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応戦Ⅱ

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「やっとくたばったか」

「ラングドール様!」

 クリンコフは真っ先に駆け寄り、ラングドールを抱え込んだ。

「クリンコフ――。彼と共闘して彼等を退けてくれ……」

「いけません。貴方を死なせはしない。今すぐに医療班を呼んできます」

「残念ながら医療班はほぼ壊滅だ。今、まともに治療できる者はいない……」

 ラングドールの声は弱々しくなっている。こういう時ガーゼやら何やら――。

「俺が治す」

 無意識のうちに俺はそう口走っていた。何でできると思たんか分からへんけど、何かできるような気がしたんや。

 俺がラングドールに近づくと、ラングドールは驚いた目で俺の顔を見た。

「邪眼を持っている今、初歩的な事やったら割と何でもできるみたいや。安心せえ」

 俺はラングドールの傷口に回復ヒールを行った。

「これくらいが限界か。体力までは回復できへんし、傷口を完璧な塞いだわけちゃうから、痛みはまだあるはずやあから無理に動いたらアカンで」

「ありがとう。恩に切る」

 ラングドールはそう言って安堵したように眠りに落ちた。

「クリンコフ。ラングドールを安静な場所へ」

「分かった」

 クリンコフは奥の部屋にラングドールを連れて行く。

「させるか!」

 帝国兵がそう言って投げナイフを飛ばしてきた。

 俺が2本の指で投げナイフをキャッチすると、目を大きく見開いて驚いてた。

「何や。そんなに不思議かいな?」

「上位のアンデッドが2体味方にいるからって調子乗りやがって!」

「あ――。忘れてた。お前等反乱軍の兵士の味方になって、帝国兵蹴散らしてこいや。別に殺してもええ。でもアンデッドがあれやと絶対にパニックなるよな――。ちょっとじっとしておけよ」

 俺がそう言うと2体の上位のアンデッドは黙って頷く。

 俺はアンデッドに触れて偽装フェイクを使い、アンデッドの形を反乱軍の姿へと変えた。

「よし行ってこい」

 俺がそう言うとアンデッド、目の前の帝国兵を置き去りにして反乱軍の加勢を行った。

「さっきから舐めた真似を――!」

「何でお前みたいな奴にラングドールが負けたんか知らんけど、とりあえずどけや」

 俺がそう言って睨めつけると帝国兵は発火し、断末魔を上げながら走り回っていた。むやみやたらに走るもんやから、味方の剣撃に巻き込まれてそのまま死んでた。

「やっぱりや。他の人間は一切熱くなさそうやから、このスキルは飛び火しやんねや。どういう原理やねん」

 不思議な力やなと思いつつ、改めてこの邪眼のスキルの恐ろしさを知った。視ただけで発火するんはなかなかのチートや。

「さて応戦しますか」

 店の外を見るとやっぱり酷いもんやった。邪眼の効果である程度はどないなってるんか分かっていたけど、大量にいる帝国兵に対して、反乱軍の数はえらい少なかった。

 それでもノーディルスが派遣してくれたアンデッドの活躍ぶりは凄く、帝国兵をバサバサと斬っているようやった。少しばかりの援軍ではあるけど、人手が足りていない壊滅的な状況やったんが――。なんやアレは? 物凄いスピードの剣撃で帝国兵を殺してる奴がおるな。

 その人物はこっちに近づいてくる。ローブで身を纏った銀髪の赤い目をした好青年や。

「貴方がレン・フジワラですね。私はベリトと申します。それは邪眼ではなくて魔眼ですね?」

「そうや。アンタそれ邪眼かいな。つか何者や。エライ強いな」

「私は洗脳を得意とするナリユキ様に仕える者です。普段はマーズベルで国防衛ラインの長をやらせてもらっております」

「――。あそこの少年といい、化物ばかりやな。それよりあの少年は誰に氷漬けされてん」

「それが分からないのです。ミク様とアリス様もいないようなので――。ナリユキ様に頂いた指示は果たしているのですが、ナリユキ様から、ミク様への念話も繋がらないので、こっちは少々焦っているところでして」

「そうなんか。あの少年がやられている事自体異常やからな」

「試してみましたが、あの氷はスキルが全く通用しないので、恐らく私達でノア様の救出はできません。急ぎ、アリシア様に来てもらう要請しました」

 そうベリトと会話していると、帝国兵に囲まれていた。

「べちゃくちゃ喋ってる暇無さそうやな」

「魔眼を持っているなら訳ないですよね。何なら私はティータイムに入ってもいいくらいです」

「よう分かっとるやんけ」

 俺は囲んでいる帝国兵全員を視た。すると辺りの帝国兵は燃え始めて、走り回ってた。

「熱い! 熱い!」

「助けてくれ~!」

 そう断末魔が聞こえる――。

 頭に激しい痛みを覚えつつ、右目がゆっくり視界が消えていった。

「魔眼は本来は魔族などの私達が習得するもの。人間には無理があるようですね。恐らくその右目は、魔眼を発動するときにしか開きません。それ以外の日常生活では、視力を失っているのでしょう」

「やっぱりそうなんか。じゃあ閉じたら強制的に使用できへんようになるんやな?」

「そういう事ですね。なのでレン様はしばらく休んでおいて下さい。私がこの戦いを終わらせますから」

「格好いい事言うやんか」

「ミク様とアリス様が心配ですからね。それにまだまだ仕事は終えていませんから」

 ベリトはそう言って、黒翼を生やして低空飛行を駆使しながら、次々に兵士達をタッチしていた。タッチされた奴等は呆然と立ち尽くしていた。

 数十秒待っていると、ここのいた人間は全て魂が抜けたような表情をしていた。

「何をしたんや?」

「まあ見ていて下さい。さあ貴方達は帝都に出るのです」

 ベリトの指示で帝都を出て行った反乱軍と帝国兵。

 ベリトという強力な助っ人により、この場所を制圧することができた。それにしも何のスキルやねん。

「洗脳系か何か?」

「そうです。それより急ぎましょう。私はミク様とアリス様を探します」

「分かった」

 俺がそう返事をすると、ベリトは微笑みながら国翼を駆使して空高くはばたいた。

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