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無念Ⅳ
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「侵入者を逃したそうじゃないか」
「大変申し訳ございません」
「何かやましい事でも考えているのではないか?」
アードルハイム皇帝に跪くガープ。恐らく他の人間だったら死刑になっているだろう。ガープがこの国一番の戦力だから罪は軽いのだろうか? そう考えていた矢先。ガープは異常な苦しみ方をしながら、吐血を始めた。
「どうだ? 少しは反省したか?」
「ふ……深く反省しております」
口元の血を拭いながら、体内で爆発が起きたような痛みを耐える。
「そうか。しかし約束の任期もこれで最後だな。よく働いてくれたよ」
アードルハイムはそう言って薄ら笑いを浮かべていた。同時に、ガープはアードルハイム皇帝に悟られないように、笑みを口角を釣り上げていた。あと数分でアードルハイム皇帝の呪縛から解放されるからだ。
「そうだな。せっかくだからパーティーでも開くか。その前に傷も治さねば」
すると、アードルハイム皇帝の皇室にゾロゾロと帝国兵が現れた。その帝国兵の表情を見る限り、穏やかなムードではないのは確かだ。剣幕のムードというのは確かで、とてもパーティーを開くような穏やかなムードではなかった。恐らく戦闘でもやるのか? いいだろう。という風にガープの瞳は燃えていた。
「アレを持ってきたか」
「はい」
そうして兵士が2人がかりで持ってきたカートに料理らしきものが、ガープの前に運ばれてきた。大きな蓋をされている銀皿が3つ並べられている。
「ガープの為に用意した特別な料理だ。開けてよいぞ」
その合図に、帝国兵が1人1つの蓋を開ける。そうして開けられて姿を現したのは胸糞が悪いモノだった。
「サーナ――。アーク――。タード……」
そこにあったのは、1人の女性と、2人の男性の生首だった。
「私の家族を――。話が違うではないか!」
「五月蠅い。ゴミが」
アードルハイム皇帝がそう言いながら右手で握り潰すような動作をした。ガープはその場で膝をついて心臓を押さえて苦しんでいた。正直なところ、ここまで胸糞悪いのは初めてかもしれない。奴は約束を破っていたのか?
「何故? と思うだろうが、そもそも貴様は反乱軍の団長ではないか」
すると、ガープは血の気が引いたような表情を浮かべながら、アードルハイム皇帝を見た。
「全く――。気付いていないとでも思ったか。情報網を舐めてもらっては困るな。なあ皆の者よ」
アードルハイム皇帝がそう言うと、帝国兵達は皆嘲笑っていた。こんなに腹立たしい事があってもいいものなのか。今すぐにでもアードルハイム皇帝をぶっ殺してやりたいくらいだ。
「そんな――」
そう言って再度大量の吐血をするガープ。何とか立ち上がろうとするが、心臓を抉るような痛みが、全身に回っているのだろう。意識も大分遠のいてきている。
「もういいぞ。やれ」
アードルハイム皇帝のその掛け声と共に、弱っているガープに帝国兵達の槍や剣が体中に刺された。しかし、ガープは魔族。弱っているとはいえど生命力が強い分、なかなか死ぬことなんてできない。ただひたすらに雑魚共に苦しめられていた。
この時。ガープは走馬灯がよぎっていた。産れたときは魔族という理由で人間からの弾圧を受けていた。しばらく歳をとった時点では、一般人より力を持っていたガープだったが、自分より弱い人間に対しては、全く手を出さなかった。それがガープが決めたルールだったからだ。どれほどの屈辱を受けようと耐え抜いて見せた。
そんな辛い子供時代を過ごして、12歳の頃には冒険者ギルドに所属していた。スラム街のようなところで育ったガープは、同じ種族の魔族と出会ったことが無かった為、所属した冒険者ギルドで初めて同じ種族の魔族と会ったようだ。そこで複数の魔族と仲間になり、長い間旅をしていた。そしてある時、コヴィー・S・ウィズダム博士と出会う事になる。俺も読んだ各国について色々と記されているレアな本の著者だ。どうやら彼は転生者で元々は生物学者をやっていたらしい。
この頃はまだ人間と魔族が血縁関係になるなど禁忌とまで言われていた時代だ。そんな時代に、コヴィー・S・ウィズダム博士は、人間と魔族の交配種は、更に強いDNAを持った種を生むことになると提唱していた。だから、想い人が人間ならそれはそれで名誉なことである。世間の目を気にするなと、サーナと恋人関係になることを全面的に推していた。
