もう一度会いたい……【もう一度抱きしめて……】スピンオフ作品

星河琉嘩

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第4章

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 カーテンの隙間から、朝の陽射しが入り込んでいた。その陽射しによって沙樹は目を覚ます。
「ん……っ」
 微かに声を漏らすと、隣にいる崇弘の腕が伸びてきた。
「タカちゃん」
「おはよう」
「おはよ…」
 寝起きの顔を見られるのが恥ずかしくなり、顔を隠す。
「隠さない」
「だって……」
 ふっと笑う崇弘は、沙樹をじっと見ていた。
「身体、平気?」
 その問いに首を横に振る。それもその筈だ。あの後、崇弘は沙樹を3度も抱いたのだから。

「悪ぃな。無理させちまって」
 沙樹の髪に指を絡ませてはそう言う。
「もう少し、寝てな」
 おでこにそっとキスをして、崇弘はベッドを這い出る。沙樹は身体の怠さから、ベッドから動けないでまた眠っていった。



     ◇◇◇◇◇




 次に目を覚ましたのは、昼を過ぎていた。
 ゆっくりと身体を起こすと、自分の身体を見る。あちこちに昨日の痕跡が赤く残っている。身体もまだ怠い。
 だがいつまでもこうしてベッドの中にいるわけにはいかない。床に散らばった下着を身に付けると、部屋の隅に置かれたバッグに気付く。昨日来た時はリビングに置いてあったものが、崇弘が寝室に置いてくれたのだろう。そのバッグから着替えを出して身に付ける。
(タカちゃんは?)
 寝室のドアを開けると、崇弘がいない。キョロキョロしていると、テーブルに置き手紙があった。崇弘の汚い文字で殴り書きのようにメモが残されていた。

《コンビニ行ってくる》

 それを見て、沙樹はバスルームへと向かった。顔を洗い、バスルームに置いてあるタオルを借りて顔を拭き、持って来た化粧水でスキンケアをする。リビングでメイクをして崇弘が帰ってくるのを待っていた。
(なんか…、不思議な感覚)
 崇弘のマンションに泊まったことはある。だが、今日とは違う気持ちでいられた。
 高校生の頃一度だけ泊まった時は、由紀子たちに嘘をついて泊まった。だけどただ崇弘と眠っただけで、なにも起こらなかった。
 アメリカの家では、そんなつもりはなくて身体を重ね、恥ずかしさはもちろんあったが、日本ではないからなのか、自分の中にはない感情があった。
 でも今はアメリカの家の時とは違う感情。恥ずかしさと嬉しさと戸惑いが入り交じっていた。


 ガチャっ。
 玄関で、ドアが開く金属音が聞こえた。廊下を歩いてくる音。そしてリビングのドアを開ける音。
 振り返ると、崇弘が両手に袋を持っていた。
「起きた?」
「うん」
「ハラ、減っただろ」
 と、コンビニの袋をローテーブルの上に置いた。
「どれだけ買ったのよ」
 呆れ顔で崇弘を見る。
「だって何もねぇから」
 確かに崇弘の冷蔵庫には何も入ってない。帰って来るまで、冷蔵庫の線は抜かれていたくらいだ。
「いない間、電気とか止めてたの?」
「いや。止めてない。たまにこっちに来ることあったから。だから優樹菜に管理してもらってた」
「そうなんだ」
 普段使ってなくても自動で支払われるから問題ないと、崇弘は笑う。
「もう…、こっちにいるの?」
「そのつもりだよ」
「アメリカの家は?」
「まだそのまま」
「また…、アメリカに行くの?」
「レコーディングはあっちだからなぁ」
 レコーディングでアメリカに行った時に使う家として、引き払うことはしないでいるらしい。


「ここにいるから」
 沙樹の隣に座った崇弘は、そう耳元で言った。
「お前のすぐ傍にいるから」
 肩を抱き頭に手を置く。優しい声は沙樹を安心させていった。
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