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新たな冒険者Ⅵ
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「確か、タスクとツバキって名前じゃなかったっけ?」
その名前を聞いて俺とアイは思わず目を合わせた。
「もしかして日本人の転生者か!?」
「流石にそこまでは知らないよ」
「奴等、いつも般若の仮面を被っているからな~。素顔も知らない」
三人はそう言ってお酒を口に運んだ。
「何でこんなに日本人の転生者が多いの――」
「俺の国でも俺以外に三人の日本人転生者がいるぜ。国民だけで言うとあと数人いるか」
俺がそう呟くと「行ってみたくなったわ」とアイは呟いた。
「何だ。お兄さん別の国の人?」
「そうだぜ。ジェノフの二人に会いたくてな」
「成程。でも話しかけづらいぞ~」
「俺なんてこの前、女性の方に声をかけたら、刀向けられたもんな。まるで二人だけの世界にいるようだ」
「二人だけの世界――二人は仲良さそうなのか?」
俺がそう質問をすると、一人の冒険者が「そりゃあもう」と呟いた。
「元々、五人程のパーティーだったらしいんだけど、今いる二人以外はクエスト中に命を落としたんだ」
「――そうか。そりゃあ絆は強いわな」
「なかなか悲しい話ね」
そう話をしている地震のような強い揺れが起きた。テーブルに置かれていた食べ物や飲み物が床に振り落とされていきギルド内は騒然としていた。
「何この揺れ!?」
「こんなん立てないぞ!」
と、冒険者パーティーが動揺していた。中には既に飲み過ぎているので吐いている人も。
「凄い揺れ――ずっと続いているね。ナリユキさんは平気?」
「まあ。この通りな。強いて言うならお酒飲んでいたから少し酔うくらい。アイも平気みたいだな」
「まあね。それにしても長い地震――」
「地震じゃないよ。地鳴りだなこれ」
「地鳴り!? こんなに大きい地鳴りって何が起きているの!?」
「分からないけど外に出るしか無いな」
俺がそう言ってギルドを出ると、「ちょっと待って!」とアイが後からついてきた。
俺は外に出ると思わず「うわぁ」と声を漏らしてしまった。
30m級の巨人が、巨大な剛腕を使って街を破壊していたからだ。勿論、街の人々は逃げまどっている。
巨人の風貌は俺が以前見たアグリオスとは違い、サイクロプスのような風貌をしている。
「凄い事になっているわね」
「ステータスは視れるのか?」
「視れない――ナリユキさんは勿論視えているのよね?」
「まあな。ステータスが視えないなら戦わない方がいいかもな」
「いや、私が戦うわ。この国を担う仕事をしているもの。私の役目は閣下を守るだけじゃない」
そう言ってアイがどこからともなく出現させたのは二丁の拳銃だった。俺と同じく手からいきなり出現させる事ができるみたいだけど、俺とユニークスキルが被っている訳では無い。
生前、どんな想いで命を落としたのかあまり想像がつかないが、彼女は想像銃というユニークスキルで、相手に確実に銃撃を浴びせる事ができる想像の銃を手から出現させる事ができるみたいだ。例え、銃撃無効の相手であろうと、攻撃を無力化させられる事は無いようだ。Z級相手には敵わないけど、S級だったら殆どの相手に通用するって事だ。
「相手の戦闘値は6,300。アイはちょうど6,000。300程の差があるけど勝てないと諦める数字でも無い。頑張ってみろ」
「分かってる。あんな奴に私は負けないから」
アイはそう言って巨人の方へと向かっていった。が――。
突如として巨人の首は斬り落とされた。アイは「何が起きたの!?」と驚いた様子だったが、俺にはハッキリと見えていた。
「アイ。あの二人だよ」
俺がそう言って指を指すと、崩れ行く巨人をバックに二人の戦士が現れた。
「もしかしてジェノフ!?」
「みたいだな」
6,300の戦闘値を持っている巨人を倒した般若の仮面を被った二人の戦士。
身長190cmの大柄な男、タスク・クニツナ。そしてもう一人は――。
「マジか!?」
俺が大声を出すとアイは「どうしたの!?」と驚いた表情を浮かべていた。
「どおりで周りを寄せ付けない訳だ。あいつら兄妹だぞ」
「そうなの!?」
もう一人の女性の名前は、ツバキ・クニツナ。二人のスキルを視たところ刀での戦闘が得意なようだ。見たことが無い刀スキルが多いが、タスクに関してはミクちゃんと戦闘バリエーションはあまり変わらない。
遠距離攻撃も出来て、近距離での戦闘も可能。強いて言うなら、タスクは近距離の方が火力が高いと言ったところ。ミクちゃんは遠距離攻撃の方が火力が高いからちょうど真反対だな。
そしてツバキ。彼女も刀攻撃と治癒スキルを有する、近距離攻撃とサポートが得意みたいだが、二人共攻撃に特化しているみたいで、明らかにバランス型では無い。防御系統スキルが少ないな。まあ、俺が遠距離のアクティブスキルが豊富じゃないのと同じか。その代わりに銃撃があるけど。
「貴様、何者だ? ただ者では無いな」
「でも、敵意は無さそうだよ。シールズに住んでいる日本人の転生者って訳でもないみたいだし」
「俺達のステータスが視えたという事は、俺達を凌駕する存在という事だな」
タスクはそう言って俺の事を警戒していた。般若の仮面の影響で表情は分からないものの、タスクから緊張感がひしひしと伝わっていた。
「名を名乗ってもらおうか」
「ああ、俺は――」
そう言おうとした時だった。突如地面の中から現れたナニカに、タスクとツバキは捕まり、身動きが取れなくなってしまった。
「よくも同胞を殺してくれたな!」
そう怒号を散らして現れたのは新しい巨人だ。ニ本の捻じれた黒い角を持ち、背中の中央付近まである長い銀髪をたなびかせ、頭には漆黒の兜を。身体には漆黒の鎧を装着している30m級の巨人だった。
「辺境にはこんな強い奴がいるのか」
俺が呑気にそう言っていると、アイが「戦闘値は!?」と訪ねてきた。
「7,800」
俺がそう言うとアイは目を丸くして驚いていた。
その名前を聞いて俺とアイは思わず目を合わせた。
「もしかして日本人の転生者か!?」
「流石にそこまでは知らないよ」
「奴等、いつも般若の仮面を被っているからな~。素顔も知らない」
三人はそう言ってお酒を口に運んだ。
「何でこんなに日本人の転生者が多いの――」
「俺の国でも俺以外に三人の日本人転生者がいるぜ。国民だけで言うとあと数人いるか」
俺がそう呟くと「行ってみたくなったわ」とアイは呟いた。
「何だ。お兄さん別の国の人?」
「そうだぜ。ジェノフの二人に会いたくてな」
「成程。でも話しかけづらいぞ~」
「俺なんてこの前、女性の方に声をかけたら、刀向けられたもんな。まるで二人だけの世界にいるようだ」
「二人だけの世界――二人は仲良さそうなのか?」
俺がそう質問をすると、一人の冒険者が「そりゃあもう」と呟いた。
「元々、五人程のパーティーだったらしいんだけど、今いる二人以外はクエスト中に命を落としたんだ」
「――そうか。そりゃあ絆は強いわな」
「なかなか悲しい話ね」
そう話をしている地震のような強い揺れが起きた。テーブルに置かれていた食べ物や飲み物が床に振り落とされていきギルド内は騒然としていた。
「何この揺れ!?」
「こんなん立てないぞ!」
と、冒険者パーティーが動揺していた。中には既に飲み過ぎているので吐いている人も。
「凄い揺れ――ずっと続いているね。ナリユキさんは平気?」
「まあ。この通りな。強いて言うならお酒飲んでいたから少し酔うくらい。アイも平気みたいだな」
「まあね。それにしても長い地震――」
「地震じゃないよ。地鳴りだなこれ」
「地鳴り!? こんなに大きい地鳴りって何が起きているの!?」
「分からないけど外に出るしか無いな」
俺がそう言ってギルドを出ると、「ちょっと待って!」とアイが後からついてきた。
俺は外に出ると思わず「うわぁ」と声を漏らしてしまった。