その助言により本格的にサーナと正式に付き合い愛を育んだ。2人の純愛を見たコヴィー・S・ウィズダム博士は、サーナにとある薬を渡した。それは不老不死の薬らしい。実のところ、このコヴィー・S・ウィズダム博士は、カルベリアツリーのダンジョンにいる魔物の交配種を、全面的に協力した人のようだ。だから、変わった魔物から、変わった素材を集めて、変わった薬を作るのも訳がないってことだ。ただ、こんな薬が世に出回っては、コヴィー・S・ウィズダム博士が、あらゆる国から狙われることなる。アードルハイム皇帝が見つけたら、もれなくコヴィー・S・ウィズダム博士は人間として扱われないだろう。だから、コヴィー・S・ウィズダム博士は、ガープに自分と関係性があることを口外しない約束に、サーナにその薬を渡したらしい。そして、飲んだことによって、彼女は美しいまま歳を重ねて、魔族であるガープと、同じく長寿を手に入れた。
このときにはすでにガープは1人で冒険をしていた。しかしそんなとき、冒険者ギルドに所属していた仲間達が、アードルハイム帝国に捕まり、酷い目に遭っている事を聞く。
しかし、帝国の強力な軍事力により、ガープは捕まってしまう。長い間地獄のような拷問を受けていたなか、あるときに家族が人質にとられて、帝国軍の軍事力として働くことになった――。そんな波乱万丈の人生だった。
そして、栄光と自由を求めた結果、自分の家族は惨殺された。酷く悔いた――。しかし、自分がやってきたことは間違っていたかと言われるとそうではない。仮にもこのアードルハイムという国に住んでしまって情が移った。騎士団長を務めて酷い世界を嫌というほど目にしたんだ。国民の為に何かできないかと考えていた。そうして立ち上げた反乱軍――。そして運は私に回って来た。
そう、ナリユキ・タテワキという異質の存在感を放った人間だ。多くの魔物を従える彼はまさに真の王だった。マーズベルの国民は多種多様だが、皆が明るくハツラツとしていた。そんな世界を私は見たかったのだ。
彼なら理解してくれるはずだ――。
彼に私の意志を届けたい――。
そう頭に想いをよぎらせていたとき、ガープは散々傷をつけられた挙句、ゴミのように捨てられた。そして俺達と運よく遭遇した。
そして、俺に知性・記憶の略奪と献上を使った時、ガープはこう想っていたらしい。
悔しい想いはたくさんした。家族は惨殺されたいた。それでもこの想いは彼に届けなくちゃいけないと――。
「俺は迷わないぜ。アンタの意志をしっかり受け取ったからな」
「そうか――。栄光と自由……」
ガープは柔らかい表情を浮かべながら、俺の腕のなかで絶命した。
俺は、アードルハイム皇帝達を絶対に許さない!
「大変申し訳ございません」
「何かやましい事でも考えているのではないか?」
アードルハイム皇帝に跪くガープ。恐らく他の人間だったら死刑になっているだろう。ガープがこの国一番の戦力だから罪は軽いのだろうか? そう考えていた矢先。ガープは異常な苦しみ方をしながら、吐血を始めた。
「どうだ? 少しは反省したか?」
「ふ……深く反省しております」
口元の血を拭いながら、体内で爆発が起きたような痛みを耐える。
「そうか。しかし約束の任期もこれで最後だな。よく働いてくれたよ」
アードルハイムはそう言って薄ら笑いを浮かべていた。同時に、ガープはアードルハイム皇帝に悟られないように、笑みを口角を釣り上げていた。あと数分でアードルハイム皇帝の呪縛から解放されるからだ。
「そうだな。せっかくだからパーティーでも開くか。その前に傷も治さねば」
すると、アードルハイム皇帝の皇室にゾロゾロと帝国兵が現れた。その帝国兵の表情を見る限り、穏やかなムードではないのは確かだ。剣幕のムードというのは確かで、とてもパーティーを開くような穏やかなムードではなかった。恐らく戦闘でもやるのか? いいだろう。という風にガープの瞳は燃えていた。
「アレを持ってきたか」
「はい」
そうして兵士が2人がかりで持ってきたカートに料理らしきものが、ガープの前に運ばれてきた。大きな蓋をされている銀皿が3つ並べられている。
「ガープの為に用意した特別な料理だ。開けてよいぞ」
その合図に、帝国兵が1人1つの蓋を開ける。そうして開けられて姿を現したのは胸糞が悪いモノだった。
「サーナ――。アーク――。タード……」
そこにあったのは、1人の女性と、2人の男性の生首だった。
「私の家族を――。話が違うではないか!」
「五月蠅い。ゴミが」
アードルハイム皇帝がそう言いながら右手で握り潰すような動作をした。ガープはその場で膝をついて心臓を押さえて苦しんでいた。正直なところ、ここまで胸糞悪いのは初めてかもしれない。奴は約束を破っていたのか?
