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第4章
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「風呂、先入れ」
沙樹をバスルームに連れて行くと、バスタオルを出した。
「シャンプーとか勝手に使っていいから」
「ありがとう」
崇弘がバスルームを出ていくのを確認してから、着ていたものを脱いでいく。
シャワーを浴びている時、ふと思った。今この状況が、とてつもなく恥ずかしい。頭が追い付いていかない。崇弘に会いたくて会いに来て、追い返されて追い返されて、帰る前にもう一度会いに来て、まさか自分を受け入れてくれるとは思ってもいなかった。それどころか、輝にあんなことを言ってくれた。それがとても嬉しかった。
「どうしよう……」
恥ずかしくて仕方ない。昼間、行為寸前までいったことを思い出す。あのまま先に進んだらどうなると、考える。
嫌なわけじゃない。だけど再会してすぐに、そんな関係になることに疑問を持った。
「どうしよう……」
もう一度呟くと、シャワーを止めた。
(考えても仕方ない)
顔を上げて浴室を出た。
◇◇◇◇◇
バスルームを出てリビングに行くと、テレビを見ている崇弘がいた。翌日空港まで沙樹を送って行くから、ビールを飲むことをやめている。
「タカちゃん」
「お。出たか」
立ち上がると、沙樹に近付いた。
「お前なぁ。ちゃんと髪、乾かしてこいよ」
呆れてバスルームに行くと、ドライヤーを持って来た。
「ほら」
ドライヤーを渡すと、崇弘もバスルームへと向かった。
ひとり取り残されたリビングで、沙樹は髪を乾かしていく。
(こんな状況になるなんて……)
まだ信じられない思いが、沙樹の中を駆け巡る。今まで外泊なんて輝たちと一緒ならある。だが崇弘とふたりきりなんてことは、一度もない。
日本にいる由紀子たちも、これは想像もしていないだろう。
「沙樹」
風呂上がりの崇弘が、沙樹に声をかける。上半身裸で下はスエットを履いている。バスタオルで髪の毛を拭きながら、沙樹に近寄る。
「貸して」
沙樹からドライヤーを取ると、半分乾いている沙樹の髪の毛にドライヤーの風を当てていく。
「いいよ、タカちゃん」
「いいからいいから」
なにが嬉しいのか、崇弘は上機嫌だった。
崇弘にされるがままの沙樹は、どうしようかと考えていた。どんな顔をして崇弘と一晩過ごせばいいのか、分からないでいたのだ。
「はい、おしまい」
そう言うと、今度は自分の髪の毛を乾かす。
崇弘の髪の毛は、沙樹よりも長めの赤い髪。ステージに立ってる時は、その髪の毛を1本にまとめてる。時折そのまとめた髪の毛が肩から前へ垂れ下がる姿が、かっこいいとファンは騒いでいる。その髪の毛の手入れをするのは、大変だろうといつも思っていた。
沙樹は立ち上がって、崇弘をソファーに座らせる。
「なに?」
「貸して。私がやる」
そう言って崇弘の髪を丁寧に乾かしていく。
「なんか、いいな。こういうの」
崇弘はポツリと呟いた。
「ん……」
沙樹はそれに小さく、頷いた。
◇◇◇◇◇
寝室のベッドの中で、崇弘は耐えていた。すぐ横に沙樹がいるのに、なにも出来ない。それに耐えていた。
「沙樹ぃ」
少し甘えた声を出してみるが、沙樹はさっきからこっちを見ない。
「沙樹ちゃん」
抱き締めてみるが、沙樹は頑なになっている。
「少しぐらい触ってもいい?」
そう言ってみるが、沙樹は首を横に振る。
「俺が怖い?」
「違う…。でも……」
「セックスが怖いの?」
「わかんない……」
「俺は、沙樹とシたいんだけど」
「でもッ!」
さっきからこのやり取りの繰り返しだった。
「ずっと我慢してたんだけど」
崇弘のその想いは、分かる。だけどまだ心がついていかないのだ。
「昼間、言ったよね。このまま、そういうことしていいのか……って」
「俺は別に構わないと思うけど」
「タカちゃんはそうかもしれないけど!私は……、んっ!んんんっ」
崇弘は沙樹を自分に向け、唇を奪った。
「もう、ごちゃごちゃ煩ぇ……」
