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科学者の姿Ⅱ
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「成程。ここにきてコヴィー・S・ウィズダムがくるか」
「奴は今何歳じゃった? 確か300歳くらいになるじゃろ?」
「そうだな」
あれから数分後、俺とミクちゃんは青龍さんのところへ一旦戻り、アヌビスとメルム・ヴィジャを強制転移をしてもらって医務室へと運んでもらった。当然、アヌビスから奪った記憶は元に戻したし、ミクちゃん、青龍さん、アスモデウスさんにもアヌビスの記憶を共有した。
「厄介じゃのう。そもそも龍騎士の細胞を移植した生物なんて聞いたことが無い。それに奴が持っている魔眼も気がかりじゃ。魔族の誰が犠牲になったのか――いつから入手しているかも分からないしのう」
「龍の目だってそうだぞ。白龍か赤龍の目どちらかにせよ、龍の目には天眼だけではなく、特殊な細胞が流れているからな」
「特殊な細胞?」
「ああ。それには余も備わっている。以前、龍は何らかの象徴だと話をしたのは覚えているか?」
「ええ。青龍さんは再生の象徴。黒龍は破壊の象徴。白龍は平和の象徴。赤龍は生命の象徴だと」
「まさにその通りだ。なので余が考えるにコヴィー・S・ウィズダムは赤龍の目を持っている」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
「赤龍は生命の象徴と言ったように、寿命で死ぬことが無い唯一の生命体だ。その目を移植した事によって、永遠の命を手に入れたと考えるのが妥当だろう。この世界での人間の平均寿命は80歳前後だからな」
「じゃあ300歳って――」
「異常だな。いつ入手したかは分からないが、眼帯をしているのを見ると、まだ馴染んでいないのだろう。長時間景色を見ていると疲れるから眼帯をしていると推測できる」
「成程――」
それで寿命を延ばしているのか――。そう考えるとコヴィー・S・ウィズダムは寿命で死ぬことが無いという事か。
「まああくまで推測だがな。パッシブスキルや何かの魔物の血か何かで延命している可能性も十分あるし」
「そうですね。アヌビスはコヴィー・S・ウィズダムのステータスを見ることができなかったから、どんなスキルを持っているかという事は分からなかったですからね」
「そういう事だ」
「青龍が龍に関する情報を漏らすのは珍しいのう。妾が聞いても教えてくれなかったのに」
「それほど危機的状況だという事だ。あの2人が子供扱いにされていたのだ。コヴィー・S・ウィズダムもZ級の危険度があっても可笑しくは無い。対抗できるのはまたもやナリユキ殿一人となる」
「俺どんだけ色々な敵を倒さないといけないんだ」
「選ばれし勇者様じゃのう」
アスモデウスさんはそうニヤニヤと笑みを浮かべていた。全然嬉しくないんだけど。
「ただ、コヴィー・S・ウィズダムの目的が分からない以上は放置でも良いだろう。良くも悪くも大きな事件は起こしていない」
「でもアヌビスが追っていた理由は、コヴィー・S・ウィズダムは地上と地下世界に変革をもたらせようとしているから危険だと睨んでいたんですよ。永遠の命を手に入れているのであれば、コヴィー・S・ウィズダムは本格的に動いても可笑しくない筈です」
「そう言われてみればそうじゃな。コヴィー・S・ウィズダムの様子は千里眼で確認することはできるのか?」
「いや、試してみたが無理だな」
「俺も無理ですね」
「となると、黒龍と同様に特殊な磁場がある場所で姿を隠しているのか?」
「そうなるな。地下世界の調査はアヌビスとメルム・ヴィジャだけには任せることはもう出来ないな。アスモデウスよ。地下世界に知り合いはいないのか?」
「いるわけないじゃろう。地下世界なんて魔界よりよっぽど謎に包まれた世界じゃぞ?」
「確かに――地下世界にはアヌビスの冥魔族のような特殊な個体が数多く生息している。それにゾーク大迷宮の最深部にいると言われているゾークもそうだ。未知の魔物がたくさんいる世界だ。アヌビスが知らない魔物の細胞をコヴィー・S・ウィズダムは取り込んでいるかもしれないな」
「そもそもじゃがアヌビスのような存在が稀じゃ。地下世界の魔物は言語を話すことができる魔物も少なくは無いと聞くが、魔族のように人間と交流を持ちたがらない。故に、コヴィー・S・ウィズダムを探すのは困難じゃ」
「――打つ手無しか。余も地下世界は全然分からないのでな」
「それならば、ゾークを倒しに行ったら何かヒント得ることができるかもしれないですね」
俺がそう言うと青龍さんもアスモデウスさんもキョトンとした表情を浮かべた後、クスクスと笑い始めた。何か可笑しい事言ったか?
