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最終章
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1学期が始まってすぐ、浩介の噂が広まった。浩介が三上留美と付き合ってるっていう話は2年の時に広まっていたが、そのふたりが別れたっていう話が出てきた。それを聞いた時、そういや最近一緒にいるところを見ないなぁと思った。
「おっす!」
朝なに食わぬ顔で教室に入って来た浩介に、クラスメート達は取り囲むようにして近付いた。そのクラスメートに一瞬驚いて、「何だよッ!」と叫んだ。
「お前、三上と別れたってマジかよっ」
「あんなに美人と別れるなんて勿体ねぇ!」
「別れるなら俺にくれよ」
男子たちはそんな言葉を吐き、女子たちは真実を知りたくて、浩介を囲み原因を聞こうと必死になっていた。
「リナ!アキ!助けろよッ」
理菜と亜紀に視線を移し、そう叫ぶ浩介をふたりは笑って見ていた。
「笑ってねぇで助けろッ」
「仕方ないじゃん。あんた噂の人だもん」
「そうそう。真実が知りたいじゃん」
「うわっ。裏切り者!」
ムキになって叫ぶ浩介が可笑しくて、ふたりはケラケラ笑った。
結局大沼が教室に入って来るまで、みんなに捕まっていた浩介は、げんなりとした顔をしていた。
そして大沼も噂を知っていたのか教室に入るなり、「コウは三上と別れたのか」と聞いた。そんな大沼に、「沼ちゃんまで言うのかよ~」とぐったりとして言う。
そのやり取りは、クラスの笑いを誘った。
◆◆◆◆◆
「なんでみんな、そんなこと知りてぇんだ…」
屋上で煙草を吸っていた浩介が、疲れた声で言った。
「そりゃあの三上と付き合って別れたって話になりゃ、気になるでしょ」
亜紀が浩介の頭をポンと叩くと、「はぁ……」と大きくため息を吐く。ため息を吐く程、クラスのみんなに言い寄られていた。それでも浩介は、何も言う事はなかった。
「で、本当なの?」
理菜は浩介に聞く。
「お前まで聞くのかよ……」
チラッと睨まれた。
「だって気になるじゃん」
「……はぁ」
「言っちゃえよ」
亜紀と理菜の攻撃には勝てないのか、浩介はため息を吐きながら答えた。
「別れたよ」
疲れきった感じで答える浩介は、それ以上何も言わなかった。だから理菜も亜紀も、それ以上は聞くのをやめた。別れた理由なんて、聞いても仕方ないとも思った。浩介が傷付いてる姿を、見たいとも思わない。だから聞かなかった。
今思えば聞かなくて正解だったと思う。聞いていたとしても、この後起こることは変えられなかったのかも知れないが。
◆◆◆◆◆
浩介の噂は学校中に広まり、意外と下級生にはモテる浩介は、毎日のように後輩の女子たちに呼び出されては告白されていた。
ヤンキーな浩介が怖くないのかと思うけど、やっぱり基本優しいし(意地悪なところもあるけど)モテるらしかった。
「コウ!呼び出し。2年の女!」
教室の入り口で2年の女子が、モゾモゾとしながら立っていた。それを見てため息を吐きながら、浩介は教室を出て行く。
浩介が教室を出て数分。今度は理菜に意外なお客が来た。
「リナ。三上が呼んでる」
教室の入り口に立ってるのは、三上留美だった。
「なんで?」
「ちょっと話があるの」
真っ直ぐ理菜に目を向けて言う三上は、何かを決意しているかのようだった。
三上に連れられて、グラウンド脇にある体育倉庫の裏まで来た。そこに呼び出すなんていい度胸してんじゃんと、普通なら思うけが、三上はそんなタイプじゃない。
前を歩く三上が、足を止めて振り返った。三上の目は、今にも泣き出しそうな目をしていた。
「三上……?」
声をかけると、三上は真っ直ぐ理菜を見た。
「……秋月さん」
名前を呼んで真っ直ぐ理菜を見つめて、意を決したかのように言葉を選ぶ。
「噂、聞いてますよね」
「あんたとコウが別れたって話?」
コクンと頷くと、三上は理菜をしっかりと見た。そして次の言葉に、理菜は耳を疑った。
「別れた原因、秋月さんですよ」
その言葉の意味が分からなくて、キョトンとするしかなかった。
「なに?」
聞き返すと三上は大粒の涙を零した。
「ずっと秋月さんを好きだったって。コウちゃん、言ったんです」
浩介はコウちゃんと呼ばれていたのか、と思った。
──いやいや、そんなことよりも何?