「タカちゃん…」
「なにも考えなくていい。今は俺のことだけ考えて」
「え……」
「ただ、俺を求めて……」
そう言った崇弘は、沙樹にキスをする。キスをしながらゆっくりと沙樹が纏ってる布を剥いでいく。
崇弘のキスには魔力があるのか、なにも考えられなくなる。
「タ…カちゃ……」
「可愛い」
首筋に唇を這わせ、右手でブラジャーのホックを外していく。
「タカ…ちゃ……」
「俺に、全て委ねて」
崇弘の目が沙樹を捉える。その目から視線をずらすことが出来なかった。
「……あッ!、アっ!…、ンっ!」
ベッドルームに沙樹の甘い声が響く。こんな声を出すことがあるんだと、恥ずかしくなる。崇弘に素肌を見られることも恥ずかしいのに、崇弘にされていることがとても恥ずかしい。
「タ、タカ…ちゃ……、あ、んッ!」
崇弘の手が身体中這い巡る。沙樹の胸の突起に触れると、声を漏らす。そんな沙樹をもっと見たくて、そんな声をもっと聞きたくて、崇弘は胸の突起をつまんだ。
ビクンと、身体が跳ねる。今まで感じたことのない感覚に、怖くなる。
「ま、待って……、タカ…ちゃっ、あ、あ、あ、アッ!」
ピクンピクンと、勝手に動いてしまうことにまた恥ずかしくなる。崇弘は沙樹の反応を楽しむように、触れることをやめない。
(ほんと、ヤバいよな)
崇弘はそう思うが、気持ちを抑えられない。抑えられないから、沙樹を攻める。どこに触れても反応する沙樹が可愛くて仕方ない。
「沙樹……」
沙樹の太股に触れると、またピクンと反応した。
「ダメ?」
これでも抑えていた方だった。それが分かるくらい、せつない顔を沙樹に向けていた。
「タ…カちゃ……」
崇弘に手を差し伸べる沙樹は、その手を崇弘の首に絡みつけた。
沙樹の身体は、少し震えていた。それは怖さなのか、快楽なのか判別出来ない。
自分でもどうしたらいいのか分からない感情が、身体の奥から沸き上がる。
「沙樹」
耳元でする崇弘の声が、沙樹の感情を昂らせていた。
「ダメ?」
もう一度崇弘はそう言った。
沙樹はもう抵抗することは出来なくなっていた。
「……いいよ」
沙樹をバスルームに連れて行くと、バスタオルを出した。
「シャンプーとか勝手に使っていいから」
「ありがとう」
崇弘がバスルームを出ていくのを確認してから、着ていたものを脱いでいく。
シャワーを浴びている時、ふと思った。今この状況が、とてつもなく恥ずかしい。頭が追い付いていかない。崇弘に会いたくて会いに来て、追い返されて追い返されて、帰る前にもう一度会いに来て、まさか自分を受け入れてくれるとは思ってもいなかった。それどころか、輝にあんなことを言ってくれた。それがとても嬉しかった。
「どうしよう……」
恥ずかしくて仕方ない。昼間、行為寸前までいったことを思い出す。あのまま先に進んだらどうなると、考える。
嫌なわけじゃない。だけど再会してすぐに、そんな関係になることに疑問を持った。
「どうしよう……」
もう一度呟くと、シャワーを止めた。
(考えても仕方ない)
顔を上げて浴室を出た。
◇◇◇◇◇
バスルームを出てリビングに行くと、テレビを見ている崇弘がいた。翌日空港まで沙樹を送って行くから、ビールを飲むことをやめている。
「タカちゃん」
「お。出たか」
立ち上がると、沙樹に近付いた。
「お前なぁ。ちゃんと髪、乾かしてこいよ」
呆れてバスルームに行くと、ドライヤーを持って来た。
「ほら」
ドライヤーを渡すと、崇弘もバスルームへと向かった。
ひとり取り残されたリビングで、沙樹は髪を乾かしていく。
(こんな状況になるなんて……)
まだ信じられない思いが、沙樹の中を駆け巡る。今まで外泊なんて輝たちと一緒ならある。だが崇弘とふたりきりなんてことは、一度もない。
日本にいる由紀子たちも、これは想像もしていないだろう。
「沙樹」
風呂上がりの崇弘が、沙樹に声をかける。上半身裸で下はスエットを履いている。バスタオルで髪の毛を拭きながら、沙樹に近寄る。
「貸して」
沙樹からドライヤーを取ると、半分乾いている沙樹の髪の毛にドライヤーの風を当てていく。
「いいよ、タカちゃん」
「いいからいいから」
なにが嬉しいのか、崇弘は上機嫌だった。
崇弘にされるがままの沙樹は、どうしようかと考えていた。どんな顔をして崇弘と一晩過ごせばいいのか、分からないでいたのだ。
「はい、おしまい」
そう言うと、今度は自分の髪の毛を乾かす。
崇弘の髪の毛は、沙樹よりも長めの赤い髪。ステージに立ってる時は、その髪の毛を1本にまとめてる。時折そのまとめた髪の毛が肩から前へ垂れ下がる姿が、かっこいいとファンは騒いでいる。その髪の毛の手入れをするのは、大変だろうといつも思っていた。
沙樹は立ち上がって、崇弘をソファーに座らせる。
「なに?」
「貸して。私がやる」
そう言って崇弘の髪を丁寧に乾かしていく。
「なんか、いいな。こういうの」
崇弘はポツリと呟いた。
「ん……」
沙樹はそれに小さく、頷いた。
◇◇◇◇◇
寝室のベッドの中で、崇弘は耐えていた。すぐ横に沙樹がいるのに、なにも出来ない。それに耐えていた。
「沙樹ぃ」
少し甘えた声を出してみるが、沙樹はさっきからこっちを見ない。
「沙樹ちゃん」
抱き締めてみるが、沙樹は頑なになっている。
「少しぐらい触ってもいい?」
そう言ってみるが、沙樹は首を横に振る。
「俺が怖い?」
「違う…。でも……」
「セックスが怖いの?」
「わかんない……」
「俺は、沙樹とシたいんだけど」
「でもッ!」
さっきからこのやり取りの繰り返しだった。
「ずっと我慢してたんだけど」
崇弘のその想いは、分かる。だけどまだ心がついていかないのだ。
「昼間、言ったよね。このまま、そういうことしていいのか……って」
「俺は別に構わないと思うけど」
「タカちゃんはそうかもしれないけど!私は……、んっ!んんんっ」
崇弘は沙樹を自分に向け、唇を奪った。
「もう、ごちゃごちゃ煩ぇ……」
「タカちゃん…」
「なにも考えなくていい。今は俺のことだけ考えて」
「え……」
「ただ、俺を求めて……」
そう言った崇弘は、沙樹にキスをする。キスをしながらゆっくりと沙樹が纏ってる布を剥いでいく。
崇弘のキスには魔力があるのか、なにも考えられなくなる。
「タ…カちゃ……」
「可愛い」
首筋に唇を這わせ、右手でブラジャーのホックを外していく。
「タカ…ちゃ……」
「俺に、全て委ねて」
崇弘の目が沙樹を捉える。その目から視線をずらすことが出来なかった。
「……あッ!、アっ!…、ンっ!」
ベッドルームに沙樹の甘い声が響く。こんな声を出すことがあるんだと、恥ずかしくなる。崇弘に素肌を見られることも恥ずかしいのに、崇弘にされていることがとても恥ずかしい。
「タ、タカ…ちゃ……、あ、んッ!」
崇弘の手が身体中這い巡る。沙樹の胸の突起に触れると、声を漏らす。そんな沙樹をもっと見たくて、そんな声をもっと聞きたくて、崇弘は胸の突起をつまんだ。
ビクンと、身体が跳ねる。今まで感じたことのない感覚に、怖くなる。
「ま、待って……、タカ…ちゃっ、あ、あ、あ、アッ!」
ピクンピクンと、勝手に動いてしまうことにまた恥ずかしくなる。崇弘は沙樹の反応を楽しむように、触れることをやめない。
(ほんと、ヤバいよな)
崇弘はそう思うが、気持ちを抑えられない。抑えられないから、沙樹を攻める。どこに触れても反応する沙樹が可愛くて仕方ない。
「沙樹……」
沙樹の太股に触れると、またピクンと反応した。
「ダメ?」
これでも抑えていた方だった。それが分かるくらい、せつない顔を沙樹に向けていた。
「タ…カちゃ……」
崇弘に手を差し伸べる沙樹は、その手を崇弘の首に絡みつけた。
沙樹の身体は、少し震えていた。それは怖さなのか、快楽なのか判別出来ない。
自分でもどうしたらいいのか分からない感情が、身体の奥から沸き上がる。
「沙樹」
耳元でする崇弘の声が、沙樹の感情を昂らせていた。
「ダメ?」
もう一度崇弘はそう言った。
沙樹はもう抵抗することは出来なくなっていた。
「……いいよ」
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