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脱出を目指してⅢ
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「別に嘘はついていない」
ランベリオンはそう言っていたけど、私からすれば嘘ばかりついているじゃない! って言いたくなる。
「それで? 私達を嗅ぎまわっていた理由は何だ?」
この場面で嘘をつくのはなかなか難しい――。正直に言ってもいいような気がする。
「貴様等が我等に喧嘩を売ったのだろう?」
ランベリオンはそう言ってRの事を睨めつけた。明らかに喧嘩腰だ。
「さて喧嘩を売ったとは何の事だろうか?」
「とぼけるな。マーズベルにヴェドラウイルスを撒いた男がいる。そいつQと名乗る男だ。奴は金色蛇の仮面を付けており、その仮面の男の足取りを掴む為に我等は色々と嗅ぎまわっていたのだ。知らないとは言わせないぞ」
ランベリオンの口調を考えると結構怒っている――まあこのRっていう男も白々しいからな~。それに、アルファベット順にいくと、Qの次はRだから知らない訳が無いはずなんだけど――嘘、適当。今のは無し。
「1つ言っておくが我々の組織でも構成員がどのような事をしているか分からない場合もある。それに構成員同士が素顔を知らないという事もザラにあるからな」
「ビジネスライク的な感じなのかしら? それは本当?」
「本当だ」
するとランベリオンは複雑そうな表情を浮かべていた。構成員と話す機会があっても足取りを掴むのが難しいという現実に直面してしまったからだ。
「なので結論から言うと私は知らない。しかし、創世という組織があると知られたのは我々が活動するにあたって非常にマズい」
「やはり殺すのか? やるならさっさとやるがよい」
ランベリオンはそう言ってRを睨めつける。何かランベリオンってたまに不器用よね。スキルが使えないのにやたらと好戦的だ。本当に止めてほしい。
「そんなに死にたいのであれば殺してやらんでも無いが、私からしても2人はなかなかの強者だ。殺すには惜しい――なので、ここの檻に閉じ込めたという訳さ。どうだ? いっそのことここで暮らさないか?」
おっと――急な展開ね――。でも私とランベリオンはマーズベルの国民。意地でもここの国民にはならないわ。
「断る」
「私もよ」
私とランベリオンがそう答えるとRはしばらく沈黙した。
「腹が減っているだろう。食事を持ってきてやる。しばらく考えるんだ」
Rはそう言って私達の前から去って行った。
「食事が出るのは分かるけど何を考えているのかしら」
「全く読めないな」
「そうね――それにあの仮面があるとやっぱり話をしているときの表情が分からないから、どういった感情で話をしているのか読みづらいわ」
「とりあえずは生き残れそうだな。別に話さなくても良かったんじゃないかと思ってきた」
「流石に何も話をしなかったら拷問されていたわよ」
「そうか?」
「そうよ。でもまあ思いつきにしてはなかなか良かったストーリーだったと思うよ」
「ストーリー? 何でう――」
ランベリオンが嘘と言おうとしていたから、私はランベリオンの口を閉じた。
「もしかしたら監視されているかもしれないでしょ? ほら、アードルハイムみたいに監視カメラみたいなのがあるかもしれない」
「その発想はなかった。悪い――でもそれだと我等の行動もバレるのではないか?」
「まあそこは何とか誤魔化すことができるでしょ」
私がそう言うとランベリオンはジトリと私の顔を除いて来た。
「何よ?」
「うぬはしっかりそうに見えて割と適当だよな」
「今更ね」
私がそう言うとランベリオンはつまらなさそうな表情を浮かべていた。からかおうとしたのだろうか?
「ご飯が食べられると思ったら急激にお腹が減ってきたな」
ランベリオンはそう言ってぐう~とお腹を鳴らした。当然私も同じだ。ご飯が食べられると思ってからお腹が減って仕方ない。何しろお腹が減りすぎてお腹が痛いくらいだ。
「とりあえずしばらく休もう」
「賛成――ところでランベリオンは眠たくないの?」
「実は眠たいのだ。眠気と腹減りが凄まじい」
「お風呂に入りたいしね」
「そうだな。贅沢は言わないから水浴びくらいはしたいものだ。ミユキ殿も我と一緒の檻では辛かろう」
「そうでも無いわよ。とりあえず早く出て元の生活に戻りたいわね。ここにずっと閉じ込められているのは人として大事な物を失う気がするわ」
「それを考えるとアードルハイムで捕まっていた人々は苦労をしたものだな」
「そうね。不憫だったと思うわ」
私はそう言いながらアードルハイムで捕まっていた人々を思い出すと同時に、改めてタテワキさん達に感謝をした。マーズベルの皆が来てくれなければアードルハイムは未だにアードルハイム皇帝の好きにさせられていた――いつもと変わらない地獄の日々を皆は送らないといけなかったのだ。今となっては普通の送る人どころか、マーズベルで悠々自適の生活を送っている人もいる。
私はそんな事を考えていると再び誰かが来る足音がした。しかも1つではなかった。
「R様も別の国から来た人間に食料を与えるなど人柄がよすぎるよな」
「そうだな」
そう言って歩いて来たのは白い鎧を身に纏った2人の兵士だった。スキルを使えない今、鑑定士さえ使えないから兵士の実力がどんなものかも分からない。見た感じはそれほど強そうではないけど決して弱くは無い。鍛え上げていたと思っていたアードルハイムの帝国兵より強いだろう。
「ほら食べろ」
そう兵士にぶっきらぼうに置かれた食料はバスケットに入ったパンと赤い木の実と野草のようなものをすりつぶしてニンニクの香りを付けた料理だった。量はそれほど多くないものの、なかなか美味しそうだった。
