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ノックⅢ

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「生かしておいても意味が無いな」

 俺がそう言うとノックはニヤリと口角を吊り上げていた。

「拙僧はこの者を連行するほうが良いと思うぞ?」

「連行しても意味が無いだろ。何の得があるんだ。殺す方がいいだろ」

「我はこのまま吐くまで拷問だな」

 スカーは連行。カリブデウスは拷問――全く意見が合わずにイライラするな。

「おい吐くなら今のうちだぞ? 今からやろうとしている拷問は俺も流石に引くレベルだ」

「とても冒険者とは思えないな」

 ただイラッとした。それだけだ。

「ガッ……!」

 ノックの顔面を蹴り飛ばした時に付着した血が俺の靴を紅に染めた。

「やはりを汚職している人間の血は汚いな」

 しかしただの雑魚ではないようだ。こんな奴でも俺の蹴りを喰らって意識を保っている。そこだけは褒めてやろう。

「普通の人間なのにカルディアの蹴りを喰らって平気なのは凄いな」

「まあ顔は変形しているがな」

 カリブデウスはそう言ってノックの顔を持ち上げた。俺の蹴りで目は大きく腫れてしまい歯が何本か抜けてしまっている。割と本気で蹴ってしまったからな。寧ろ顔面が吹き飛んでも可笑しくなったが。

「貴様等には何一つ情報は渡さないぞ」

「それが最後の言葉で良かったか?」

 俺は貴族が所有していた拳銃ピストルをノックの額に突き付けた。

「死ね」

 俺はそう言われてノックに唾をかけられた。

「死ぬのはお前だ」

 俺は拳銃ピストル引き金を引いた。パン! という音がこの死体ばかりある地下室に響いた。ノックは壁にもたれかかったまま額から血を流して息を引き取った。

 ただ死体を増やしただけ――俺達がやっていることは冒険者としてはあるまじき行為かもしれない。

「死体多いな」

 スカーはそう呟いた。確かに辺りを見るとノックを入れて15人程の死体がある。そう思うとふと気になった事があった。ナリユキ・タテワキはこの光景を見て何というのだろうか。大方怒るだろうな――。

「手段は選ばないとはいえ」

「どっちが悪者か分からんな」

 スカーの後にカリブデウスがそう呟いた。

「別に今更気にすることでもないだろ。ゴミがいなくなれば平和になるだろ?」

「それもそうだな」

 スカーはそう頷いた。

「さて」

 俺はノックの胸に手を伸ばし、そのままノックの心臓を体から抜き取った。

心臓喰らいカルディア・グールはいいな。水蛇竜ヒュドラの我からすれば人間の心臓は羨ましいのだが」

「拙僧は正直微妙だな。人間の心臓は他の動物と比べて血生臭いのでマズい。よく生で食えたものだ」

「好んでこんな奴の心臓を食べる訳が無いだろ。ただ、コレを食うだけでコイツの情報も手に入るし強くなれるんだ」

 俺はそう言いながらいつも通り心臓に食らいついた。噛めば噛むほどコイツの情報が手に入る。まあ美味しくはないがな。

 俺が心臓を全て食べ終わるとカリブデウスとスカーが俺の顔を覗いてきた。

「どうだ? 情報を得ることはできたか?」

 そうスカーが俺に問いかけてきた。

「ああ……。なかなか面白い展開だぞ。どこから説明しようか――」

 予想を超える展開だ。ノックの心臓から得た情報は非常に有力な情報だった。連行して正解だったな――。

「まずは死んだと思っていたディアン公爵だが生きていた」

「は?」

 俺がそう言うとカリブデウスもスカーもそう返事をしてきた。当然の反応だ。

「ディアン公爵は死んだと見せかけていたらしいな」

「何でそんな事をするんだ?」

 カリブデウスがそう質問をしてきた。

「答えは非常にシンプルだ。Qキューの正体はどうやらディアン公爵だったようだな。神様と拝めるのは、ログウェルを建国したのが、ディアン公爵ことQキューが所属している創世ジェスという組織の人間が創ったらしい。ディアン公爵はそこに所属する幹部の人間だから神と呼ばれていたのだろう」

「面白い展開だな」

「しかし面白いと言っても死んでいないのであれば、一体ディアン公爵はどこに行ったのだ?」

「それは心臓を食っても分からなかったな。ただ思い当たるところはある」

「それはどこだ?」

 カリブデウスとスカーは俺にそう問いかけてきた。

「ついてくれば分かる。まずは死体を処理しよう」

 俺達はそこから数分かけて死体を処理した。と言ってもカリブデウスとスカーが人型化ヒューマノイドを解除して死体を丸呑みにしただけの話だが――。残っているのは奴等の血痕のみ。それらの血は全てカリブデウスの水で流した。これだけやっていればバレることは無いだろう。

「相変わらず2人共凄い食欲だな」

 水蛇竜ヒュドラ妖鬼ようきになっている2人はここにあった死体を全て食らい尽くした。

「なかなか美味しかったぞ。貴族だからいいものを食べていたらしいな」

「栄養豊富だった」

 俺が言うのも何だがその台詞は悪役の台詞にしか聞こえない。まあ下手に隠すより胃袋に入れて消化するほうが一番バレずに証拠隠滅には持って来いなのだ。

「野性としてはいいのか? 人間を食べられるというのは?」

「別に食べれなくても問題はないが、合法で食べることができるのはいいな」

「合法では無いけどな」

 そうスカーが呟いた。今はこうして人間は竜と共存しているが、本来であればギルドに多種多様な種族が集まるとうのは非常に珍しい光景なのだ。何故ならば水蛇竜ヒュドラ妖鬼ようきのように肉食の魔物が混在しているからだ。故に人間は捕食の対象となってしまう。しかし、人型化ヒューマノイドを長時間行っている事によって人間に近い生活を行う事によって、人間の肉は食べたら駄目だという意識が芽生えていく。ただ、彼等にはソレが無いので普段の生活では相当我慢をしていることが分かる。まあ一重に仲間意識をしているだけでもあるが――。

「さあ行くぞ」

 俺がそう言うとカリブデウスとスカーが俺の後をつけてきた。
 
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