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南の守護者Ⅱ
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ランベリオンとフーちゃんが二人がかりで戦っていた。ランベリオンは刀が無いので、飛竜の姿のまま肉弾戦をしていた。一方フーちゃんは剣でサウスに応戦という形だ。2人とも強いのにサウスの体に攻撃が入ることはなかった。特別何かのスキルでガードをしているとかではない。ただ自身の反射神経で全て避け切っている。
「甘い!」
サウスはそう言いながら2人を杖で大きく振り払った。力が強かったのか、ぜえぜえと息を切らし始めていた。
「なかなか手強いな」
「そうだな。我とうぬの2人がかりでこれだ。3人でまとめてかかってもそれほど変わらないだろう」
「戦い辛いというのが前提にあるからな」
ランベリオンとフーちゃんはそう言ってサウスから目を離さなかった。一方サウスは、私を警戒しながらランベリオンとフーちゃんに意識が集中している。正直凄い集中力だ。
戦闘値はそれこそ6,000は無いだろうが、5,500前後はあるだろう。しかし、戦闘値が高くても集中力が無い人間だって多い。ただ、サウスの場合は複数人でかかっても今のところは一太刀入れるのが困難と思わせられる。メルム・ヴィジャの親程戦闘値は高くないはずなのにそう思わせられるのは、サウスが複数人と戦う事に慣れているからかもしれない。でなければここまで洗礼された警戒心は出ない。
その警戒心はどこかマカロフ卿に近い。故に隙が無い――。
「戦闘値に差がありすぎるな」
「でもやるしか無い」
ランベリオンが声を漏らした後にフーちゃんがそう強気な言葉を発した。そしてサウスに斬りかかろうとしたその時だった。
ドン! という強い衝撃音が鳴った。
「何事だ?」
サウスはそう言って後ろを振り返る。ランベリオンと、サウスに襲い掛かっていたフーちゃんは驚いた表情を浮かべていた。
「なんだアレは!?」
フーちゃんの驚きっぷりは異常だったので、私も右に視線をそらした。するとそこにはあの親のメルム・ヴィジャがいたのだった。
「いや、でも割れない筈だよね?」
私はそう呟きながらも、メルム・ヴィジャが「見つけたぞおおお!」と怒号を散らしながら結界に体当たりをして破ろうとしている姿がそこにあった。もう恐怖でしかない――。某ゾンビゲームばりの恐怖感だ。
「メルム・ヴィジャ――! 何でこんな所に!?」
サウスもそう言っている。表情を見る限り強敵認定しているのだろう。
ドン!
「おいおい。ヒビ割れていないか?」
「割れているな――めちゃくちゃ――」
ランベリオンとフーちゃんはそう言ってメルム・ヴィジャの体当たりをじっと見ていた。
ドン!
バリイイイイン!
強い体当たりと共に割れた結界。そして――。
「もう逃がさんぞ! 小娘と飛竜! 貴様等も邪魔だ!」
そう言って私達の方へとメルム・ヴィジャは襲い掛かって来た。
「余の結界を破っただと!? そんな馬鹿な!?」
どうやらサウスも結界を本当に破られるとは思ってもみなかったらしい。案の定サウスも臨戦態勢となっていた。
「死ね! 破壊の滅殺光!」
そう言って口から放たれた赤いエネルギー波は、禍々しく邪気に満ちた黒い雷を纏っていた。耳をつんざくような轟音と、体全身で感じ取れる空気の振動――。
「ランベリオン! フーちゃん!」
私がそう大声で叫ぶと同時に辺りが赤い光に包み込まれた。一体何が起きたのだろうか?――。
あまりにも強い光に私は思わず目を閉じていた。そしてゆっくりと目を開けた――。
「ん?」
サウスより前にいる黒い魔物――間違いないあれは――。
「アヌビス様――?」
一番先に声を出したのはサウスだった。自分と同じ姿に体表が黒いだけなので直ぐに分かるのだろう。
「サウスか。久しいな。で、今の光は何だ? それにランベリオンもミユキ・アマミヤもどうした?」
そう言ってアヌビスは私達の方へと振り返った。メルム・ヴィジャの存在などガン無視だ。よく見ると空に破壊の滅殺光が飛んでいっているので、スキルリターンでも使ったのだろう。
「貴様――この我を無視とは――!」
それはもう激おこだ。メルム・ヴィジャから放たれる殺気が半端じゃない。
「うぬよ。何故ここにいるのだ!?」
「訳あってナリユキ・タテワキと協力することになってな。それで、余もヴァース島に興味があったから来たのだ。悪いか?」
――まさかの味方! アヌビスが味方なの!?
