紅い薔薇 蒼い瞳 特別編

星河琉嘩

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好きなひと

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 私とリナが出会ったのは、小学1年の時。うちのクラスにリナが転校して来たんだ。


 初めてリナを見た時、凄いキレイだと思った。
 キレイな金色の髪の色、目の色。
 透き通るような白い肌。


 すべてが羨ましいと思った。


 リナはコウによくイジメられてた。
 ま、イジメっていうかからかいに近かったけど。
 初めこそは他の子もリナをイジメてたけど、それも学年が上がる度に飽きて来たのか、イジメるのはコウひとりになった。


 それに気付いたのは小学校3年時。いつものように、コウはリナをからかっていた。


 私は家庭環境の所為か、他の子達よりも考え方が大人びていたらしく、それにもすぐに気付いた。隣の家に住む私の幼馴染みのコウは、リナが好きなんだって。


 今日もほら。
 リナを見る目がハートになってる。
 でも鈍感なリナは、それに気付かない。


 小学校卒業する時、私はコウに言った。
「言わなきゃ分からないよ、あの子鈍感だから」って。
 でもコウは未だに言わないでいる。だからリナはあんな凄い人と、付き合ってしまったんだよ。



     ◆◆◆◆◆



「いいの?コウ」
 私はコウの部屋に入り込んで、そう言った。マンションの部屋が、隣同士の私とコウ。産まれた時からいつも一緒だった。
「何がだよ」
 私が言いたい事は、分かってるクセに聞いて来る。
「リナのこと、言いの?言わなくて」
 それを言われて黙り込んだコウは、小さく呟いた。
「どうにもならないじゃねぇか。あの人と付き合ってんだぞ」
「じゃ、言わないで想ってるつもり?」
 私の言葉にコウは黙ってしまった。


 私には、異性を好きになる気持ちが分からない。それはやっぱり、家庭環境の所為せいだとは思う。


 男の人を信用出来ない。
 それはあの人が連れ込んでくる、恋人オトコたちの所為。


「コウがいいならいいだけどね。でもこのままいったら、あんたずっと童貞じゃん」
 その言葉にコウが真っ赤になっていく。


 コウはリナを追って、道外しても純情なのは変わらない。昔から知ってるコウのままだった。



 私の、は随分前に母親の男に奪われた。だからこそ信用出来ない。



 悔しくて悔しくて。
 悲しくて悲しくて。


 私はリナにだけ、それを打ち明けた。リナは悲痛な顔でこっちを見ていた。
 それは今となれば、どうしてそんな顔をしたのか分かる。リナも同じだったから。

 でもリナの方が辛いかも。
 リナは自分の父親に、そういうことをされたんだから。


 そんなリナがヨシキさんと出会って、本当に幸せそうで、見てるこっちまで嬉しくなった。あの子のあの笑顔が見れるのなら、私は何でもやってやれる。
 そう思った。
 だからこそ、青薔薇に入ることにしたんだ。


 ま、元々私はそういう人間だったのかもしれないけど。



「ねぇ。コウ」
 コウの部屋の中で、マンガを読んでる私はマンガから目を離さずに聞く。
「人を好きになるってどんな感じ?」
 イキナリの質問に、コウは目を丸くした。
 私がこんなことを聞くなんて、思ってもいなかったと思う。


 コウは昔からリナが好きだ。それでもそれを本人に言わない。自分のものにしたいと思わないバカなのか、ヨシキさんには勝てないと、白旗を振ったバカなのか。
 どっちにしろ、コウは自分の気持ちを言えないバカなんだ。



「お前、好きなヤツいねぇのか」
 そんなバカは、私をバカにしたように言う。
 バカにバカ扱いされるのはムカつく。


「私が人を好きになれるとでも思ってる?」
 まだマンガから目を離さない、私はそう返事をする。そしてそのまま私は、コウの言葉を待つ。
「確かにお前は、そうかもしれねぇな。母ちゃん見てるし。母ちゃんが連れてくる男、見てるしな。そういう感覚がねぇのかもしれねぇな」
 うちの家庭環境が悪いのは、コウは知り尽くしている。だけどコウには言えなかったことがあった。あんな目に遭うのは、もう二度とごめんだ。
 コウにバレた時、コウは悲しそうな目でこっちを見ていた。


「アキ。人を好きになるっていいもんだぜ。喩えそれが叶わなくてもな」
 寂しい目をしたコウは、まだリナが好きなんだって思う。
 だからこそ、コウは他の子と付き合うことにしたのかもしれない。このままリナを想い続けていても、叶うことはないって。
 虚しいだけだって。


 ほんとにバカなコウ。
 そんなに苦しいなら、好きにならなきゃいいのに。


 私には分からない。
 人を好きになることの意味が。
 だけど羨ましいとも思う。
 人を好きになれるこいつが。



 どんな感じだろう。
 人を好きになるって。



 私がリナを大切に思う気持ちと、変わらないのかな。
 私がコウを大事に思う気持ちと、変わらないのかな。



 人を好きになったことがない私。
 初恋もまだな私。
 普通はこういうの、女の方が早いっていうのに。
 男よりも恋をするのは、女が早いっていうのに。
 私は男よりもオクテということになるのかな。



 う~ん。
 それはなんか癪だ。



 コウに先を越された感じが凄く癪。いつもなんでもコウより先に出来てきた。
 なのに、恋に関してはコウが先だ。


 それが癪に障る。




 ねぇ。
 好きになる人ってどんな人?
 私が好きになれる人って、この世の中にいるの?




 そう思っていたんだけど──……。





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