
「へんひゃンンっ!」
腰を打ち付けられながら乳房を揉まれ口付けられる。同時攻めにのけ反ってもホールドされている身体は逃げることができず、何度目かわからない絶頂を迎えた。一度も引き抜かれていない結合部の隙間から垂れる蜜も根元まで押し込んだ肉棒で蓋をされる。
「っ、は……あっ、あぁ……!」
「アオ……愛してる」
達する度に出てしまう舌を舐め回され、涎を垂らしながら離れていく囁きが全身を巡る。目隠し用のマフラーを外された葵は霞む視界の先で、はにかむノアを捉えた。
汗ばんだ髪も白い肌に映える汗も艶っぽい。こんなにも美しい裸体に自分が犯されているのが信じられないが、碧い瞳に映るのは確かに自分で、縛られている両手をゆっくり伸ばした。その指に結ばれていたイチョウは激しさに耐え切れず、サイドテーブルに並んでいる。代わりに舐めるノアのように葵も差し出された彼の指をたどたどしい舌でしゃぶった。
「んくっ、ふ、んっ」
「っは……アオの舌、ヤらしいな……癖になりそうだ」
「んンンっ!?」
二本の指を咥え込ませたノアはゆっくり擦るが、舌のざらつきと下唇から垂れる涎に興奮した様子で指を速める。次第に指先が喉に触れ、苦しさから葵は身体を震わせた。
「っ~~ぱあ! はあはあ……もっ……ノアんんんっ!?」
お怒りの唇は唇で塞がれ、何度も口内を舌で掻き回される。次第に葵も舌を絡めると抱きしめられた。
「っはあ……半分になったか?」
「それ……は、機嫌が? それと……はぁっ、も……苦しいのが?」
「両方だ」
物理的な苦しみに涙目で睨むと、笑うノアに両手の帯を解かれる。頬を膨らませたまま抱き返した葵は彼の汗や胸板、自身のように尖った乳首を舐めた。
「はっ、あぁ……アオ……それ」
「気持ひぃ?」
「……Yes」
視線を上げた先の笑みに機嫌良くしたのか、舐めた乳首を指で捏ねながら反対の乳首を甘噛みする。ノアもまた葵の耳を舐めながら乳首を弄るが、腰を揺すられるとナカに収まる肉棒が硬くなった。
「っはあ……っア、オ……っ!」
「ん……だひて……全部っ……!」
自然としがみつけば滾りが放出され、虚ろな目で天井を見ていたノアは汗ばんだ手で葵のお腹を撫でた。肉棒で栓をし続けているせいか既に身籠っているかのように膨れ、指で押すだけでのけ反った葵は愛液と白濁が混ざった蜜を結合部から垂らす。
「押ひちゃダメ……私の……」
「やはり、アオの方が我儘だ……安心しろ。すぐまた注いでやるから」
上体を起こしたノアの口付けに若干不満気な葵だが、首に腕を回すと抱き上げられる。繋がったまま向かうのは淡い照明が灯る露天風呂。冷えきった空気も今の二人には心地良く、かけ湯で汗や蜜を流したノアはバスタオルの上に葵を寝転がすと肉棒をゆっくりと引き抜いた。
「あっ、あっ、あぁ~っ!」
「はあ……アオ……ヤらしぃ……」
栓が開いた秘部から愛液と白濁が温泉のように湧き出る。悦楽な笑みを浮かべるノアは葵に跨がるが下腹部側を向き、葵の頭上には透明な蜜にまみれた真っ赤な肉棒が向けられた。股越しに視線が重なる。
「俺の……綺麗にするのは任せたぞ」
「……いいよ」
笑った葵は両手で肉棒に触れると亀頭に口付け舐める。いつもより濃い匂いは自身と混ざり合っていたからか、羞恥よりも悦びが勝るとしゃぶりついた。同様に秘部に顔を埋めたノアも止めどなく溢れる愛液を舐めては自身の精液ごと吸い上げる。綺麗にするどころか増やすことになるのは承知の上だった。
「あっ、はン……あぁ」
「んっはぁ……ん? アオ、夜明けだ」
「へ……わぁ」
冷えた身体を暖めるように半身浴で浸かる葵の胸に顔を埋めていたノアの声に快楽半分、睡魔半分だった葵の目が薄っすら開く。次第に瞠るのは茜雲の隙間から朝焼けが広がりはじめたからだ。
身震いするのは寒さではなく、幼き頃の記憶と変わらない阿蘇の豊麗な景色を愛しい人と体感できる悦び。栗毛に染まる髪を撫でる葵にノアが顔を上げれば自然と唇が重なった。
