短編集 【雨降る日に……】

星河琉嘩

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雨降る日に……

10 彼と彼女の想い

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 なかなか通話を終えることが出来なかった俺たち。朝方になっても眠くはならないで話してることが楽しくて気付いたら朝の6時。さすがに瞼が重くなってきた。
「ヤバい。もうこんな時間だ」
『ほんとだ』
「今日、休みでよかった。こんな状態で仕事出来ないや」
『ふふっ。そうね』
 彼女の優しい声が聞こえる。その声はとても心地いい。ずっと聞いていたい。
「でもさすがにだるいね」
『うん』
「あのさ……、午後、会わない?」
 今度は俺から誘った。あの日のやり直しをしたい。
「それまで一旦、休もう」
『分かった。私も会いたい』
「じゃ一度切るね」
『うん。おやすみなさい』
「おやすみ」
 漸く通話を切ることが出来た俺たちは午後の約束をして休むことにした。話してる時は感じてなかった疲労感がどっとくる。そりゃ夜通し話してればだるくもなる。アラームをセットしてベッドに倒れ込んだ。ベッドに倒れ込んだ後はそのまま夢の中へと入っていった。


 ジャーンジャジャーン……ッ!
 煩いロックな音楽が流れてる。スマホのアラームは煩い音楽に設定してる。じゃないと俺は起きれない。
 目を開けることが出来ないままスマホを探す。煩い音楽を止めて薄目で時間を確認した。スマホの時計は11時を表示していた。あれから5時間は眠った。それでもまだ頭が眠ってる俺はそろりとベッドから出てそのままバスルームへと向かう。顔を洗って目を覚ます為。
 リビングに戻った俺はとりあえず着替えを済ませスマホと財布だけを持って待ち合わせ場所まで向かった。待ち合わせたのはあの雨の日、偶然立ち寄った喫茶店。彼女もあの喫茶店を知ってるとは思わなかった。


 カラン……!
 喫茶店の扉を開けると昔ながらのドアのベルが鳴り響く。そして店内を見渡すと彼女が一冊の本を読んでいた。
「なに読んでるの?」
 顔を上げた彼女はにこっと笑う。
「これ。ここの店主の書いた本なんだって」
 見せられたのは「雨降る日に……」という本。
あの日、ここで読んだ一冊だった。
「前、ここに来た時に読んだんだけど、また読みたくなっちゃって」
「前も読んだの?」
「うん。前に待ち合わせた時、あなたが来れなかったあの日」
「え?」
「あの日にここに辿り着いたの」
 あの日、彼女もここに来て俺と同じ本を読んでいた。なんという偶然なんだろう。

「あの日、俺は待ち合わせ場所に行ったんだ。2時間も遅れてたけど。その後にここに入って俺もその本を読んだ」
 そう告げると彼女は目を丸くさせた。
「ほんとに?なんて偶然!」
 笑った顔が可愛い。愛しい。こんなにも愛しいと思えるのだろうか。こんなにも大切にしたいって思うのだろうか。

(今度こそちゃんと……)
 ぐっと手を握り締める。彼女に俺の想いを届ける為に。


「好きだ。俺と付き合ってくれる?」
 改めてちゃんとそう言うことが出来た俺は彼女の顔をじっと見ていた。そして彼女は笑って「よろしくお願いします」と言ってくれた。
 これから俺と彼女は一瞬に生きていく。


END
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