世界樹の下で

瀬織董李

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旅立…てない?②

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「せくはら、とはなんぞや嬢ちゃん」

「相手に対し性的な嫌がらせをすることです!!」

「ならワシは違うな。殿下の為に嬢ちゃんが子供をたんと産めるかどうか確認しただけじゃよ?」

 両手の指をわきわきとお尻を掴むような動きを見せているのは、私と同じくらいの身長のローブを着たおじいさん。ていうか、なんで殿下の為なのよ!!

「およ? 嬢ちゃんは殿下の愛人じゃないのかえ?」

「あ、愛……違います!!」

 わたしはただの農婦です!!

 力んで反論した私を殿下が苦笑しながら見ている。一体何処から湧いたのよ、このおじいさん!

「じーじ、ダメ」

「おーおー、すまんのおカシェ」

「……は?」

 え? カシェ君のおじいちゃん? どういうこと?と思い殿下の方を見ると、殿下は肩を竦めながらおじいさんを指差した。

「この方はアウス・グランペール師。魔導師長だよこう見えてもね」

「ええっ!?」

 でっかくなったハイホーのうちの一人かと思ったよ!ツルハシ似合いそう。冗談抜きでこう見えて・・・・・、だと思う。紫色(一番偉い色らしい)のローブを着たおじいさ……もとい魔導師長様はカシェ君の頭と猫ちゃんを撫でている。そうしてると好々爺なのに、中身セクハラじじいなんて残念だわ。

「なんか言ったかの?嬢ちゃんや」

「イーエー。ナニモイッテマセン」

 あう、鋭い。つい最近どっかで同じことがあった気がするケド。

「じーじ。たびいく、いいの?」

「おお、えーぞえーぞ。お前もそろそろ外を見てみた方がええじゃろう。なんせ王宮と塔しか知らんからの」

 過保護、という訳でも無いが、カシェ君達は産まれた伯爵家では軟禁状態、助け出されてからはずっと塔に居たらしい。私も実家の村とここの農園しか知らないけど、実家に居た時は森やら山やら川やら駆けずり回ってたからなあ。誰よ、野生児とか言うのは。

「じーじ、ありがと!」

 カシェ君がむぎゅっと魔導師長様にしがみつく。そうね。ちゃんと最初から聞いてれば良かったのよ。ちゃんとカシェ君の事を考えてくれる人みたいだもの。

「じゃ、これで一件落着だね。今から出立すればギリギリ間に合うかな?急がないと」

 最初の宿場町まではちょっと距離が離れているらしい。なんせ王都のすぐそばに宿場町を作っても泊まる人が居ない。王都の門の外すぐの辺りには、閉門に間に合わなかった人が利用する怪しいぼったくり宿が何件かあるらしいけど。

「なにかと旅には入り用じゃろ。これと、これと、あれと……えーと、あとはなんじゃったかな」

 突然魔導師長様がぽいぽいとその場にいろんなものをローブの袖から出し始める。うわ、凄いこんなに収納できるんだ。流石師長を拝しているだけの事はあるのね。

 私が感心しているとランクス殿下は私が収納魔法に驚いていると思ったのだろう。

「グランペール師は世にも珍しい空属性の使い手だよ。空属性は塔で確認している限り約百年振りだそうだ。収納魔法、便利そうでいいよね。僕も使えたらなあ」

 はい、とっても便利です。私は魔力小さいんで汗拭きとか、ちょっとした小物しか収納出来ないですけど、そのお陰でバレてないみたいで助かってますし。

 いや、だとしてもこんなところにベッド出さないで下さい魔導師長様!いくらなんでも持っていくのは無理です!
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