「んっ……ノア……素敵な誕生日をありがとう」
「はあ……どういたしまして。けど、俺からのプレゼントは終わってないぞ」
「へ? いや、もう終わったし充分っひゃ!?」
当に誕生日は終わっている。だが、抱き上げられると朝勃ちならぬ万年勃ちとも言えるほどの肉棒を挿入された葵は阿蘇の絶景に囲まれながら艶やかな声を響かせた。
今日から再びはじまる営業よりも忙しない恋人──否、夫の愛は蒼穹色に移り変わっても尽きなかった。
*
*
*
晴天の今日もひらひらと舞う扇葉。
連日の気温も相まって緑だった葉はいっせいに鮮やかな黄金へと色を変え地面を埋め尽くすが、その上に立つ少年は苛立ちを募らせていた。
「こらー、イチョウっ! お前はどれだけの葉っぱを落とせばいいんだ!! 拾うボクの身にもなれ!!!」
「いかがされましたかな、セオ様」
「ムギじい~」
黒髪に紺色の着物を揺らす少年=セオは野点傘を運んできた麦野に碧色の瞳を向けるが、手に持つ身丈ほどの小さな箒と膨らんだ頬に察したのかくすくすと笑われた。
「自然に文句をおっしゃっても仕方のないことだとお教えしたでしょう」
「ぐ……だって、もうすぐディじいたちやコリーがくるんだぞ? きれいにして客をもてなすのが旅館のあるじだって父がいつもいってる」
「しかし、皆様は五歳になられたセオ様の七五三を祝いに来られるのですから、セオ様がもてなされるほうでは?」
「へ? そうなのか?」
傘を立てる麦野の指摘にセオは大きな瞳を瞬かせる。
そうかもしれないし、宿泊するなら結局もてなす側ではないかと幼い頭で考えるが徐々に混乱してきた。
「セオ坊っちゃん、いきなり団子いかがです?」
「Oh yeah!」
茶の間から顔を出したマユ美に笑顔になったセオは箒を置くと外の蛇口で手を洗い、縁側に座る。受け取った団子を頬張る様子にマユ美も微笑んでいると、セオの目が奥の部屋に向けられた。
「父と母、ちぇくあうとから出てこないが、また父の気分が悪いのか?」
何度か父親が床に臥せっているのを見ているセオは心配そうに見つめるが、顔を見合わせた麦野夫妻は苦笑した。
「そうですな。やっとシーズンも落ち着いて気が抜けたのでしょう」
「セオ坊っちゃんがお着替えした頃には出てきますから、そっとしておきましょう」
「? Ok。おまじない中だな」
苦しい時や辛い時の“おまじない”。それを大事にしている両親に頷いたセオは団子を平らげると階堂呉服で新調した着物を見に赤絨毯を走る。その足音と背を注意する声を寝室から聞いていた母親は小刻みに身体を震わせながら手で口を押さえていたが、真下にある口角が上がるとナカで止まっていたモノを突き上げられた。
「ひうっ!?」
「っはあ……締めすぎだアオ……セオも行ったし、もういいだろ?」
「でも、あっ、まだ……麦野さあぁぁっ……」
「今更だ」
くすりと笑うのは畳に敷かれた布団に寝転がり、開けたグレーの着物から肌を魅せるノア。半分ほど栗色に戻した髪は汗で濡れ、碧色の瞳で官能な声を出す妻を見上げた。
旅館客を見送った際は着付けられていた芥子色の着物も肌着ごと上半身は開け、頬と同じ赤みを帯びた乳房が解かれた黒髪と共に揺れる。夫に跨がったまま自身のナカに肉棒を沈める葵は吐息を零した。
「っはあ……ノア……これ以上シたら私っああぁ」
「もっと欲しくなるんだろ? アオは我儘だからな」
腰を突き上げながら乳房を揉みしだくノアの笑みに紅葉を散らした葵は自分で腰を動かす。行楽シーズンで忙しかった毎日が落ち着き、やっと彼との時間ができたからだ。
「よっと」
「はああぁンンっ!」
繋がったまま上体を起こしたノアに葵は矯声を上げながらのけ反るが、引き寄せられると唇も重なる。浅いものでも啄むものでも“おまじない”でもない、深く荒々しい欲に満ちた唇と舌に蕩けるほど感じると締めていたナカが解け、最奥へと収まった。
「んふっ、んっ、はあ……あぁキてるっ」
「あぁ……出るっ……アオ……っ!」
