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会議Ⅱ
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俺は黒龍を千里眼を使って確認した。黒龍の行動は一日に最低でも三回、能力を使って確認する事にしている。しかし、今までは阻害されて確認することができなかったが――。
「マズいな――黒龍が何処かへ向かっている」
俺がそう声を漏らすと、ミクちゃん、ランベリオン、マカロフ卿の3人は驚いた表情を浮かべていた。
「何!? 今は何処にいるのだ!?」
そう問いかけてきたのはランベリオンだ。
「何処にいるかは分からない。ただ、空を飛んでいる。恐らく何処かの国を襲う気なのだろうな」
「それじゃあ私とナリユキ君で今すぐにでも向かうべきだよ! 転移イヤリングがあるから食い止めることができる!」
「いや、駄目だ」
ミクちゃんは俺がそう回答するとは思っていなかったのだろう。驚いた表情を浮かべながら「何で?」と問いかけてきた。
「理由は簡単だ。空中戦では俺は不利だからだ。奴は今、高度一万メートル付近に飛んでいる。殺戮の腕はそんな高いところまで飛べるような仕組みになっていない」
「つまり、戦えるのは私だけになるって事?」
「そういう事だ。十分強くなったミクちゃんでも1VS1での勝負は5分も持たない可能性が高い」
すると、ミクちゃんは肩を落としていた。正直なところ、ここまで辛辣な言葉をミクちゃんに言ったのは初めてかもしれない。けれども、感情だけ動いてほしくないんだ。大切な人はたくさんいるけど、俺にとって一番大切なのはミクちゃんだから――。
「分かった……でも、放っておいたら、国一つが本当に亡んでしまうよ?」
「それは分かっている。だから俺は今からコイツの行動から片時も目を離さないつもりだ。黒龍がどこかの国に近付き、高度を下げたなら、転移イヤリングを使って瞬時に移動する。もう一つは黒龍が、上空から攻撃を仕掛けた時、俺とミクちゃんでその攻撃を防ごう」
「分かった」
ミクちゃんはやっと納得した表情を見せた。差し詰め俺がどういう行動を取るのか不安だったのだろう。
「それにしても勝機はあるのか?」
そう問いかけて来たのはマカロフ卿だった。
「確かにナリユキ閣下は強くなっているが、それでも聞いている話では勝てるとは思わない。良くて相打ちといったところだ。それがナリユキ閣下と青龍様の2人のコンビネーションでも怪しいと思っている。加えて今や私達の実力では足を引っ張るだけ。おそらく肉壁となっても1秒も持たないだろう」
マカロフ卿はそう言って窓際に向かい葉巻を吸い始めた。その背中は、どこか何もできないという悔しさに満ち溢れていた。
「マカロフ卿――」
ミクちゃんがマカロフ卿の背中を同情した目で眺めながらそう呟いた。
「随分と冷静な分析だな」
そう言ったのはランベリオンだ。
「私はいつだって冷静だ。己の実力くらい分かっている。私達がどうこうできる次元の問題ではない。戦って10秒
持つ実力を持っている猛者は、ナリユキ閣下、ミク嬢、青龍様、アスモデウス様の4人だろう。ベルゾーグのユニークスキルは強力ではあるが通用はしないのでどうにもできないしな」
「確かにそうだな。以前の戦いで数を集めても、黒龍の前では無力。むしろ気を遣いながら戦わないといけない事を考えると全力を出せない」
「だろうな……我々でも何かできる事があれば良いのだが――ランベリオン。何かあるか?」
マカロフ卿は一旦ランベリオンにそう問いかけた。
「正直我では思い浮かばない。そもそも、竜と龍では個体差が違いすぎる。S級止まりの竜と、Z級に到達する可能性が高い龍では次元が違う話だ。何秒か気を引くという事しか正直出来ないだろうな」
「だよな。この件に関しては我々で模索する。ナリユキ閣下とミク嬢は倒すことだけを考えておいてほしい」
「分かってるよ」
「任せて!」
そう俺とミクちゃんは力強く言った。すると、ランベリオンもマカロフ卿も安堵した表情を見せていた。
◆
「それにしても大変な事になってしまったのう」
妾は魔界への入口を見ながらそう感じていた。現在、魔界ではベリアルの馬鹿と、ルシファーが戦争をしておる。優勢なのはベリアルで、ルシファーの軍は食糧が枯渇しておる。そうなってきた場合、この
2人が地上に出てくる可能性もある訳じゃ。雑兵が相手であればさほど問題は無いのじゃが、この2人が、もし一斉に地上にある魔界への入口から出てくれば、妾は食い止めることができず、地上はたちまち混乱に陥るじゃろう。これが黒龍以外の懸念点その1じゃ。
そしてもう1つはコヴィー・S・ウィズダムの件じゃ。アヌビスはコヴィー・S・ウィズダムが魔真王を使用できる可能性があると言っていた。であるならば、数百年前に突如姿を消した魔王ザガンの血を引いている可能性がある。そうなると、非常に厄介じゃのう――。
「あああああ! 考える事だらけで頭がパンクしそうじゃー!」
「なんだいきなり大声を出して」
妾がそう叫んでいると突如として旧友の声が聞こえてきた。こんなに取り乱したところを見られるのは恥ずかしい。何なら、今すぐにでも魔界への入口に入って魔界に行きたい気分じゃ。
「来てくれるのは初めてじゃのう。青龍よ」
妾が振り向くと、人型化姿の青龍が歩いてきた。
「少し2人きりで世間話でもしようと思ってな」
――絶対嘘じゃな。と心のなかで思ったのは言うまでもない。知り合って何千年と経つのに、ヒーティスには来たことが無かったからのう。
