紅い薔薇 蒼い瞳

星河琉嘩

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第3章

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 理菜が目覚めると、隣には良樹がいた。しっかりと理菜を抱いたまま眠っていた。理菜は良樹の寝顔を見ながら、ずっとこの寝顔を見ていたいと思った。これからもずっとこのまま一緒にいたいっと。

 理菜は眠る良樹に身体に抱きついた。
「……ん?リナ?」
 寝ぼけて良樹がそう言った。抱きついた理菜に気付くと、もう一度抱きなおすとそのまま寝息を立てていく。
 乱れることのない寝息を聞いていると、だんだんと自分まで睡魔に襲われていく。


 ──このまま、ずっとこのままでいたい。離れることなく、ずっとこのまま……。


 きゅんと胸の奥が締め付けられる。なんだか、理菜はおかしい。そう思っていた。
 良樹と離れたくなくて困らせてみたり、自分からこうして抱きしめていたり。
 涙が出そうな感覚に襲われる。それがなんでなのかは分からない。どうしてこんな気持ちになってるのか、説明出来ない。


 ──あたしはどうしたいんだろう。
 ──あたしはなにを思ってるんだろう。




「……ヨシキ」
 眠る良樹の名前を呟くように呼ぶと、眠ってる筈の彼が「……ん」と返事をした。
 その声を聞いて、起きたのかと彼の顔を覗き込むけど、瞼は閉じたまま眠っていた。眠っている良樹に安心して、彼の胸に顔を押し付ける。
 すると良樹の大きな手が、リナの頭に置かれる。

「……どうした?」
 寝起きの声が降りてきた。
「起きてたの?」
 理菜は良樹の顔を見ないでそう言った。
「軽く眠っていただけだ」
 理菜をぎゅっと抱きしめた良樹が、目を閉じたまま言った。
 大きな手が理菜の背中を擦っている。

「リナ」
 理菜は良樹の胸に、顔を押し付けたままだった。
 そんな理菜を不審に思ったのか、良樹がもう一度聞いてくる。
「どうした?」
「…………なんでもない」
 抱きつく腕の力を入れた。


 ──このまま、ずっとこのままでいたい。
 ──離れたくない。ふたりでいたい。


 その想いは強くなり、それが理菜の腕の力に反映しているようだった。力を入れて抱きつく理菜は相当おかしいと思う。
「リナ」
 耳元で聞こえる声が優しい。でもその声を聞くと泣きたくなる。
「リナ。言いたいことあんなら、ちゃんと言え」
 理菜の身体を引き離し、顔をしっかりと見る。
「言いたいこと、あんだろ」
 その言葉は、いい訳は許さないっていう表情をしていた。でも理菜は、何を言いたいのか分からなくて。
 ただこうしていたいだけで、でも自分はどこかおかしいと思っていて、言葉の代わりに涙が溢れ出てきた。


「何を泣く必要がある」
 ボソッとそう言った良樹は、困った顔をしていた。
 女が泣くってことは武器になる。
 それはまだ12年しか生きていない理菜にだって分かる。
 だから今、良樹は困惑している。
 どうしたらいいのか困惑している。


 ──困らせたいわけじゃないのに。


 なんで泣いているのか、自分で分からなかった。
「リナ」
 頬に流れ落ちる涙を左手の親指で拭って、そして瞼にキスを落とす。
 その仕草にドキドキしながらも、理菜はなんで泣いているのだろうと感じていた。
 泣いているのにどうして良樹は怒らないんだろうとか、そんなことばかり考えていた。
「リナ。そんなに寂しかったのか?」
 理菜の心の奥にあったもの。それを分かっているのかのように言う。



 ──寂しい。


 
 ──あたしはずっとひとりでいて、寂しかったんだ。
 ──だからこんなにも離れたくないって思いが沸き起こってしまったんだ。


「リナ。言えよ」
 理菜の顔から目を逸らさず、良樹は理菜に何かを言わせようとする。



「寂しいって言え」



 優しい声が心の中に入り込んでゆく。理菜の奥にあるを引き出してゆく。



「寂しい……。ひとりはイヤだ……っ」



 その言葉を飲み込むように理菜に深いキスをする。
「ごめんな。リナ」
 理菜にそう言う良樹に、首を横に振るしかなかった。
「お前を放っといて、探すのに手間取って、お前を不安にさせてた」
 良樹が話す度に首を横に振る。
「シュンイチに言われるまで気付かなかった」
 

 ──お兄ちゃんは良樹に何かを言ったんだ。
 ──だからヨシキはひとりで倉庫に戻って来たんだ。



「寂しい想いさせてごめん……」
 切ない声が理菜に響いた。


 再び良樹に抱かれて眠った理菜が、次に目が覚めたのは翌日の朝だった。
 良樹にキスをされて起された。目覚めた時には、昨日までの想いが薄れていた。



「リナ。言いたいことは言えよ」
 ホテルを出る時、良樹はそう言った。
 そして理菜と良樹は、そのまま倉庫へと向かった。
 倉庫に着くと駿壱がいて、昨日家に帰らなかったことに苛々とした感じで怒られた。そして理菜の頭に手を置いて「噂の出所が分かった」と言った。

    
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