86 / 136
第4章
12
しおりを挟む
カーテンの隙間から、朝の陽射しが入り込んでいた。その陽射しによって沙樹は目を覚ます。
「ん……っ」
微かに声を漏らすと、隣にいる崇弘の腕が伸びてきた。
「タカちゃん」
「おはよう」
「おはよ…」
寝起きの顔を見られるのが恥ずかしくなり、顔を隠す。
「隠さない」
「だって……」
ふっと笑う崇弘は、沙樹をじっと見ていた。
「身体、平気?」
その問いに首を横に振る。それもその筈だ。あの後、崇弘は沙樹を3度も抱いたのだから。
「悪ぃな。無理させちまって」
沙樹の髪に指を絡ませてはそう言う。
「もう少し、寝てな」
おでこにそっとキスをして、崇弘はベッドを這い出る。沙樹は身体の怠さから、ベッドから動けないでまた眠っていった。
◇◇◇◇◇
次に目を覚ましたのは、昼を過ぎていた。
ゆっくりと身体を起こすと、自分の身体を見る。あちこちに昨日の痕跡が赤く残っている。身体もまだ怠い。
だがいつまでもこうしてベッドの中にいるわけにはいかない。床に散らばった下着を身に付けると、部屋の隅に置かれたバッグに気付く。昨日来た時はリビングに置いてあったものが、崇弘が寝室に置いてくれたのだろう。そのバッグから着替えを出して身に付ける。
(タカちゃんは?)
寝室のドアを開けると、崇弘がいない。キョロキョロしていると、テーブルに置き手紙があった。崇弘の汚い文字で殴り書きのようにメモが残されていた。
《コンビニ行ってくる》
それを見て、沙樹はバスルームへと向かった。顔を洗い、バスルームに置いてあるタオルを借りて顔を拭き、持って来た化粧水でスキンケアをする。リビングでメイクをして崇弘が帰ってくるのを待っていた。
(なんか…、不思議な感覚)
崇弘のマンションに泊まったことはある。だが、今日とは違う気持ちでいられた。
高校生の頃一度だけ泊まった時は、由紀子たちに嘘をついて泊まった。だけどただ崇弘と眠っただけで、なにも起こらなかった。
アメリカの家では、そんなつもりはなくて身体を重ね、恥ずかしさはもちろんあったが、日本ではないからなのか、自分の中にはない感情があった。
でも今はアメリカの家の時とは違う感情。恥ずかしさと嬉しさと戸惑いが入り交じっていた。
ガチャっ。
玄関で、ドアが開く金属音が聞こえた。廊下を歩いてくる音。そしてリビングのドアを開ける音。
振り返ると、崇弘が両手に袋を持っていた。
「起きた?」
「うん」
「ハラ、減っただろ」
と、コンビニの袋をローテーブルの上に置いた。
「どれだけ買ったのよ」
呆れ顔で崇弘を見る。
「だって何もねぇから」
確かに崇弘の冷蔵庫には何も入ってない。帰って来るまで、冷蔵庫の線は抜かれていたくらいだ。
「いない間、電気とか止めてたの?」
「いや。止めてない。たまにこっちに来ることあったから。だから優樹菜に管理してもらってた」
「そうなんだ」
普段使ってなくても自動で支払われるから問題ないと、崇弘は笑う。
「もう…、こっちにいるの?」
「そのつもりだよ」
「アメリカの家は?」
「まだそのまま」
「また…、アメリカに行くの?」
「レコーディングはあっちだからなぁ」
レコーディングでアメリカに行った時に使う家として、引き払うことはしないでいるらしい。
「ここにいるから」
沙樹の隣に座った崇弘は、そう耳元で言った。
「お前のすぐ傍にいるから」
肩を抱き頭に手を置く。優しい声は沙樹を安心させていった。
「ん……っ」
微かに声を漏らすと、隣にいる崇弘の腕が伸びてきた。
「タカちゃん」
「おはよう」
「おはよ…」
寝起きの顔を見られるのが恥ずかしくなり、顔を隠す。
「隠さない」
「だって……」
ふっと笑う崇弘は、沙樹をじっと見ていた。
「身体、平気?」
その問いに首を横に振る。それもその筈だ。あの後、崇弘は沙樹を3度も抱いたのだから。
「悪ぃな。無理させちまって」
沙樹の髪に指を絡ませてはそう言う。
「もう少し、寝てな」
おでこにそっとキスをして、崇弘はベッドを這い出る。沙樹は身体の怠さから、ベッドから動けないでまた眠っていった。
