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科学者の姿Ⅰ
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「どうかしたのか?」
「アヌビスとメルム・ヴィジャがやられているんですよ――安否は分かりませんが、ミクちゃんを連れて早急に確認して来ます」
「アヌビスとメルム・ヴィジャがやられたって一体どんな奴じゃ?」
「確かにそうだな。余も今確認したところだが、酷い怪我をしているようだ。それこそ死んでいても可笑しくないような……」
「ちょっと行ってきます!」
俺は会議室を出てドラグーンタワー内にいるミクちゃんを念話で呼び寄せた。すると、すぐに転移イヤリングを使って俺の前に現れてくれた。
「アヌビスさんとメルム・ヴィジャさんがやられたって本当?」
「ああ。頭から出血して倒れている。安否は分からないから急ごう」
「分かった」
俺達は早速手を繋いでアヌビスの顔を浮かべた。そして目を瞑る――。
到着した場所は何やら地下のような場所だった。少し肌寒いのは言うまでもない。
俺達はすぐに倒れているアヌビスとメルム・ヴィジャに近付いた。頭と全身から出血をしているようだ。
「大丈夫。2人も生きている」
「頼む」
俺がそう言うとミクちゃんはコクリと頷き、2人に対して治癒を行った。相変わらず傷の治りが早い。ミクちゃんが手にかけると一瞬にして傷が治る。
「これでひとまず安心だね」
ミクちゃんは「ふう」と声を漏らして額の汗を拭った。
「あとはこの2人を誰が傷付けたかだな」
「そうだね――7,000の戦闘値があるアヌビスさんをこんな状態にするなんて一体どんな人だろう――」
「しかもメルム・ヴィジャもいるしな。相当な手練れだろう。調べてみる」
「うん」
俺はまだ意識を失っているアヌビスの頭に軽く触れて知性・記憶の略奪と献上を発動した。俺が奪う記憶は当然直近の出来事だ。
まず前提としてここは地下世界らしい。創生に関する有力な情報があるんじゃないか? という点でこの世界での情報収集を選んだ。そして創生に関する文献を見つけたみたいだ。文字は相変わらずラテン語で書かれているらしい――。
そして一番気になるアヌビスとメルム・ヴィジャをこんな目にあわせた人物――。
俺はこの人物の外見を見てまず驚いた。歳はもう100歳を優に超えている筈なのに、見た目は明らかに20代後半から30代前半のようだった。サラッとした髪に金髪のセンターパートの男だ。恐らく若い頃の姿を維持している。いや――若い頃の姿に戻る事ができたようだ。特徴的なのは右目にしている黒い眼帯と左目の真紅の瞳。これは魔眼らしい。人間が魔眼を持っているなんてレンさん以外では初めてだ。カルディアはハーフだから例外だしな。そしてこの人は完全に人工移植だ。でもまあ驚かないよ。散々人体実験をしていたんだから。
「やっと会えたなコヴィー・S・ウィズダムさんよ」
俺がそう呟くと、ミクちゃんが「え!?」とめちゃくちゃ驚いた声を上げていた。
「殺戮の腕は着けていないようだけど化物じみた強さだな。それにアヌビスとメルム・ヴィジャが遊ばれていた」
「それって2人同時に戦ったの?」
「そうらしい。実際にアヌビスは虚勢を張っていたようだけど、そのあまりにも異質な存在感に少し恐怖していた。その理由としてはもはや人間と呼ぶべき存在なのか分からなかったからだ」
「――ごめん。全然意味が分からない」
そうミクちゃんは困った表情を浮かべていた。まあ確かに無理もない。
「そうだな。まず思い出して欲しいんだけど、コヴィー・S・ウィズダムは様々な実験を行っていた。殺戮の腕やフォルボス達のような身寄りの無い子供を好き勝手に弄るという。それにカルベリアツリーのダンジョンの魔物の混合種もそうだ。彼は世界を渡り歩きながらも、色々な生態実験を繰り返していくうちに欲望が捻じ曲がってきたかのように思える。そして試したんだ――自分の身体でな」
「自分の身体?」
「そう。彼は自分の身体も改造し始めた。アヌビスが彼の身体を魔眼を通して見ているから間違いない。まずは左目。これは上級の魔族を犠牲にして魔眼を人工移植した。そして眼帯をしている右目は龍の目らしい」
「……厨二病全開だね」
「まあ笑っていられないけどな。龍に関しては白龍か赤龍のどちらかの龍だろうな」
「ニーズヘッグっていう可能性は無いの?」
「それは無いと思う。コヴィー・S・ウィズダムはオリジナルに拘りがあるようだったからな」
「成程ね。それで他はどんな感じになっているの?」
「そうだな。コヴィー・S・ウィズダムは人間、龍、魔族、森妖精の血が混じっている。まあ混じっていると言ってもあくまで人工的に混ぜたと言った方が正しい。体内には当然のように魔石も埋め込まれているし、何より世界最強の人間だった龍騎士。現ルシファーの遺伝子まで持っているらしい」
「情報が大渋滞してる――そこまで色々混ぜていて拒否反応とか起こさないのかな?」
「そこまでは分からない。直接本人に聞かない事にはな。ただ、コヴィー・S・ウィズダムがどんな外見をしているかどうか分かったのは大きい」
「確かにそうだね。でも戦闘値はどれくらいなんだろう?」
「Zはあっても可笑しくは無いな。アヌビスとメルム・ヴィジャがまるで子供扱いだったし、余力はまだまだ残しているようだった」
「凄い化物じゃん――」
「超越者も持っていると思う。直接対決したら相当面倒そうな相手ではある」
「ミロク、黒龍、コヴィー・S・ウィズダム――倒さないといけない敵がいっぱい出て来て大変だね。ナリユキ君とのんびりしたいけどな」
ミクちゃんはそう言って溜息をついていた。
「しばらくは無理そうだな。とりあえず戻ろう。アヌビスとメルム・ヴィジャを青龍さんに強制転移してもらうんだ」
「うん。分かった」
「アヌビスとメルム・ヴィジャがやられているんですよ――安否は分かりませんが、ミクちゃんを連れて早急に確認して来ます」
「アヌビスとメルム・ヴィジャがやられたって一体どんな奴じゃ?」
「確かにそうだな。余も今確認したところだが、酷い怪我をしているようだ。それこそ死んでいても可笑しくないような……」
「ちょっと行ってきます!」
俺は会議室を出てドラグーンタワー内にいるミクちゃんを念話で呼び寄せた。すると、すぐに転移イヤリングを使って俺の前に現れてくれた。
「アヌビスさんとメルム・ヴィジャさんがやられたって本当?」
「ああ。頭から出血して倒れている。安否は分からないから急ごう」
「分かった」
俺達は早速手を繋いでアヌビスの顔を浮かべた。そして目を瞑る――。
到着した場所は何やら地下のような場所だった。少し肌寒いのは言うまでもない。
俺達はすぐに倒れているアヌビスとメルム・ヴィジャに近付いた。頭と全身から出血をしているようだ。
「大丈夫。2人も生きている」
「頼む」
俺がそう言うとミクちゃんはコクリと頷き、2人に対して治癒を行った。相変わらず傷の治りが早い。ミクちゃんが手にかけると一瞬にして傷が治る。
「これでひとまず安心だね」
ミクちゃんは「ふう」と声を漏らして額の汗を拭った。
「あとはこの2人を誰が傷付けたかだな」
「そうだね――7,000の戦闘値があるアヌビスさんをこんな状態にするなんて一体どんな人だろう――」
「しかもメルム・ヴィジャもいるしな。相当な手練れだろう。調べてみる」
「うん」
俺はまだ意識を失っているアヌビスの頭に軽く触れて知性・記憶の略奪と献上を発動した。俺が奪う記憶は当然直近の出来事だ。
まず前提としてここは地下世界らしい。創生に関する有力な情報があるんじゃないか? という点でこの世界での情報収集を選んだ。そして創生に関する文献を見つけたみたいだ。文字は相変わらずラテン語で書かれているらしい――。