「何となく状況は読めた」
アヌビスはそう言ってメルム・ヴィジャの方にくるりと向いた。
「まずは貴様を殺さないといけないな」
アヌビスの真紅の目がキラリと光った。すると、メルム・ヴィジャは後退りをしたのだった。私、ランベリオン、フーちゃん、サウスは背筋が凍るような寒気を感じ取った。
「舐めるな!」
脚の鎌をメルム・ヴィジャが大きく振りかぶった時だった。
「こっちだマヌケ」
鎌が大きく空振りをしたかと思えば、アヌビスの姿はメルム・ヴィジャの頭の上にあった。金色の杖で頭をゴンと叩くだけでメルム・ヴィジャは地面に倒れ伏せた。これを見た私達は驚きを隠せなかった。あのメルム・ヴィジャをたった一撃で倒すなんて――。
「こんな虫に構っている時間何て無いだろうに」
そう言ってアヌビスは倒れ伏せているメルム・ヴィジャの目の前に移動して、固い頭を撫で回していた。それが尚不気味だ。
「生意気な虫だ。どう料理をしてやろうか」
アヌビスがそうメルム・ヴィジャを睨めつけると――。
「申し訳ございません――貴方様に従います」
「おい――今、メルム・ヴィジャがアヌビスの仲間になると言ったか?」
「どうやらそうみたいだな」
ランベリオンは口をあわあわとさせながらアヌビスを指している。また、フーちゃんに関しては冷静に頷いている。私からすれば異常事態なんだけど。
「甘い!」
サウスはそう言いながら2人を杖で大きく振り払った。力が強かったのか、ぜえぜえと息を切らし始めていた。
「なかなか手強いな」
「そうだな。我とうぬの2人がかりでこれだ。3人でまとめてかかってもそれほど変わらないだろう」
「戦い辛いというのが前提にあるからな」
ランベリオンとフーちゃんはそう言ってサウスから目を離さなかった。一方サウスは、私を警戒しながらランベリオンとフーちゃんに意識が集中している。正直凄い集中力だ。
戦闘値はそれこそ6,000は無いだろうが、5,500前後はあるだろう。しかし、戦闘値が高くても集中力が無い人間だって多い。ただ、サウスの場合は複数人でかかっても今のところは一太刀入れるのが困難と思わせられる。メルム・ヴィジャの親程戦闘値は高くないはずなのにそう思わせられるのは、サウスが複数人と戦う事に慣れているからかもしれない。でなければここまで洗礼された警戒心は出ない。
その警戒心はどこかマカロフ卿に近い。故に隙が無い――。
「戦闘値に差がありすぎるな」
「でもやるしか無い」
ランベリオンが声を漏らした後にフーちゃんがそう強気な言葉を発した。そしてサウスに斬りかかろうとしたその時だった。
ドン! という強い衝撃音が鳴った。
「何事だ?」
サウスはそう言って後ろを振り返る。ランベリオンと、サウスに襲い掛かっていたフーちゃんは驚いた表情を浮かべていた。
「なんだアレは!?」
フーちゃんの驚きっぷりは異常だったので、私も右に視線をそらした。するとそこにはあの親のメルム・ヴィジャがいたのだった。
「いや、でも割れない筈だよね?」
私はそう呟きながらも、メルム・ヴィジャが「見つけたぞおおお!」と怒号を散らしながら結界に体当たりをして破ろうとしている姿がそこにあった。もう恐怖でしかない――。某ゾンビゲームばりの恐怖感だ。
「メルム・ヴィジャ――! 何でこんな所に!?」
サウスもそう言っている。表情を見る限り強敵認定しているのだろう。
ドン!
