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巨人と亜人Ⅰ

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「成程。そういうことか。貴様達では無いのは分かった。何より嘘ではないことは悪魔との機密契約イビル・コントラクトで証明されているからな」

 マカロフ卿はそう言って俺の方に体を向けて来た。えらく素直で良かった。コードの命令とは言えどそこはきちんと悪かったと認めてもらえて内心ホッとした。

「悪かったとは素直に認めよう。しかし、貴様達を潰すという結果は変わらない。何よりこれはコードボスの命令だからな」

 マカロフ卿はそう言って俺を睨めつけてきた。

「その破壊の石ってのをどうしても入手したいからか?」

「違うな。貴様の国を亡ぼすのが目的だ。もっと言えば我々からすれば貴様が消えてくれればそれでいい」

「まあそれは嫌だわな」

「なら再戦だ。メリーザの報復では貴様という存在を認めたうえで殺す。それが我々黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイドの役目だ」

 マジで面倒臭い奴達に目を付けられたな。もはやアヌビスに助けてほしいと思うレベル。

     ◆

 ナリユキ君の指示でロドベルトさんをイメージして転移テレポートイヤリングを使った。そして到着して眼下には広がる光景は、飛竜ワイバーンの皆が血を出して横たわっている凄惨なものだった。すでに50頭近くの飛竜ワイバーン達が瀕死状態に陥っている。私は急いで天使の翼エンジェル・ウイング飛竜ワイバーン達が横たわっている中央に降り立った。

「皆起き上がって――女神の加護パナケア・ブレス

 祈りを捧げながらそう言うと、近くにいた飛竜ワイバーン達の傷は癒えていった。何頭かは私を見るなり近づいて頬ずりをしてきた。また長い舌で舐めてくるなどの愛情表現もしてくれた。

 良かった――けど問題はロドベルトさんだ。一体にどこにいるんだろう?

 私は再び天使の翼エンジェル・ウイングを羽ばたかせて高度20m程の地点に来ていた。すると、転移テレポートした場所とは逆の方角で、火炎放射フレイム・バーストを照射しながら巨大な生物と戦っている飛竜ワイバーン達がいた。その中でも一際大きい飛竜ワイバーンがいたのでロドベルトさんだとすぐに分かった。

 そして、明らかに大きい巨大な生物の正体は、漫画やアニメでよく見る巨人だ。私の高さと同じ高さほどの所に巨人族の頭があるのを考えると、体長はおよそ20m程だ。ベルゾーグさんが元の姿になって立ったら恐らくあれくらいだろう。デカイ――デカすぎる。

「皆はここで傷を癒していて! 私は応戦してくる!」

 私がそう言ってロドベルトさん達が戦っている山岳地帯の方へ飛んでいくと、飛竜ワイバーン達は吼えて反応してくれた。ノア君がいればこの子達が何て言っているか分かるんだけど多分ありがとうって言ってくれている気がする。

 1km程先にいる巨人が大きく口を開けてエネルギーを溜めていた。マズい――この辺りを吹き飛ばす気だ――。

 私は身体向上アップ・バーストを使って光のような速さで向かうと、その口を大きく開いてエネルギーを溜めている一体の巨人の首を目掛けて構える。

「真・流星突き!」

 このアクティブスキルは流星突きとは違って一太刀に膨大なエネルギーを込めるスキル――。絶対切断との相性が良いこのスキルは巨人の首を横から刺し、そのまま首をまるでドリルのように突き破った。

 見事一体の巨人の首は完全に切断されてしまい、地面へと落下していった。

 突然の出来事にロドベルトさんも残りの巨人も驚いていた。

 眼下に見える黒いローブに身を包んだような人が数人――私を見ているものの光が宿っていないことを考えると、彼等には目という概念がないようだ。

 で――それと対峙しているのが、アリシアさんとミーシャさん達だった。

「ミク様――!」

 そう下では歓喜に満ちた声が上がっていた。う~ん。承認欲求が満たされるううう!

「貴様! 何者だ!」

 そう問いかけてきたのはマカロフ卿が言っていたアグリオスという巨人だった。銀色の兜で頭と素顔を隠し、上半身は裸だけど、下半身はしっかりと鎧で身を守っている風貌を見ると、どこかローマの剣闘士グラディエーターを彷彿させる。

 ステータスを視る限りでは鑑定士Ⅴを持っているけど、私が究極の阻害者アルティメット・ジャマーを持っているから分からないのだろう。

「私はミク・アサギよ」

「貴様がそうか……よくも同胞を……!」

 自分の背丈と同じくらいの大きさの巨大すぎる槍を持つ右手には、異常すぎる程に力が入っていた。堪忍袋の緒が切れると言ったところだろうか。まあ、いきなり首を落とした私も異常者だと言われればそれまでだけど。

「許さん!」

 そう吼えた巨人のアグリオス。その雄叫びで、アリシアさん達が揺れていた。それを見る限り声だけで地震を起こしたのだ。念波動のスキルが無いから分からない――。

「ミク様! その巨人の戦闘値は5,800です!」

 そうアリシアさんが叫んでいた。5,800か――。私よりかめちゃくちゃ上なんだけど。

 私はそう思うと冷や汗が噴き出して来た。大丈夫。大丈夫だ。限界は超えるためにあるんだ。戦う前から諦めるなっ――!

 頬を叩いて気合いを入れたと同時に、アグリオスは私に向かって槍を振りかざして来た――!
 
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