ランベリオンはそう言っていたけど、私からすれば嘘ばかりついているじゃない! って言いたくなる。
「それで? 私達を嗅ぎまわっていた理由は何だ?」
この場面で嘘をつくのはなかなか難しい――。正直に言ってもいいような気がする。
「貴様等が我等に喧嘩を売ったのだろう?」
ランベリオンはそう言ってRの事を睨めつけた。明らかに喧嘩腰だ。
「さて喧嘩を売ったとは何の事だろうか?」
「とぼけるな。マーズベルにヴェドラウイルスを撒いた男がいる。そいつQと名乗る男だ。奴は金色蛇の仮面を付けており、その仮面の男の足取りを掴む為に我等は色々と嗅ぎまわっていたのだ。知らないとは言わせないぞ」
ランベリオンの口調を考えると結構怒っている――まあこのRっていう男も白々しいからな~。それに、アルファベット順にいくと、Qの次はRだから知らない訳が無いはずなんだけど――嘘、適当。今のは無し。
「1つ言っておくが我々の組織でも構成員がどのような事をしているか分からない場合もある。それに構成員同士が素顔を知らないという事もザラにあるからな」
「ビジネスライク的な感じなのかしら? それは本当?」
「本当だ」
するとランベリオンは複雑そうな表情を浮かべていた。構成員と話す機会があっても足取りを掴むのが難しいという現実に直面してしまったからだ。
「なので結論から言うと私は知らない。しかし、創世という組織があると知られたのは我々が活動するにあたって非常にマズい」
「やはり殺すのか? やるならさっさとやるがよい」
ランベリオンはそう言ってRを睨めつける。何かランベリオンってたまに不器用よね。スキルが使えないのにやたらと好戦的だ。本当に止めてほしい。
「そんなに死にたいのであれば殺してやらんでも無いが、私からしても2人はなかなかの強者だ。殺すには惜しい――なので、ここの檻に閉じ込めたという訳さ。どうだ? いっそのことここで暮らさないか?」
おっと――急な展開ね――。でも私とランベリオンはマーズベルの国民。意地でもここの国民にはならないわ。
「断る」
「私もよ」
私とランベリオンがそう答えるとRはしばらく沈黙した。
「腹が減っているだろう。食事を持ってきてやる。しばらく考えるんだ」
Rはそう言って私達の前から去って行った。
「食事が出るのは分かるけど何を考えているのかしら」
「全く読めないな」
「そうね――それにあの仮面があるとやっぱり話をしているときの表情が分からないから、どういった感情で話をしているのか読みづらいわ」
「とりあえずは生き残れそうだな。別に話さなくても良かったんじゃないかと思ってきた」
「流石に何も話をしなかったら拷問されていたわよ」
「そうか?」
「そうよ。でもまあ思いつきにしてはなかなか良かったストーリーだったと思うよ」
「ストーリー? 何でう――」
ランベリオンが嘘と言おうとしていたから、私はランベリオンの口を閉じた。
「もしかしたら監視されているかもしれないでしょ? ほら、アードルハイムみたいに監視カメラみたいなのがあるかもしれない」
「その発想はなかった。悪い――でもそれだと我等の行動もバレるのではないか?」
「まあそこは何とか誤魔化すことができるでしょ」
私がそう言うとランベリオンはジトリと私の顔を除いて来た。
「何よ?」
「うぬはしっかりそうに見えて割と適当だよな」
「今更ね」
私がそう言うとランベリオンはつまらなさそうな表情を浮かべていた。からかおうとしたのだろうか?
「ご飯が食べられると思ったら急激にお腹が減ってきたな」
ランベリオンはそう言ってぐう~とお腹を鳴らした。当然私も同じだ。ご飯が食べられると思ってからお腹が減って仕方ない。何しろお腹が減りすぎてお腹が痛いくらいだ。
「とりあえずしばらく休もう」
「賛成――ところでランベリオンは眠たくないの?」
「実は眠たいのだ。眠気と腹減りが凄まじい」
「お風呂に入りたいしね」
「そうだな。贅沢は言わないから水浴びくらいはしたいものだ。ミユキ殿も我と一緒の檻では辛かろう」
「そうでも無いわよ。とりあえず早く出て元の生活に戻りたいわね。ここにずっと閉じ込められているのは人として大事な物を失う気がするわ」
「それを考えるとアードルハイムで捕まっていた人々は苦労をしたものだな」
「そうね。不憫だったと思うわ」
私はそう言いながらアードルハイムで捕まっていた人々を思い出すと同時に、改めてタテワキさん達に感謝をした。マーズベルの皆が来てくれなければアードルハイムは未だにアードルハイム皇帝の好きにさせられていた――いつもと変わらない地獄の日々を皆は送らないといけなかったのだ。今となっては普通の送る人どころか、マーズベルで悠々自適の生活を送っている人もいる。
私はそんな事を考えていると再び誰かが来る足音がした。しかも1つではなかった。
「R様も別の国から来た人間に食料を与えるなど人柄がよすぎるよな」
「そうだな」
そう言って歩いて来たのは白い鎧を身に纏った2人の兵士だった。スキルを使えない今、鑑定士さえ使えないから兵士の実力がどんなものかも分からない。見た感じはそれほど強そうではないけど決して弱くは無い。鍛え上げていたと思っていたアードルハイムの帝国兵より強いだろう。
「ほら食べろ」
そう兵士にぶっきらぼうに置かれた食料はバスケットに入ったパンと赤い木の実と野草のようなものをすりつぶしてニンニクの香りを付けた料理だった。量はそれほど多くないものの、なかなか美味しそうだった。
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