345 / 565
いざカルカラへⅢ
しおりを挟む
「まずは残念だと思いますよ。まさかああいった形で、若くて勇敢で剣の腕も立つサイスト・クローバー侯爵が命を落とすとは思わなかったですからね」
「スペード侯爵家が犯人だと思っていますか?」
俺のその質問にダイヤ公爵は戸惑いを見せた。
「どういう事でしょうか?」
「真犯人がいるとは誰も思わなかったのでしょうか?」
「真犯人も何も、遺体がスペード侯爵家の敷地内から出て来たのであれば、それが何よりの証拠でしょう」
「まあそれもそうですね――」
俺がそう言うとダイヤ侯爵もアーツさんも怪訝な表情を浮かべていた。
「ナリユキ殿。一体何が言いたいのじゃ?」
「結論、真犯人は別にいます。何故ならば真犯人を知っている人物を一人捕らえて、私のスキルで情報を奪いましたので。それに冒険者からも情報提供してもらっていますし、始めに私達に真犯人を捕らえて、スペード侯爵家の濡れ衣を払拭してほしいと言って来たカルカラの貴族とも情報は一致しています」
俺がそう言うと、アーツさんもダイヤ侯爵も開いた口が塞がっていなかった。
俺はそこから2人に説明を続けた。Qという人物が裏で糸を引いている事。そのQはヴェドラウイルスをイーサンという男に飲むように促し、マーズベルで観光させて、バイオテロを実行した事。また、ログウェルのコードと手を組み、黒の殲滅軍を使って、防衛が薄くなっていたマーズベルを襲ってきた事。
そしてそのQの正体がストーク・ディアン公爵だった事――。
俺がそう話をすると、ダイヤ侯爵は「そんな……」と小さく呟いていた。ショックが大きいのか、肩の力がこれでもかと言うくらい抜け切っている。
一方、アーツさんは非常に難しそうな表情をしていた。「う~む」と唸っている。
「お……お言葉ですがナリユキ閣下。それはいくらなんでも……」
と、まあ申し訳なさそうに俺にそう話しかけてきた訳だが――。
「ダイヤ侯爵――ナリユキ殿が持つ力を知らなんだか?」
アーツさんがそうやってフォローに入ってくれた。
「ナリユキ閣下の能力――?」
「ほら、アードルハイム帝国は強力なユニークスキルを持つ者がいたじゃろ? 1一人目はアードルハイム元皇帝。あの皇帝のスキルは、自分と対象者に契りを交わして、その契りを破った者の命を奪うという強力なユニークスキル――悪魔との機密契約。このスキルには各国が悩まされていた。それ故にアードルハイム帝国軍という組織を崩すことはできなかった。恨みを買っているが誰も手出しができなかった。アードルハイムに乗り込んだ者は皆廃人と化してしまい、戻って来る者はいなかった。お主もよく知っておろう」
アーツさんがそう言うとダイヤ侯爵は固唾を飲んでいた。ただならぬ緊張感がある――。
「確かにそうですね……」
この時点でダイヤ侯爵とアードルハイム皇帝は何らかの関係があったようだ。それが直接的か間接的かは分からない。知り合いがアードルハイム皇帝の掌の上で踊っていたという事も考えられる。
「そして、もう1人はアードルハイム帝国軍の第1騎士団長だった魔族のガープだ。奴は、知性の略奪と献上というユニークスキルで、人々の知性を奪っていった――アードルハイム皇帝と同じく、このスキルの力に委縮していた――それで他国は皆手を下すことができなかった。しかし、ナリユキ殿は悪魔との機密契約と、今は記憶も奪う事ができるようになった知性・記憶の略奪と献上の2つのスキルを持っている。それにワシは一度知性・記憶の略奪と献上を体験したが確かに凄いものだ」
「何より、それでもまだ信じれないというのであれば、ナリユキ様は悪魔との機密契約を使ってでも証明しようとします」
アーツさんの事にミクちゃんがそう付け加えると、ダイヤ侯爵は目を丸くしていた。
「本気ですか?」
「ええ。本気ですよ。だって嘘はついていませんからね」
俺がそう言うとダイヤ侯爵は何かを覚悟したような目つきに変わっていた。
「分かりました。ナリユキ閣下のスキルで私にもその情報を共有して頂けないでしょうか?」
「勿論いいですよ。頭を差し出して下さい」
「はい」
ダイヤ侯爵が俺に頭を差し出してくれると、俺はアーツさんの頭に触れて知性・記憶の略奪と献上を発動した。Qが創世という組織の人物だという事以外は情報共有を行ったつもりだ。
「大丈夫ですか?」
俺がそう問いかけるとダイヤ侯爵は「ええ」と言って落ち着きを取り戻していた。
「凄いですねこのスキル――」
「そうじゃろ? ワシもヴェドラウイルスについて共有してもらったときは驚いた」
「つまりディアン公爵は生きている――が。敵だったという事でしょうか?」
「そういう事ですね」
「サイスト・クローバー侯爵を殺害したのは口封じの為――ディアン公爵が人を殺めるなんて想像もできません」
「でも実際行っていた――長い年月をかけて信頼を積み上げていたようなので、ディアン公爵と馴染みのある人は信じられないかもしれませんが」
俺がそう言うと「そうですね……」とダイヤ侯爵は頷いた。
「ディアン公爵は貴族の皆から好かれている数少ない人物です。貴族間でも色々と人間関係が複雑だったりするのですが、ディアン公爵の人間関係がこじれている話は聞いたことありませんし、悪い噂何て全く聞きませんよ」
「それに色々と理由がありますらね。悪い事をしている何て前提として思っていないようなので」
俺はそう言った後コーヒーを口に運んだ。うん――美味い。
