紅い薔薇 蒼い瞳 特別編

星河琉嘩

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愛するということ

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 大樹は部屋のドアを開けっ放しで、あたしの服を剥ぎ取る。車の中では服は捲り上げられた状態で犯されていたけど、ベッドの上だとこうして服を剥ぎ取る。
 一度、部屋のドアを閉めてって言ったことがある。いくらなんでも開けっ放しでヤるのは、恥ずかしいと思ったから。
 でもそれを言ったら、大樹はあたしの頬を思いっきり殴った。それ以来、あたしはそれを言わなくなった。


 あたしの上に馬乗りになった大樹は、あたしの胸を乱暴に掴んで来た。揉むというよりは掴むその行為。
 大樹とセックスする時、必ず痛みがある。
 他の人とシたことないから、それが当たり前なのかどうかなんて知らないけど、痛みがある。
 今も胸を掴まれたことで痛みを発し、顔を歪ませた。そんなあたしに気付いて、大樹は不適な笑みを見せた。


「痛いか?」
 そう発せられた冷たい言葉にあ、たしは頷くことはしない。
 それもいつものことだ。
 何度もあたしの中に、大樹が入り込んでくる。その時も痛みが伴う。
 それは肉体的な痛みなのか、心の痛みなのかは分からない。でもあたしは大樹とのその行為は、キライだった。


 だったら拒否すればいい。
 この話を聞いた人はそう言うだろう。
 でもそれは出来ないくらい、あたしは人が恋しかったのかもしれない。それに気付かないフリして、あたしは大樹に乱暴に抱かれる。



「……んっ……!」
 微かに洩れたあたしの声。何度かに一度くらいは、声が洩れてくる。
 それは快感からではなく、悲痛の声。でも大樹にとっては、その声が萌えるものらしい。



「ジュンコ……」
 あたしを乱暴に抱く大樹は、あたしの名前を呼んだ。あまりあたしの名前を呼ばない大樹が、その行為の時だけは呼ぶ。
 それがとても心地いい。名前を呼ばれる時だけは心地いい。
 だけど、あたしは大樹の名前を呼ぶことは許されない。


 なんて理不尽なんだろう。
 自分はあたしの名前を呼んで、あたしを乱暴に扱うのに、あたしにはそれをさせてはくれない。
 自分勝手な人だとは思っている。
 だけど、あたしはこの男から離れられないのかもしれない。



 ──ああ…。


 だからかな。
 だからヨシキと一緒にいると、安らぐのかもしれない。



 あれから数十分。
 あたしは大樹に乱暴に抱かれて、意識を失った。頬に痛みが走り、薄っすらを目を開けると、ベッドに腰掛けて煙草を咥えた大樹がいた。


「……あの?」
 あたしが発した言葉に大樹が振り返り、あたしを見た。
「起きたか」
「あたしまた……?」
 気絶することはいつものこと。それくらい、大樹は強く激しく乱暴に抱いてくる。
「お前、いい加減に慣れろ」
 慣れろとは随分なセリフだと感じながら、あたしは起き上がろうとする。だけど、身体は重く起き上がれないでいた。
 ふぅ~と、煙草の煙を吐き出した大樹は、あたしにその煙草を咥えさせる。あたしは煙草を咥えて、それを思いきり吸い込んだ。


「大樹……」
 あたしが名前を呼ぶと、ギロリとこっちを睨んできた。
「名前を呼ぶなと言っただろ」
 低いその声。


 あたしは大樹を好きなわけじゃない。だったらなんで、この人と一緒にいるんだろう。
 この人とヤるんだろう。



 身体が重くなるくらい、大樹に抱かれても大樹の心はあたしにはない。もちろん、あたしにもない。


 ──じゃ、なんで?


 自分でも分からないこと。
 誰も分からないこと。
 それを繰り返す、あたしと大樹。



 いや。
 大樹は分かってるのかもしれない。
 大樹はただ、あたしとセックスするのが好きなだけだ。啼くことはしないあたしが、面白いだけなんだ。


 口に咥えていた煙草。大樹はその口元を見て呟いた。
「エロイ」
「は?」
「煙草の咥え方」
 それだけ言うと、大樹はあたしから煙草を奪い、ベットサイドに置いてあった灰皿にその煙草を押し付けて消すと、再びあたしに襲い掛かった。


「……っ!ちょっとっ!!」
 もうこれ以上は無理だと、身体が拒否する。でも拒否したあたしの腕を簡単に掴み、あたしの頭の上で押さえつけた。
 腕を掴まれたことによって、動きが取れなくなって、抵抗してもその力に抗うことは出来なかった。
 身体が重くなってるせいかもしれないけど、あたしの抵抗は無駄に終わる。
 腕を掴まれたままのあたしの唇を奪い、そのまま首筋へ唇を移動させていく。
 首筋を通ったあとはそのまま下へといき、あたしの胸の中心へといく。その中心を口に含んだ大樹は口の中で玩んでいた。

 その度にあたしの身体は小さく震える。その反応に、大樹は不適な笑みを向けてはまた玩ぶ。
 いつもその繰り返しだ。


 会ったその日。
 あたしは何度も大樹に乱暴に抱かれる。もう「助けて」っていう思うことはない。
 昔は思っていたけど、もう今更。どうにでもしてって感じ。


 だから、気付かなかった。
 あたしと大樹がヤってる時、ドアの向こうから見ている人影に。
 気付くことはなかった。


 
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