「これはまた破天荒な提案じゃのう」
「しかし、悪くない。そもそもアヌビスと交流を持てたのも、マカロフ卿達がナリユキ殿達を倒す為にゾーク大迷宮に入った事がキッカケだったよな?」
「そうですね。んで、アヌビスが協力してくれたら命は見逃してやる――みたいな提案をしてマカロフ卿はそう選択をせざるを得ない状況になっていた筈ですね。なので、ゾーク大迷宮に潜れば経験値も上がるし、地下世界の住人と交流を持てるかもしれない。また、ゾークと戦って勝つことができれば、強大な力も手に入れることができます。そして、地下世界にまつわる情報と、コヴィー・S・ウィズダムの足取りを掴めるヒントも掴めるかもしれません」
「確かにそうじゃな。実際に地下世界の入り口なんてものは、ゾーク大迷宮くらいしか思い浮かばないしのう」
「そうだな。よし、余もアスモデウスもゾーク大迷宮に潜るか」
「おお! いいですね!」
俺がそう言うとアスモデウスさんが驚いた表情を見せていた。
「妾達も行くのか!?」
「そっちのほうが良いだろう。我々が強くなれば黒龍に勝てる可能性が高くなる」
「カルベリアツリーのダンジョンも1,000層にまでは到達していませんからね。短期間で強くなるにはダンジョンに潜るのが一番効率が良いです」
「――分かった。しかし黒龍が襲ってくるタイミングだけが問題じゃな」
「ああ。あくまで予定だ。黒龍の動き次第で予定を変えよう」
「奴は今何歳じゃった? 確か300歳くらいになるじゃろ?」
「そうだな」
あれから数分後、俺とミクちゃんは青龍さんのところへ一旦戻り、アヌビスとメルム・ヴィジャを強制転移をしてもらって医務室へと運んでもらった。当然、アヌビスから奪った記憶は元に戻したし、ミクちゃん、青龍さん、アスモデウスさんにもアヌビスの記憶を共有した。
「厄介じゃのう。そもそも龍騎士の細胞を移植した生物なんて聞いたことが無い。それに奴が持っている魔眼も気がかりじゃ。魔族の誰が犠牲になったのか――いつから入手しているかも分からないしのう」
「龍の目だってそうだぞ。白龍か赤龍の目どちらかにせよ、龍の目には天眼だけではなく、特殊な細胞が流れているからな」
「特殊な細胞?」
「ああ。それには余も備わっている。以前、龍は何らかの象徴だと話をしたのは覚えているか?」
「ええ。青龍さんは再生の象徴。黒龍は破壊の象徴。白龍は平和の象徴。赤龍は生命の象徴だと」
「まさにその通りだ。なので余が考えるにコヴィー・S・ウィズダムは赤龍の目を持っている」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
「赤龍は生命の象徴と言ったように、寿命で死ぬことが無い唯一の生命体だ。その目を移植した事によって、永遠の命を手に入れたと考えるのが妥当だろう。この世界での人間の平均寿命は80歳前後だからな」
「じゃあ300歳って――」
「異常だな。いつ入手したかは分からないが、眼帯をしているのを見ると、まだ馴染んでいないのだろう。長時間景色を見ていると疲れるから眼帯をしていると推測できる」
「成程――」
それで寿命を延ばしているのか――。そう考えるとコヴィー・S・ウィズダムは寿命で死ぬことが無いという事か。
「まああくまで推測だがな。パッシブスキルや何かの魔物の血か何かで延命している可能性も十分あるし」
「そうですね。アヌビスはコヴィー・S・ウィズダムのステータスを見ることができなかったから、どんなスキルを持っているかという事は分からなかったですからね」
「そういう事だ」
「青龍が龍に関する情報を漏らすのは珍しいのう。妾が聞いても教えてくれなかったのに」
