紅い薔薇 蒼い瞳 特別編

星河琉嘩

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龍と桜

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 チームの方で、慌しく動き回ってることが多くなった。
 真夏の暑い日。
 俺は常にカズキさんに着いて回っていた。


 BTのことを探る為。


 今回のことは.マジで止めなきゃなんねぇ。カズキさんが傷付くのも嫌だし、ヨシキさんもリナさんもシュンイチさんも、誰も傷付くのは見たくない。
 それはチームの誰もが思ってることで、関連チームの面々もそうだ。
 それくらいヨシキさんの人望は厚い。暴走連合の幹部たちは、凄ぇ慕われてる。チームに入ってねぇヤツらからも、慕われるくれぇだ。



「カズキさん」
 隣で煙草を吸ってるカズキさんに声をかける。日に日に無言になっていく、カズキさん。きっと心の奥底で、葛藤してるもんがあんだろう。いつになく真剣な目をしている。
「平気っすか」
 そう聞いていた。
 前に俺にかけられた言葉を、今度は俺がかけた。


 BTと暴走連合との決戦。
 それは即ち、惚れた女との決戦。

 
 カズキさんにとってそうだった。
 BT側に、元・青薔薇の幹部だったマミさんがいる。
 マミさんは本当にヨシキさんが好きで、誰よりも好きで、ずっとこういう機会を伺っていた。幾度となくリナさんに罠を仕掛けては、黒龍にヤられてる。それでも諦めることが出来ない程、マミさんはヨシキさんに惚れている。
 そしてそのマミさんに、カズキさんは昔惚れていた。
 酔った勢いで聞かされたその事実。やるせない思いが伝わってくる。


「何が」
 冷たい声で言うカズキさんに、俺はそれ以上何も言えなかった。


 ──違う。
 言っちゃいけないって気がしたんだ。


 拳を握る手が震えている。どうしようもないくらい、行き場のない思いを抱えている。
 俺にはどうすることも出来ない。
 だからこそ俺は、カズキさんの助けになれることを探している。


 チームのことで動き回ってる最中さなか、繁華街で桜の肩を抱くユウキを見かける。桜はユウキの隣で、とても嬉しそうに笑ってる。ユウキも見た事もないくらいの、優しい笑顔を桜に向けている。
「お前の妹、平気なのか?」
 その様子を見ていたカズキさんがそう呟く。
「こんな時間にこんなとこに出入りして」
「……そうすっね」
 不貞腐れた声で答える俺を、目を細めて笑う。
「ま、ユウキが一緒だから絡まれることはねぇか」
 ケタケタと声を上げる。


 確かに。
 ユウキがいる。ユウキもこの辺りじゃ、名の知れてる不良だ。絡むバカはいない。その隣にいるから、必然と守られている。
 けど、俺はユウキを許したわけじゃない。だからといって、ダメだとは言えない。桜の悲しい目は、見たくないから言えない。


「お前にとっちゃ、桜ちゃんは誰よりも大事な存在なんだな」
 カズキさんの声が耳から入る。そして頭の中に残る。


 そうなんだ。
 俺にとって桜は、誰よりも大事な存在なんだ。だから誰よりも幸せであって欲しい。


 誰よりも──……。



 
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