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持ち帰った殺戮の腕
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「奴等もいくら何でも嘘はつかないだろ。任務はキッチリこなしてくるパーティーだからな」
「ディアン公爵は死んでいたんじゃ――?」
すると、マカロフ卿が葉巻の煙を大きく吐いた。この葉巻のニオイに慣れてきている自分が少し嫌だったりする。
「死体の偽装は軍にいたとき私もよくやっていた」
「そうなの? 私そんなのミステリー小説でしか見たこと無いけど」
「古典的だがここぞって時に役立つものだ。別にそのまま騙し通せるとは思っていない。ディアン公爵が襲われたのは皆目撃している。死亡と判断されたときの状況は分からんが、血が出ていなら血糊を使っていて死んだフリをしていたケース。或いは、レン・フジワラのようなスキルを使って、ディアン公爵ではなく別人が犠牲になったケース。一度本当に死んでそこから復活したケース。仮死状態になっていたケース。方法は分からんが偽装する方法はいくらでもある」
「まあそうだな」
と、ナリユキ君は頷いていた。そんなアッサリ納得するの!? と思ったのは内緒だ。
「そうか――まだ手に入れていないけど、アルティメットスキルで蘇生があるもんね」
「そういう事だ。この回の件に関しては関わっている人間達が権力者ばかりだ。蘇生を使える人間が1人くらい関わっていても可笑しくない」
「そういえばQがイーサンに言っていたな。富と願いを叶える事ができる。死んだ人間だって蘇らせることができるってな」
「ただ、まあ蘇生はリスクが大きいからな。簡単に蘇生の話をしているが、使うのはMPと使用者の寿命だ」
その話に私とナリユキ君は思わず顔を見合わせた。
「不思議そうな顔をしているが、転生者の我々からすれば死人を蘇らせることは不思議で仕方ないはずだぞ? これまあメリーザから聞いた話でこっちの世界に来てから10年程だが使える奴を見たことがない」
「凄いスキルなんだな――」
「ああ。使用すると残りの寿命の1/10を削るらしい」
「じゃあ、1,000年寿命が残っているなら100年が犠牲になるって事?」
「ミク嬢の言う通りだ」
マカロフ卿は灰皿の底で葉巻の火を消して、灰を綺麗に落とし切った。その後は葉巻をそのまま灰皿に置く。
「でも、本当に大切な人なら1/10くらい大したことないか――」
「それは俺もだな」
「私もだ。元々我々は一度死んでいる身だ。前の世界にいたときと比べて生に対する執着が薄れている」
「マカロフ卿お爺ちゃんみたいな事言うね」
「――放っておけ」
マカロフ卿はそうむっとした表情を見せた。けれども、以前のようなピリついたオーラは全く無い。
「それともう1つ。これを見てくれ」
ナリユキ君はそう言ってマカロフ卿が座っているテーブルの所に、メタリックな黒と金の色をした腕のマシンのようだった。間接の部分が金色でそれ以外の箇所が黒という配色だ。
「ほお。これはまた見たことがない機械だな。手に取っていいか?」
「ああ。使い方は分からないから装着だけはしないでくれ。話を聞いている限り色々と危ない」
「私も見ていい?」
ナリユキ君は「ああ」と返事をしてくれた。見たところ、見た目は機械っぽいけど、装着できるように中は空洞になっていた。機械の見た目をしたグローブのようだ。まあグローブにしては肩から腕までスッポリ入るデザインなんだけど――。
「これは殺戮の腕という機械らしい。カルディア達は偽物のQと戦っていたんだけど、そのQが言うには十賢者の2人が開発した武器らしい」
「どんな効果があるの?」
「ビームサーベルを出して戦ったり、MPを吸収したり、吸収したMPを使って放出したりできるらしい。後は腕力がやたらと上がったりと、まあ色々できるんだと」
そんな凄い機械が何でこんな異世界で――。しかもビームサーベルってガンダムとかスターウォーズみたいだ――。