「何故? と思うだろうが、そもそも貴様は反乱軍の団長ではないか」
すると、ガープは血の気が引いたような表情を浮かべながら、アードルハイム皇帝を見た。
「全く――。気付いていないとでも思ったか。情報網を舐めてもらっては困るな。なあ皆の者よ」
アードルハイム皇帝がそう言うと、帝国兵達は皆嘲笑っていた。こんなに腹立たしい事があってもいいものなのか。今すぐにでもアードルハイム皇帝をぶっ殺してやりたいくらいだ。
「そんな――」
そう言って再度大量の吐血をするガープ。何とか立ち上がろうとするが、心臓を抉るような痛みが、全身に回っているのだろう。意識も大分遠のいてきている。
「もういいぞ。やれ」
アードルハイム皇帝のその掛け声と共に、弱っているガープに帝国兵達の槍や剣が体中に刺された。しかし、ガープは魔族。弱っているとはいえど生命力が強い分、なかなか死ぬことなんてできない。ただひたすらに雑魚共に苦しめられていた。
この時。ガープは走馬灯がよぎっていた。産れたときは魔族という理由で人間からの弾圧を受けていた。しばらく歳をとった時点では、一般人より力を持っていたガープだったが、自分より弱い人間に対しては、全く手を出さなかった。それがガープが決めたルールだったからだ。どれほどの屈辱を受けようと耐え抜いて見せた。
そんな辛い子供時代を過ごして、12歳の頃には冒険者ギルドに所属していた。スラム街のようなところで育ったガープは、同じ種族の魔族と出会ったことが無かった為、所属した冒険者ギルドで初めて同じ種族の魔族と会ったようだ。そこで複数の魔族と仲間になり、長い間旅をしていた。そしてある時、コヴィー・S・ウィズダム博士と出会う事になる。俺も読んだ各国について色々と記されているレアな本の著者だ。どうやら彼は転生者で元々は生物学者をやっていたらしい。
この頃はまだ人間と魔族が血縁関係になるなど禁忌とまで言われていた時代だ。そんな時代に、コヴィー・S・ウィズダム博士は、人間と魔族の交配種は、更に強いDNAを持った種を生むことになると提唱していた。だから、想い人が人間ならそれはそれで名誉なことである。世間の目を気にするなと、サーナと恋人関係になることを全面的に推していた。
その助言により本格的にサーナと正式に付き合い愛を育んだ。2人の純愛を見たコヴィー・S・ウィズダム博士は、サーナにとある薬を渡した。それは不老不死の薬らしい。実のところ、このコヴィー・S・ウィズダム博士は、カルベリアツリーのダンジョンにいる魔物の交配種を、全面的に協力した人のようだ。だから、変わった魔物から、変わった素材を集めて、変わった薬を作るのも訳がないってことだ。ただ、こんな薬が世に出回っては、コヴィー・S・ウィズダム博士が、あらゆる国から狙われることなる。アードルハイム皇帝が見つけたら、もれなくコヴィー・S・ウィズダム博士は人間として扱われないだろう。だから、コヴィー・S・ウィズダム博士は、ガープに自分と関係性があることを口外しない約束に、サーナにその薬を渡したらしい。そして、飲んだことによって、彼女は美しいまま歳を重ねて、魔族であるガープと、同じく長寿を手に入れた。
このときにはすでにガープは1人で冒険をしていた。しかしそんなとき、冒険者ギルドに所属していた仲間達が、アードルハイム帝国に捕まり、酷い目に遭っている事を聞く。
しかし、帝国の強力な軍事力により、ガープは捕まってしまう。長い間地獄のような拷問を受けていたなか、あるときに家族が人質にとられて、帝国軍の軍事力として働くことになった――。そんな波乱万丈の人生だった。
そして、栄光と自由を求めた結果、自分の家族は惨殺された。酷く悔いた――。しかし、自分がやってきたことは間違っていたかと言われるとそうではない。仮にもこのアードルハイムという国に住んでしまって情が移った。騎士団長を務めて酷い世界を嫌というほど目にしたんだ。国民の為に何かできないかと考えていた。そうして立ち上げた反乱軍――。そして運は私に回って来た。
そう、ナリユキ・タテワキという異質の存在感を放った人間だ。多くの魔物を従える彼はまさに真の王だった。マーズベルの国民は多種多様だが、皆が明るくハツラツとしていた。そんな世界を私は見たかったのだ。
彼なら理解してくれるはずだ――。
彼に私の意志を届けたい――。
そう頭に想いをよぎらせていたとき、ガープは散々傷をつけられた挙句、ゴミのように捨てられた。そして俺達と運よく遭遇した。
そして、俺に知性・記憶の略奪と献上を使った時、ガープはこう想っていたらしい。
悔しい想いはたくさんした。家族は惨殺されたいた。それでもこの想いは彼に届けなくちゃいけないと――。
「俺は迷わないぜ。アンタの意志をしっかり受け取ったからな」
「そうか――。栄光と自由……」
ガープは柔らかい表情を浮かべながら、俺の腕のなかで絶命した。
俺は、アードルハイム皇帝達を絶対に許さない!
応援ありがとうございます!
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