そして一番気になるアヌビスとメルム・ヴィジャをこんな目にあわせた人物――。
俺はこの人物の外見を見てまず驚いた。歳はもう100歳を優に超えている筈なのに、見た目は明らかに20代後半から30代前半のようだった。サラッとした髪に金髪のセンターパートの男だ。恐らく若い頃の姿を維持している。いや――若い頃の姿に戻る事ができたようだ。特徴的なのは右目にしている黒い眼帯と左目の真紅の瞳。これは魔眼らしい。人間が魔眼を持っているなんてレンさん以外では初めてだ。カルディアはハーフだから例外だしな。そしてこの人は完全に人工移植だ。でもまあ驚かないよ。散々人体実験をしていたんだから。
「やっと会えたなコヴィー・S・ウィズダムさんよ」
俺がそう呟くと、ミクちゃんが「え!?」とめちゃくちゃ驚いた声を上げていた。
「殺戮の腕は着けていないようだけど化物じみた強さだな。それにアヌビスとメルム・ヴィジャが遊ばれていた」
「それって2人同時に戦ったの?」
「そうらしい。実際にアヌビスは虚勢を張っていたようだけど、そのあまりにも異質な存在感に少し恐怖していた。その理由としてはもはや人間と呼ぶべき存在なのか分からなかったからだ」
「――ごめん。全然意味が分からない」
そうミクちゃんは困った表情を浮かべていた。まあ確かに無理もない。
「そうだな。まず思い出して欲しいんだけど、コヴィー・S・ウィズダムは様々な実験を行っていた。殺戮の腕やフォルボス達のような身寄りの無い子供を好き勝手に弄るという。それにカルベリアツリーのダンジョンの魔物の混合種もそうだ。彼は世界を渡り歩きながらも、色々な生態実験を繰り返していくうちに欲望が捻じ曲がってきたかのように思える。そして試したんだ――自分の身体でな」
「自分の身体?」
「そう。彼は自分の身体も改造し始めた。アヌビスが彼の身体を魔眼を通して見ているから間違いない。まずは左目。これは上級の魔族を犠牲にして魔眼を人工移植した。そして眼帯をしている右目は龍の目らしい」
「……厨二病全開だね」
「まあ笑っていられないけどな。龍に関しては白龍か赤龍のどちらかの龍だろうな」
「ニーズヘッグっていう可能性は無いの?」
「それは無いと思う。コヴィー・S・ウィズダムはオリジナルに拘りがあるようだったからな」
「成程ね。それで他はどんな感じになっているの?」
「そうだな。コヴィー・S・ウィズダムは人間、龍、魔族、森妖精の血が混じっている。まあ混じっていると言ってもあくまで人工的に混ぜたと言った方が正しい。体内には当然のように魔石も埋め込まれているし、何より世界最強の人間だった龍騎士。現ルシファーの遺伝子まで持っているらしい」
「情報が大渋滞してる――そこまで色々混ぜていて拒否反応とか起こさないのかな?」
「そこまでは分からない。直接本人に聞かない事にはな。ただ、コヴィー・S・ウィズダムがどんな外見をしているかどうか分かったのは大きい」
「確かにそうだね。でも戦闘値はどれくらいなんだろう?」
「Zはあっても可笑しくは無いな。アヌビスとメルム・ヴィジャがまるで子供扱いだったし、余力はまだまだ残しているようだった」
「凄い化物じゃん――」
「超越者も持っていると思う。直接対決したら相当面倒そうな相手ではある」
「ミロク、黒龍、コヴィー・S・ウィズダム――倒さないといけない敵がいっぱい出て来て大変だね。ナリユキ君とのんびりしたいけどな」
ミクちゃんはそう言って溜息をついていた。
「しばらくは無理そうだな。とりあえず戻ろう。アヌビスとメルム・ヴィジャを青龍さんに強制転移してもらうんだ」
「うん。分かった」
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