──コウがあたしを好きって?
「そんなことあるわけないじゃん」
理菜の言葉に、三上が涙を零す。
「コウちゃんを見てれば分かります。コウちゃん、ずっと秋月さんを見てるもの。いつも秋月さんの話をするもの。いつもあたしよりも、秋月さんの心配ばっかしてるもの!」
最後には声を張り上げていた。そんな三上に「嘘でしょ」なんて聞ける筈もなく。ただ理菜は、三上を見つめ返すことしか出来なかった。
「お願い。秋月さん」
三上は理菜をじっと見て言った。
「コウちゃんと付き合ってあげて。コウちゃんを幸せにしてあげて。あたしじゃダメだから」
「……それは出来ない。たとえコウが、あたしを好きだってのが本当だとしても、それは出来ない。あたしには大切な人がいる。大好きな人がいる。それに気持ちがコウにないのに、付き合ったってコウは嬉しいって思わないよ」
黙り込んだ三上に、続けて言う。
「コウは大切な友達だよ。それ以上の感情は、あたしには持ってない。きっとこれかも持つことはないと思う」
三上を見下ろして言う理菜は、三上を虐めてるみたいに見える。
だから三上から少し離れてみた。でも三上は理菜の腕をしっかりと掴んで、なおもまた「お願い」と言う。
「出来ないよ。自分の立場だったらどうする?出来ないでしょ」
理菜は三上にそう告げて、教室に戻っていった。あれ以上は話しても無駄だと思った。三上の言ってることが本当だとしても、理菜は浩介と付き合うことなんか出来ない。
「おっす!」
朝なに食わぬ顔で教室に入って来た浩介に、クラスメート達は取り囲むようにして近付いた。そのクラスメートに一瞬驚いて、「何だよッ!」と叫んだ。
「お前、三上と別れたってマジかよっ」
「あんなに美人と別れるなんて勿体ねぇ!」
「別れるなら俺にくれよ」
男子たちはそんな言葉を吐き、女子たちは真実を知りたくて、浩介を囲み原因を聞こうと必死になっていた。
「リナ!アキ!助けろよッ」
理菜と亜紀に視線を移し、そう叫ぶ浩介をふたりは笑って見ていた。
「笑ってねぇで助けろッ」
「仕方ないじゃん。あんた噂の人だもん」
「そうそう。真実が知りたいじゃん」
「うわっ。裏切り者!」
ムキになって叫ぶ浩介が可笑しくて、ふたりはケラケラ笑った。
結局大沼が教室に入って来るまで、みんなに捕まっていた浩介は、げんなりとした顔をしていた。
そして大沼も噂を知っていたのか教室に入るなり、「コウは三上と別れたのか」と聞いた。そんな大沼に、「沼ちゃんまで言うのかよ~」とぐったりとして言う。
そのやり取りは、クラスの笑いを誘った。
◆◆◆◆◆
「なんでみんな、そんなこと知りてぇんだ…」
屋上で煙草を吸っていた浩介が、疲れた声で言った。
「そりゃあの三上と付き合って別れたって話になりゃ、気になるでしょ」
亜紀が浩介の頭をポンと叩くと、「はぁ……」と大きくため息を吐く。ため息を吐く程、クラスのみんなに言い寄られていた。それでも浩介は、何も言う事はなかった。
「で、本当なの?」
理菜は浩介に聞く。
「お前まで聞くのかよ……」
チラッと睨まれた。
「だって気になるじゃん」
「……はぁ」
「言っちゃえよ」
亜紀と理菜の攻撃には勝てないのか、浩介はため息を吐きながら答えた。
「別れたよ」
疲れきった感じで答える浩介は、それ以上何も言わなかった。だから理菜も亜紀も、それ以上は聞くのをやめた。別れた理由なんて、聞いても仕方ないとも思った。浩介が傷付いてる姿を、見たいとも思わない。だから聞かなかった。