「おいおい。ヒビ割れていないか?」
「割れているな――めちゃくちゃ――」
ランベリオンとフーちゃんはそう言ってメルム・ヴィジャの体当たりをじっと見ていた。
ドン!
バリイイイイン!
強い体当たりと共に割れた結界。そして――。
「もう逃がさんぞ! 小娘と飛竜! 貴様等も邪魔だ!」
そう言って私達の方へとメルム・ヴィジャは襲い掛かって来た。
「余の結界を破っただと!? そんな馬鹿な!?」
どうやらサウスも結界を本当に破られるとは思ってもみなかったらしい。案の定サウスも臨戦態勢となっていた。
「死ね! 破壊の滅殺光!」
そう言って口から放たれた赤いエネルギー波は、禍々しく邪気に満ちた黒い雷を纏っていた。耳をつんざくような轟音と、体全身で感じ取れる空気の振動――。
「ランベリオン! フーちゃん!」
私がそう大声で叫ぶと同時に辺りが赤い光に包み込まれた。一体何が起きたのだろうか?――。
あまりにも強い光に私は思わず目を閉じていた。そしてゆっくりと目を開けた――。
「ん?」
サウスより前にいる黒い魔物――間違いないあれは――。
「アヌビス様――?」
一番先に声を出したのはサウスだった。自分と同じ姿に体表が黒いだけなので直ぐに分かるのだろう。
「サウスか。久しいな。で、今の光は何だ? それにランベリオンもミユキ・アマミヤもどうした?」
そう言ってアヌビスは私達の方へと振り返った。メルム・ヴィジャの存在などガン無視だ。よく見ると空に破壊の滅殺光が飛んでいっているので、スキルリターンでも使ったのだろう。
「貴様――この我を無視とは――!」
それはもう激おこだ。メルム・ヴィジャから放たれる殺気が半端じゃない。
「うぬよ。何故ここにいるのだ!?」
「訳あってナリユキ・タテワキと協力することになってな。それで、余もヴァース島に興味があったから来たのだ。悪いか?」
――まさかの味方! アヌビスが味方なの!?
「何となく状況は読めた」
アヌビスはそう言ってメルム・ヴィジャの方にくるりと向いた。
「まずは貴様を殺さないといけないな」
アヌビスの真紅の目がキラリと光った。すると、メルム・ヴィジャは後退りをしたのだった。私、ランベリオン、フーちゃん、サウスは背筋が凍るような寒気を感じ取った。
「舐めるな!」
脚の鎌をメルム・ヴィジャが大きく振りかぶった時だった。
「こっちだマヌケ」
鎌が大きく空振りをしたかと思えば、アヌビスの姿はメルム・ヴィジャの頭の上にあった。金色の杖で頭をゴンと叩くだけでメルム・ヴィジャは地面に倒れ伏せた。これを見た私達は驚きを隠せなかった。あのメルム・ヴィジャをたった一撃で倒すなんて――。
「こんな虫に構っている時間何て無いだろうに」
そう言ってアヌビスは倒れ伏せているメルム・ヴィジャの目の前に移動して、固い頭を撫で回していた。それが尚不気味だ。
「生意気な虫だ。どう料理をしてやろうか」
アヌビスがそうメルム・ヴィジャを睨めつけると――。
「申し訳ございません――貴方様に従います」
「おい――今、メルム・ヴィジャがアヌビスの仲間になると言ったか?」
「どうやらそうみたいだな」
ランベリオンは口をあわあわとさせながらアヌビスを指している。また、フーちゃんに関しては冷静に頷いている。私からすれば異常事態なんだけど。
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