「どういう風の吹き回しじゃ?」
妾がそう言うと青龍は、いつも以上に緊張感がある目をしておった。
「マズいな――黒龍が何処かへ向かっている」
俺がそう声を漏らすと、ミクちゃん、ランベリオン、マカロフ卿の3人は驚いた表情を浮かべていた。
「何!? 今は何処にいるのだ!?」
そう問いかけてきたのはランベリオンだ。
「何処にいるかは分からない。ただ、空を飛んでいる。恐らく何処かの国を襲う気なのだろうな」
「それじゃあ私とナリユキ君で今すぐにでも向かうべきだよ! 転移イヤリングがあるから食い止めることができる!」
「いや、駄目だ」
ミクちゃんは俺がそう回答するとは思っていなかったのだろう。驚いた表情を浮かべながら「何で?」と問いかけてきた。
「理由は簡単だ。空中戦では俺は不利だからだ。奴は今、高度一万メートル付近に飛んでいる。殺戮の腕はそんな高いところまで飛べるような仕組みになっていない」
「つまり、戦えるのは私だけになるって事?」
「そういう事だ。十分強くなったミクちゃんでも1VS1での勝負は5分も持たない可能性が高い」
すると、ミクちゃんは肩を落としていた。正直なところ、ここまで辛辣な言葉をミクちゃんに言ったのは初めてかもしれない。けれども、感情だけ動いてほしくないんだ。大切な人はたくさんいるけど、俺にとって一番大切なのはミクちゃんだから――。
「分かった……でも、放っておいたら、国一つが本当に亡んでしまうよ?」
「それは分かっている。だから俺は今からコイツの行動から片時も目を離さないつもりだ。黒龍がどこかの国に近付き、高度を下げたなら、転移イヤリングを使って瞬時に移動する。もう一つは黒龍が、上空から攻撃を仕掛けた時、俺とミクちゃんでその攻撃を防ごう」
「分かった」
ミクちゃんはやっと納得した表情を見せた。差し詰め俺がどういう行動を取るのか不安だったのだろう。
「それにしても勝機はあるのか?」
そう問いかけて来たのはマカロフ卿だった。
「確かにナリユキ閣下は強くなっているが、それでも聞いている話では勝てるとは思わない。良くて相打ちといったところだ。それがナリユキ閣下と青龍様の2人のコンビネーションでも怪しいと思っている。加えて今や私達の実力では足を引っ張るだけ。おそらく肉壁となっても1秒も持たないだろう」
マカロフ卿はそう言って窓際に向かい葉巻を吸い始めた。その背中は、どこか何もできないという悔しさに満ち溢れていた。
「マカロフ卿――」
ミクちゃんがマカロフ卿の背中を同情した目で眺めながらそう呟いた。
「随分と冷静な分析だな」
そう言ったのはランベリオンだ。
「私はいつだって冷静だ。己の実力くらい分かっている。私達がどうこうできる次元の問題ではない。戦って10秒
持つ実力を持っている猛者は、ナリユキ閣下、ミク嬢、青龍様、アスモデウス様の4人だろう。ベルゾーグのユニークスキルは強力ではあるが通用はしないのでどうにもできないしな」
「確かにそうだな。以前の戦いで数を集めても、黒龍の前では無力。むしろ気を遣いながら戦わないといけない事を考えると全力を出せない」
「だろうな……我々でも何かできる事があれば良いのだが――ランベリオン。何かあるか?」
マカロフ卿は一旦ランベリオンにそう問いかけた。
「正直我では思い浮かばない。そもそも、竜と龍では個体差が違いすぎる。S級止まりの竜と、Z級に到達する可能性が高い龍では次元が違う話だ。何秒か気を引くという事しか正直出来ないだろうな」
「だよな。この件に関しては我々で模索する。ナリユキ閣下とミク嬢は倒すことだけを考えておいてほしい」
「分かってるよ」
「任せて!」
そう俺とミクちゃんは力強く言った。すると、ランベリオンもマカロフ卿も安堵した表情を見せていた。
◆
「それにしても大変な事になってしまったのう」
妾は魔界への入口を見ながらそう感じていた。現在、魔界ではベリアルの馬鹿と、ルシファーが戦争をしておる。優勢なのはベリアルで、ルシファーの軍は食糧が枯渇しておる。そうなってきた場合、この
2人が地上に出てくる可能性もある訳じゃ。雑兵が相手であればさほど問題は無いのじゃが、この2人が、もし一斉に地上にある魔界への入口から出てくれば、妾は食い止めることができず、地上はたちまち混乱に陥るじゃろう。これが黒龍以外の懸念点その1じゃ。
そしてもう1つはコヴィー・S・ウィズダムの件じゃ。アヌビスはコヴィー・S・ウィズダムが魔真王を使用できる可能性があると言っていた。であるならば、数百年前に突如姿を消した魔王ザガンの血を引いている可能性がある。そうなると、非常に厄介じゃのう――。
「あああああ! 考える事だらけで頭がパンクしそうじゃー!」
「なんだいきなり大声を出して」
妾がそう叫んでいると突如として旧友の声が聞こえてきた。こんなに取り乱したところを見られるのは恥ずかしい。何なら、今すぐにでも魔界への入口に入って魔界に行きたい気分じゃ。
「来てくれるのは初めてじゃのう。青龍よ」
妾が振り向くと、人型化姿の青龍が歩いてきた。
「少し2人きりで世間話でもしようと思ってな」
――絶対嘘じゃな。と心のなかで思ったのは言うまでもない。知り合って何千年と経つのに、ヒーティスには来たことが無かったからのう。
「どういう風の吹き回しじゃ?」
妾がそう言うと青龍は、いつも以上に緊張感がある目をしておった。
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