◇◇◇◇◇
次に目を覚ましたのは、昼を過ぎていた。
ゆっくりと身体を起こすと、自分の身体を見る。あちこちに昨日の痕跡が赤く残っている。身体もまだ怠い。
だがいつまでもこうしてベッドの中にいるわけにはいかない。床に散らばった下着を身に付けると、部屋の隅に置かれたバッグに気付く。昨日来た時はリビングに置いてあったものが、崇弘が寝室に置いてくれたのだろう。そのバッグから着替えを出して身に付ける。
(タカちゃんは?)
寝室のドアを開けると、崇弘がいない。キョロキョロしていると、テーブルに置き手紙があった。崇弘の汚い文字で殴り書きのようにメモが残されていた。
《コンビニ行ってくる》
それを見て、沙樹はバスルームへと向かった。顔を洗い、バスルームに置いてあるタオルを借りて顔を拭き、持って来た化粧水でスキンケアをする。リビングでメイクをして崇弘が帰ってくるのを待っていた。
(なんか…、不思議な感覚)
崇弘のマンションに泊まったことはある。だが、今日とは違う気持ちでいられた。
高校生の頃一度だけ泊まった時は、由紀子たちに嘘をついて泊まった。だけどただ崇弘と眠っただけで、なにも起こらなかった。
アメリカの家では、そんなつもりはなくて身体を重ね、恥ずかしさはもちろんあったが、日本ではないからなのか、自分の中にはない感情があった。
でも今はアメリカの家の時とは違う感情。恥ずかしさと嬉しさと戸惑いが入り交じっていた。
ガチャっ。
玄関で、ドアが開く金属音が聞こえた。廊下を歩いてくる音。そしてリビングのドアを開ける音。
振り返ると、崇弘が両手に袋を持っていた。
「起きた?」
「うん」
「ハラ、減っただろ」
と、コンビニの袋をローテーブルの上に置いた。
「どれだけ買ったのよ」
呆れ顔で崇弘を見る。
「だって何もねぇから」
確かに崇弘の冷蔵庫には何も入ってない。帰って来るまで、冷蔵庫の線は抜かれていたくらいだ。
「いない間、電気とか止めてたの?」
「いや。止めてない。たまにこっちに来ることあったから。だから優樹菜に管理してもらってた」
「そうなんだ」
普段使ってなくても自動で支払われるから問題ないと、崇弘は笑う。
「もう…、こっちにいるの?」
「そのつもりだよ」
「アメリカの家は?」
「まだそのまま」
「また…、アメリカに行くの?」
「レコーディングはあっちだからなぁ」
レコーディングでアメリカに行った時に使う家として、引き払うことはしないでいるらしい。
「ここにいるから」
沙樹の隣に座った崇弘は、そう耳元で言った。
「お前のすぐ傍にいるから」
肩を抱き頭に手を置く。優しい声は沙樹を安心させていった。
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。
今日は同期飲み会だった。
後輩のミスで行けたのは本当に最後。
飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。
彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。
きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。
けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。
でも、あれから変わった私なら……。
******
2021/05/29 公開
******
表紙 いもこは妹pixivID:11163077
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
先生の秘密はワインレッド
伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。
教師と生徒のドラマチックラブストーリー。
執筆開始 2025/5/28
完結 2025/5/30
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる