異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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ツンデレガチ勢★聖騎士団編

腐った権力者ほどムカつくものはない

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~2人の聖騎士が『K-A-M』に入会するちょっと前~




時刻は午後4時過ぎ。
聖騎士用兵舎にあるバカ広いカイルの部屋で、俺はカイルにキスをされていた。

「…んむ……ちゅ…ちゅる…」

すっげー優しくて、超甘い。
でも、不思議とエロい気分にはならず、カイルの愛がただただ伝わってくるだけ。

「……ちゅう…」

カイル、遠慮しなくなった。1回ヤったせいなのか、積極的にセクハラしてくる。
このキスもセクハラの1つで、これからおせっせ、という訳ではない。
ただのキス。されどキス。とろとろにされました。

「……カイルってさ、キス好きなの?」

「…何故だ?」

「頻度やべーじゃん。2人きりになったらすぐキスするじゃん。でも尻は揉まないし、乳首も摘ままないし、キスだけだし」

「……。…そうだな、言われてみれば確かに、俺はキスが好きなのかも知れん。コージの気持ち良さそうな顔を間近で見られるからだろうか」

「……あと、素直になったよな」

「ああ、頑張っている」

ドヤ顔で言ったカイル。
確かにキスは気持ち良いし、もう数えきれないほど男(主にリイサスさんルークさんジャックさんガレ)とキスしてきたのだから、今さら嫌と言うつもりもない。…でも『褒めろ褒めろ』と本心が見え隠れしているカイルを見ると、尻尾を振るハスキー犬の姿が想像出来てしまう。
これは…頭をわしゃわしゃしてあげた方が良いんだろうか……。でも拗ねるかも…。

ちゅっ

「あっ…もう……。…キス魔め」

隙あらばキスなんだから、まともに悩んでる暇もないな…。





********************


「では、行ってくる。スティーブ以外の者が来ても決して開けるなよ。奥にある部屋は武器や魔道具が置いてあるので入るな。お前のせいで部屋がドカン、などとなれば目も当てられんからな」

これから会議があるカイルが聖騎士団長の印、白い生地に青の装飾が施されたロングマントを羽織って、扉の前に立つ。

「そこまで子供じゃねーよ」

むくれる俺をフッと笑い、俺の頬にちゅうとキスしたあとに、唇にも、ちゅっ。
お偉い爺さん方も出席すると昼間愚痴っていたので、1度離れた後に俺からもサービスでちゅっ。
……結果、カイルは顔どころか首まで真っ赤にして、カチコチロボットになったまま、スティーブさんに引きずられて行った…。
…ごめんカイル。俺に触られるとポンコツになるの、すっかり忘れてたわ。

カイルを見送った後は、ベッドやソファでごろごろしながら読書を始める。
この世界にエロ本はあまり普及していないので、部屋の本棚にある本も真面目な本ばかりだ。
え? エロ本が普及していない理由?
…うーん…。…すぐ、ヤれるからだと思う…。
ガレが言うには、露出し過ぎたまま夜道を歩くと、すぐに襲われるらしい。それ目当てに夜道でストリップショーやる変態さんもいるとか。美人な人が脱ぎ出すと、1人の人に大人数が群がる乱交騒ぎになって、ネコになった人はそれそれは真っ白に染まるって。ナニに、とは言わない。
でも、ムラムラしたら夜道で服を脱げなんて……何その常識恐い。
ま、まぁとにかく、この世界でエロ本は無用なものなのだ。
だから、俺が今読んでいるのは『聖書Ⅰ』。
主にゼロアとこの世界の成り立ちについて書かれている。
複雑な言い回しばっかりで理解するのに時間がかかったけど、教会の認識はまぁ何となく分かった。
つまりはこういうことである。



~教会の認識と教え~


・創造主ゼロアはその名の通り、世界の全部を創造し、その管理者として自身の姿を模した人間を作った。

・けど人間が調子乗ったから管理者権利剥奪。反省するまで許しませんと。

・管理者無き世界はヤバイという事で、世界の均衡を保っていた3体の種族…『天使族』『精霊族』『悪魔族』の代表に管理を任せた。

・悪魔「いやいや反省させませんけどw」

・精霊「勝手にしろ」

・天使「幸せに種族とか関係ないよね!」

・…3種族は自由過ぎた。

・悪魔「じゃじゃーん! 創造主ゼロアの真似して人間もどき作ってみましたw」←これが暗黒属性。

・精霊「すぴーzzz」

・天使「じゃじゃーん! 管理大変だからお手伝いの人間を作ってみました!」←これが神聖属性。

・悪魔に作られた暗黒属性は人間を害する敵なのだ!

・我らが慈悲深き天使様の御子は悪魔の子を根絶やしにしろ! 全ては人間の幸せの為に! 人間を創造された創造主ゼロア様の為に!




……という事ですが…。あくまでこれは教会の主張であって、事実な訳ではない。ゼロアも否定してたし。
ただ…俺は精霊が気になった。
精霊は中立の立場で、今は静観しているみたいだ。しかしその存在について聖書では深く触れていない。
天使や悪魔と違って、結構そこら辺にいるそうだけど、基本的に姿は見せない。
気まぐれで、見た目も個体差がハッキリと出ていて、人型もいれば獣の姿のもいる。さらには小人のような精霊も聖書には描かれていた。
3種族の中で唯一、野良契約が出来るそうだ。
逆に、天使と悪魔は召喚しなければ現れない。
天使は天界に、悪魔は魔族領土の奥深くにいて、召喚士も少なく、最後に人が見たのはなんと50年前。いかに召喚士が少ないかが分かる数字だ。
……ま、俺は使えるんですけどね。


「ほほう。聖書を読むとは、殊勝な心掛けだな」


「うぇっ!?」

突然、真後ろからおっさんの声がして慌てて後ろを向くと…、おっさん。中年のおっさんがいた。下っ腹突き出た、ニヤニヤのおっさん。

「………えーっと…、どなたっすか…?」

ここ…カイルの部屋だよな。
殊勝って言うんなら、この人教会関係者?

「私は教会の司教だ。君がコージくんかね?」

「はいコージです! ………どうしたんすか?」

「………確かに『人を惑わす小悪魔のような天使』だな」

「…!!!!」

やっ、やめてぇ~! そのあだ名言わないでぇ~! 恥ずかしいから! コージくん恥ずか死しちゃうから!
てか、本当に何の用だよ…。
……も、もしかして『死神の吐息』の団員だって、疑われてる!?
違うんです俺は拐われたんです『惑わしの霧』とガレのダブルコンボで拐われたんですぅぅぅ!
おーれーはーむーじーつーだー!!

「ぐふ、これは楽しめそうだ…」

…あれ、なんか今、エロ漫画に出てくるレイプ魔みたいなセリフが聞こえた気が…。
って、ちょっと? なんでこのおっさん俺にじりじり近付いて来てんの?
なんでこのおっさんはぁはぁ言ってんの?
なんでこのおっさん…勃起してんの!?


「えっちょっなになになになに!!? こっち来んな!」

「ハァハァハァハァ…。恐がる事は無い。今からお前は洗礼を受けるのだ。私の手によって……むふぅっ!」

「ひぇっ!!」

ベッドでごろごろしながら本を読んでいた俺だが、飛び掛かって来たおっさんを間一髪、避ける事が出来た。
俺は貞操の危機を感じ、おっさんから距離を取ってリビングに逃げる。
その先は玄関で、スティーブさんが同じフロアにいるらしい。
…よし、いける。このまま全速力で走れば、いくらインドア派だとしても17歳の男子高校生にこのおっさんが追い付ける訳がない。


──…そう、信じて疑っていませんでした。ええ、数秒前までは。


このおっさん…、動けるデブだったらしい。
たまにいるよな! 芸人さんや動画サイトに【踊ってみた】上げる人で、腹たぷんたぷん揺らしながらキレッキレのダンス踊る人。スッゲーかっこいいと思うぜ俺は。
ただな、勃起中の目をギラギラさせたおっさんがキレッキレに障害物家具を避けながら、一寸の無駄もなく迫ってきたらさ、恐怖でしかないわ。
特撮に登場する、カレー大好きイエローライダーの中の人みたい……って、伝わる? 伝わらないか。
そんな動けるデブのおっさんに捕まった俺は、ソファに押し倒されてあっという間に剥かれた。
この時の俺の心情? 当然ながら、大パニックです。

「イヤァァァァァァァァァ知らないおっさんに犯されるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!! カイルゥゥゥゥゥゥ!!!」

「暴れるな。大丈夫だ、気持ち良い事だからな…」

「スティィィィィィィブさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! ヘルプミィィィィィィィ!!!」

「くっ…! 黙れ小僧!」

「…! お前にサンが救えるか!!」


「!? ………? ……??」


「あ、すいません…。条件反射で…」


さて今からレイプしてやろうって顔付きだったおっさんが、俺のおふざけで毒気を抜かれたようにため息を吐いた。
声もちょっと似てたから思わず返しちゃったよ…。いや、マジごめん。