「スペード侯爵家が犯人だと思っていますか?」
俺のその質問にダイヤ公爵は戸惑いを見せた。
「どういう事でしょうか?」
「真犯人がいるとは誰も思わなかったのでしょうか?」
「真犯人も何も、遺体がスペード侯爵家の敷地内から出て来たのであれば、それが何よりの証拠でしょう」
「まあそれもそうですね――」
俺がそう言うとダイヤ侯爵もアーツさんも怪訝な表情を浮かべていた。
「ナリユキ殿。一体何が言いたいのじゃ?」
「結論、真犯人は別にいます。何故ならば真犯人を知っている人物を一人捕らえて、私のスキルで情報を奪いましたので。それに冒険者からも情報提供してもらっていますし、始めに私達に真犯人を捕らえて、スペード侯爵家の濡れ衣を払拭してほしいと言って来たカルカラの貴族とも情報は一致しています」
俺がそう言うと、アーツさんもダイヤ侯爵も開いた口が塞がっていなかった。
俺はそこから2人に説明を続けた。Qという人物が裏で糸を引いている事。そのQはヴェドラウイルスをイーサンという男に飲むように促し、マーズベルで観光させて、バイオテロを実行した事。また、ログウェルのコードと手を組み、黒の殲滅軍を使って、防衛が薄くなっていたマーズベルを襲ってきた事。
そしてそのQの正体がストーク・ディアン公爵だった事――。
俺がそう話をすると、ダイヤ侯爵は「そんな……」と小さく呟いていた。ショックが大きいのか、肩の力がこれでもかと言うくらい抜け切っている。
一方、アーツさんは非常に難しそうな表情をしていた。「う~む」と唸っている。
「お……お言葉ですがナリユキ閣下。それはいくらなんでも……」
と、まあ申し訳なさそうに俺にそう話しかけてきた訳だが――。
「ダイヤ侯爵――ナリユキ殿が持つ力を知らなんだか?」
アーツさんがそうやってフォローに入ってくれた。
「ナリユキ閣下の能力――?」
「ほら、アードルハイム帝国は強力なユニークスキルを持つ者がいたじゃろ? 1一人目はアードルハイム元皇帝。あの皇帝のスキルは、自分と対象者に契りを交わして、その契りを破った者の命を奪うという強力なユニークスキル――悪魔との機密契約。このスキルには各国が悩まされていた。それ故にアードルハイム帝国軍という組織を崩すことはできなかった。恨みを買っているが誰も手出しができなかった。アードルハイムに乗り込んだ者は皆廃人と化してしまい、戻って来る者はいなかった。お主もよく知っておろう」
アーツさんがそう言うとダイヤ侯爵は固唾を飲んでいた。ただならぬ緊張感がある――。
「確かにそうですね……」
この時点でダイヤ侯爵とアードルハイム皇帝は何らかの関係があったようだ。それが直接的か間接的かは分からない。知り合いがアードルハイム皇帝の掌の上で踊っていたという事も考えられる。
「そして、もう1人はアードルハイム帝国軍の第1騎士団長だった魔族のガープだ。奴は、知性の略奪と献上というユニークスキルで、人々の知性を奪っていった――アードルハイム皇帝と同じく、このスキルの力に委縮していた――それで他国は皆手を下すことができなかった。しかし、ナリユキ殿は悪魔との機密契約と、今は記憶も奪う事ができるようになった知性・記憶の略奪と献上の2つのスキルを持っている。それにワシは一度知性・記憶の略奪と献上を体験したが確かに凄いものだ」
「何より、それでもまだ信じれないというのであれば、ナリユキ様は悪魔との機密契約を使ってでも証明しようとします」
アーツさんの事にミクちゃんがそう付け加えると、ダイヤ侯爵は目を丸くしていた。
「本気ですか?」
「ええ。本気ですよ。だって嘘はついていませんからね」
俺がそう言うとダイヤ侯爵は何かを覚悟したような目つきに変わっていた。
「分かりました。ナリユキ閣下のスキルで私にもその情報を共有して頂けないでしょうか?」
「勿論いいですよ。頭を差し出して下さい」
「はい」
ダイヤ侯爵が俺に頭を差し出してくれると、俺はアーツさんの頭に触れて知性・記憶の略奪と献上を発動した。Qが創世という組織の人物だという事以外は情報共有を行ったつもりだ。
「大丈夫ですか?」
俺がそう問いかけるとダイヤ侯爵は「ええ」と言って落ち着きを取り戻していた。
「凄いですねこのスキル――」
「そうじゃろ? ワシもヴェドラウイルスについて共有してもらったときは驚いた」
「つまりディアン公爵は生きている――が。敵だったという事でしょうか?」
「そういう事ですね」
「サイスト・クローバー侯爵を殺害したのは口封じの為――ディアン公爵が人を殺めるなんて想像もできません」
「でも実際行っていた――長い年月をかけて信頼を積み上げていたようなので、ディアン公爵と馴染みのある人は信じられないかもしれませんが」
俺がそう言うと「そうですね……」とダイヤ侯爵は頷いた。
「ディアン公爵は貴族の皆から好かれている数少ない人物です。貴族間でも色々と人間関係が複雑だったりするのですが、ディアン公爵の人間関係がこじれている話は聞いたことありませんし、悪い噂何て全く聞きませんよ」
「それに色々と理由がありますらね。悪い事をしている何て前提として思っていないようなので」
俺はそう言った後コーヒーを口に運んだ。うん――美味い。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
326
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる