名前を棄てた賞金首

第8話 最後に

　ゆっくりと目を開くと木の天井が見える。そして背中に感じるシーツの感触。ホークは体を起こそうとしたが、全身に激痛が走り無理には動けない。

「ボクはまだ生きていたのか――お嬢ちゃんは！」

　再び体を起こそうとして、激痛が走るが無理やり起き上がったホーク。

「私なら大丈夫よ何とかね」

　その声は、左手の方から聞こえてきた。セシリアは体全身に包帯を巻かれているが、顔色は悪くない。ホッすると頭が揺れているような感覚に陥る。

「やっぱり、あの神経毒は恐ろしいものだね」

「良かったわね、ちゃんと解毒されて。政府が必死に探してくれたそうよ。それにこれが証拠」

　セシリアはホークとキッドの手配書をホークに見せた。そして、少し驚くことが記さされている。二人の手配書にある懸賞金欄に横棒が二本引かれていた。これは賞金首が取り消しになったサイン。

「どうして？」

「政府である私に力を貸してくれたからよ。そして命懸けで助けてくれた――だから、私は、見舞いに来てくれた政府の上司に頭を下げて、アナタ達の手配書を無効にさせてもらったの。トップも納得してくれたみたい。アクアクリスタルをアナタが元にあった町に戻そうとしていたのも分かったからね」

　事が進み過ぎていてホークは頭がついていかない。

「あれからどれくらい経ったんだい？　それにアクアクリスタルは？」

「問一は一週間よ。目を覚まさないと思って心配したんだから。そして問二は、政府の管理の元、この町で引き続き水の供給を行ってもらうわ」

「それならよかった――ん？　町の保安官は？」

「キッドよ。二十一人も殺害して手配されていた男が、あれだけ心を入れ替えていて、世話になったこの町を、よくしようと思っている。人望の厚い彼は町民の声で彼は保安官になった。保安官をこんな決め方をするのは初めてよ」

「だろうね――最後に一つ、鏡を見せてくれないか？」

　ホークは自分の頭がやけに涼しいことに、髭が無くなっていることに違和感を覚えていた。セシリアは黙って、ホークに鏡を渡す。

　そこに映っていたのは、短髪で、髭のない手配書通りの顔。しかし、殺人鬼のような目は優しさに溢れた目に変わっていて、とても凛々しい好青年のようなホークだった。