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第3章
12 学園再開
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ユリアーナの力が徐々に覚醒し始めていた。魔術書を読み漁る毎日。冬の間、毎日そうしていた。
新年が明ける頃、その連絡が来た。
「学校再開……」
郵便配達の青年が、この森にまでやってきて便りの手紙を渡して行った。郵便の配達は、あまりここには届かない。というよりも届ける人がいないのだ。だが、学校に在籍しているユリアーナの元へその報せを届けるのには必要で、森がそれを察知した。その為、青年を招き入れた。
帰りが迷わないようにと、ホエールに入り口まで案内するようにしてもらって、その手紙を開けた。
手紙には学園長直筆の文字で、「学校再開のお知らせ」と書かれていた。
「さて。どうするべきか」
魔女を普通の学校に通わせるべきか否か。迷いどころだった。
力の使い方を教える授業があると聞くが、それと魔女の力は根本的には違う。
手紙を持って小屋に入ったエレンは、魔術書を読んでるユリアーナに話してみることにした。
「ユリアーナ」
魔術書から目を離したユリアーナは、エレンの顔を見上げた。
「学校再開の報せがきたんだけど、どうする?」
その話を聞いてぱぁと笑顔になった。
(行きたいのね)
ユリアーナの心を察知したエレンは、始まる前に学園長に会いに行くことにした。
◇◇◇◇◇
この街の大きな学園。貴族の子供たちも平民の子供たちも行く、大きな学園。学園内では大人の世界の差別などはない。貴族も平民も同じ教室で勉強をし、いろんなことを経験する。それがこの学園の教育方針だった。
だが、それは魔女にも通用するのか。エレンは心配だった。
「失礼します」
通された学園長室。机に座った学園長に挨拶をする。この学園の学校長は女性だ。そんな学校長と会ったのは二度目だった。一度目はユリアーナを学園に入れる為に話をした時だった。
「久しぶりですね」
学園長は優しい笑みを浮かべた。
「今日はどういった用件で?」
「学校再開の知らせを聞いて、話をしておきたいと思いまして」
学園長を前にエレンは遠慮なく、話を進めていく。学園長は「う~ん…」と話を聞きながら唸っていた。
「ユリアーナ嬢は魔女だったと。それに覚醒し始めていると?」
頷くエレンに学園長は考え込んでいた。
「ユリアーナ嬢はどう考えて…?」
「本人は学校に通いたいと」
「……なら問題ないでしょう。魔女だからといって、他の生徒に何か影響があるのかしら?」
「力は覚醒したばかりだから、いつ暴走してしまうかは分からない。だけど、暴走しないようにユリアーナに呪いをかけるつもりだ」
「魔女の力は、人間の力と違うのかしら?」
「人間の力は突然産まれてきたもの。本来は人間にある力ではない。今は力の持つ人間が多いが、昔は力を持つ人間の方が少なかったと聞く。魔女の力は血だ。産まれた時から備わっている。ただユリアーナは、産まれてすぐに母から魔力封じの術をかけられていた」
「魔力封じ……」
「ユリアーナの死んだ母が、ユリアーナには魔女としてではなく人間として生きて欲しいと願って魔力封じをかけたのではないかと」
その話を聞いた学園長はふぅ……とため息をひとつ吐いた。
「エレンさん」
学園長はエレンをじっと見て笑った。
「あなたにお願いがあります」
そのお願いにエレンは驚いていた。
◇◇◇◇◇
まだ雪が積もる寒い日。新年が明けて二週間たった日。学園は再開した。ユリアーナはニコニコとし、エレンから買ってもらった赤いコートを羽織った。
「エレン!」
そしてユリアーナが喜んでいるのは、学園再開だけではない。学園長からの願いで、学園の授業の一環として魔女の扱う魔力のことを生徒に教えて欲しいとのことだったのだ。
その為、ユリアーナと一緒に学園へと通うことになったのだ。
(ユリアーナを思ってのことだな)
授業の一環で魔女の扱う魔力のことを学べば、ユリアーナは魔女として成長出来る。そしてそれは他の生徒に気付かれないように。
表向きは『魔女の魔力と人間の力の違いについて』という授業だった。なので他の生徒も一緒に授業を受ける。
(なんか上手く丸め込まれた気がする)
