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赤髪の女性Ⅲ
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「そんな変な事言った?」
「変よ! 止めておいた方がいい。と、いうかそもそもこの島から逃げた方がいい」
フーちゃんにそう言われて私とランベリオンは顔を合わせて思わず苦笑いを浮かべた。
「その事なんだけど――出ようとしたら」
「結界みたいなのが張られていて出れなかったのだ」
「成程――それは厄介な事になっているな。2人は結界を解除できないという事だよな?」
「そういう事よ」
「それが出来たら苦労せん」
「では結界を張っている守護者たちと戦わないといけないな」
「守護者?」
「うむ。この島の結界は東西南北で結界を張っている守護者と呼ばれる魔物――あるいは人がいる。その者達を倒して、結界の力を弱めていくしかない」
「そんなRPGみたいな事しないといけないのね」
「骨が折れるな」
「そう言うな。倒れている私を庇ってくれたお礼だ。私も手伝うさ」
「それは有難いけど強さはどれくらいなの?」
「正直分からない。ただ、島の皆が慕っているくらいだ――相当強いと思う。勿論そのバックにはあの組織が付いていると思うがな」
「て――事は――」
「創世に本格的に喧嘩を売る訳ね」
「――創世? それが奴等の名前なのか?」
「そうよ。秘密結社創世――私が今まで聞いたメンバーは、さっきのAに、100年前にこの島に訪れたC。それにヴェドラウイルスを撒いたQ。最後に私達を襲撃してきたR。名前だけだと既に4人知っている。そのうちの、QとCは会ったことは無いけどね」
「そうか――。と、いうかヴェドラウイルス? また凄い話だな。ヴェドラウイルスと何か関わりがあるのか?」
フーちゃんはそう前のめりになって私達に問いかけて来た。やはり、ランベリオンが有名人のように、ヴェドラウイルスというフレーズもまた有名な話なのだろう。
「そうだ。あの忌まわしきアーディン王国を滅亡させたウイルスだ。それと同等の事件がマーズベルで起きてな。我がの国主、ナリユキ・タテワキ閣下はアードルハイム帝国の第一騎士団団長、魔族のガープのユニークスキルを譲り受けた。そのスキルを駆使して、ヴェドラウイルスが感染して運ばれた人間の記憶を辿った時にQと名乗る男から、ヴェドラウイルスの薬を飲んで、マーズベルで観光させて、菌を拡散させる作戦があったことを突き止めた」
「それはまた随分と酷い話だな。マーズベルは無事なのか?」
「無事だとは思うがな。もしなにかあるなら、転移でこっちに来るか、念話で話しかけてくるだろう」
「優秀な回復士がいるのだな。それでここまで来た理由は?」
「Qの正体を突き止めるためだ。Qは前提としてA達と同じような仮面を付けている。そこで情報収集していくうちに、この島に創世の幹部達が作った国があると聞いた。つまりそれが楽園なのだ」
ランベリオンの説明に「成程」と頷くフーちゃん。
「しかし、幹部の強さも幹部が何人いるかも分からないぞ?」
「あ――それは分かるわ。もうここまで来たんだもん。確定よ」
私がそう言うとフーちゃんはキョトンとした表情を浮かべていた。
「アルファベットを使っている時点で創設者は確実に私と同じ転生者ね。それに幹部の名前にアルファベットが付けられているのであれば、幹部の人数はボスも含めて26人か、幹部だけがアルファベットで26人で、ボスを入れて27人という二択の可能性が高いわね」
「アルファベット? 聞いたことが無い言語だな」
「アルファベットというのは転生者達の世界で使われている共通言語だ。ミユキ殿は日本人だから日本語という言語を使う」
ランベリオンはそう言って、土に爪で字を書き始めた。そこには雨宮美雪と書かれていた。
「私、ランベリオンに漢字で名前を教えたことあるっけ? しかも字綺麗だし」
「ナリユキ殿に教えてもらったのだ。我は漢字が好きなので、帯刀成幸、麻木美玖、藤原漣、杉本梓全員書けるぞ!」
と、得意気に話してきたんだけど。しかもめちゃくちゃ嬉しそうに。
「確かに漢字というものはなかなか渋いな。私も名前を付けられるなら漢字がいい――」
「残念ながら漢字の人物と我は会ったことが無いな」
「私も無いわよ」
「では、私が第一号になろう!」
と、興奮気味に言っている。漢字を名前にしても読めない人ばかりだからどうなんだろうって感じではあるけど。
「うぬ――我より年上だろう? 今まで名前を付けなかったのにそんなに急に付けたくなるものなのか?」
「確かに1,300年程は生きているが――そう言われるとそうだな――」
あれ? フーちゃんってもしかしてちょっと面倒くさい人なのかしら?