今思えば聞かなくて正解だったと思う。聞いていたとしても、この後起こることは変えられなかったのかも知れないが。
◆◆◆◆◆
浩介の噂は学校中に広まり、意外と下級生にはモテる浩介は、毎日のように後輩の女子たちに呼び出されては告白されていた。
ヤンキーな浩介が怖くないのかと思うけど、やっぱり基本優しいし(意地悪なところもあるけど)モテるらしかった。
「コウ!呼び出し。2年の女!」
教室の入り口で2年の女子が、モゾモゾとしながら立っていた。それを見てため息を吐きながら、浩介は教室を出て行く。
浩介が教室を出て数分。今度は理菜に意外なお客が来た。
「リナ。三上が呼んでる」
教室の入り口に立ってるのは、三上留美だった。
「なんで?」
「ちょっと話があるの」
真っ直ぐ理菜に目を向けて言う三上は、何かを決意しているかのようだった。
三上に連れられて、グラウンド脇にある体育倉庫の裏まで来た。そこに呼び出すなんていい度胸してんじゃんと、普通なら思うけが、三上はそんなタイプじゃない。
前を歩く三上が、足を止めて振り返った。三上の目は、今にも泣き出しそうな目をしていた。
「三上……?」
声をかけると、三上は真っ直ぐ理菜を見た。
「……秋月さん」
名前を呼んで真っ直ぐ理菜を見つめて、意を決したかのように言葉を選ぶ。
「噂、聞いてますよね」
「あんたとコウが別れたって話?」
コクンと頷くと、三上は理菜をしっかりと見た。そして次の言葉に、理菜は耳を疑った。
「別れた原因、秋月さんですよ」
その言葉の意味が分からなくて、キョトンとするしかなかった。
「なに?」
聞き返すと三上は大粒の涙を零した。
「ずっと秋月さんを好きだったって。コウちゃん、言ったんです」
浩介はコウちゃんと呼ばれていたのか、と思った。
──いやいや、そんなことよりも何?
──コウがあたしを好きって?
「そんなことあるわけないじゃん」
理菜の言葉に、三上が涙を零す。
「コウちゃんを見てれば分かります。コウちゃん、ずっと秋月さんを見てるもの。いつも秋月さんの話をするもの。いつもあたしよりも、秋月さんの心配ばっかしてるもの!」
最後には声を張り上げていた。そんな三上に「嘘でしょ」なんて聞ける筈もなく。ただ理菜は、三上を見つめ返すことしか出来なかった。
「お願い。秋月さん」
三上は理菜をじっと見て言った。
「コウちゃんと付き合ってあげて。コウちゃんを幸せにしてあげて。あたしじゃダメだから」
「……それは出来ない。たとえコウが、あたしを好きだってのが本当だとしても、それは出来ない。あたしには大切な人がいる。大好きな人がいる。それに気持ちがコウにないのに、付き合ったってコウは嬉しいって思わないよ」
黙り込んだ三上に、続けて言う。
「コウは大切な友達だよ。それ以上の感情は、あたしには持ってない。きっとこれかも持つことはないと思う」
三上を見下ろして言う理菜は、三上を虐めてるみたいに見える。
だから三上から少し離れてみた。でも三上は理菜の腕をしっかりと掴んで、なおもまた「お願い」と言う。
「出来ないよ。自分の立場だったらどうする?出来ないでしょ」
理菜は三上にそう告げて、教室に戻っていった。あれ以上は話しても無駄だと思った。三上の言ってることが本当だとしても、理菜は浩介と付き合うことなんか出来ない。
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