そう思いながらも、ユリアーナの為に学園で授業をするのだ。そのことがユリアーナにとって嬉しいことだった。だがそれはエレンも同じだった。娘と思い、育ててるユリアーナを大切にしているからこそ、傍で見守りたいと願っているのだ。
新年が明ける頃、その連絡が来た。
「学校再開……」
郵便配達の青年が、この森にまでやってきて便りの手紙を渡して行った。郵便の配達は、あまりここには届かない。というよりも届ける人がいないのだ。だが、学校に在籍しているユリアーナの元へその報せを届けるのには必要で、森がそれを察知した。その為、青年を招き入れた。
帰りが迷わないようにと、ホエールに入り口まで案内するようにしてもらって、その手紙を開けた。
手紙には学園長直筆の文字で、「学校再開のお知らせ」と書かれていた。
「さて。どうするべきか」
魔女を普通の学校に通わせるべきか否か。迷いどころだった。
力の使い方を教える授業があると聞くが、それと魔女の力は根本的には違う。
手紙を持って小屋に入ったエレンは、魔術書を読んでるユリアーナに話してみることにした。
「ユリアーナ」
魔術書から目を離したユリアーナは、エレンの顔を見上げた。
「学校再開の報せがきたんだけど、どうする?」
その話を聞いてぱぁと笑顔になった。
(行きたいのね)
ユリアーナの心を察知したエレンは、始まる前に学園長に会いに行くことにした。
◇◇◇◇◇
この街の大きな学園。貴族の子供たちも平民の子供たちも行く、大きな学園。学園内では大人の世界の差別などはない。貴族も平民も同じ教室で勉強をし、いろんなことを経験する。それがこの学園の教育方針だった。
だが、それは魔女にも通用するのか。エレンは心配だった。
「失礼します」
通された学園長室。机に座った学園長に挨拶をする。この学園の学校長は女性だ。そんな学校長と会ったのは二度目だった。一度目はユリアーナを学園に入れる為に話をした時だった。
「久しぶりですね」
学園長は優しい笑みを浮かべた。
「今日はどういった用件で?」
「学校再開の知らせを聞いて、話をしておきたいと思いまして」
学園長を前にエレンは遠慮なく、話を進めていく。学園長は「う~ん…」と話を聞きながら唸っていた。
「ユリアーナ嬢は魔女だったと。それに覚醒し始めていると?」
頷くエレンに学園長は考え込んでいた。
「ユリアーナ嬢はどう考えて…?」
「本人は学校に通いたいと」
「……なら問題ないでしょう。魔女だからといって、他の生徒に何か影響があるのかしら?」
「力は覚醒したばかりだから、いつ暴走してしまうかは分からない。だけど、暴走しないようにユリアーナに呪いをかけるつもりだ」
「魔女の力は、人間の力と違うのかしら?」
「人間の力は突然産まれてきたもの。本来は人間にある力ではない。今は力の持つ人間が多いが、昔は力を持つ人間の方が少なかったと聞く。魔女の力は血だ。産まれた時から備わっている。ただユリアーナは、産まれてすぐに母から魔力封じの術をかけられていた」
「魔力封じ……」
「ユリアーナの死んだ母が、ユリアーナには魔女としてではなく人間として生きて欲しいと願って魔力封じをかけたのではないかと」
その話を聞いた学園長はふぅ……とため息をひとつ吐いた。
「エレンさん」
学園長はエレンをじっと見て笑った。
「あなたにお願いがあります」
そのお願いにエレンは驚いていた。
◇◇◇◇◇
まだ雪が積もる寒い日。新年が明けて二週間たった日。学園は再開した。ユリアーナはニコニコとし、エレンから買ってもらった赤いコートを羽織った。
「エレン!」
そしてユリアーナが喜んでいるのは、学園再開だけではない。学園長からの願いで、学園の授業の一環として魔女の扱う魔力のことを生徒に教えて欲しいとのことだったのだ。
その為、ユリアーナと一緒に学園へと通うことになったのだ。
(ユリアーナを思ってのことだな)
授業の一環で魔女の扱う魔力のことを学べば、ユリアーナは魔女として成長出来る。そしてそれは他の生徒に気付かれないように。
表向きは『魔女の魔力と人間の力の違いについて』という授業だった。なので他の生徒も一緒に授業を受ける。
(なんか上手く丸め込まれた気がする)
そう思いながらも、ユリアーナの為に学園で授業をするのだ。そのことがユリアーナにとって嬉しいことだった。だがそれはエレンも同じだった。娘と思い、育ててるユリアーナを大切にしているからこそ、傍で見守りたいと願っているのだ。
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