短編集 【雨降る日に……】

星河琉嘩

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秋晴れの日に

7 ほんとのあたし

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 昔っからあたしはおしゃれが好きだった。幼いの頃のお気に入りは可愛いフリフリしたピンク色のスカート。小学校の時は子供向けのメイクにハマったし、中学校に入るとネイルにもハマった。
 決してギャルではなかったけど、おしゃれが大好きだった。

 そのおしゃれをする理由は、すべて男の子の為。あたしが好きになる男の子は、みんなかっこいい。かっこいい男の子の隣には可愛い女の子が立つの。それはあたしでないとダメ。そう思うからおしゃれをしてきた。
 それは社会人になってからも変わらなかった。会社に入社して、研修でいろんな部署を回った。その時に、彼に会った。
 営業部にいたその彼は、あたしより2つ年上。スラッとした細身の身体に、爽やかな笑顔。いつもニコニコとして同僚たちと談話してる。そんな姿に見惚れてしまったの。
 あたしはこの人の隣に立ちたいとそう思った。

 だけど、彼の隣にはがいた。

 彼女もまたスラッした美人。肩まで伸びた黒髪がキレイで、細長い指でその髪をかき上げる。
 その姿がとても美しかった。

 はっきり言って、あたしは彼女に負けている。彼女は仕事もデキル人だったから、周りからの信頼も厚い。
 あたしはというと、まだ入社したばかりの新人。営業部には配属されないで総務部に配属され、彼とは接点がない。研修の時に見かけていただけ。


(悔しい……)
 その思いは日に日に強くなる。悔しい思いが胸の中に渦巻く。それと同時に何か黒いものが私の中に芽生えていくのを感じていた。

 分かってる。分かってるのよ。でも止められない。彼を誰にもとられたくないの……。


「あっ!」
 会社の廊下ですれ違うと、彼は目線を外して戻って行く。
「ちょっ……、待って!」
 妊娠が分かってから、彼はあたしを避ける。元々好かれてはいないのかもしれない。酔った彼を襲うように関係を持ったから、彼には本音を言えない。




 ほんとは──……。
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