脈動に抱き合うと滾りが注がれ互いの身体が震える。そのまま押し倒したノアは息を切らしながら葵の頬や首筋、乳房を舐めるが、汗ばんだ髪を撫でられた。
「っはあ……ノア、本当にもう……支度しない、ンと……ね?」
「………………あと一回」
「もう、我儘あぁンっ!」
しばし止まったノアだったが、大きく腰を打ち付けた。その激しさに葵は容易に達するも、蕩けた表情も身体も悦びに満ち、結局は何度も受け容れる。
その様子を眺めるのはテーブルに敷かれた青マフラーに乗る古い麦わら帽子を被った青ブタぬいぐるみ。少しだけ頬が赤みを帯びているのは陽光か、左右に増えた赤ブタと黒の子ブタぬいぐるみがいるからかはわからない。
「あ、母ー! おまじないおわたか?」
「う、うん。あ、セオ。新しい着物カッコいいね」
着替え直した葵のようにセオも鼻高々に新品の袴を見せる。ノアにそっくりだと笑いながら曲がった羽織紐を整えていると、碧の瞳が爛々に輝いた。
「母、今日はセイタローくるか? パイにアイスのったの食べれるか?」
「うん。『天空』を貸し切ってるから、お参りしたら行こうね」
「Oh yeah!」
「その前にマユ婆たちと写真だ。裾を汚すなよ、セオ」
前髪を上げたノアも新調した着物で合流すると、はしゃぐセオが麦野夫妻が待つ巨木下へと向かう。その背を追うように庭へと下りた葵は木々の合間から見える煙突を見上げた。
建て替えられた新しい『天空の休憩所』は千恵夫妻とディック夫妻が共同で英国雑貨とカフェを営み、葵もノアの秘書をしながらボランティアで手伝いや折り紙などの催しを行っている。形は違えどどこかで繋がっている縁は両家を引き合わせる糸のように絡まり、徐々に一本の『家族』と成していた。
横暴な葵の実父も義兄から、療養を続ける実母も定期的に会話をしに行っている義母のおかげで近況も知れ、家族もどきが続いている。本当の家族には戻れない。それでも過ちを知っているからこそ、写真に収まる今の家族が葵にとってはいっそう尊くも思えた。
「あ、ディじいたちきた! おむかえせねば!!」
「まあまあ、立派な若旦那ですこと」
「将来が楽しみですな」
邸宅に響くインターホンに写真を終えたセオは駆け、麦野夫妻も笑いながら向かう。葵も続こうとするが、立ち止まったままのノアに顔を覗かせると苦笑した。
「なに? 『蒼穹』は俺のって?」
「べーつにー。セオに明け渡しても社長は俺だからな」
「じゃあ、麦野さんたちがセオに構いすぎて嫉妬してるんだ。私との子なら好きしかないって言ってたのに」
「くっ……それとこれとは別だ」
不貞腐れているように見えるノアをくすくす笑いながら抱きしめた葵は顔を上げると碧色の瞳に囚われる。自然と落ちる葉のように唇が重なればイチョウと同色の指輪が互いの薬指で光り、白糸を繋げた。
「んっ……大丈夫。ノアには私がいるよ」
「分かりきったことを言うな、愚か者」
“おまじない“と皮肉に笑う二人は再び口付け合うと、元気に叫ぶ家族のもとへ繋がる黄金色の絨毯を歩きはじめた。
碧色社長の溺愛はイチョウの下でいつまでも続く。青空のように広がる雄大な阿蘇と共に──。
Fin
「っあ、ああぁ……!」
「はあ……八……いや、十回目か?」
「数へっ、あ……ないへ……」
「数えられるわけないだろ。今のアオ、すぐイくんだから」
「ひうっ!?」
くすりと笑う声と共にビンビンに尖った両乳首を引っ張られた葵はのけ反り、ナカを締め付ける。ノアも呻けば新たな蜜が噴き出した。
巨木をはじめ床几台、無音の廊下、ロビー、中庭と、二人だけの『蒼穹』を卑猥な舞台と化しては新調したばかりの着物を互いの色と匂いに染め、客室でいっそう激しく愛し合う。ラブホではないと言いながら、月夜が照らすベッドは既に蜜池に変わり果てていた。
「はあ……このシーツは捨てないと……もう匂いが染み付いてるな……いや、ベッドごとか。明日まで貸し切っていて良かった」
「なんへで……あん、客ひつで……っあ、する……あぅっ」