「それほど危機的状況だという事だ。あの2人が子供扱いにされていたのだ。コヴィー・S・ウィズダムもZ級の危険度があっても可笑しくは無い。対抗できるのはまたもやナリユキ殿一人となる」
「俺どんだけ色々な敵を倒さないといけないんだ」
「選ばれし勇者様じゃのう」
アスモデウスさんはそうニヤニヤと笑みを浮かべていた。全然嬉しくないんだけど。
「ただ、コヴィー・S・ウィズダムの目的が分からない以上は放置でも良いだろう。良くも悪くも大きな事件は起こしていない」
「でもアヌビスが追っていた理由は、コヴィー・S・ウィズダムは地上と地下世界に変革をもたらせようとしているから危険だと睨んでいたんですよ。永遠の命を手に入れているのであれば、コヴィー・S・ウィズダムは本格的に動いても可笑しくない筈です」
「そう言われてみればそうじゃな。コヴィー・S・ウィズダムの様子は千里眼で確認することはできるのか?」
「いや、試してみたが無理だな」
「俺も無理ですね」
「となると、黒龍と同様に特殊な磁場がある場所で姿を隠しているのか?」
「そうなるな。地下世界の調査はアヌビスとメルム・ヴィジャだけには任せることはもう出来ないな。アスモデウスよ。地下世界に知り合いはいないのか?」
「いるわけないじゃろう。地下世界なんて魔界よりよっぽど謎に包まれた世界じゃぞ?」
「確かに――地下世界にはアヌビスの冥魔族のような特殊な個体が数多く生息している。それにゾーク大迷宮の最深部にいると言われているゾークもそうだ。未知の魔物がたくさんいる世界だ。アヌビスが知らない魔物の細胞をコヴィー・S・ウィズダムは取り込んでいるかもしれないな」
「そもそもじゃがアヌビスのような存在が稀じゃ。地下世界の魔物は言語を話すことができる魔物も少なくは無いと聞くが、魔族のように人間と交流を持ちたがらない。故に、コヴィー・S・ウィズダムを探すのは困難じゃ」
「――打つ手無しか。余も地下世界は全然分からないのでな」
「それならば、ゾークを倒しに行ったら何かヒント得ることができるかもしれないですね」
俺がそう言うと青龍さんもアスモデウスさんもキョトンとした表情を浮かべた後、クスクスと笑い始めた。何か可笑しい事言ったか?
「これはまた破天荒な提案じゃのう」
「しかし、悪くない。そもそもアヌビスと交流を持てたのも、マカロフ卿達がナリユキ殿達を倒す為にゾーク大迷宮に入った事がキッカケだったよな?」
「そうですね。んで、アヌビスが協力してくれたら命は見逃してやる――みたいな提案をしてマカロフ卿はそう選択をせざるを得ない状況になっていた筈ですね。なので、ゾーク大迷宮に潜れば経験値も上がるし、地下世界の住人と交流を持てるかもしれない。また、ゾークと戦って勝つことができれば、強大な力も手に入れることができます。そして、地下世界にまつわる情報と、コヴィー・S・ウィズダムの足取りを掴めるヒントも掴めるかもしれません」
「確かにそうじゃな。実際に地下世界の入り口なんてものは、ゾーク大迷宮くらいしか思い浮かばないしのう」
「そうだな。よし、余もアスモデウスもゾーク大迷宮に潜るか」
「おお! いいですね!」
俺がそう言うとアスモデウスさんが驚いた表情を見せていた。
「妾達も行くのか!?」
「そっちのほうが良いだろう。我々が強くなれば黒龍に勝てる可能性が高くなる」
「カルベリアツリーのダンジョンも1,000層にまでは到達していませんからね。短期間で強くなるにはダンジョンに潜るのが一番効率が良いです」
「――分かった。しかし黒龍が襲ってくるタイミングだけが問題じゃな」
「ああ。あくまで予定だ。黒龍の動き次第で予定を変えよう」
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