30m級の巨人が、巨大な剛腕を使って街を破壊していたからだ。勿論、街の人々は逃げまどっている。
巨人の風貌は俺が以前見たアグリオスとは違い、サイクロプスのような風貌をしている。
「凄い事になっているわね」
「ステータスは視れるのか?」
「視れない――ナリユキさんは勿論視えているのよね?」
「まあな。ステータスが視えないなら戦わない方がいいかもな」
「いや、私が戦うわ。この国を担う仕事をしているもの。私の役目は閣下を守るだけじゃない」
そう言ってアイがどこからともなく出現させたのは二丁の拳銃だった。俺と同じく手からいきなり出現させる事ができるみたいだけど、俺とユニークスキルが被っている訳では無い。
生前、どんな想いで命を落としたのかあまり想像がつかないが、彼女は想像銃というユニークスキルで、相手に確実に銃撃を浴びせる事ができる想像の銃を手から出現させる事ができるみたいだ。例え、銃撃無効の相手であろうと、攻撃を無力化させられる事は無いようだ。Z級相手には敵わないけど、S級だったら殆どの相手に通用するって事だ。
「相手の戦闘値は6,300。アイはちょうど6,000。300程の差があるけど勝てないと諦める数字でも無い。頑張ってみろ」
「分かってる。あんな奴に私は負けないから」
アイはそう言って巨人の方へと向かっていった。が――。
突如として巨人の首は斬り落とされた。アイは「何が起きたの!?」と驚いた様子だったが、俺にはハッキリと見えていた。
「アイ。あの二人だよ」
俺がそう言って指を指すと、崩れ行く巨人をバックに二人の戦士が現れた。
「もしかしてジェノフ!?」
「みたいだな」
6,300の戦闘値を持っている巨人を倒した般若の仮面を被った二人の戦士。
身長190cmの大柄な男、タスク・クニツナ。そしてもう一人は――。
「マジか!?」
俺が大声を出すとアイは「どうしたの!?」と驚いた表情を浮かべていた。
「どおりで周りを寄せ付けない訳だ。あいつら兄妹だぞ」
「そうなの!?」
もう一人の女性の名前は、ツバキ・クニツナ。二人のスキルを視たところ刀での戦闘が得意なようだ。見たことが無い刀スキルが多いが、タスクに関してはミクちゃんと戦闘バリエーションはあまり変わらない。
遠距離攻撃も出来て、近距離での戦闘も可能。強いて言うなら、タスクは近距離の方が火力が高いと言ったところ。ミクちゃんは遠距離攻撃の方が火力が高いからちょうど真反対だな。
そしてツバキ。彼女も刀攻撃と治癒スキルを有する、近距離攻撃とサポートが得意みたいだが、二人共攻撃に特化しているみたいで、明らかにバランス型では無い。防御系統スキルが少ないな。まあ、俺が遠距離のアクティブスキルが豊富じゃないのと同じか。その代わりに銃撃があるけど。
「貴様、何者だ? ただ者では無いな」
「でも、敵意は無さそうだよ。シールズに住んでいる日本人の転生者って訳でもないみたいだし」
「俺達のステータスが視えたという事は、俺達を凌駕する存在という事だな」
タスクはそう言って俺の事を警戒していた。般若の仮面の影響で表情は分からないものの、タスクから緊張感がひしひしと伝わっていた。
「名を名乗ってもらおうか」
「ああ、俺は――」
そう言おうとした時だった。突如地面の中から現れたナニカに、タスクとツバキは捕まり、身動きが取れなくなってしまった。
「よくも同胞を殺してくれたな!」
そう怒号を散らして現れたのは新しい巨人だ。ニ本の捻じれた黒い角を持ち、背中の中央付近まである長い銀髪をたなびかせ、頭には漆黒の兜を。身体には漆黒の鎧を装着している30m級の巨人だった。
「辺境にはこんな強い奴がいるのか」
俺が呑気にそう言っていると、アイが「戦闘値は!?」と訪ねてきた。
「7,800」
俺がそう言うとアイは目を丸くして驚いていた。
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