巨木の目と鼻の先にはノアの寝室がある。なのにわざわざ客室まで戻り、ベッドを台無しにする意味がわからない葵はマフラーで目を、帯で両手を縛られたまま身動ぐが、結合部を気持ち良くするだけでノアは笑った。
「家だと麦野とマユ婆に聞かれるし、せっかく予約した部屋が勿体無いだろ? 我慢しきれてないアオの声を気兼ねなく聞けて最高だと思うが?」
「へんひゃンンっ!」
腰を打ち付けられながら乳房を揉まれ口付けられる。同時攻めにのけ反ってもホールドされている身体は逃げることができず、何度目かわからない絶頂を迎えた。一度も引き抜かれていない結合部の隙間から垂れる蜜も根元まで押し込んだ肉棒で蓋をされる。
「っ、は……あっ、あぁ……!」
「アオ……愛してる」
達する度に出てしまう舌を舐め回され、涎を垂らしながら離れていく囁きが全身を巡る。目隠し用のマフラーを外された葵は霞む視界の先で、はにかむノアを捉えた。
汗ばんだ髪も白い肌に映える汗も艶っぽい。こんなにも美しい裸体に自分が犯されているのが信じられないが、碧い瞳に映るのは確かに自分で、縛られている両手をゆっくり伸ばした。その指に結ばれていたイチョウは激しさに耐え切れず、サイドテーブルに並んでいる。代わりに舐めるノアのように葵も差し出された彼の指をたどたどしい舌でしゃぶった。
「んくっ、ふ、んっ」
「っは……アオの舌、ヤらしいな……癖になりそうだ」
「んンンっ!?」
二本の指を咥え込ませたノアはゆっくり擦るが、舌のざらつきと下唇から垂れる涎に興奮した様子で指を速める。次第に指先が喉に触れ、苦しさから葵は身体を震わせた。
「っ~~ぱあ! はあはあ……もっ……ノアんんんっ!?」
お怒りの唇は唇で塞がれ、何度も口内を舌で掻き回される。次第に葵も舌を絡めると抱きしめられた。
「っはあ……半分になったか?」
「それ……は、機嫌が? それと……はぁっ、も……苦しいのが?」
「両方だ」
物理的な苦しみに涙目で睨むと、笑うノアに両手の帯を解かれる。頬を膨らませたまま抱き返した葵は彼の汗や胸板、自身のように尖った乳首を舐めた。
「はっ、あぁ……アオ……それ」
「気持ひぃ?」
「……Yes」
視線を上げた先の笑みに機嫌良くしたのか、舐めた乳首を指で捏ねながら反対の乳首を甘噛みする。ノアもまた葵の耳を舐めながら乳首を弄るが、腰を揺すられるとナカに収まる肉棒が硬くなった。
「っはあ……っア、オ……っ!」
「ん……だひて……全部っ……!」
自然としがみつけば滾りが放出され、虚ろな目で天井を見ていたノアは汗ばんだ手で葵のお腹を撫でた。肉棒で栓をし続けているせいか既に身籠っているかのように膨れ、指で押すだけでのけ反った葵は愛液と白濁が混ざった蜜を結合部から垂らす。
「押ひちゃダメ……私の……」
「やはり、アオの方が我儘だ……安心しろ。すぐまた注いでやるから」
上体を起こしたノアの口付けに若干不満気な葵だが、首に腕を回すと抱き上げられる。繋がったまま向かうのは淡い照明が灯る露天風呂。冷えきった空気も今の二人には心地良く、かけ湯で汗や蜜を流したノアはバスタオルの上に葵を寝転がすと肉棒をゆっくりと引き抜いた。
「あっ、あっ、あぁ~っ!」
「はあ……アオ……ヤらしぃ……」
栓が開いた秘部から愛液と白濁が温泉のように湧き出る。悦楽な笑みを浮かべるノアは葵に跨がるが下腹部側を向き、葵の頭上には透明な蜜にまみれた真っ赤な肉棒が向けられた。股越しに視線が重なる。
「俺の……綺麗にするのは任せたぞ」
「……いいよ」
笑った葵は両手で肉棒に触れると亀頭に口付け舐める。いつもより濃い匂いは自身と混ざり合っていたからか、羞恥よりも悦びが勝るとしゃぶりついた。同様に秘部に顔を埋めたノアも止めどなく溢れる愛液を舐めては自身の精液ごと吸い上げる。綺麗にするどころか増やすことになるのは承知の上だった。
「あっ、はン……あぁ」
「んっはぁ……ん? アオ、夜明けだ」
「へ……わぁ」
冷えた身体を暖めるように半身浴で浸かる葵の胸に顔を埋めていたノアの声に快楽半分、睡魔半分だった葵の目が薄っすら開く。次第に瞠るのは茜雲の隙間から朝焼けが広がりはじめたからだ。
身震いするのは寒さではなく、幼き頃の記憶と変わらない阿蘇の豊麗な景色を愛しい人と体感できる悦び。栗毛に染まる髪を撫でる葵にノアが顔を上げれば自然と唇が重なった。
「んっ……ノア……素敵な誕生日をありがとう」
「はあ……どういたしまして。けど、俺からのプレゼントは終わってないぞ」
「へ? いや、もう終わったし充分っひゃ!?」
当に誕生日は終わっている。だが、抱き上げられると朝勃ちならぬ万年勃ちとも言えるほどの肉棒を挿入された葵は阿蘇の絶景に囲まれながら艶やかな声を響かせた。
今日から再びはじまる営業よりも忙しない恋人──否、夫の愛は蒼穹色に移り変わっても尽きなかった。
*
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晴天の今日もひらひらと舞う扇葉。
連日の気温も相まって緑だった葉はいっせいに鮮やかな黄金へと色を変え地面を埋め尽くすが、その上に立つ少年は苛立ちを募らせていた。
「こらー、イチョウっ! お前はどれだけの葉っぱを落とせばいいんだ!! 拾うボクの身にもなれ!!!」
「いかがされましたかな、セオ様」
「ムギじい~」
黒髪に紺色の着物を揺らす少年=セオは野点傘を運んできた麦野に碧色の瞳を向けるが、手に持つ身丈ほどの小さな箒と膨らんだ頬に察したのかくすくすと笑われた。
「自然に文句をおっしゃっても仕方のないことだとお教えしたでしょう」
「ぐ……だって、もうすぐディじいたちやコリーがくるんだぞ? きれいにして客をもてなすのが旅館のあるじだって父がいつもいってる」
「しかし、皆様は五歳になられたセオ様の七五三を祝いに来られるのですから、セオ様がもてなされるほうでは?」
「へ? そうなのか?」
傘を立てる麦野の指摘にセオは大きな瞳を瞬かせる。
そうかもしれないし、宿泊するなら結局もてなす側ではないかと幼い頭で考えるが徐々に混乱してきた。
「セオ坊っちゃん、いきなり団子いかがです?」
「Oh yeah!」
茶の間から顔を出したマユ美に笑顔になったセオは箒を置くと外の蛇口で手を洗い、縁側に座る。受け取った団子を頬張る様子にマユ美も微笑んでいると、セオの目が奥の部屋に向けられた。
「父と母、ちぇくあうとから出てこないが、また父の気分が悪いのか?」
何度か父親が床に臥せっているのを見ているセオは心配そうに見つめるが、顔を見合わせた麦野夫妻は苦笑した。
「そうですな。やっとシーズンも落ち着いて気が抜けたのでしょう」
「セオ坊っちゃんがお着替えした頃には出てきますから、そっとしておきましょう」
「? Ok。おまじない中だな」
苦しい時や辛い時の“おまじない”。それを大事にしている両親に頷いたセオは団子を平らげると階堂呉服で新調した着物を見に赤絨毯を走る。その足音と背を注意する声を寝室から聞いていた母親は小刻みに身体を震わせながら手で口を押さえていたが、真下にある口角が上がるとナカで止まっていたモノを突き上げられた。
「ひうっ!?」
「っはあ……締めすぎだアオ……セオも行ったし、もういいだろ?」
「でも、あっ、まだ……麦野さあぁぁっ……」
「今更だ」
くすりと笑うのは畳に敷かれた布団に寝転がり、開けたグレーの着物から肌を魅せるノア。半分ほど栗色に戻した髪は汗で濡れ、碧色の瞳で官能な声を出す妻を見上げた。
旅館客を見送った際は着付けられていた芥子色の着物も肌着ごと上半身は開け、頬と同じ赤みを帯びた乳房が解かれた黒髪と共に揺れる。夫に跨がったまま自身のナカに肉棒を沈める葵は吐息を零した。
「っはあ……ノア……これ以上シたら私っああぁ」
「もっと欲しくなるんだろ? アオは我儘だからな」
腰を突き上げながら乳房を揉みしだくノアの笑みに紅葉を散らした葵は自分で腰を動かす。行楽シーズンで忙しかった毎日が落ち着き、やっと彼との時間ができたからだ。
「よっと」
「はああぁンンっ!」
繋がったまま上体を起こしたノアに葵は矯声を上げながらのけ反るが、引き寄せられると唇も重なる。浅いものでも啄むものでも“おまじない”でもない、深く荒々しい欲に満ちた唇と舌に蕩けるほど感じると締めていたナカが解け、最奥へと収まった。
「んふっ、んっ、はあ……あぁキてるっ」
「あぁ……出るっ……アオ……っ!」
脈動に抱き合うと滾りが注がれ互いの身体が震える。そのまま押し倒したノアは息を切らしながら葵の頬や首筋、乳房を舐めるが、汗ばんだ髪を撫でられた。
「っはあ……ノア、本当にもう……支度しない、ンと……ね?」
「………………あと一回」
「もう、我儘あぁンっ!」
しばし止まったノアだったが、大きく腰を打ち付けた。その激しさに葵は容易に達するも、蕩けた表情も身体も悦びに満ち、結局は何度も受け容れる。
その様子を眺めるのはテーブルに敷かれた青マフラーに乗る古い麦わら帽子を被った青ブタぬいぐるみ。少しだけ頬が赤みを帯びているのは陽光か、左右に増えた赤ブタと黒の子ブタぬいぐるみがいるからかはわからない。
「あ、母ー! おまじないおわたか?」
「う、うん。あ、セオ。新しい着物カッコいいね」
着替え直した葵のようにセオも鼻高々に新品の袴を見せる。ノアにそっくりだと笑いながら曲がった羽織紐を整えていると、碧の瞳が爛々に輝いた。
「母、今日はセイタローくるか? パイにアイスのったの食べれるか?」
「うん。『天空』を貸し切ってるから、お参りしたら行こうね」
「Oh yeah!」
「その前にマユ婆たちと写真だ。裾を汚すなよ、セオ」
前髪を上げたノアも新調した着物で合流すると、はしゃぐセオが麦野夫妻が待つ巨木下へと向かう。その背を追うように庭へと下りた葵は木々の合間から見える煙突を見上げた。
建て替えられた新しい『天空の休憩所』は千恵夫妻とディック夫妻が共同で英国雑貨とカフェを営み、葵もノアの秘書をしながらボランティアで手伝いや折り紙などの催しを行っている。形は違えどどこかで繋がっている縁は両家を引き合わせる糸のように絡まり、徐々に一本の『家族』と成していた。
横暴な葵の実父も義兄から、療養を続ける実母も定期的に会話をしに行っている義母のおかげで近況も知れ、家族もどきが続いている。本当の家族には戻れない。それでも過ちを知っているからこそ、写真に収まる今の家族が葵にとってはいっそう尊くも思えた。
「あ、ディじいたちきた! おむかえせねば!!」
「まあまあ、立派な若旦那ですこと」
「将来が楽しみですな」
邸宅に響くインターホンに写真を終えたセオは駆け、麦野夫妻も笑いながら向かう。葵も続こうとするが、立ち止まったままのノアに顔を覗かせると苦笑した。
「なに? 『蒼穹』は俺のって?」
「べーつにー。セオに明け渡しても社長は俺だからな」
「じゃあ、麦野さんたちがセオに構いすぎて嫉妬してるんだ。私との子なら好きしかないって言ってたのに」
「くっ……それとこれとは別だ」
不貞腐れているように見えるノアをくすくす笑いながら抱きしめた葵は顔を上げると碧色の瞳に囚われる。自然と落ちる葉のように唇が重なればイチョウと同色の指輪が互いの薬指で光り、白糸を繋げた。
「んっ……大丈夫。ノアには私がいるよ」
「分かりきったことを言うな、愚か者」
“おまじない“と皮肉に笑う二人は再び口付け合うと、元気に叫ぶ家族のもとへ繋がる黄金色の絨毯を歩きはじめた。
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ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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