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脱出作戦Ⅲ

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 真っ先に思ったのはこのレイという人の戦闘値はどれくらいのだろうと思っていた。だって「いつでもいいぞ」って言われて「えいや!」で飛び込むわけにもいかないし――。

 そう考えているとレイが私に向かって突っ込んできた。私はレイピアを取り出して正面から向かってくるレイの小太刀を受け止めた。

 キイン――。

 剣と剣が重なり合う金属がそう響いた。相手も身体向上アップ・バーストを使っているのだろうか。それにしても力が強い。小太刀二本で押されているから余計に力が加わっているのかな? いずれにせよ力勝負じゃ分が悪そうだ――。

 私は敢えて力を抜いた――。

 レイはここぞと言わんばかりに私に力をさらに入れて、私のレイピアを私の喉元に近付けてきた。ちょっとその力の入れられ方は予測していなかったけど。

 私は思い切り足を踏んづけた。

「なっ――!?」

 凄~く痛そうな顔をしていたけど、私はそのまま遠慮なく――。

燦爛の光線シャイニング・レイ!」

 私は掌から極大で美しく輝く光を放った。

 しかし、そう簡単には当たらず燦爛の光線シャイニング・レイはそのまま真っすぐ飛んで行って廊下の奥の方に消えた後、耳をつんざくような轟音と共に地震のような大きな揺れを起こす。

「……危ないな」

 と、レイも思わず冷え汗をかいて数秒だけ燦爛の光線シャイニング・レイが飛んで行った方角を眺めていた。

「あんな至近距離で光属性の上位アクティブスキルを喰らったら一溜りもないな」

 そう、レイがボソッと言っていたので、私のアクティブスキルがレイに対して十分にダメージを与えることができるのが分かった。それだけでも十分な収穫だ。燦爛の光線シャイニング・レイを撃っただけで私のMPは1/10も使っていないし。

「メリーザより大きい燦爛の光線シャイニング・レイは初めて見た」

「それはどうも」

 まあ今のところは私より大きい燦爛の光線シャイニング・レイを撃てる人なんて見たこと無いしね。大天使でさえ私よりか小さいから、森妖精エルフ何かに負けてたまるかって話なんだけど。

「次は私が攻撃を当てるぞ」

「どうぞ?」

 言ってからおもったけど凄い煽るな私。

「闇討ち」

 レイはそう言うと、私が目で追える限界に近い剣速が私に襲い掛かった。目だけでは反応するのが難しい速度――紙一重で避けたもののこの私が肩に少し傷を負った。ほんの数ミリの切り傷を負ってしまったのだ。

「驚いた。剣技スキルのなかでも自信のあるアクティブスキルだったのだが」

 レイは目を丸くしてそう呟いていた。彼の闇討ちというスキルを視ると、神速で相手を斬りつけるとある。また間合いは半径5mとあるのでなかなか厄介だ。

「いや危なかったよ実際に。まさか私が斬られるなんて思ってもみなかったし」

「何故避け切れた?」

「それは教えることできないよね」

 避けると硬質化をして正解だった。何故避ける事ができた? という問いに対してはフェンシングをしていたときのお姉ちゃん直伝の技だ。始めたての時はそれはもう攻撃に当たりまくっていて、他の部員と対決するにしても下手くそなほうだった。そんなときにお姉ちゃんに教えてもらった技だ。

「呼吸で計る?」

「そう呼吸で計るの」

「意味が分からないんだけど――そんな漫画みたいな話」

「言葉で説明するのは限界があるんだけどね。簡潔に言うと相手の目線、出ているオーラ、筋肉の動きの3つをまとめて呼吸で計るっていう表現を、私を教えてくれた先生が言っていたよ」

「意味分からない」

「まあ練習あるのみよ」

 と、言われてお姉ちゃんと練習していた。これを私なりにやってみると、相手が考えている事と、その目を見れば不思議と太刀筋が見えてくるものだ。なので見えている予測というものだ。それが出来るので目で追う事と、予測している太刀筋と違う方向に避けるということになる。不思議なもので、これは勝手に体が動くから積み重ねてた経験則というべきか――。

 まあ、いずれにしろ剣を硬質化の強化バフで散々剣を折ってきたのに、かすり傷とはいえど出血するほどの切れ味は正直怖い。防戦一方という状況になると非常に厄介だ。

 早めに決着つけないとマズい――長期戦になったら疲労で勘が鈍っていく。

 今度は私がレイピアで流星突きを繰り出した。レイは私の流星突きが見えているのか1つ1つ2本の小太刀で受け流していく。30発全て受け流されると、次はレイから攻撃を仕掛けてきた。

 真向まっこう逆風さかかぜ、右薙ぎ、左薙ぎ、刺突つきの5連撃――。って言っても、2本の小太刀だから、真向まっこう逆風さかかぜの同時攻撃。右薙ぎ、左薙ぎの同時攻撃。そして、最後は2本の小太刀で刺突つきという嫌がらせのような連撃なんだけど。

「剣技ではらちが明かなそうだ」

 なん――とか! 全てレイピアで受け切ったけど正直キツ過ぎる。これ――フェンシングやっていなかったら絶対にいっぱい斬られていた。

「と、言っても剣技以外なら私のほうが分がありそうだけど?」

「凄い自信だな」

「私のスキル見えていないでしょ? 鑑定士Ⅴだもんね」

「貴様もじゃないのか?」

「鑑定士Ⅵだけど?」

 私がそう言うとレイは「チッ」と舌打ちをした。

「成程。やりづらい訳だ」

 レイはニッと笑みを浮かべるなり小太刀を構えた。さてどう出る――?
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