「なんなのだお前は…。もっとムードというものがあるだろう!」

「いやレイプにムードもクソもあるかよ!」

うん、我ながら正論を言ったと思う。
レイプにムードがあって良いのは漫画の中と、逆レイプの時だけ、というのが俺の持論だ。

「私に逆らって良いのか? お前の家族を調べさせて、どうにかする事だって出来るのだぞ?」

「うっわー、典型的な悪役だぁー……」

「うるさいわっ! 年上には敬意を払え! 親にそう教わらなかったのか!?」

「少なくとも強姦魔に敬意を払えとは教わっていない。……それと俺、家族いないから脅したって無駄だもんね!」

「盗賊にでも殺されたか? 可哀想に。私が慰めてやろう…」

「どっちかって言うと殺されたのは俺だし!! てかエロい方向に持っていこうとすんなっ!」

ぺしっと胸をさわさわしていた毛むくじゃらの腕を叩けば、意地になったのか、おっさんが俺の両乳首をこねこねしてきやがった。うぅ~許すまじ…。

こねこねこねこね…

「んっ……、んぁ…は…、ぁんッ」

「ぐふ、感じているのか? 顔が真っ赤だぞ?」

くっそーニヤニヤしやがって! どうにか、この貞操の危機を脱する方法は…。……あっスキル! 『媚び』があった!!
えーっと、今は相手のレベルが60以下だと使えるんだっけ。
よしまずは鑑定…って、ああもう面倒臭い!! とりあえず『媚び』! ダメだったら他の案でいこう!!
よし、『媚び』発動!!


「……なぁなぁ、おっさん。俺、えっちはやーなの。えっちするとな、おなかがぎゅーってなって、苦しンだ。おっさんの声、超カッコいいし、俺、おっさんとお喋りしたい。……なぁ、ダメ?」

勿論、本音じゃない。せっせしてもおなかはぎゅーってならないし、声もカッコいい部類には入ると思うけど、興味はなし。
このスキルの恐いところは、発動中はずっと身体がスキルに乗っ取られているので、思いもよらない行動を取られる事だ。
今回も、対象者の好みに合わせて身体は勝手にもじもじ恥ずかしがっている。
そして、肝心の対象者おっさんは…。

「ぐ、ぐふふ! そうかそうか! 普段なら無理矢理犯すところだが、お前は可愛いからな…。今日は勘弁しといてやろう」

よっしゃーー成功ーーー!!
今日はってのが気になるけど、とりあえずクリアー!! ありがとう『媚び』ーーーー!!
はっ! しかも猶予があるならカイルに相談出来る!

「……そう言えば、おっさんはなんでカイルの部屋にいんの?」

「私は司教だぞ? 兵舎の部屋の合鍵など全部持っとるわ」

「あーさいですか…。でもバレたらまずくない? しかも俺を襲ったんだから、カイルに殺されない? 大丈夫?」

「ふふん、いくらマンハットくんとは言え、目上の者に手をかける事はするまい」

あ、今さらながら、マンハットくんって呼ばれてるんだ。…ちょっとウケる。

「いやー多分そのくらいすると思うぞ…。俺に求婚してきた奴の共通点は『執着がエグい』だし」

「…そ、そうなればお前を使って止めるまでだ」

「ますます殺されたいのかよおっさん。あんまりカイルを甘く見ない方が良いと思うぜ」

ガレとまともに殺り合うだけの実力者なんだから、当然駆け引きなんかも上手い筈だ。権力に屈するようには思えない。俺の為に『神すら殺そう』とか言ってたし。
このおっさん、いかにも横暴な権力者って感じだし、カイルには敵わないんじゃないかなぁ…。このおっさんの身が心配だ…。

「ならば、お前から説得にかかれ。家族はいなくとも、大事な者ならいるだろう! 例えば…オーディアンギルドの者たちなんか…」

このおっさん、ムカつく。大切な人たちを盾に言う事聞かそうってやり口が気に食わない。
……う、うーん…、でもルークさんたちが捕まっているところなんて想像出来ないな…。というか、聖騎士に捕まえられるかな…。
なんせ熊さんだもんな。あー久々にもふもふしたい! リイサスさんの家に帰りたい~!

「おい聞いているのか?」

「ん? あぁ、うん。俺もカイルが人を殺すところなんて見たくないし、努力はするよ」

「か、確実に説得するんだ! さもないと…」

「そもそも、聖職者が脅迫なんてして良いのかよ?」

「ふん! 神などおらん! おらん奴を崇め称えるだけで金も入ってくるし、地位も手に入れられる! 聖職者というのは、そういった者の集まりなのだよ!」

「え、神様いるけど」

「は?」

おっさんが変な顔で俺を凝視する。
立派な服着てても、中身はクソだな。
…はっ! いかんいかん、流石に名前も知らない相手にクソは失礼か。
…そう自分を咎めていると、俺とおっさんがいるソファの真横、長方形の窓を影が覆った。
曇ってきたかな、と思って視線を窓に向けると、4つの目があった。
………えっ、ここ5階…。

ガンッガンッ…ピシッ…バリーン

「な、何だっ!?」

「ええぇええぇぇ割っ…割れ…!? ぁぁぁああカイルに怒られるぅ…」

「コージさんいたぁ! 早く、帰りましょう!」

「え?」

よく見ると、本日2度目の乱入者は、黒い布を口元に巻いた狐さんと、同じく黒い布を巻いた表情がピクリとも動かないどこかで見た青年。
おっさんは顔中の穴という穴を広げて、ポッカーン。


……どうしよう。
意味分からんし、収拾もつかなそう。





********************



はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。


まずは、お気に入り2600、ありがとうございます!
そして今回、グダグダでごめんなさい。モブおじさんを出してみたかったんです…。


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