「ビームサーベルって私も映画でしか見たこと無いぞ。そこまでやってのける科学者がいるのか?」
「実際にいるからコレが造れているんだろうな。転生者なのは間違いない」
「――にわかに信じがたい話だ。こんなの出てきたら異世界とあっちの世界が混同して訳が分からん」
「攻撃ヘリやオスプレイを持っている人に言われてもね~」
私がそう言うと「確かに」とマカロフ卿は頷いた。
「とりあえずこの殺戮の腕は厳重に保管して科学者に見てもらう方がいいな。ルミエールや青龍さんに声をかけてみる」
ナリユキ君の意見に私とマカロフ卿は頷いた。
「あとは、ミクちゃん。アマミヤとランベリオンの所に行ってディアン公爵の事を報告してくれるか?」
「勿論いいよ!」
私がそう返事をするとマカロフ卿が私の事をじっと見つめて来た。
「――なあ気になっていたんだが、二人共同じイヤリングしているよな――」
「ぺ――ペアルックってやつだよ!」
「そうそう!」
私がそう言った後、ナリユキ君そう首を上下に振っていた。違和感が出まくりだ――。
「それで転移しているんだろ?」
その瞬間私の背中は寒気が走った。それにマカロフ卿の虎のような鋭い目つき――。
「図星か。凄いアイテムがあったもんだ」
マカロフ卿はそう言って口角を吊り上げていた。ナリユキ君は必死に嘘をつこうとしていたけど――。
「バレバレだ。目が泳いでいる。仮にも私は元軍人で世間一般的に言われているテロ組織のリーダーだったんだぞ」
「そうですよね~」
思わず苦笑いを浮かべるナリユキ君。いずれバレるとは思っていたけど――。
「とりあえずミクちゃん行って来てくれるか? ヤバい状況だったら一度戻ってきて欲しい」
「まあ戻れる状況ならね――2人に正体を告げて戻って来る!」
「ああ。頼んだ。気を付けてな」
「ミク嬢気を付けろよ。何があるか分からんからな」
ナリユキ君だけじゃなくてマカロフ卿も!? めちゃくちゃ吃驚した。でもその気持ちは凄く嬉しい――。
「ありがとう!」
私は目を瞑りランベリオンの顔を強く思い浮かべた。すると、体が一瞬羽根のように軽くなった。
「ディアン公爵は死んでいたんじゃ――?」
すると、マカロフ卿が葉巻の煙を大きく吐いた。この葉巻のニオイに慣れてきている自分が少し嫌だったりする。
「死体の偽装は軍にいたとき私もよくやっていた」
「そうなの? 私そんなのミステリー小説でしか見たこと無いけど」
「古典的だがここぞって時に役立つものだ。別にそのまま騙し通せるとは思っていない。ディアン公爵が襲われたのは皆目撃している。死亡と判断されたときの状況は分からんが、血が出ていなら血糊を使っていて死んだフリをしていたケース。或いは、レン・フジワラのようなスキルを使って、ディアン公爵ではなく別人が犠牲になったケース。一度本当に死んでそこから復活したケース。仮死状態になっていたケース。方法は分からんが偽装する方法はいくらでもある」
「まあそうだな」
と、ナリユキ君は頷いていた。そんなアッサリ納得するの!? と思ったのは内緒だ。
「そうか――まだ手に入れていないけど、アルティメットスキルで蘇生があるもんね」
「そういう事だ。この回の件に関しては関わっている人間達が権力者ばかりだ。蘇生を使える人間が1人くらい関わっていても可笑しくない」
「そういえばQがイーサンに言っていたな。富と願いを叶える事ができる。死んだ人間だって蘇らせることができるってな」
「ただ、まあ蘇生はリスクが大きいからな。簡単に蘇生の話をしているが、使うのはMPと使用者の寿命だ」
その話に私とナリユキ君は思わず顔を見合わせた。
「不思議そうな顔をしているが、転生者の我々からすれば死人を蘇らせることは不思議で仕方ないはずだぞ? これまあメリーザから聞いた話でこっちの世界に来てから10年程だが使える奴を見たことがない」
「凄いスキルなんだな――」
「ああ。使用すると残りの寿命の1/10を削るらしい」
「じゃあ、1,000年寿命が残っているなら100年が犠牲になるって事?」
「ミク嬢の言う通りだ」
マカロフ卿は灰皿の底で葉巻の火を消して、灰を綺麗に落とし切った。その後は葉巻をそのまま灰皿に置く。
「でも、本当に大切な人なら1/10くらい大したことないか――」
「それは俺もだな」
「私もだ。元々我々は一度死んでいる身だ。前の世界にいたときと比べて生に対する執着が薄れている」
「マカロフ卿お爺ちゃんみたいな事言うね」
「――放っておけ」
マカロフ卿はそうむっとした表情を見せた。けれども、以前のようなピリついたオーラは全く無い。
「それともう1つ。これを見てくれ」
ナリユキ君はそう言ってマカロフ卿が座っているテーブルの所に、メタリックな黒と金の色をした腕のマシンのようだった。間接の部分が金色でそれ以外の箇所が黒という配色だ。
「ほお。これはまた見たことがない機械だな。手に取っていいか?」
「ああ。使い方は分からないから装着だけはしないでくれ。話を聞いている限り色々と危ない」
「私も見ていい?」
ナリユキ君は「ああ」と返事をしてくれた。見たところ、見た目は機械っぽいけど、装着できるように中は空洞になっていた。機械の見た目をしたグローブのようだ。まあグローブにしては肩から腕までスッポリ入るデザインなんだけど――。
「これは殺戮の腕という機械らしい。カルディア達は偽物のQと戦っていたんだけど、そのQが言うには十賢者の2人が開発した武器らしい」
「どんな効果があるの?」
「ビームサーベルを出して戦ったり、MPを吸収したり、吸収したMPを使って放出したりできるらしい。後は腕力がやたらと上がったりと、まあ色々できるんだと」
そんな凄い機械が何でこんな異世界で――。しかもビームサーベルってガンダムとかスターウォーズみたいだ――。
「ビームサーベルって私も映画でしか見たこと無いぞ。そこまでやってのける科学者がいるのか?」
「実際にいるからコレが造れているんだろうな。転生者なのは間違いない」
「――にわかに信じがたい話だ。こんなの出てきたら異世界とあっちの世界が混同して訳が分からん」
「攻撃ヘリやオスプレイを持っている人に言われてもね~」
私がそう言うと「確かに」とマカロフ卿は頷いた。
「とりあえずこの殺戮の腕は厳重に保管して科学者に見てもらう方がいいな。ルミエールや青龍さんに声をかけてみる」
ナリユキ君の意見に私とマカロフ卿は頷いた。
「あとは、ミクちゃん。アマミヤとランベリオンの所に行ってディアン公爵の事を報告してくれるか?」
「勿論いいよ!」
私がそう返事をするとマカロフ卿が私の事をじっと見つめて来た。
「――なあ気になっていたんだが、二人共同じイヤリングしているよな――」
「ぺ――ペアルックってやつだよ!」
「そうそう!」
私がそう言った後、ナリユキ君そう首を上下に振っていた。違和感が出まくりだ――。
「それで転移しているんだろ?」
その瞬間私の背中は寒気が走った。それにマカロフ卿の虎のような鋭い目つき――。
「図星か。凄いアイテムがあったもんだ」
マカロフ卿はそう言って口角を吊り上げていた。ナリユキ君は必死に嘘をつこうとしていたけど――。
「バレバレだ。目が泳いでいる。仮にも私は元軍人で世間一般的に言われているテロ組織のリーダーだったんだぞ」
「そうですよね~」
思わず苦笑いを浮かべるナリユキ君。いずれバレるとは思っていたけど――。
「とりあえずミクちゃん行って来てくれるか? ヤバい状況だったら一度戻ってきて欲しい」
「まあ戻れる状況ならね――2人に正体を告げて戻って来る!」
「ああ。頼んだ。気を付けてな」
「ミク嬢気を付けろよ。何があるか分からんからな」
ナリユキ君だけじゃなくてマカロフ卿も!? めちゃくちゃ吃驚した。でもその気持ちは凄く嬉しい――。
「ありがとう!」
私は目を瞑りランベリオンの顔を強く思い浮かべた。すると、体が一瞬羽根のように軽くなった。
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