「まあ――とりあえずは事情が分かったが今日は大人しくしよう。何しろお主等も疲れておるだろう?」
「確かに――」
「ずっと捕まっていたからな」
「お主等少し臭うもんな」
それは本当にごめんなさい。捕まっていたから仕方ないじゃん。
「ここよりもう少し進んだところにある川は流れが緩やかだ。そこで今夜は野宿しよう。そこならば水浴びもできるだろう」
「それは助かるわ!」
私がそう言うとフーちゃんは満足気な笑みを浮かべていた。
「我も水浴びをしたい。それに神経を使いまくっていたから少し疲れた。ミユキ殿護衛頼む」
「いいわね。私も寝たいけど不眠のお陰で三大欲求の1つが無くなっているもの」
「それは気の毒だな」
フーちゃんにもそう言われた。やっぱりいるようでいらないスキルだわ。私が転生前に寝ずに仕事をしていた苦しい時期があったからって、それをパッシブスキルにしなくてもいいじゃない。
「行くぞミユキ殿」
「ええ」
こうしてヴァース島で不死鳥のフーちゃんと奇妙な出会いをして、三人でヴァース島での生活の第二幕が始まろうとしていた。今まで以上に気合いを入れよう。
「変よ! 止めておいた方がいい。と、いうかそもそもこの島から逃げた方がいい」
フーちゃんにそう言われて私とランベリオンは顔を合わせて思わず苦笑いを浮かべた。
「その事なんだけど――出ようとしたら」
「結界みたいなのが張られていて出れなかったのだ」
「成程――それは厄介な事になっているな。2人は結界を解除できないという事だよな?」
「そういう事よ」
「それが出来たら苦労せん」
「では結界を張っている守護者たちと戦わないといけないな」
「守護者?」
「うむ。この島の結界は東西南北で結界を張っている守護者と呼ばれる魔物――あるいは人がいる。その者達を倒して、結界の力を弱めていくしかない」
「そんなRPGみたいな事しないといけないのね」
「骨が折れるな」
「そう言うな。倒れている私を庇ってくれたお礼だ。私も手伝うさ」
「それは有難いけど強さはどれくらいなの?」
「正直分からない。ただ、島の皆が慕っているくらいだ――相当強いと思う。勿論そのバックにはあの組織が付いていると思うがな」
「て――事は――」
「創世に本格的に喧嘩を売る訳ね」
「――創世? それが奴等の名前なのか?」
「そうよ。秘密結社創世――私が今まで聞いたメンバーは、さっきのAに、100年前にこの島に訪れたC。それにヴェドラウイルスを撒いたQ。最後に私達を襲撃してきたR。名前だけだと既に4人知っている。そのうちの、QとCは会ったことは無いけどね」
「そうか――。と、いうかヴェドラウイルス? また凄い話だな。ヴェドラウイルスと何か関わりがあるのか?」
フーちゃんはそう前のめりになって私達に問いかけて来た。やはり、ランベリオンが有名人のように、ヴェドラウイルスというフレーズもまた有名な話なのだろう。
「そうだ。あの忌まわしきアーディン王国を滅亡させたウイルスだ。それと同等の事件がマーズベルで起きてな。我がの国主、ナリユキ・タテワキ閣下はアードルハイム帝国の第一騎士団団長、魔族のガープのユニークスキルを譲り受けた。そのスキルを駆使して、ヴェドラウイルスが感染して運ばれた人間の記憶を辿った時にQと名乗る男から、ヴェドラウイルスの薬を飲んで、マーズベルで観光させて、菌を拡散させる作戦があったことを突き止めた」
「それはまた随分と酷い話だな。マーズベルは無事なのか?」
「無事だとは思うがな。もしなにかあるなら、転移でこっちに来るか、念話で話しかけてくるだろう」
「優秀な回復士がいるのだな。それでここまで来た理由は?」
「Qの正体を突き止めるためだ。Qは前提としてA達と同じような仮面を付けている。そこで情報収集していくうちに、この島に創世の幹部達が作った国があると聞いた。つまりそれが楽園なのだ」
ランベリオンの説明に「成程」と頷くフーちゃん。
「しかし、幹部の強さも幹部が何人いるかも分からないぞ?」
「あ――それは分かるわ。もうここまで来たんだもん。確定よ」
私がそう言うとフーちゃんはキョトンとした表情を浮かべていた。
「アルファベットを使っている時点で創設者は確実に私と同じ転生者ね。それに幹部の名前にアルファベットが付けられているのであれば、幹部の人数はボスも含めて26人か、幹部だけがアルファベットで26人で、ボスを入れて27人という二択の可能性が高いわね」
「アルファベット? 聞いたことが無い言語だな」
「アルファベットというのは転生者達の世界で使われている共通言語だ。ミユキ殿は日本人だから日本語という言語を使う」
ランベリオンはそう言って、土に爪で字を書き始めた。そこには雨宮美雪と書かれていた。
「私、ランベリオンに漢字で名前を教えたことあるっけ? しかも字綺麗だし」
「ナリユキ殿に教えてもらったのだ。我は漢字が好きなので、帯刀成幸、麻木美玖、藤原漣、杉本梓全員書けるぞ!」
と、得意気に話してきたんだけど。しかもめちゃくちゃ嬉しそうに。
「確かに漢字というものはなかなか渋いな。私も名前を付けられるなら漢字がいい――」
「残念ながら漢字の人物と我は会ったことが無いな」
「私も無いわよ」
「では、私が第一号になろう!」
と、興奮気味に言っている。漢字を名前にしても読めない人ばかりだからどうなんだろうって感じではあるけど。
「うぬ――我より年上だろう? 今まで名前を付けなかったのにそんなに急に付けたくなるものなのか?」
「確かに1,300年程は生きているが――そう言われるとそうだな――」
あれ? フーちゃんってもしかしてちょっと面倒くさい人なのかしら?
「まあ――とりあえずは事情が分かったが今日は大人しくしよう。何しろお主等も疲れておるだろう?」
「確かに――」
「ずっと捕まっていたからな」
「お主等少し臭うもんな」
それは本当にごめんなさい。捕まっていたから仕方ないじゃん。
「ここよりもう少し進んだところにある川は流れが緩やかだ。そこで今夜は野宿しよう。そこならば水浴びもできるだろう」
「それは助かるわ!」
私がそう言うとフーちゃんは満足気な笑みを浮かべていた。
「我も水浴びをしたい。それに神経を使いまくっていたから少し疲れた。ミユキ殿護衛頼む」
「いいわね。私も寝たいけど不眠のお陰で三大欲求の1つが無くなっているもの」
「それは気の毒だな」
フーちゃんにもそう言われた。やっぱりいるようでいらないスキルだわ。私が転生前に寝ずに仕事をしていた苦しい時期があったからって、それをパッシブスキルにしなくてもいいじゃない。
「行くぞミユキ殿」
「ええ」
こうしてヴァース島で不死鳥のフーちゃんと奇妙な出会いをして、三人でヴァース島での生活の第二幕が始まろうとしていた。今まで以上に気合いを入れよう。
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